#175 配信前、椎菜の悩みごと
「うーん、今日の個人配信、何やろう……?」
ボイス収録を終えた翌日、学園から帰って来た僕は、自分のお部屋でそんなことを考えていました。
あ、みまちゃんとみおちゃんは、リビングでアニメを見てます。
最近アニメを見るようになったんだよね。
「いつも雑談配信だし、やってることと言えば、ましゅまろを返すこと……反応や視聴者数もいっぱい来てくれてるけど、さすがにいつも同じなのは問題だと思うし……うーん」
実際のところ、僕がやることはいつも同じ。
いくら視聴者さんがいっぱい来てくれて、コメントもいっぱいくれるとしても、さすがに同じなのは問題な気がするんだよね。
らいばーほーむのみなさんだって、なんだかんだで比率の多いジャンルもあるけど、それでもいろんなことをしてるわけで……。
コラボではいろんなことをしてはいるけど、個人配信となると基本的に雑談だけ……うーん、そろそろ何かやった方がいいかな?
「うーん、うーん……」
「椎菜ちゃんが何やら悩んでる気配がしたぁ!」
「あ、お姉ちゃん」
僕がうんうんと唸っていると、突然叫びながらお姉ちゃんが入って来ました。
とはいえ、特に驚くこともなく、入って来たお姉ちゃんに反応をする。
おかしなことを言って入ってくるのはいつものことなので……。
「何か悩みごとでもあったのかなーっと思って、お姉ちゃんがやってきました! んで、何か悩み?」
「あ、うん。えーっと、ほら、僕ってコラボはともかく、個人配信ではいつも雑談でしょ? だから、何かやったほうがいいのかなぁって。ほら、視聴者さんたちも一緒になって騒げるようなものとか……」
「あ、なるほどねぇ。つまり、マンネリ化しそうだなーってことだね」
「うん、そういうことです」
「ん~、まあ、椎菜ちゃんは雑談をしているだけで癒しをもたらし、どんな病気を治せるような配信になってるけど」
「さすがになってないよ!?」
「たしかに、何かをした方がいい、っていうのはあるかなー。となると、手っ取り早くできるのは、お絵描き配信かゲーム配信だね」
「なるほど……」
「お絵描きなら、私のペンタブとか貸せるし、ゲームなら事務所の方から貸し出されたゲーム機を使えばオンライン対戦とかもできるしね」
「あ、そっか。そういうのもできるもんね。でも、僕どっちもそんなに得意じゃないけど、大丈夫かな……?」
あんまりイラストは自信がないし、ゲームもそこまで上手じゃないから心配。
でも、どうなんだろう?
「大丈夫大丈夫。椎菜ちゃんなら何をやっても許されるし面白いはず! それに、むしろ初々しい反応をすれば普通にいいと思うしね」
「……そうかなぁ」
「そうそう」
「でも、なるほど……ゲームはいいかも」
お絵描きはともかくとしても、ゲームはちょっといいかも、なんて思う。
今までも、何度かゲーム自体は配信でやってはいるし。
「うんうん、ゲームはなんだかんだでいろんな人がやってるからいいと思うよ。ちなみに、こういうのがやりたい! ってある?」
「うーん……そう言えば僕、オンラインゲームってやったことないんだよね。楽しいのかな?」
「ネトゲ? ん~、まあ、楽しいと言えば楽しいよ。やってみる? オンラインだからいろんな人と遊べるし、多分視聴者にもいると思うし」
「なるほど……ちょっとやってみようかな? お姉ちゃん、何かおすすめとかってあったりする?」
「おすすめかぁ。ん~、椎菜ちゃんってキャラクリ……キャラクタークリエイトって好きなタイプだっけ?」
「んーっと、たしか主人公さんを自分で作る、だっけ?」
「そうそう。その人の個性が出るし、そこをガチガチにやりに行く人もいて結構楽しいよ。まあ、ネトゲだからいろんな人種の人がいるけど……案外いい人も多いし、やってみる?」
「うん、やってみる! それってなんていうゲーム?」
「『ステラブルー・オンライン』っていうゲームだよ。一応容量がバカみたいではあるけど、椎菜ちゃんの使ってるPCって普通にゲーミングPCだから大丈夫大丈夫。あと、椎菜ちゃんってそんなに使ってないでしょ?」
「うん。一番大きくても、デスクラかな? あと、神薙みたまモデルとかそういうのばかりだよ」
「ならばよし! 容量的には100ギガ以上あるけど」
「重いね?!」
予想外の要領に、思わず声を上げる。
さすがに100ギガは予想してなかったなぁ……。
「重いんだよねぇ。あ、ちなみになんだけど、そのゲームに課金要素があるけど、主にキャラクタークリエイト関係の物ばかりだからね。ちなみに、今ちょうど和風関係の衣装とかアクセサリーがあるから、頑張ればみたまちゃんを再現できるよ!」
「ほんと? でも、課金なんだよね?」
「うん。まあでも、椎菜ちゃんって普通にお金ある方だから、大丈夫じゃない? 今、10億円以上あるよ? ぶっちゃけ、十一回ガチャを引くのに、ゲーム内通過が2200で11回。まあ、2000だけ買うって言うのは項目にないから、1000ずつ買うか、もしくは3000買うかになるけど、まあそれくらいで行けるから」
「あ、そうなの? それなら……たまには奮発しちゃおうかな!」
僕自身あんまりお金は使わない方なんだけど、折角初めて遊ぶゲームだし、キャラクターも満足いくくらいに作ってみたいしね! うん、たまには!
「お、いいねいいね! たまにはそういうのをしないとね! それで、いくらやる?」
「配信で言うね!」
「おけぃ! んじゃ、今のうちにダウンロードしておこっか。あ、アカウントも作らないとだけど、大丈夫?」
「うん、大丈夫! でも、教えてくれると嬉しいかな?」
「もちろんだとも! 手取り足取り教えるぜぇ!」
お姉ちゃんに教えてもらいながら、アカウントを作ったりゲームをパソコンに落として、ファイルを解凍。
そこそこ時間はかかったけどなんとか無事に終わってゲームを起動すると、またダウンロードへ。
なかなかすごい容量……!
「椎菜、愛菜、もうそろそろご飯になるから、降りて来てね~」
「あ、うん! 今行くね!」
「ちょうどよかったね。これ、かなり長いし、ご飯食べてお風呂入ってれば終わると思うし」
「うん! じゃあ、行こ!」
いったんパソコンはそのままにして、僕たちはリビングへ。
「「おかーさん!」」
「わわっ! っとと、二人ともアニメはもういいの?」
「んっ! おもしろかった!」
「……そ、そこそこ、よかった、です」
「そっかそっか。それならよかった」
みまちゃんは素直に面白かったっていうけど、みおちゃんはちょっぴりそっぽを向きながらそこそこなんて言ってはいるけど、面白かったんだろうね。尻尾、すごく揺れてるもん。
二人とも、お家の中では普通に耳と尻尾は出しっぱなしだしね。
うん、わかりやすい。
「あ、そーいえば、おかーさん、これ!」
「これ? えーっと……授業参観のお知らせ?」
みまちゃんがポケットから綺麗に折りたたまれた紙を取り出して、僕に手渡してきました。
いったい何だろうと思って紙を開くと、そこには授業参観のお知らせと書かれていました。
どうやら授業参観があるみたい。
「んっ! んっとね、おかーさんたちがくる日なんだって!」
「……おかーさん、くる、です?」
すごく期待したような眼を僕に向けてくる二人の表情を見つつ、視線を紙に落として、日付を確認。
「えーっと参観日は……あ、明後日なんだね。となると土曜日だから……うん、特に予定もないし、それに二人が学校でどんな生活をしてるのか見てみたいし、行こうかな」
どうやら土曜日みたいだったし、その日は特に予定も入っていないので、行くと二人に言うと、二人はすごく嬉しそうな反応を見せました。
「「わーいっ!」」
うんうん、可愛い。
「あら、授業参観? なら、私も行こうかしら」
「おばーちゃんも来てくれるです?」
「……ほんと?」
「もちろん。私は二人のおばーちゃんだから。あなたはどうする?」
「すまない、その日は少し用事があってね……くっ、その用事がなければ、可愛い可愛い孫二人の雄姿を見に行ったというのに……!」
「くっ、私もその日は打ち合わせとか仕事が……! おのれぇっ!」
お母さんは来れるみたいだけど、お父さんとお姉ちゃんの二人は来れないみたい。
「そっかー……」
「……ざんねん、です」
「「この世全てを呪いそう……!」」
「あらあら、授業参観に行けないくらいで世界を呪っちゃだめよ。するのなら、行けなくなった原因を呪うのよ~」
「お母さん、そこじゃないと思うよ!?」
さすがに呪いはダメじゃないかなぁ!?
「冗談よ~。でも、授業参観なんていつ以来かしら?」
「僕が小学生の時じゃないかな?」
「たしかにそれくらいね。……まあ、まさか久しぶりにいく授業参観が、孫の授業参観になるとは思わなかったけどね~」
「「「それはそう(だと思うよ)」」」
お母さんの言葉に、僕たち三人は同じことを言いました。
だってお母さん、まだ40歳になってないし、38歳だもんね。
それで孫がいるのって、やっぱりおかしいような……。
なんて、そんなことを思いつつも僕たちは家族揃って夜ご飯を食べました。
あと、お姉ちゃんとお父さんの二人は授業参観に行けないことにすごく悔しそうでした。
……ちなみに、今日プリントを渡してきたのは、単純に忘れてたからみたいです。
そう言う子供らしいところがあったけど、できれば大事なお手紙はすぐに出すようにと言いました。
◇
夜ご飯を食べて、みまちゃんとみおちゃんの二人と一緒にお風呂に入ってから自分のお部屋へ。
みまちゃんとみおちゃんの二人は、お母さんが作ったケーキを食べながらアニメを見ているところです。
二人は言われずともしっかり歯磨きはするし、それにお母さんもいるから大丈夫だよね。
「えーっと、あ、ちょうどダウンロードが全部終わってるね。キャラクターを作るのは配信が始まってからで、大丈夫かな?」
今始めちゃってもいいのかもしれないけど、初めてやるゲームだし、やっぱりいろんな人とわいわいやりたいよね。
「そう言えば、オンラインゲームは初めてだけど、VRゲームが出たら、オンラインゲームがいっぱい出るらしいし……ある意味でちょうどいいかも」
僕自身、ゲームはあんまりやらないし、お家でやることと言えばほとんどが家事とか配信を見るくらいだったしね。
うん、お勉強っていうわけじゃないけど、これを機に慣れてみよう。
「それにしても、すごく綺麗な映像だなぁ」
こんなにクオリティーがすごいなら、人がいっぱいいるのも納得。
それに、らいばーほーむ内にもやってる人はいるらしいし!
なんて考えていると、ふとスマホが鳴りました。
『やぁ、椎菜ちゃん! 言い忘れてたけど、そのゲーム恋雪ちゃんが廃人レベルでやり込んでるから、椎菜ちゃんが今日プレイするよー! って言ってあるんで、色々と頼るといいよ!』
誰からかなぁ、って思ったらお姉ちゃんからでした。
内容は恋雪お姉ちゃんがすごくやり込んでるから頼ってね! というような内容。
たしかに、恋雪お姉ちゃんはゲーム大好きだし、オンラインゲームはいっぱいやってそう。
そう思っていたら、恋雪お姉ちゃんからメッセージが飛んできました。
『こ、こんにちは、椎菜さん……! ステラブルー・オンラインをやる、んですよね! わたしが色々と教えます……!』
『ありがとう、恋雪お姉ちゃん! 何も知らない初心者なので、すごく助かるよ!』
『い、いえいえ。あ、えと、キャラクターを作る時、なんです、けど、あのゲーム、シップって言って、その中で交流は完結するようになって、ます。い、一応、わたしは、全部のシップに、ある、ので、どこでも大丈夫、です、けど。一番いい、のは、シップ5、なので、そっちで作って、もらえればいい、と思い、ます』
『わかったよ! じゃあ、5で作るね! あ、恋雪お姉ちゃんのお名前ってどういうの?』
『✟女帝✟、です』
『な、なるほど……じゃあ、えと、あとでゲーム内で会おうね!』
『は、はいぃ。あ、ふ、噴水、ところにいます、ので』
『了解です! じゃあ、またあとで!』
『た、楽しみに、してます、ね……! で、では……!』
ここでメッセージのやり取りは終了。
なんというか、経験者の人がいるって、すごくありがたいなぁ……。
身近な人だから余計だよぉ。
「さてと。そろそろ準備しない、だね」
初めてのオンラインゲーム、楽しみだけど、上手くできるかなぁ……。
でも、恋雪お姉ちゃんがいるし、大丈夫、だよね?
椎菜、ネトゲデビュー……!
ぶっちゃけ、いつもみたいに雑談回にでもするかー、とは思ったんですけど、そればかりじゃ面白くないし、飽きられると思うんで、たまに趣向を変えてネトゲ回にします! まあ、後々やることになるからね。その前準備的な!
ゲームのイメージは、PSO2を思い浮かべてください。基本あれ。まあ、私がやってたネトゲってあれくらいだったんで……今は容量の関係で消しちゃってるけど、またやりたい。
ちなみに、うさぎのアカウントはバケモンです。廃課金且つ廃人仕様。




