配信#39ー9 VR配信だよっ!:9
「私、みたまちゃんのお説教ならご褒美と思いましたがぁ~……あれはご褒美にできませんねぇ~……私が悪いところをこれでもか、と理解させられましたしぃ~……いやまあ、私たちが100%悪いので、反省してますけどねぇ~……」
「あたしもです……」
説教から解放された二人は、ちょっと涙目になっていた。
大の大人が涙目なのか……と思ったものの、あれは仕方ないと俺は思った。
正直、俺もガチギレされたら泣く自信があるしな……それくらい、本気で怒るみたまは怖いのだ。
【ちょっと泣いてるww】
【見てるこっちもなんか怖かったしな……】
【あれでもう一段上あるからなぁ……】
【っていうか、みたまちゃんのガチギレが昔あって、それを知ってる凪刃ちゃんってさ、やっぱ昔からの知り合いっぽいよな】
【下手に詮索するのはよくないので、そこはスルー一択】
【らいばーほーむの場合、素性の詮索をすると消されかねないからな……謎の圧力によって】
【謎(邪神)】
「さて……なんていうか、気が付けば開始からそこそこ時間が建っているんですが……そろそろ歩き回ってみるとしましょうか」
「だな! 俺としても、色々と見て回りてぇし」
「あ、ボク前半で触れられてた闘技場とか行ってみたいですねー」
「わたくしも賛成ですわ! どのようなドスやチャカがあるのか、楽しみですわ~!」
「かざりちゃん、やっぱお嬢だぞ。むしろ、そういうところがお嬢と言われる所以だと思うぞ」
「……は!? お、おほほほほ! わたくしは、お嬢ではなくお嬢様ですわ! ただちょっと……その、血肉が飛び散り、真っ赤な血に濡れたいやらしいドスが好きなだけですわ! あと、抗争とか!」
そう話すかざりの表情は、とてもアブナイ笑顔だった。
恍惚としているというか、少なくとも配信中にしていい女性の表情じゃないと思う。
「それはその、言い逃れができないと思いますぅ」
「ハッ!?」
【草】
【やっぱお嬢だわw】
【っていうか、血に濡れたドスがいやらしいとか言える辺り、絶対異常性癖やろこれ】
【さすがお嬢……】
【四期生のお嬢は伊達じゃないぜ!】
【特殊性癖過ぎて草】
【どんな人生送ったらそれをいやらしいと思うのか】
「まあ、かざりのおかしい趣味は一旦置いとくとして……闘技場に行く、ってことでいいですかね?」
『『『異議なし!』』』
満場一致で闘技場に行くことになったので早速移動。
闘技場はなんというか、外観で言えばスポーツスタジアムのような形の建物だった。
大きさとしてはかなり大きく、現実のどのスタジアムよりも一回り以上は大きい気がする。
こんなに大きいと、かなりの人が入れそうだな。
「とても大きいです! わたし、早く中に入って、どのようなシステムがあるのか確認したいです!」
うさぎさんのテンションがやっぱり高い。
今回の配信の中で、既にハイテンションになっているうさぎさんだが、目の前の巨大な闘技場の存在によって、最初以上のテンションになっている。
さすがの廃人ゲーマーと言ったところだろうか。
珍しくうさぎさんが先頭……というより、我先にと闘技場に突っ込んでいったので、俺たちも後を追って中へ。
「おぉ! こりゃすげぇな! 外から見るより広いな!」
「たしかにー。RPGあるある、外観以上になぜか広い建物」
「おー! 色んな遊びがあるみたいだぞ!」
「へぇ、確かに面白そうなのがいっぱいあるわね。……ストレス発散もできそう」
「私はあまり運動が得意ではないですけどぉ~、ゲームの中ならちょっとは動けそうですねぇ~」
「闘技場というので、何か武器の類が大量にあるのかと思いましたけれど……闘技場というより、ゲームセンター、という言葉の方が正しそうですわね」
「そうだな」
闘技場の中は、サッカーコートとか、野球グランドでもあるのかと思っていたのだが、かざりが言うように、色々なゲームが存在するゲームセンターとでも言うべき場所だった。
見たところ、テニス、バスケ、サッカー、野球、ボーリング、他にもスカッシュやスポーツチャンバラ、フェンシング、変わり種であれば、何でもありの格闘バトルもできるらしい。
【結構種類があるんだなー】
【一個だけコロセウムって名前のゲームがあるんですが】
【めっちゃ気になるww】
【見た感じ、リアルにあるスポーツが大半って感じか? なんか、流鏑馬とかあるけど】
【なんで流鏑馬があるんだろうか……】
【何を思って流鏑馬作ったんだ、運営】
「たくさんありますぅ! わたし、全部のゲームをプレイしてみたいです!」
目の前の広がるたくさんのゲームに、うさぎさんが無邪気な子供のように目を爛々とさせてはしゃいでいた。
あの人、あれでらいばーほーむで二番目に年長だったよな……?
「あー、うさぎさん、時間が割と押してるんで、そんなできないんですが……」
「そんなっ! くっ、なんでわたしは時間を圧縮できないんですかぁっ……!」
「なんか、ひかり先輩みたいなことを言い出したぞ」
「ま、うさぎはらいばーほーむ一の廃人ゲーマーだしな」
「まあ、うさぎだし……」
【うさぎちゃんって、ことゲームに関しては、発想が邪神と同じなんだよなぁ……】
【結構邪神とうさぎちゃんって思考回路似てるよね】
【邪神と比べるなよ! うさぎちゃんが可哀そうだルルォ!?】
【にしてもまあ、ゲームソフト無しでも結構遊べそうっぽいのがいいな!】
「くっ、とりあえず、ゲームしていいですか!? えと、この、コロセウムを!」
『『『どうぞどうぞ』』』
「やったーーー! じゃあ、行って来ますぅ!」
プレイしていいとわかると、うさぎさんはコロセウムのゲームに入って行った。
「あ、これ観戦モードっていうのがあるみたいだねー。行ってみる?」
「そうですねぇ~。うさぎさんのゲーム技術はすごいですし、色々と見てみたいですねぇ~」
「じゃあ、行ってみましょうか」
というわけで、うさぎさんのプレイを見るため、観戦モードを選択。
すると、まさに闘技場、と言わんばかりの場所の観客席に転送された。
イメージとしては、ローマにあるコロッセオが近いだろうか。
石造りだし、色味はオレンジっぽい。
観客席には俺たちしかいないらしい。
多分、正式リリースとなったら、観客席はユーザーたちで埋まるんだろう。
中心には平たんな地面があって、真ん中には石畳のリングのようなものがある。
多分、あそこで戦うんだろうが…………。
「あ、うさぎが出て来たぜ」
「うさぎ様はどのような格好を…………」
一体どんな姿で登場するのか、そう思っていた俺たちだったが、出て来た兎さんの姿を見て絶句した。
なんて言えばいいんだろうか。
いや、まあ、ある意味過去に存在したであろう姿なんだろうが……うん。
『『『スパルタじゃねぇか!!!』』』
うさぎさんは、スパルタの格好をしていた。
上半身裸(スポーツブラ? のような物を着けてはいる)で、ズボン……多分ズボンを穿いて、右手にはショートソードを持っていた。
尚、盾はない模様。
【ぶほっ!?】
【草ァ!】
【お前に恥じらいはねぇのか!?】
【えぇぇぇ……】
【うさぎちゃんってさ、側は普通に美少女……いや、美女? なんだよ。グラマーな体系だし、割とこう肉感的なんだよ。だからさぁ……お前それ案件動画でやっちゃだめじゃねェ!?】
【うさぎちゃんは変態だったか……】
【変態っていうか、あれ痴女じゃないかしら……】
【ゲームの中とは言え、あそこまで恥を捨てられる気がしないわ……】
「うさぎさん! その格好は恥ずかしくないの!?」
「はつきさん」
「なんだぞ!?」
「効率を求めるゲーマーが最終的に行きつくのは、速さです。そして攻撃力です。ちょっと調べたんですが、最も効率よく動けて、尚且つ攻撃できそうなのがこの装備だっただけです。つまり……これが一番速いと思います」
「RTA思考になってるぞ!?」
そっちだったかぁっ……!
あの人、圧倒的ゲーム廃人だが、同時にRTAの走者だもんな……。
なるほど…………いや待て?
「刀先輩」
「おう、なんだ、凪刃」
「あの人……もしかして初見プレイなのにRTAしようとしてる感じですか?」
「なんじゃね? コンプ要素とかないゲームに関しては、うさぎは初手RTAするからな」
「あー、あれ結構面白いんだよねー」
あの人の思考回路は一体どうなっているんだろうか。
【初手RTAはマジでイカレてるから】
【その場その場でチャート組んでんのほんと頭おかしい】
【まあ、初見だから遅い……なんてことはなく、そのゲーム二周目くらいの速さにはなってる模様】
【バケモンじゃん】
【うさぎちゃん、ゲームに関しては邪神以上のバケモンだから……】
【VRMMOとか出たら、トッププレイヤーになってそう。いやマジで】
ゲームに関してのみ、異常なスペックを発揮するうさぎさんの戦闘? 試合? が始まった。
相手は、ゴリゴリマッチョの大男だった。
どう見ても筋肉の鎧が凄まじいからなんだろう、防具が心臓を守る胸当てしかない。
あと、武器が肉切り包丁を巨大化させたような形状をしていて、あれとかどう見ても処刑人が持ってそうな武器なんだが。
殺意高すぎるだろ。
「カッコいい武器ですわ! ああいう叩き切ることをメインとした武器、大好きですわぁ~~~~! 辺りに肉塊をぶちまけそうですわね! ぐしゃっ! って!」
同期も同期で頭がおかしかった。
というか、案件動画でそういうこと言うなよと言いたい。
【お嬢がお嬢してる】
【お嬢、さすがにそれはやべぇですぜ……】
【発想がイカレてるんだよなぁ……】
【さすが、チャカをぶっ放したいと言ったお嬢だ】
「……うさぎって、運動神経がないはずなのよね?」
「だねー」
「……あれ、どう見ても運動神経ないですよー! って人間の動きじゃない気がするんだけど」
「お、おおぅ、リアルであんなにダメダメなうさぎさんが、ものすごい動きしてるぞ」
などと感想が零れる俺たちの視線の先には、大剣をショートソードで横に滑らせることで攻撃を捌き、大剣が地面にめり込んだところで、素早く切りつける。
大男の左足による蹴りが飛んで来たら、それを飛んで回避するどころか、足を踏み台にしてさらに跳躍。くるっと前方宙返りをして、すれ違いざまに背中を斬りつけて着地。
と思ったら、着地した直後に、斬りつけられて前方によろけた所を狙って、足払いをかけて転倒させ……そのまま首を切断(頭と胴体がさよならバイバイしたわけじゃない)して勝利した。
『『『えぇぇぇ……』』』
あまりにも鮮やかな手口……じゃなかった、動きによって瞬殺された大男は赤いエフェクトを出しながら消えた。
それを見た俺たちの口からは、困惑の声しか出なかった。
【いやあの、速すぎるんですが】
【一分経ってないよ???】
【うさぎちゃんって、ゲームの中だとあんなに動けるのかー……】
【絶対戦いたくねぇ……】
【っていうか、初見でする行動じゃなさすぎる】
「うーん、弱いですぅ。これで最高難易度なんですか……もうちょっと難しくてもいいと思います」
あれ最高難易度だったのかよ。
あの人、ゲームに関してはマジでひかりさんレベルで頭おかしいな……。
◇
あの後、何をトチ狂ったのか、うさぎさんは大男×10を出現させ、1対10というさらに頭のおかしい試合を開始。
結果は……
「勝ちました!」
圧勝だった。
それも、一切攻撃を受けていなかったのが本当に酷い。
別に情報リークとかないんだよな?
しかも、初見なんだよな?
なのになんで全部対応できてるんだ!?
どう考えても後ろに目があるとしか思えない動きもしてたし何より全体的な動きが普通に気持ち悪かった。
本当に格ゲーのキャラみたいな動きをするし、果てはアクションゲームのキャラの動きすらも模倣し始めたからな……。
どんだけゲームをやり込んだんだろうか、うさぎさん。
とまあ、そんな光景を繰り広げたものだから、
【うさぎちゃん、ゲームに関しては邪神を名乗っても許されると思う】
【ゲーム界の邪神か……】
【実際、格ゲーキャラとかアクションゲームのキャラの動きも模倣して、しかもしっかりやってるのがヤバいよね……】
【頭がおかしすぎる……】
【これ、運営が一番驚いてんだろ】
【ナーフ入るか?】
【残念ながら、生きている人間にナーフは入りません……!】
【そら邪神も勝てないって言うわ……】
コメ欄がこうなった。
とりあえず、うさぎさんやべー、で気持ちは統一できていると思う。
「えー……まあ、最後にうさぎさんが大暴れしていたが……そろそろ時間なので、エンディングに行きます。とりあえず、一人ずつ感想をどうぞ。あ、うさぎさんは最後でお願いします」
「わかりました!」
うさぎさんはにっこにこだった。
よほど楽しかったんだろう。
「じゃ、俺から行くかね。いや、ゲームの中ってのは不思議な感じだったが、楽しかったぜ! こりゃ、マジで覇権ハードになれるな! 正式リリースが楽しみだぜ!」
「ボクも刀先輩と同じ感想で」
「いやそこは普通に言ってほしいんですが!?」
【草】
【丸投げww】
【以下同文ってかw】
【お前……】
【適当すぎるぞ、このショタ野郎】
「小説のネタがたくさんと言う意味でも、あたしも正式リリースが楽しみね。プライベートのモデル使って、いろんなところを見に行くわ」
「はつきも楽しかったぞ! はつき的には、熱くなれるようなゲームが欲しいと思ったぞ! 太陽神になれるような奴!」
「需要がニッチすぎるので無理だと思います」
【それはそうw】
【マジでニッチw】
【どこに需要があんだよwwww】
【さすが騒音猫】
「ガチ凹みしましたけど、何はともあれすごく楽しかったですよぉ~。それに、モデルは自由ですのでぇ~……うへへぇ~、ロリモデルさんが増えると嬉しいですねぇ~! 様々なロリをこの目に焼き付けますよぉ~!」
「えー、ロリモデルを使う人は、ロリコンにご注意ください。ハァハァされます」
【ぶはっww】
【キレッキレで草】
【さすがたつな様期待の常識人だww】
【後輩に言われんのかよw】
【ロリコンお前……】
「あ、次はわたくしですわね! 個人的には、いつかR18Gの表現ができるような裏サーバーみたいなものが欲しいですわ! 絶対最高ですもの! 製作希望!」
「絶対ねぇよ!」
【お嬢、ぶれない】
【ぶれないってレベルか? これ】
【お嬢、謎にグロ耐性あるから……】
【死体とか見ても大して何も思わん人だ、面構えが違う】
【お嬢ェ……】
「えー、俺はまあ……とりあえず疲れたので、さっさと終わって寝たいです。明日普通に学校なんだよ……」
ぶっちゃけもう眠いし寝たい。
【お前も正直だな!?】
【おい常識人ww】
【まあ、高校生って考えたらそりゃそうだけどもw】
【ゆっくり寝てくれや!】
「それじゃあ、最後にうさぎさんどうぞ」
「個人的には、色々と言いたいことはありますけど……あとでゲームをやってみて、ここはこうした方がいい、みたいなレポートを公式さんに送ります! あと、あのコロセウムに関しては、難易度が物足りないので、もっと難しい難易度を追加してくれると嬉しいですぅ! 具体的には、縛りプレイができるような設定とか! あとあと、他にもこういうコマンドがあったらいいな、って思う物もあるし、何より――」
「やべぇ! うさぎが語りだした! 凪刃! 締めた方がいいぜ!」
「こうなると長いよー」
「了解です! というわけで、これで後半戦の配信も終わりです! はい、終了終了! ご視聴ありがとうございましたーー!」
『『『ばいばーい!』』』
「――と言う感じでですね、武器種の追加とか、エネミーの追加もほしいですね。個人的にはスピードタイプのエネミーと、超重量級のエネミーとか、あそれから――」
『この配信は終了しました』
【いや最後最後ォ!】
【うさぎちゃんまだ語ってたぞオイ!?】
【うさぎちゃんって、ゲームことになると饒舌になるし早口になるよね】
【あれは笑う】
【凪刃ちゃんが締めようとしてる裏でも意見言ってたわw】
【さすがゲーマー廃人だァ……】
【ほんと草】
【でもまあ、うさぎちゃんみたいなリアル貧弱人でもあんなに動けるってのはすげぇな】
【そうか、体が不自由な人でも、ゲームの中ら思いっきり動き回れるもんな……】
【病気がちでもできるってことだし……可能性しかない!】
【早く二次抽選来ないかなぁ!】
【こりゃ楽しみだぜぃ!】
ゲーム内だからバケモンってだけで、リアルだとクソザコナメクジなんですけどね、あのコミュ障。
ゲームへの最上級レベルの適性を得た代わりに、リアルの身体能力がクソ雑魚且つコミュ障になったんじゃないかと思います。
次回は閑話です。具体的には、麗奈回ですね。
皐月と柊の閑話の時に、柊が言っていたことを描写する話です。




