序章:beginning
この作品は私の初投稿作品になります。拙い部分が多々あるとは思いますが、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
目の前には寝ている少年の体。落ちる。落ちる。否、落ちるという表現はふさわしくない。浮遊しているといったところだろう。少年の体が迫る。なぜ、ここにいるのか。なぜ、目の前に少年がいるのか。なにも思い出せない。思い出そうとしても靄がかかって消えてなくなっていく。まるで、もともと存在してなかったかのように。少年に入る。途端、僕の記憶がなだれ込む。私/僕が道を歩いている。見知らぬ人/友人と歩いている。私はこの記憶を知らない/知っている。私はそれで理解した。必要のないものは、出るべきではない。この世に存在するものにはすべてに意味がある。しかし、私は今の自分に意味がないと一瞬で理解した。必要な時にまた私になろうという誓いをする。そして俺は僕のなかに溶けていった・・・
「いってきます!」
いつも通りの朝。ヒロは学校に向かうため自宅を出る。もっとも高校3年生の受験シーズン真っ只中のためクラスメイトの中には登校しないものもいるが、ヒロはかなり心優しく真面目な性格をしているためしっかり登校する。
「おはよう!!みんな」
「おっ、ヒロか。おはよう。相変わらず朝から元気だなぁ」
「おはようヒロ、この間はありがとねー生徒会の仕事手伝ってもらっちゃって」
「全然気にしなくていいよ、また何かあったら呼んでくれよー」
自分のクラスに入り次第多くののクラスメイトから挨拶を返される。ヒロは困ってる人がいるとすぐさま手伝いに行く性格をしているためか、多くのクラスメイトから信賴されている。そのため友達はかなり多い方である。ヒロはクラスメイトと一通り話し終えると、2人の女子に話しかけに行った。
「ハル、ユキ、おはよう!」
「やっほーヒロ。あれ? レイは一緒じゃないんだ?」
「……おはよ」
「そうなんだよ、なんか頭痛がするから先行ってて連絡きたから今日は一緒じゃないんだよ」
「また? 最近多いよね体調不良。おかしな夢も見るって言ってたし心配だね」
「あぁ、見知らぬ土地を歩いてるっていう夢か」
「夢なんだからそういうこともあるでしょって言ったんだけど、ここ最近ずっと同じような夢をみるんだって。ちょっと怖いよね」
「なんか悩みでもあるのかな、今日あったらそれとなく聞いてみるわ」
「うんそれがいいかも。ユキはどう思う?」
「……私もそう思うよ」
先程からヒロと会話をしている明るい女子がハル。そして、挨拶だけして会話を聞いている物静かな女子がユキという。この2人性格は正反対だが、小さい頃から仲が良く、特にユキはハルしか友達と呼べる存在がいないためずっと一緒にいる。ヒロもハルとはすぐに打ち解けられたが、ユキとは普通に喋るようになってくれるのも時間を要した。打ち解けてるかどうかは疑問だが。
レイはヒロの一番の親友であり、優しすぎるヒロに対してあきれながらもなんだかんだ手伝ってくれるヒロにとってはかけがえのない友人であるが、最近様子が変で心配になっている。
「しっかしレイ遅いなあ。もう授業始まっちゃうよ」
「電話してみたら?」
「そうだな。してみるか……っっ!?」
「なに!? この揺れ!?」
その瞬間世界各地で大きな揺れに見舞われた。教室にいたみんなは急な出来事に戸惑いつつその揺れの大きさに驚き、中には泣いてしまう子もいた。しかし地震とは違う体験したこともない揺れだったためすぐに行動ができないのも無理はない。ヒロも空気、空間までもが揺れている感覚に恐怖を覚えていた。
「ユキ!大丈夫?」
「……うん。怖かったけど大丈夫。ハルちゃんも無事でよかった」
「何だったんだ今の。ただの地震じゃなかったよな…… なんだよあれ」
ヒロの目線の先には学校周り一帯がめちゃくちゃになっている光景。そして異様な存在感を解き放っている空中に存在している大きな穴である。そしてその穴に木や家の一部が吸い込まれていく。ゲームの世界と言われないと説明がつかないような光景に唖然とした。よく見ると空中に浮かんでいる大穴は一個だけでなく各地に現れているようだった。大きさはさまざまだが異様な光景には違いない。視覚から入ってくる情報が頭の中で整理しているとき、ふと大穴の近くに人影があるのに気付いた。
「嘘だろ、大穴の近くにいるのあれレイだ!!」
「嘘!?」
「……レイくんなんか頭抱えてない?」
「くっそ! すぐ助けに行ってくる!!」
「ちょっと待って!? 危険すぎるよ!」
「だからといってあのままにしておけないだろ!」
ヒロはすぐに助けに行くために教室を飛び出して外に出ていく。外は大穴が視覚の大半を覆うほど大きく、大穴の向こう側は一切見えない。足元も崩壊しており、まともに歩ける場所がほとんどない。そんな状況の中ヒロは大穴の下でうずくまって苦しんでいるレイを見つけた。しかしレイの前にもう一人いるようで何かを話しているようだった。
「ぐっ…… お前何なんだ… く、っそ あ…たまがいた…い」
「その様子を見るにまだ合わさってないみたいだなレイ」
「なっ!? 俺の名前……どう…して」
「まあいい、どうせこれから嫌でも気づくだろう。ほらレイ、お前の大切な友人が駆けつけてくれたみたいだぞ」
「レイ!! 大丈夫か!?」
「ヒロ!? ダメだ今すぐ離れろ!」
「断る! レイも僕が見捨てる性格してないって知ってるだろ!」
ヒロはレイに急いで駆け寄り、なんとか二人でこの場から離れようとする。
しかし二人が離れる前に大穴から光が漏れだし、周りのあらゆるものを吸い込みだした。
「こうなったらレイだけでも!」
「無理だ、間に合わない!」
「お前たちの行く末楽しみにさせてもらうよ。ではさようなら」
大穴はすべてを吸い込み、周りの穴を活性化され、あらゆるものを吸い込み始めた。二人は大穴の光に包まれ、そしてその場所には誰もいなくなった。
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