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パラレル  作者: 如月健人
2/3

機械のセカイ

今のところ重要ではない人物の発言は、『』にしています。

「おい、起きろヒロ」


「うっ… レイ、無事だったか! ここはどこだ?」


「わからない、見たこともない場所だ」


 目覚めるとそこは自然と呼べるものが一切見えず、一面鋼鉄に覆われた世界だった。道路や建物はもちろん、おそらく草木をモチーフにしているのであろう。草木を模している鋼鉄も存在している。あまりの異様な光景にヒロは状況を整理するのにかなりの時間を要した。


「レイはどれくらい前に気づいたんだ?」


「目覚めたのはおそらくだが十五分程前くらいだ。 少し離れた場所で目覚めたからな」


「僕たちは死んだのか?」


「分からない。携帯はつながらないし、時計もなぜかバグって出てこない」


「どうしよう、何があったのか全然わっかんねえ」


「とりあえず動こう。手がかりを探さないとどうしようもない」


「あ、あぁ、わかった」


 ヒロはなぜこんなにも冷静でいられるのか不思議で仕方がなかったが、確かにここにいても仕方がないので疑問に思いつつもレイの言う通り動くことにした。

 しばらく歩いてもやはり自然の一つも見つからず、ずっと薄暗い道を歩いた。なぜ薄暗いのかとヒロはふと上を見上げてみると空が見えず、上も鋼鉄で覆われており大きい光があるだけ。おそらくだがあの光も太陽ではないのだろう。光はかなり遠くにある一番大きいであろう建物から発せられているようだった。


「なあレイやっぱここおかしいよな」


「まあ地球ではないだろうな。こんなの別の世界としか説明できない」


「そうだよな…… ん? レイ! 向こうに建物っぽいのが見えるよ!」


「ほんとだ。よし行ってみよう」


 ヒロたち一縷の希望を抱き、急いで向かった。そこには集落かなにかかと思われる、小さい家がいくつも点在していた。家に光があるためおそらく誰かは住んでいるのだろう。この世界に人が存在している。それだけでもヒロ達の心が救われたのは間違いなかった。


「人がいるみたいだ! 話聞いてみよう!」


「おいヒロ! いきなり行くのはやめた方が……」


「すみませーん! お話いいですかー!」


『はーい? なんでしょうか…… え?』


「なっ、ロボット!?」


『ひっ……! きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 その住人の姿を見てヒロは驚愕した。どこからどう見てもロボットだった。しかしただの機械だけでなはない、人の形を模したロボットであった。そのロボットが機械音ではなく、しっかりと人間と同じ音程で言葉を発したのだ。しかし、それは女性も同じだったのだろう。ヒロの顔をみて住人の女性は悲鳴をあげた。

 女性の悲鳴を聞きつけて周りの住人もなんだなんだと様子を見に来た。様子を見に来た住人達もヒロの顔を見てどよめいた。周りの住民も女性と同じロボットとしか思えない見た目をしていた。


『なんだあの顔!? 第一世代か!』


『第一世代よりも旧人類に近くないか!?』


『まさかレジスタンスの仲間か! どちらにせよ処分対象に違いないだろ! 特殊隊に連絡するぞ』


「な、なんだよこれ」


「ヒロ、この場からすぐに離れるぞ! よくわからないが通報されたみたいだ。捕まったらまずいことになりそうだ」






 ヒロたちは集落から急いで離れた。集落を見つけた瞬間に抱いた一縷の希望は、一瞬で打ち砕かれ。あるのは絶望と不安だけであった。進めど進めど変わらない殺風景な光景。行く当てもなく、情報を集めようにも話しかけることができない。

 どうしようもない状況にヒロたちは打ちひしがれていたとき、集落の方向からサイレンのようなものが聞こえた。


「レイ! 何か近づいてくる」


「逃げるぞ、走れ!」


   急いで逃げようにも相手は自動車に乗っている。動く間もなくヒロたちは囲まれてしまった。数十台の車やバイクに囲まれ、脱出は不可能。あまりの絶体絶命な状況にヒロたちはあきらめるしかなかった。

 自動車に乗っている者たちは、例外なく皆ロボットのような見た目をしていた。一つ先ほどの住民たちとの違いをあげるのであればそれは全員武装をしているということだろう。銃、剣、鈍器などさまざまなものを装備している。 

 彼らの様子をうかがっていると、一人の人物が車から降り、ヒロたちの前にやってきた。

 おそらく男性なのであろう。他の者たちはたとえロボットだとしても表情を認識できるくらいには人間に近い。しかしヒロたちの前に立った者は真っ黒で表面に数字の【0】が書かれた不気味な仮面をつけていた。


「通報が来たときは耳を疑ったが、まさか本当に旧人類の姿をしたヒトがいるとは。第一世代であったらこの場で処分をすることができるのだがな。今までにない事態だ、ひとまずお前たちを確保させてもらう」


「あんたは?」


「ほう? このような状況で私に質問をする余裕があるのか。時間稼ぎのつもりかわからないが、まあいい。我々は国家直属の特殊部隊だ。テロやイレギュラーに対応するための組織、つまりお前らのようなものに対処するための組織だ」


 最悪だ。ヒロとレイはそうを思った。見知らぬ世界にきて、一番最初にまともに話す相手が国と直接関わっている者など対抗しようがない。正直に言って内心いますぐ叫びだして逃げ出したい気分だった。こんな状況に普通に生活していて陥るわけがない。武装組織に出くわすなど海外ならまだしも日本じゃまずありえない。


「無駄な時間は終わりだ。お前ら、連れていけ」


 『はっ! してアンファング殿、こいつらは見たところ対第一世代拘束器具は意味を無さなそうですがいかがいたしましょうか』


「拘束はいらん。どうせ何もできない。どうやらこいつらは身体改造だけでなく身体強化の魔術すらできないようだ。適当に積み荷に放り込んでおけ」


 そうしてヒロたちは真っ暗な積み荷に入れられ、車は動き出した。

 車はヒロたちが歩いてきた舗装されてない道を驚くほど一切揺れずに動いている。まるで空中に浮いているかのようだ。元いた世界ではありえない技術に異世界だと改めて認識するのだった。






「僕たちどうなるんだろうな」


「さあ、いい結末にはならないだろうな」


「……あのさ、なんでそんなに冷静でいられるんだ!? こんなことレイに言いたくないけどおかしいよ! いくら元々現実主義で冷静沈着だったからっていきなり意味わからない世界に連れてこられて、ここの世界にいる人たちが全員ロボットで、武装した奴らにも出会って動じないのはおかしいよ! こっちの世界にき来てから別人みたいだよ!!」


「そ…れは…… なんで…なんだ?」


「何?自分の考えてることがわからないって言いたいのか!?」


「ごめん、わからないんだ。ヒロに言われてから気づいた。この状況になぜか納得して理解してる俺がいるんだよ。普通ならありえないのになんで受け入れてたんだ?  うっ……まただ…頭が痛い」


「レイ!? また頭痛か? なんでこんな時に! 早くどこか安静にできる場所についてくれないか、って止まった? ついたのか……うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 レイは苦しそうに頭を抱えて横になっている時、ずっと動いていた車が突如として止まったと思ったら、次の瞬間爆音とともに車が横転した。全身が悲鳴をあげながらも外の様子を知ろうと耳を澄ましてみると、


『くっそ!レジスタンスの奴らだ!』


『応戦しろ!捕虜を奪われるわけにはいかない! ぐあぁぁぁぁ』


「何が起きてるんだ!? あぁもう次から次へと訳が分からないことばっか起きる!」


「安心するんや。今回は君たちにとっていいことや」



 積み荷の扉をこじ開けられ、しゃべりかけてきた男は全身黒く猫の仮面をしていた。






 






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