#204 バレンタイン、予想通りなクラス
翌日。
「「「いってきます!」」」
「いってらっしゃい。気を付けてね~」
バレンタイン当日の朝、僕とみまちゃんみおちゃんの三人は、手提げ袋に入った大量のお菓子を持って登校。
ただ、みまちゃんとみおちゃんの二人に関しては、袋の持ち手部分を片方ずつ二人で持ってる感じになっているのが微笑ましい。
「二人とも、前から人が来たり、車が来たらちゃんと縦一列になるんだよ?」
「「はーい!」」
一応、この辺りの歩道が広いとはいえ、さすがに危ない場面もあるにはあるので、こういう注意は忘れない。
法律的な意味での保護者はお父さんとお母さんだけど、実質的なお母さんは僕だからね。
こういうところはちゃんと注意しないといけないのです。
でも、二人はすごく聞き分けがいいのは助かってます。
一回で学んでくれるのがすごくありがたい……。
三人で学校まで向かって歩いてると、チョコレートが入ってると思しき袋などを持っている人をちらほらと見かけるように。
小学生だったり、中学生だったり、高校生だったり。
でも、まあ、うん。
大きな袋を持って歩ているのは僕たちくらいっぽいけどね……。
やっぱり普通じゃないのかな?
なんてことを考えながらまずは小学校に到着して、そこでみまちゃんとみおちゃんの二人と別れて、僕はそのまま学園へ。
その道中で、
「おはよう、椎菜」
柊ちゃんと合流しました。
「今日も女の子なんだね」
「あぁ。ま、チョコが無駄にならなくてよかったよ」
「もしも男のままだったらどうしてたの?」
「……家族宛と、まあ、朝霧行きだな」
「クラスのみんなには上げなかったんだ?」
「男のままバレンタインチョコを持って来るとか、なんかあれだろ」
「そうかな?」
「椎菜が男だった場合は問題なかったと思うが、生憎と俺はちゃんと男の見た目だったからな」
「柊ちゃん、遠回しに男に見えなかったって言ってるよね?」
「気のせいだ」
「…………(ジトー)」
「……すまん」
「わかればいいのです」
気のせいと返す柊ちゃんに、ジト目を向けると、柊ちゃんは短く謝罪しました。
うん、謝るのは大事なことです。
「しかしまぁ、バレンタイン前日に髪を切ったとなると、なんか、失恋したみたいに見えるな」
「そう言えば、なぜか失恋=髪を切る、みたいな設定って、今もあるのかな?」
「最近はあんまり見かけないが……まあ、ないわけじゃないんじゃないか? 恋愛物の鉄板ネタみたいなところはあるしな」
「なるほど。……でも僕、失恋してないけどね」
「まあ、椎菜が失恋する事態、天変地異レベルのことだけどな」
「そこまでの物じゃないと思うよ!?」
「いや、椎菜の告白を断るやつとか、ほぼいない気がするからなぁ……」
「いるから! 絶対にいるから!」
「……まあ、うん。探せばいると思う。探せば」
「望み薄みたいに言ってないかな……?」
「言ってるな」
「えぇぇ……」
最近、柊君が酷い気がします。
◇
と、そんな風に二人で雑談をしながら歩いている間に、学園に到着。
「なんだか、すごく甘い空気だね」
「物理的にも雰囲気的にもな。というか……視線がすごいんだが……」
「あ、あはは、そうだね……」
学園に到着すると、すごく甘い空気が漂っていました。
バレンタインパーティーだからね。
学園側で用意したチョコレートがたくさんあるからこその、物理的な甘い空気と、柊ちゃんが言うように、雰囲気的な甘さもあって、なんというかすごくバレンタインだなー、って感じます。
それと、柊ちゃんが言った通り、僕と柊ちゃんへの視線がすごいことになってます。
大きな袋を持ってるからかな……?
「とりあえず……クラスに着いたら大騒ぎになりそうだな」
「そうかな?」
「あぁ。……なんせ、俺も女で来たからな……」
「あー……うん、そう、かも?」
「もっとも、一番大騒ぎになるのは、間違いなく椎菜だと思うけどな。髪切ったから」
「髪の毛を切っただけで!?」
「案外そんなもんだよ」
ないと思うけど……。
なんてことを考えつつ、僕と柊ちゃんはクラスに向かって……
『『『きゃーーーーーーーー―!』』』
『『『ごふあぁぁぁぁっ!』』』
なぜか、黄色い悲鳴を上げる女の子と、なぜか吐血する男子のみんなに出迎えらることとなりました。
「まあ、こうなるわな……」
「え、だ、大丈夫!? あと、なんで悲鳴!?」
「待って待って! え、椎菜ちゃん、髪切ったの!? というか、切っちゃったの!?」
「すっごい長いのに綺麗だったあの髪、切っちゃったんだ!?」
「でも可愛い! ミディアムボブすごく似合ってるよ! 可愛いね!」
「むしろ、似合いすぎ! いや、そもそも、椎菜ちゃんに似合わない髪型はないのでは!?」
「ちっちゃいからこそ似合う髪型! もちろん、普段のスーパーロングもすごくいいけど、こっちもすごくいいね! 可愛くてよきよき!」
「にゃぁ~~~!?」
気が付けば、女の子にもみくちゃにされました。
可愛いや似合ってるって言われてるから、変じゃないけど、なんでもみくちゃに!?
すごく気恥しいよ!?
「畜生ッ! な、なぜだっ! なぜお前は今日に限って女になっちまってるんだよォォォ!!」
「毎年恒例の地獄のリアル鬼ごっこができねぇじゃねぇか!」
「男に! 男になれ! 男に戻るんだ! 高宮ァ!」
「無茶言うな!?」
「っていうか、なんでお前マジでそんなに美少女なんだよぉ……!」
「ぐ、ぐぬぅ、節分の時も美少女になりやがって……テメェ、合法的にボコっても許される日に限って女になるとか、なんか特殊な加護でも受けてんじゃねぇのか!?」
「ないが!? というか、バレンタインは合法的にボコれる日じゃないからな!?」
柊ちゃんの方は、男子のみんなに詰め寄られてました。
なんというか、うん、大変だね、柊ちゃんも……。
「おっはよーう! って、椎菜ちゃんと柊ちゃんの二人がなんかもみくちゃに!? あ、しかも椎菜ちゃん髪切ってる! 可愛い!!」
「あ、麗奈ちゃんおはよう!」
「うん、おはよ! にしても、かなりバッサリ行ったね! イメチェン?」
「ほら、先週の誕生日会の時に、お母さんから美容院のチケットをもらったから、それで昨日行ってきたの!」
「なるなる! うんうん、スーパーロングな椎菜ちゃんもいいけど、短めな椎菜ちゃんも可愛いね!」
「ミディアムボブって短いの部類に入るの?」
「ショート以上、セミロング未満だから……ギリ短いじゃない?」
「意外と定義って難しいのよね」
「わかる」
「長さの定義って、個人によっても変わってくるからねぇ。ミディアムは長い! っていう人もいれば、短い! っていう人もいるし」
「うんうん。でも、椎菜ちゃんは何やっても似合うからずるい」
『『『わかる~~~!』』』
「そ、そうかな?」
「でも、ベリーショートとかは似合わなそう」
「うん。可愛い系にあの髪型は似合わない」
「というか、ショートよりも短いのが似合わない感じ?」
『『『それだ』』』
「え、えーっと?」
よくわからないことを言い合ってる女の子に、首をかしげる。
何やっても似合うって言っていた直後に、似合わない髪型が出て来て、ちょっと困惑。
僕に似合わない髪型って……?
「あ、ごめんごめん。ちなみに椎菜ちゃん的に、この髪型はあり? なし?」
僕の様子に気づいた麗奈ちゃんが、そう言いながらスマホの画面を僕に向けてきました。
「これは?」
「ベリーショートっていう髪型」
「うーん、すごく短いけど……僕、あんまり短すぎる髪型って好きじゃなくて……」
「……そう言えば、男の時も基本長めだったな、椎菜の髪」
「あ、柊ちゃん。もういいの?」
「なんか勝手に自爆したから大丈夫だ」
そう言う柊ちゃんの後ろでは、なぜか床に倒れてる男子のみんなが。
いったい何があったんだろう……。
「あー、でも、柊ちゃんの言う通り、元の椎菜ちゃん……もとい、椎菜君って男子にしてはそこそこ長めだったっけ。具体的には、ミディアムボブよりちょっと短いくらいの」
「THE・男の娘、みたいな髪だったよね」
「あれはあれで大変すばらしかったっけ……ネタとして」
「それ、邪神さんに殺されない? 大丈夫?」
「…………多分?」
「骨は拾っておくね」
「ちょっ、個人的! 個人的に楽しんでただけだからね!? だから、トワッターにDM送ろうとするその手を止めて!?」
「何やってるんだろう瑠璃ちゃん」
「……二次創作に厳しい人がいるってことだよ」
「???」
◇
それからクラス内では和気藹々とした空気(ただし、男子のみんなは妙に緊張していたけど……)で思い思いに雑談をしていると、先生が教室に入って来て、HRに。
「おーし、お前らー。一人も欠けることなく来てるなー。まあ、バレンタインっていう学生にとって、最も恋愛的方面が進展すると言っても過言ではない日に、欠席する奴はいないか。……いや、まあ、そもそも今日、このHRが終わったら普通に帰ってもいいことになってるから、出席日数を稼ぐ、という意味ではこれ以上ない日でもあるんだがな」
「先生がそれ言っていいんですか?!」
「高宮。先生だって人間なんだ。あと、クソ真面目ってわけでもないぞ、私は」
『『『存じてます』』』
「お前らの信頼が厚くて、先生涙が出そうだ。まあ、それはいいとして……お前らも二度目だから知ってるだろうが、改めて説明するぞ。うちのバレンタインは知っての通り、パーティー方式だ。学内のいたるところにチョコレートが置いてあるんで、適当に食ってくれ。学食に行けば、今日限定のメニューも用意されてるんで、興味がある奴はそっちに行きな。あと、購買も限定商品があるから」
そう言えば、学食と購買は色々あったっけ。
毎年女の子がよく集まるとか。
「で、興味がない奴はこの後すぐに帰っていいからな。まあ、うちの学園性は例外なく祭り好きだからな。十中八九学内を歩き回るだろう」
先生のその言葉を聞いて、クラスのみんなは笑う。
うん、バレンタインパーティー、すごく面白いことになるもんね。
「あと、バレンタインパーティーでは実質的な公開告白が行われるが、変に冷やかすなよ。あと、去年同様、間違いなく発生するであろう鬼ごっこのことを注意しようと思っていたんだが……まあ、なんか今年は件の発端の奴が女になってるんで、問題はないだろう。よかったな、高宮」
「えぇ、まぁ」
「とはいえ……別の鬼ごっこが発生しそうではあるけどな」
『『『???』』』
柊君が柊ちゃんだから、たしかに毎年恒例の鬼ごっこはないと思うけど、別の鬼ごっこ……?
先生のニヤリとした笑みと共に言葉を受けて、クラスのみんなが首を傾げた。
「で、今日は18時までに全員下校するように。んじゃ、以上だ。一日楽しめよ」
そう言って、先生が教室を出ようとしたところで、僕は先生を呼び止めました。
「あ、先生、ちょっと待ってください」
「ん、なんだ、桜木?」
「えーっと……あ、あった。先生、これどうぞ! バレンタインのチョコレートです!」
「私に? いいのか?」
「はい! 先生にはお世話になってるので!」
「ははっ! そうか、なら、これは大事にいただくとしよう」
「いえいえ! 柊ちゃんは?」
「ん、あぁ。……あー、先生、実は昨日、椎菜と作りまして。よかったらこれどうぞ」
「なんだ、高宮も作ったのか?」
「まあ、椎菜にごり押しされたので……まあ、うん、椎菜と一緒に作ったので、味は大丈夫だと思います」
「いや、そこは気にしなくていい。というか、自分の生徒が作ってくれたものがまずいわけないさ。まあ、仮に味が悪かったとしても、それはそれでいい思い出ってもんだよ。まあ、桜木が関わってる以上、確実に美味いだろうしな。ま、ありがとうな。ありがたくいただくよ」
ニッ、と笑って先生は教室から去っていきました。
『『『い、イケメン……!』』』
先生はすごくかっこよかったです。
「ねね、椎菜ちゃん、先生に作って来たっていうことはもしかして……」
「あ、うん。もちろん持ってきたよ! はい、これは麗奈ちゃんに!」
「やったーー! 椎菜ちゃんからのチョコーーー!」
「あー、朝霧、俺からもだ」
「マジで!? 柊ちゃんからも!? ありがとう! あ、じゃあ、あたしも二人に! はいどうぞ!」
「わ、ありがとう、麗奈ちゃん」
「ありがとな」
僕と柊ちゃんでチョコを渡すと、麗奈ちゃんは大喜びでした。
そのまま自分のカバンに手を入れると、その中から可愛らしいラッピングがされた箱を僕と柊ちゃんに差し出してきました。
僕たちはそれを受け取ってお礼を言うと、麗奈ちゃんも笑いました。
やっぱりもらえると嬉しいよね。
「あ、麗奈ちーいいなー! ねね、椎菜ちゃん、柊ちゃん、私たちにもあったりする?」
「こらこら、美咲。催促しないの」
「あ、ううん、みんなの分もあるから!」
『『『へ?』』』
「んっと、みんなにチョコ配るね! あ、柊ちゃんも一緒にね?」
「あぁ」
「というわけで、はいこれ、チョコです!」
「俺からもな」
「え、本当にくれた!?」
「まさか、クラス全員分作ったの?」
「うん。折角なので!」
(((折角だからで全員分作るんだ……)))
早速とばかりに、僕と柊ちゃんは二人でクラスのみんなにチョコを配りました。
「はいどうぞ!」
「マジかよ! やべぇ、めっちゃうれしい……!」
「チョコです!」
「ロリ巨乳美少女からのチョコとか、付加価値高すぎるわっ……!」
「どうぞ!」
「神よっ、感謝します……!」
「はい! チョコです!」
「これ、桜木じゃなかったら勘違いしそう……」
「どうぞ!」
「ありがとう、椎菜ちゃん!」
「あー、ほら、チョコだ。まあ、チョコチップクッキーだが」
「くっ、普通に美少女なせいで、普通に嬉しいのがクッソ腹立つ……! ありがとうなぁ!」
「ほら、チョコ」
「柊ちゃんからのチョコとかご褒美すぎ!」
「チョコ」
「なんでお前地味に作るの上手いんだ……」
「椎菜から教わりながらだったしな。はいチョコ」
「やったーーーー! やばい! 柊ちゃんみたいなイケメン女子からもらえるの嬉しすぎ!」
なんて、僕と柊ちゃんでチョコを配りました。
みんな喜んでくれてよかったです。
ただ、なぜか柊ちゃんがチョコを渡すとき、男子のみんなが複雑そうにしてたけど……。
あと、もともと用意してくれてたみたいで、クラスの女の子みんなからチョコをもらいました。
すごい量になっちゃったなぁ……なんて。
うん、これでまだ今日が始まったばかりなのが……これ以上増えることはない、よね?
ロリって長い髪の方が似合うよね! マジで絵が上手い人に椎菜を描いてほしい、とか思う今日この頃。
それはそれとして、前回のコメントで、『切った椎菜の髪の毛って、なんかヤバい効果あるんじゃないの?』という物がそこそこ来たので回答。
ストレートに言えば、まあ、効果あります。元々椎菜自身には、加護+神子と言う物が備わってるわけですが、ぶっちゃけ神薙みたまとして有名になればなるほど、椎菜は神様に近づいてるわけです。
んで、今なんてもう、実質200万人以上の人から信仰を得てるわけじゃん? となると、今の椎菜は、若干神様に片足突っ込んだ状態なわけです。
そんな椎菜の髪の毛ですよ? どう考えても何もないわけがなく……。
現状、椎菜が持ってる神としての権能っていうか、司ってる事物って、商売繫盛とか幸運、あと子供関係、家事関係の系四つ。VTuberとしてのハイスペックっぷりを見せつければ見せつけるほど、事物が増えます。
なので、あの髪の毛を捨てずに残しておくと、店が繁盛し、幸運に恵まれます。
まあ、髪の毛を切ると言う関係で、長時間触ってる関係上、しばらくの間は椎菜を担当した人は幸運になるでしょうね。
ちなみに、神職者が見たらガチでビビるし、大金を積んででも手に入れようとします。それくらいやべぇもんになってる。そりゃ、ガチ神様じゃないにしろ、普通に神様に近づきつつある存在の髪の毛ですからね。神職者は何が何でも手に入れたくなります。仮に手に入れた場合、ちゃんと奉納すると思います。
それと、椎菜が貰った誕生日プレゼント、特にアクセサリー系統は今後椎菜が後生大事にするので、いつしか神具とかそう言うのに変化します。数十年くらいかかるとは思うけど。
まあ、どこぞの主神から貰った指輪自体、某運命な作品的な意味で、宝具なんですけどね。
ちょっと反則……。




