閑話#52ー2 皐月のなんてことない一日……になるはずだった日:下
誰がここまでやれと言ったよヤンデレ。まあ、愛が重いっていいよね!
「さて、意図せずしてデートになったわけだが……どこへ行こうか? 柊君」
「デートて……まあいいですが……。それで、どこへ行くか、でしたね。あー……皐月さんさえよければ、先の俺の用事を済ませていいですかね?」
「用事というと、ゲームセンターだったかな?」
「はい。ちょっと、欲しいプライズがあったので」
「もちろん構わないさ。もともと、私が柊君の約束を邪魔してしまったようなものだしね。君の好きなところでいいとも」
「いや、別に邪魔とは思ってないですよ。……というか、なぜかあいつらが俺を押し付けた感じになってましたが……」
「それこそ気にしなくていいさ」
私としても、柊君とデートができるというのは願ったりかなったりだからね。
自意識過剰でなければ、、柊君は既に私に惚れているわけだし、デートをすることは問題がない。
あと、否定しなかったのが嬉しいところだね。
しかし、ゲームセンターで欲しいプライズがあるとは。
柊君はあまりそう言うのはやらないイメージがあったんだが、どうやら勝手なイメージだったようだ。
「さて、立ち話というのも邪魔になるし、ゲームセンターへ行こうか」
「はい」
通行人の邪魔にならないように、私たちはゲームセンターへ移動。
二階にゲームセンターがあるので、エスカレーターに乗って二階へ移動し、ゲームセンターへ。
休日ということもあって、家族連れが多いのと、学生らしき人たちもそれなりにいる。
あと、ゲームセンターだけあって騒がしいが、私は嫌いではない。
むしろ、こういう騒がしいところは好きだね。
もっとも、らいばーほーむメンバーとのあれこれも負けず劣らず騒がしいわけだけど。
「それで、柊君の目当てはどういうのなんだい?」
「あー……まあ、フィギュア、ですね」
「へぇ、フィギュア。……ちなみにそれは、美少女フィギュアかい?」
「えぇ……まぁ」
「ふーん……」
美少女フィギュア、ねぇ……?
いや、別にね? 私はまだ柊君と恋人同士というわけでもなければ、お互い告白したわけでも、お互いがちゃんと好き同士ということを伝えあったわけでもないわけだが……美少女フィギュア……美少女フィギュアかぁ……まあ、柊君も男の子ということだろうけどね、いや、いいんだよ別に。そう言う気持ちがあってもいいし、柊君だって十七歳というお年頃だからね。そういうフィギュアが欲しいと思うのも何らおかしなことではない。ないんだが……なんでだろうね、何か負けたような気分がするのは。さっきも言ったが、別に私たちは付き合っているわけではない。それに、このデート自体予定外であり、想定されていなかったもの……それに、柊君自身の元々の予定だったので、私がどうこう言う資格なんて何一つない。ないんだが…………こう、私という女性とデートの時に狙うものだろうか。いや、私がいいよと言ったし、訊かなかった私も問題がある……って、そもそも柊君はそれが目的であって、私がどうこう言うことじゃない。言うことじゃないよ? でもさ? そう言うのは少しは誤魔化した方がいいと思わないこともないというか……ね? 少し言いにくそ~に、恥ずかしそ~にしながら肯定したけど、できればそこはそんな態度ではなく、それを狙いに来てますが何か? というような感じで開き直ってほしかったという気持ちもある。堂々としてくれていた方が、あぁ、そんなに欲しいし好きなキャラなんだろうな、というのがわかるわけだし安心できるし。でもさ、そうやって微妙な感じで反応するところを見ると、何かやましい気持ちが実は私にあるのではないか、なんて思ってしまうものでね。いや、私の自意識過剰なだけなのが100%だけど……でも、事実と感情は別なんだ。人間、それが100%正しくても、認められないと思う気持ちが出て来てしまうんだ。そういうものだろう、人間なんだから。……いや、私は一体何を考えているんだろうか。逆に考えよう。柊君が欲しいと思っている物を確認し、私がそのキャラクターのコスプレをして迫ればいいのではないだろうか。そうだよ、それがあるじゃないか。それで、私が柊君を押し倒して迫り、幸せな家庭を…………って、落ち着こう、私の内なる欲望、獣、そして結婚願望。私が柊君を襲い、間違って子供ができようものなら、それは私の社会的死を意味する。ここは現実であって、エロゲの世界じゃないんだ。あの世界ではまぁ、仮にそうなってもなぜか問題にならないというご都合主義が働く世界ではあるが、ここは現実でそんなご都合主義が発生しない世界。つまるところ、そんなことをすれば、私のモデル生命は跡形もなくお亡くなりになることは間違いないし、大炎上もすることだろう。もしそうなれば、私は後ろ指をさされるような生活まっしぐらだし、どうあがいてもアウトにしかならない人生になってしまう。それはごめん被る。だから今朝方自分で言ったじゃないか、高校卒業後に告白するのが一番いいと。今のままであればリスクにしかならないし、何もセーフじゃない。そもそも、柊君が警察に届出を出さないとも限らない。いや、出さないとは思うけど、楽観視こそ人生において最も危険な行為。とりあえず。そう、とりあえずは柊君が一体どのような美少女フィギュアが欲しいのかを確認するのが先決。そして、そのコスプレをして迫って……いやだから迫っちゃダメだって。まずい。私の思考が完全に肉食獣のそれ、そして婚期を気にし始める焦る婚活中の女性になりつつある。二十五歳女性として、明らかに不味い思考になってしまっている。ただの変態だし痴女だよ。やはり柊君とデートという事実が、私の内なる獣を封印している理性の檻を破壊しようと画策しているのだろう。さながら破城槌のごとく。獣は常に極上の食料を求めている。飢えた獣の前に極上の肉が置かれれば一も二もなく自らの食欲というものを満たしに行くことだろう。私だって、目の前に自分好みの男性がいて、こちらに恋愛以上の行為を向けてきたら我慢できなくなりそうだし、現にそうなってるし……うん、一旦その肉食獣には愛菜が突如として送って来た、修行後にシャワーを浴びている柊君の写真を思い浮かべることで一旦は落ち着いてもらうとしよう。………………………………うん落ち着いた。柊君、かなりいい体しているし、とてもカッコいい。見た目はスラッとしているのに、その服のしたには鍛え抜かれた筋肉があると言うすさまじいギャップ。とてもカッコイイと思う。細マッチョな年下イケメン男子ってかなり強い個性ではないだろうか。どこの少女マンガのヒーロー? と言いたくなる。まあ、柊君はどちらかと言うと、少女マンガのヒーローというより、ハーレムラブコメ系ラノベの主人公だと思うけど。普段の日常生活とか聞いてるとそうだし。いや、話しが脱線しすぎてはいないだろうかうんしてる。よし、とりあえず柊君の欲しいフィギュアの情報を訊こう。まずはそこからだからね。
「あ、あー……皐月さん?」
「ん、なんだい? 子供は何人欲しい?」
「急に何の話ですか!?」
しまったっ……!
私の願望が出てしまったっ……。
とりあえず、ごまかそう。
「すまない、疲れで頭がおかしくなっていたらしい」
「明らかに疲れによるものじゃない気がしたんですが……」
「気にしたら負けだよ、柊君」
「あ、ハイ」
「それで、だが……式はいつがいい?」
「いやだから本当に何の話ですか!? っていうか、本当に大丈夫なんですか!?」
まずい、美少女フィギュアを欲しがっているという事実が、私の本音を包み隠そうとしなくなってしまった。
オブラートはどこだ、オブラートは。
落ち着こう、私。
私は常識人。
アイアム常識人……。
……なんかすごくこう……バカっぽくないかい?
これ、デートという事実が相当私の脳内をお花畑にしているらしい。
今のバカっぽさは、私ではなく、寧々君とかそっち系だろう。もしくは俊道。
「すまない。脳へのダメージが抜けきっていなかったらしい」
「脳のダメージは早急に治した方がいいと思うんですけど!?」
「大丈夫だ。今度こそはまともな質問をするから」
「まともじゃない自覚はあるんですね……」
「自覚が無かったら、私はミレーネ君と同類になってしまうよ」
「地味に酷いこと言ってません?」
「気のせいだ。あれはもう、おぎゃりの暗黒面に落ちてしまったからね」
「おぎゃりの暗黒面とは!?」
私もノリで言っただけで、よくわからない。
「それで、だが」
「スルーなんですね……」
「君の欲しいフィギュアとはなんだい? とても気になるんだが」
「なんか今、聞こえてはいけない副音声が聞こえた気がしますが……一旦それは置いておきます。俺が欲しいのは、まあ……あれです」
「あれ?」
柊君がどこか恥ずかしそうにしながら指をさした先には、とても見覚えのある見た目の美少女のフィギュアが映る箱が。
というかあれ、
「わた――春風たつなのフィギュア? え、あれが欲しい物、なのかい?」
ものの見事に、私こと、春風たつなのフィギュアだった。
そう言えば、かなり前に制作すると言われていたっけ。
あぁ、あれの入荷日は今日だったか……いや待って、あれ? 柊君の目当てがあれ……!?
「実は……。少し前から発表されてたじゃないですか? で、まあ、今日が入荷日だったんで、欲しいなと……」
ぽりぽり、と視線を彷徨わせながらそう言う柊君に、私は思わずにっこり笑顔。
「そうかそうか! 君はあれが欲しいんだね!」
「なんかすっごいテンション高くなってません!?」
「HAHAHA! 気のせいだとも! そうかそうか! 君はあのフィギュアが……なんだか照れるね」
「俺の方が照れますよ……」
「それはそうだろうね」
なんせ、その中の人が目の前にいるわけだしね。
なるほど……柊君が欲しいのは私のフィギュア…………ふむ、つまり……
「私にコスプレをしてほしい、と」
「本当に今日はどうしたんですか!?」
「あぁ、いやなに。イマジナリー柊君がコスプレしてほしい、そう言っていたので」
「それはイマジナリーであって俺じゃねぇですよ!? っていうか、俺はそんなこと言いませんって!?」
「え? じゃあ、私が春風たつなのコスプレした姿を見たくないのかい?」
「それは! ……………………すみません、ちょっと見たいです」
「なら、愛菜に頼もうか!」
「なんでそんなすごいいい笑顔してるんですか!?」
「もしもし、愛菜? あぁ、うん。今って大丈夫かい? うん、うん、え? お父さんとエンドレスみたまちゃん配信視聴してる? 君いつもそれしてない? まあいいけど……あー、私のサイズに合うように、春風たつなのコスプレを発注してくれないかい? うん、うん。じゃあ、着払いで私の家に送っておいてほしい。ありがとう。うん。それじゃあ。というわけで、明日届く」
「手が早すぎるっ……! というか、愛菜さんは一体何してるんだ……!?」
「エンドレス視聴らしい。まあ、普段の奇行に比べたらマシだと思う」
「否定できないのが酷いな……」
それは私も思う。
しれっと父親と一緒に視聴しているのがなんとも言えない。
「それで、柊君はプレイしないのかい?」
「っと、そうでしたね。早速……」
「ちなみに、柊君はクレーンゲームは得意なのかい?」
「どちらかと言えば得意よりですね。調子がいい時は、一万円で色々込みで10個以上は取れますし」
「へぇ、それはすごいね?」
「まあ、秋葉限定ですが。……ただ、今回のタイプは確実に取れるタイプなのでありがたいですね」
「たしかに、紙の輪に通してどんどん前に出すタイプだからね」
この手のクレーンゲームは手順とタイミングさえ理解してしまえば、かなり楽に取れるタイプのものだから、2000円以内で取れる。
まあ、ミスをすることもあるが。
「まずは様子見で一回……」
というわけで、柊君の挑戦が開始。
私としては、是非とも私のフィギュアを取ってほしいところだ。
……それにしても、ゲームセンターに私のプライズが置かれているのは、なんとも不思議な気分だ。
その内みたまちゃんのフィギュアも出るだろうけど、間違いなくリリスと一緒に出る気がしている。
というか、第一弾目が私とひかりだからね、これ。
なんだったら、既に製作に入っていると思うんだよね、みたまちゃんとリリスのフィギュア。
むしろ、みたまちゃんとリリスの二人をフィギュア化しない理由がないだろうし、その内ガチのフィギュアなんかも作られると思う。
可動タイプのフィギュアから、非可動の数万するタイプのフィギュアとかそっち系で。
……いやまあ、既にどこかの公式ライバーが非公式でフィギュア作ってるけど。
あと、仮にみたまちゃんのフィギュアを作るとなると、あのシスコンが確実に話に参加することになると思う。
『私が認めない限りはみたまちゃんのフィギュアは認めない☆』
とか絶対に言う。
ただ、シスコンが関わることで、完成度も段違いになるので、結果的に利益も出るわけで……そもそも、みたまちゃんのグッズが売れないわけがないし。
というか、受注生産にしないと秒で売り切れそう。
リリスとセット販売にもなりそうだが、それをやっても許されそうなのが……。
「よし、もう少し……」
と、少し下らないことを考えているうちに、フィギュアがかなり前に来ていた。
あれ、なんか早くないかい?
「もう取れそうだね?」
「なんか、運よくかなり進んでくれたみたいで、上手く行けばこの一回で……って、よし! 取れた!」
台から飛び出している箱の角をアームで押すとフィギュアが落下し、クレーンゲーム特有の落下した時に流れる無駄に大きな音が流れた。
これ、間近だと結構うるさいよね。
「よかったね、柊君」
「帰ったら飾ります」
「そうしてくれると、私も嬉しいかな」
「皐月さん、今のセリフは色々危ない気が……」
「おっと、すまない。取れたことを喜んでいるのを見たら、ついね」
(多分)両片思いな相手が、私のフィギュアを取って喜んでいるのを見ると嬉しくなる。
「目的の物が取れたけど、他に何かするのかい?」
「あー……いや、やめときます。クレーンゲームって、気が付いたらお金が無くなるんで……」
「あぁ、わかる。今日は2000円くらいしかやらないと思ってやり始めたら、1万行く、何てのはざらだからね」
「マジでそれですよ。俺も良くそうなっていたんで……というか、皐月さんもやるんですね?」
「同期と遊びに行く時にね。地味に栞がよくやるんだよ」
「そうなんですか?」
「あぁ。なぜかね。私も詳しい理由は知らないが、アニメ好きなんじゃないかい?」
「なるほど。……そう言えば東雲さんって大学生ですけど、就活とかしてないんですか? 地味に配信が多い気がするんですが」
「栞はまぁ、既に進路が決まっているらしいからね。少し特殊、とは言っていたが」
実は私たち同期でも、栞が何をしているのかは知らない。
なんせ、栞が隠してるっぽいからね。
ただ、最近は椎菜ちゃんにそのことを話そうとしたらしいけど、なんだかんだで忘れてたみたいだが。
……まあ、何をしているのかは概ね予想できているが。
「そうなんですね。……ともあれ、これからどうします? 俺はどこでもいいんですが……」
「そうだね……あぁ、時間的にもちょうどいいし、お昼にしようか。私が奢るよ」
「いやさすがに悪いですよ」
「気にしないでくれ。それに、私はかなりお金を持っている。遠慮をする必要はないし、大人からの好意は受け取っておくものだよ? 少年?」
「あ、じゃあ……お言葉に甘えて……」
にこっと茶目っ気を出しながら笑って言えば、柊君は少しだけ顔を赤くした。
うんうん、実にいい反応だね。
「となると、一階の方がいいか。ここの一階にはたしか……あぁ、回転寿司があったね。そこにしようか」
「いやそこ高いんですけど!?」
「はは、気にしなくていいよ。お礼だよ、お礼」
「俺何もしてない気がするんですが……」
「個人的にね。さ、行こうか。実は私、朝食を食べていなくて、かなり空腹なんだ。柊君は?」
「ほどほどに空いてますが……」
「そうか。ま、君は高校二年生で育ち盛りなんだし、たくさん食べるといいさ。それじゃ、行こう」
やや渋る柊君の手を取って、私たちは一階の回転寿司店へ直行した。
◇
お店に入った後、柊君は色々と渋っていたものの、私の説得に折れて少し申し訳なさそうにしながらもしっかり食べてくれた。
美味しそうに食べる柊君を見ているだけで、色々とお腹いっぱいになった。
何はともあれ、その後はデート続行。
服を見たり、雑貨店に寄ったり、アニ○イトに寄ったり、書店に寄ったりして一日を過ごした。
帰りに関しては、
「というわけで、ヘルメットだ。しっかり着けてね。そして、しっかり私に捕まっているように。変に遠慮すると危ないので、がっしりでいいから」
「は、はい」
私が柊君をバイクに乗せて帰ることになった。
二人乗りだね。
ヘルメットなんかは用意していなかったんだが、幸いなことにショッピングモール内に取り扱っているお店があったから助かったよ。
なかったら、隣のホームセンターで買っていたところだが。
それはそれとして、柊君を乗せて帰宅。
柊君を家の前まで送り、その日は解散。
正直、もう少し二人でバイクに乗っていたかったが、そうするわけにはいかないからね。
彼はまだ学生の身だし。
あと、結構集中力が必要だし、長時間は危険だからね。
まあ、今度二人でどこかでかけられたらいいなと思いつつ、柊君に後ろから抱きしめられたこと思い出してニヤニヤしながら、私は家に帰った。
すごくいい一日だった。
またデートがしたいところだね。
過去最長の文章だったけど、やっぱ狂気度で言えば邪神なんだよなぁ……。
本当はもうちょっとデート回を書きたかったんですが、そろそろ本編やらないといけなかったのでね、うん。大分端折った。まあ、原因は超長文ですけど。
次回はちゃんと本編です! やっとやる内容が決まったからね!




