レジスタンス
「誰!?」
「おっ、五体満足でよかったなぁ。落ち着いて自己紹介したいところなんやけど、こんな状況やから黙ってボクらに攫われてくれるとうれしいなぁ」
「おい、黒猫何悠長にしゃべっている。さっさとここを離れるぞ」
「リーダーさんはせっかちやねぇ。ま、切羽詰まった状況なのは確かやからな、行くでお二人さん」
ヒロとレイをさらいに来たのは、黒猫と呼ばれていた鋼鉄でできた猫の仮面をかぶった男とリーダーと呼ばていた顔の一部が機械がついているが、大部分は人間の素顔が見える女性だった。しかし、その女性の赤い眼光は鋭く熱を逃がすためなのかところどころから蒸気が出ているためやはり人間ではないのだろう。
「レイ、今は言う通りにしよう」
「あぁ、そうだな」
頭痛が少しずつ収まっていたのか警戒して身構えていたレイにヒロは諭すと、二人についていった。
ヒロとレイはそれぞれ黒猫とリーダーと呼ばれていた者たちのバイクに乗り、その場を離れた。。
「お前たち何者なんだ?」
「私たちはレジスタンスと呼ばれている。まあ簡単に言えば国の政府機関と戦う武装組織ってところだ。詳しくは私たちの拠点についたら話してやる」
「わかった。とりあえず助けてくれてありがとう」
「しっかしうまくいったなぁ。ボクは正直もっと手こずるかと思ったんやけど」
「…! いやまだだ 追っ手がきた!」
「あれは、無人AI型小型殲滅機や! アンファングのやろう、軍の兵器を使うなんて聞いておらんで!?」
「なんとか振り切るぞ!」
ヒロたちの後ろから六機の殲滅機が迫ってきており、マーキングされているのか狭い道を通って振り切ろうとしても執拗に追いかけてくる。
突如殲滅機から青い光が放たれヒロたちのバイクの直ぐ側に着弾した。
「なっ、あのロボット撃ってきたよ!」
「そりゃそうや! 殲滅機っちゅー物騒な名前してるんやからな!」
「普通の弾丸だったらよかったんだがな、レーザーガンときた。これは振り切るのは無理だな」
「俺らは普通の弾丸でも死ぬぞ!?」
さすがのレイもこんな状況にはさすがに焦るらしい。リーダーの発言に思わずツッコんでいた。元々レイは性格とは裏腹に案外ノリが良く、学校にいた時もよくヒロにツッコんでいた。ようやくレイがいつも通りに戻ったと思いヒロは安堵したが、ホッとしたのも束の間、レーザーの雨が四人に降り注ぐ。
「おい、冗談だろ、もはや何で避けれてるのかもわからない!」
「ちっ、仕方ない。黒猫! 私は戦闘態勢をとる! お前はそのまま先導して振り切る努力をしろ! レイといったか、バイクの運転は任せた」
「は? 今なんて言った?」
「安心しろ、そのバイクには簡易的だが高性能戦闘用AIが搭載されている。基本的にはレーザーを回避してくれる。君は運転に集中すればいい」
「バイク自体運転したことがないんだよ!!」
「じゃあ気合で運転しろ!」
「めちゃくちゃだ!?」
「あの手の敵は、ボクは苦手分野やからな。ヒロくん、この携帯型レーザーガンでリーダーの援護してやってくれんか?」
「え? ちょっと黒猫さん!? こんなの使ったことないですよ!!」
「大丈夫や。別に全部当てなくてもええ。ちょっと気を逸らせればええんや」
「じゃあ、お前ら任せたぞ」
「ああくそ! こうなったらやってやるよ!」
そう行ってリーダーは右手に剣を構え、左手に銃を持って敵に向かって跳躍していった。その姿はとても美しく暗闇も相まって身にまとっている服からの光でより一層輝いていた。
彼女は敵兵器に向かって跳躍すると、剣を一振り。敵兵器は真っ二つになり煙をあげながら落ちていった。
「次」
残り五機の敵兵器はヘイトをヒロたちの方からたった今敵兵器を一機撃墜した女の方へ向けると一斉に攻撃を開始した。彼女は瞬時に撃墜した敵兵器から再び跳躍し、敵同士を打たせるように誘導して二機を同士討ちで撃墜させた。そして残り三機のレーザー攻撃を剣ではじきながら、左手に持っていた銃で後ろにいた二機を撃墜させた。
「すごい…」
「これはボクらの出番はなさそうやな。でもヒロ君はあまり銃は向かなそうやなあ。初めてとはいえさっきから一回も当たってへんもん」
「うっ、返す言葉もないです。昔から射的とかも苦手で…」
「射的なんて言葉久しぶりに聞いたなあ。ま、ヒロ君は近距離で戦うほうが向いてそうやもんな。そんな気を落とさんくてもええ。人には向き不向きがあるから大丈夫や」
ちなみに先ほどからレイがしゃべってない理由は、バイクの運転に必死でそれどころじゃないからである。
残り一機レーザーが意味をなさないということを知ってか否か、横から二枚のブレードを出し彼女に接近戦に持ち込んだ。
「やっぱり少なからず意思があるのか…」
彼女はそうつぶやくと剣を構えなおし、たちまち無数の斬撃をあびせた。敵兵器は彼女に向かって振り下ろしたが、その二枚のブレードは彼女に届くことはなく撃墜された。
「リーダー、お疲れさん」
「ああ。さあ、戻るぞ」
ヒロたちはゲームの世界でしか見たことがないような彼女の戦いを目の当たりにして、呆然とするしかなく、この世界で生きのびて元の世界に本当に戻れるのかますます不安になった。
「ついたぞ」
「ようこそ! ボクたちの拠点へ!」
そこは大きな鋼の山々に挟まれた谷にあった。岩肌(鋼)に大きな空洞があり、そこを活動拠点にしているようだった。その拠点には多くの人々が生活しており。リーダーさんと同じくほとんど人間の姿をしているものもいれば、人の姿ではなく、どちらかというと先ほど襲ってきた敵兵器のような完全にロボットの姿をしたものもいた。
「さて、君たちも疲れているとは思うが休憩する前に君たちのことについて改めて色々聞きたい。すまんけど許してくれると嬉しいんやけど」
「いえいえ! 救ってくれましたし僕たちのことならいつでも話しますので」
「それにあなたたちのことも詳しく聞きたい」
「そういってくれると助かる。じゃあこっちの奥の部屋で話そう」
「ここや」
「安心しろ、ここにいる人たちはいい人たちだ。お前たちの話も親身に聞いてくれる人たちだ」
「じゃ、入るで」
ヒロたちは部屋に入ると研究所のような印象を受けた。壁一面になにかの写真が貼られており、なにかを調べていた痕跡があった。部屋はかなり広くあまり家具はおいていなかった。
「戻ったで~、アイザックさん」
「お帰り、その様子だとうまくいったみたいだね」
一番奥にはベッドに腰を掛けている青年がいた。青年はリーダーたちと同じく、ほとんど人間の姿をしているが、ところどころ体の一部に鋼鉄があった。リーダーが黒髪に対して、青年は白髪で少し元気がなさそうに思えた。
ヒロたちはその青年に挨拶をしようとしたが、青年の横からもう一つかわいらしい声がした。
「おかえりなさい、あなたたちが平衡世界からきた人間ね」
「え?」
その声の主は銀髪で背が小さく幼女のの見た目をしたヒロたちと同じ正真正銘の人間だった