#205 大量のチョコ、やっぱりこうなるよね柊ちゃん
そんなこんなで、僕と柊ちゃん、麗奈ちゃんの三人でバレンタイン一色の学園内を歩き回ることになったんだけど……
「「……」」
僕と柊ちゃんの二人は、すごくその……今の状態に困惑していました。
「二人とも、大丈夫?」
「「……大丈夫に見える(か)?」」
「うーん、まあ、モテる人は大変だなー、と」
「「どうしてこうなった(の)……」」
そう零す、僕と柊ちゃんの両手には大量のチョコレートがありました。
一体なぜこうなっているのかと言えば……。
◇
「椎菜ちゃん、柊ちゃん、一緒に回ろ!」
発端はと言えば、僕と柊ちゃんがクラスのみんなにチョコレートを渡し終えた後、麗奈ちゃんが僕たちにそう言って来たことでした。
「もちろんいいよ!」
「あぁ、構わないぞ」
元々、いつもの三人で回るつもりだったので、断ることなく二つ返事でOKの返事をする。
やっぱり、この三人で動くのが一番しっくりくるんだよね。
「やた! じゃあ、どこから回る?」
「普通に見て回る感じでいいんじゃないか? バレンタインパーティーと言えば、そこかしこで告白が横行してるようなものだしな」
「たしかに。じゃあ、適当にぶらぶら~って言う感じで」
「そうだね!」
「じゃあ出発! ……っと、忘れてた。えーと、はい二人にこれをプレゼント」
出発しようとしたところで、麗奈ちゃんが突然カバンの中から布製の袋を四枚ほど取り出して、僕たちに二枚ずつ手渡して来ました。
「えーっと、どうして袋?」
「意味がわからないんだが……」
いきなり袋を手渡された僕と柊ちゃんは、その意味がわからず首を傾げる。
なんで袋?
「いやー、ほら、椎菜ちゃんも柊ちゃんって、去年かなりチョコレートを貰ってたでしょ?」
「まあ、そうだな」
「うん」
「でも、今年は色々と変わったじゃん? 二人とも女の子になってるし、かなり目立ったし。だから、きっとたくさんのチョコを貰うことになりそうだなー、って思って、二人のためにチョコを入れるための袋を用意した、というわけでございますですよ」
「なるほど。まあ、さすがにこの大きさの袋全部を埋め尽くすほどのチョコを貰うことはないだろうが……ありがたいのは間違いないしな。ありがとう、朝霧」
「すごくありがたいよ! ありがとう!」
「いえいえー。じゃ、改めて出発!」
そんなやり取りをしてから、僕たちは教室を出て学園内を歩き回ることに。
「なんというか、甘い匂いがすごいな……」
「校舎に入る前も甘い匂いが漂ってたけど、中の方がすごいね」
「まあ、あちこちにチョコ置いてあるもんねぇ。あと、バレンタイン特有の甘い空気もあって、五割増しくらいになってるよね」
「そうだな。……外を見れば、既に告白してる人もいるしな」
「あ、ほんとだ。周りに人がいる中告白できるのって普通にすごいよね」
「ね。あたしは多分無理」
「俺も無理だな」
「僕も無理かな」
告白自体、かなり勇気がいる行為だし、OKを貰えたらいいけど、もしもフラれちゃったらかなりきついよね……。
でも、僕たちが見かけた人は、どうやらOKが貰えたようで、周りから拍手が上がっていました。
よかったね!
「それはそれとしても、やっぱりチョコの受け渡しが多いな」
「バレンタインだからねぇ。でも、二人もこの後すごいことになるんじゃないかな? こう、袋に入りきらないくらいのチョコが! みたいな」
「そこまではならないと思うけどなぁ」
「……俺もそう思うんだが、なんかこう……フラグな気がしてならない……」
そんな風な会話をしていた僕たちだったけど……
「あ、いた! 椎菜ちゃんはいチョコあげる!」
「あの高宮君がこんなに美少女になってるとか予想外! でも、チョコあっげるぅ!」
「お二人にチョコ上げます!」
「これ貰って!」
「どうぞどうぞー!」
「これ、食べてくださいっ!」
「よければこれを」
「チョコです!」
「お二人にチョコをプレゼントしますね!」
なんて、すれ違うたびにチョコを貰うことになっちゃって……気が付けば、麗奈ちゃんの言う通り、袋がパンパンになる事態になりました。
なるべく形が崩れないようにとか、割れないようになんてことを気にしながら袋に入れてたんだけど、うん、すごいことになってます……。
一つ一つが小さくても、こんなにいっぱい入ってたら重いよね。
「なんだか、買い物でたくさん買った後みたいだよね……」
「そうだな……。というか、本当に多いんだが。去年より多くないか? これ」
「うん、多い」
「いやぁ、二人は人気者だねぇ」
「そういう朝霧もちらほらもらってるが……」
「あたしはほら、友達同士的な? 友チョコ友チョコ!」
「それでも、普通に二桁貰ってるが……」
「いや、二人なんて二桁どころか、下手したら三桁に届く勢いだよね? だって、二年生のフロアを歩いてるだけでこれだよ? 特に柊ちゃんなんて、去年同様上級生の人だけじゃなくて、下級生の人も渡しに来るんじゃないかな?」
「……これ以上貰っても、食べきれるか不安なんだが……」
「僕も……」
もちろん、チョコを貰えるのは嬉しいんだけど、その……限度があると言いますか……。
麗奈ちゃんの言うように、僕と柊ちゃんのチョコの数、本当に三桁に届きそうなんだよね……。
そうなると、お家で食べることになるわけだけど……しばらく、甘いものになっちゃうなぁ……おやつ。
「まあ、貰ったからには食べるが」
「うん、そうだね。折角貰ったんだもん。無駄にしたくないよね」
「あぁ。……ともあれ、一度このチョコは教室に置いてくるか……」
「うん」
「だね」
柊ちゃんの提案で、僕たちは一度教室に戻って大量のチョコレートを置くことにしました。
さすがにこれを持って歩き回るのは無理があるからね……。
「とりあえず、外に行くか?」
「ん~、そうだね。たくさんの告白現場に遭遇するかも!」
「朝霧、お前……」
「乙女たるもの、やっぱり恋愛的な物はたくさん見ておきたいのでね!」
「そ、そうなんだ」
「というわけで、外へGO!」
僕たちは麗奈ちゃんが引っ張っていくような形で、校舎の外へ。
「地味に飾りつけもしっかりしてるよな……」
「ハートの風船とかいっぱいあるよね」
バレンタインパーティー当日は、学園の中も外もかなり飾り付けがされています。
ピンク色と赤色のハートの風船とか、チョコレートっぽいデザインの飾りがあったりとか、一目でバレンタイン! ってわかるような感じになってます。
去年もそうだったしね。
「それどころか、校舎にすら飾り付けがあるけどな。……本気出し過ぎじゃないか?」
「昼休みから先の時間で有志を募って頑張った結果だけどさ、参加人数多いよね、準備」
「学園祭みたいなお祭りなんかがそうだけど、こういうのって準備をしてる時が一番楽しいからじゃないかな」
「すごくわかるな……。ああいうのって、なぜか準備中の時が一番楽しいんだよな。わいわいやれるからか?」
「なんじゃない? ……あ、また告白してる人発見! おー、なんかすっごい初々しい雰囲気が……! ラブコメ作品もいいけど、やっぱりリアルの恋愛も見ててこう、ドキドキするよね!」
「まあ、成功してほしいと思うからな。……お、成功したっぽいぞ」
「今日だけでたくさんカップルさんができそうだよね」
「姫月学園のバレンタインって、高確率で成立するって話だからねぇ」
「あ、そうなんだ」
初めて知った。
でも、ああやって告白が成功しているところを見ると、こっちまで嬉しくなるよね。
僕は恋愛をしたことがないからよくわからないけど、やっぱりすごく嬉しいんだろうなぁ……。
「そう言えば柊ちゃん」
「ん、なんだ?」
「皐月お姉ちゃんに告白しないの?」
「ぶふっ!?」
皐月お姉ちゃんのことを言うと、柊ちゃんが噴き出しました。
「椎菜ちゃんがすごい切り込んだ!?」
「けほっ、こほっ……い、いきなり何を言い出すんだ!?」
「だって、バレンタインだし……ほら、柊ちゃんと皐月お姉ちゃん、すごく仲がいいし、柊ちゃんなんとなくだけど皐月お姉ちゃんのこと好きそうに見えるから?」
二人が一緒にいる所を見ると、すごく仲がいいなーって思ったり、あと柊ちゃんってやっぱり皐月お姉ちゃんのことが好きなんじゃないのかな? って思ったり……。
あと、皐月お姉ちゃんが柊ちゃんのこと好きそうに見えるのもあるかも。
「それは……! ……いやまぁ、たしかに、理想的な女性ではあるが……だが、俺は高校生だぞ? 皐月さんは二十五歳で、しかも現役モデル。さすがに釣り合わないだろうし、俺のことをそう言う目で見てない――っ!?」
「柊ちゃん、どうしたの?」
「あ、いや、なんか、謎の寒気が……」
「え、風邪?」
「いや、特に体調が悪いとかはないんだが……」
そう言いながら、柊ちゃんが両腕をさする。
最近、寒気がするって言うことが増えたけど……何かあるのかな?
「まあ、気のせいか」
「ほんとにぃ? 何か共通点とかあるんじゃないの? 最近寒気がする! って言ってる場面多いし」
「共通点って言ってもな…………あるとしたら……異性、女子とくっつくような状況とか、さっきみたいに否定するような場面だが……共通点らしいものはないぞ?」
「それ、皐月さんのシックスセンス的なあれこれで、柊ちゃんにプレッシャーかけてるんじゃ?」
「あの人は俺たちみたいにTS病になってるわけでも、愛菜さんみたいに人外スペックをしてるわけでもないんだが……」
「それもそっか。……不思議だねぇ」
「本当にな」
「でも、体調が悪くなったらすぐ言うんだよ? こういうのは、早めに対処するのがいいんだからね?」
「あぁ。わかってるよ」
そんなお話もそこそこに、学園内を歩き回る。
やっぱりチョコを渡してる人が結構いる。
友達感覚で男子の人に渡す人もいれば、顔を赤くしながら渡す人、他にも直接は恥ずかしいからか、下駄箱に入れて渡すとか、色々な方法がありました。
なんというか、見てるだけで楽しい。
なんて、道中告白現場を見かけたり、通りがかったところで告白が成功している場面に遭遇した時は祝福したり、他にも拍手したり、なんてことをしている時、それは起こりました。
「す、好きです! 付き合ってくださいっ……!」
「……え?」
柊ちゃんが告白されました。
そりゃまあ、モッテモテな奴だからね、告白くらいされますよ。
あと、椎菜と柊ちゃんのチョコですが、まだ増えます。こいつら、学園でも有名人だからね。いい意味で。




