#160 邪神によるサーブ、いつか人死にが出ると思います
自分でも何を書いたのかわからないけど、まあ、普通だよね!
「じゃあ、早速チーム分けしよう!」
「それは構わないが、人数は何人くらいにするんだい?」
「ん~、この場にいる人数は十人。半々でもいいとは思うけど、ビーチバレーだったらそんなにいらないよねぇ」
「大体三人くらいが妥当だと思うぞ」
「ふむ……あたし思うんですけど、ここは高宮君一人でもいいのでは?」
「朝霧!?」
人数をどうするか、という話し合いだったはずなのに、なぜか俺一人のチームはありなのでは? とか言い始め、俺は思わずぐりんっ! と朝霧の方に顔を向けた。
何をどうしたらそういう発想になるんだ!?
「ほほう? 麗奈ちゃん、その心は?」
「いやほら、高宮君って愛菜さんのお弟子さんなんですよね? しかも、身体能力はかなり高いですし。高宮君が一人はいるだけで、かなりのハンデを背負うことにいなりそうじゃないですか? それなら、高宮君は一人の方がいいのかなー、なんて」
「なるほど、百里ある」
「愛菜さん!?」
「え、なに? 高宮君って愛菜先輩の弟子なの?」
「そらすごいわぁ……」
「そういえば、かなりいい体をしているよね、柊君。見事に引き締まってるし、贅肉のぜの字すらないし」
「柊君、昔からお姉ちゃんに鍛えられてたんだっけ?」
「……まあな」
今思い返してみても、愛菜さんの修行は異常なくらいの難易度だろう。
『大丈夫大丈夫! 柊君ならできる☆』
とか言ってくるからな、この人。
なんだったら、何度か死にかけてるし……。
その都度、愛菜さんの蘇生を受けるけどな。
「ちなみに、高宮君ってなにができるの? あたしが知ってるのだと、体育祭の時にやってた縮地くらいだし」
(((縮地できる男子高校生……?)))
なぜだろうか、今の朝霧の発言から、この場にいる人たちが一体何を思ったのかが手に取るようにわかるんだが。
「……少なくとも、愛菜さんより劣化しはするが、それらの技術を持ってる感じだろうか……」
「ほむほむ、じゃあ、具体的にはどんな感じなの? 愛菜先輩の教える技術とか、すっごく気になるぞ」
「そう言われてもな……今できることと言ってもあれですよ? ちょっとした木を折ったり、ちょっとした岩を砕いたり、ちょっとした重さの物を背負って山を走破したり……それくらいですが」
『『『いやいやいやいや!?』』』
「高宮君が割と化け物だった件について」
「ちょっとした、って言ってるけど、絶対愛菜さんと比較してだと思うぞ、これ」
「そ、そやなぁ……むしろ、愛菜はどこまでしたん?」
「え? それはもちろん……椎菜ちゃんを最低限護れるくらいにですが? あ、一応対銃撃戦想定の技術も仕込んでます。銃の分解とか、逆に銃の扱い方とか」
「君は何よそ様の子供を魔改造してるんだい!?」
「あたし、ちょっとドン引きだぞ……」
「奇遇ですね、あたしもですよ、寧々さん」
「愛菜、やからなぁ……」
「お姉ちゃん……」
……まあ、こういう反応をされるだろうなぁ、とは思ってたが……ここまで露骨なのか……。
俺としても、あれ? 俺、ちょっと人間辞めてる? とか思ったことはあったが、それ以上に愛菜さんがぶっ壊れ性能しているせいで、まあ、大丈夫か、とか思ってたからなぁ……。
人間、異常な基準に慣れてしまうと、それがその人の普通になってしまう。
そして、それが周囲に露呈したとき、あれ? 俺って周囲から見たら相当やばいのでは? という事実を突きつけられることになる。
まさに今の俺がそれである。
しかも、俺があっちの姿になれることを知ってしまった愛菜さんから、さらなる修行が課せられることにもなっているわけで…………俺、幸せになれるのだろうか、これ。
「まあまあ、そんな軽いことは置いといて!」
(((どこが軽いんだろうか……)))
愛菜さん的には、よそ様の子供を魔改造するのは軽いことだったらしい。
俺の人権……。
「じゃ、早速チーム分け! ちなみに、面白そうなので、柊君は一人チームで」
「いじめですか!?」
「修行だよ☆」
「最悪だァ……!」
愛菜さんの死刑宣告に、俺は頭を抱えた膝から崩れ落ちた。
絶対この人が相手だろう……殺す気か? 絶対殺す気だろう!?
俺が何をしたというんだ……!
おのれ、朝霧……。
「……ハッ! 寧々さん、栞さん、ちょいちょい!」
「なんや?」
「なになに? どったの? 麗奈ちゃん」
「これって――ごにょごにょ……」
「「ほほぅ?」」
ん? なんか、朝霧たちが何かを話しているが……そして、なぜかお互いにニヤリとした笑みを浮かべて、尚且つグッとサムズアップをしているんだが……何をしようとしているんだ?
そして、なぜ俺に視線を向け、そして皐月さんに視線を向けているというんだ……!?
なんだか猛烈に嫌な予感がする……!
「いやぁ、高宮君がかわいそうだなぁ!」
「だね! どこかに、優しい優しい、背が高くて、ポニテで、美人で、そして大人の女性はいないかなぁ!」
「25歳で女性やともっとええなぁ!」
「なんだい、その具体的かつピンポイントな人物は!?」
どう考えてもそれ、俺と皐月さんを組ませようとしてませんかね!?
あと、皐月さん、そう言う時はちゃんとツッコミ入れるんですね! 安心しましたァ!(錯乱)
「――なるほどなぁ! たしかに、一人は可哀そうだもんねぇ! ここはさぁ! 誰かイケメンで筋肉バキバキ細マッチョで、人外に片足突っ込んでる人が、その城ケ崎で、皐月な人の肉か――んんっ! 盾になればいいと思うなぁ!」
「今肉壁って言い掛けませんでした!?」
あんた絶対超威力のアタック決めるつもりだろ!?
「というか、もう名前言ってるよね!? 完全に、私と柊君で組めって言ってるよね!?」
「いやいや、城ケ崎さん、誰もそこまで言ってないですよ!」
「うんうん、まあ、そう聴こえちゃったのなら、それで組むのが一番だと思うぞ!」
「おもろ――こほんっ! おもろそうやからなぁ!」
「二人ともお似合いだよ!」
「「おにあいー?」」
「椎菜ァ!?」
「幼い子供が母親の背を見て育ちかけてしまっているっ……!」
クソッ、これが子は親の背を見て育つという現象か……!
椎菜も変な所でいたずらっこな部分が顔を出すから、マジで洒落にならない!
「ほな、皐月は高宮さんと一緒のチームちゅうことで」
『『『異議なし!』』』
「二人だけなのかい!?」
「せめて三人だろう!?」
「えー、じゃあ……恋雪ちゃん、GO!」
「し、しし、死んじゃい、ますぅ~~~~!?」
「さすがにそれは柊君への負担が激増してしまう!」
「俺に二人分のカバーをしろと……!?」
少なくとも、戸隠さんは運動が得意そうに見えないどころか、そもそも運動できないだろうあの人!
全然イメージがないぞ!?
「完全に恋雪先輩が戦力としてカウントされてないぞ」
「よっぽどなんですね~」
「はい、じゃあ、椎菜ちゃんは……」
「おかーさんとやるー!」
「……やる、です」
「え、えーっと、僕はみまちゃんとみおちゃんの二人とやるね」
「――うん、絶対に勝たせないといけないチームだね☆」
忖度だろうか。
それから色々と話し合った結果のチーム分けは……
「邪神、寧々ちゃん、麗奈ちゃんのチーム玉石混交! 椎菜ちゃん、みまちゃん、みおちゃん、栞ちゃんのチームロリコンホイホイ! 柊君、皐月ちゃん、恋雪ちゃんのチーム肉壁は俺だ! チーム! ハイ以上の三チームになりまーす☆」
「「「「「異議あり!!!」」」」」
明らかにおかしいチーム名に、一部のチームが異議を唱えた。
「はい、なんでしょうか、寧々ちゃん、椎菜ちゃん、栞ちゃん、柊君、皐月ちゃん」
「あたしたちのチームが玉石混交なのは納得いかないぞ! せめて、騒音邪神スタッフチームじゃないと!」
「それでいいよ」
「やったぜ! じゃあ、異議を取り下げるぞ!」
「いやそれただ三人の特徴を混ぜただけじゃないかい!?」
それ以前に、朝霧はまだスタッフじゃないんだが……。
まさかとは思うが愛菜さん、既に社長に連絡しているのでは……?
「はい次、椎菜ちゃんと栞ちゃん」
「ロリコンホイホイはどうかと思います!」
「それやと、千鶴さんが来ることにならん?」
「千鶴ちゃんはデスマーチ中なので来ません! 安心してね!」
「「じゃあいっか」」
「いやよくないが!?」
「二人とも、なぜそこで引き下がる!?」
「んっと、身内だけなので、あんまり気にしなくてもいいかなーって」
「そやなぁ」
「「えぇぇ……」」
椎菜お前…………変な所でらいばーほーむになってきたな……。
なんというか、俺は将来のお前が心配になるな……。
「それで、最後はそちらのお似合いバカップル」
「「バカップルじゃないが!?」」
なぜこの場にいる人たちのほとんどは、俺たちをカップルにさせようとしてくるのか。
「んで? 何が嫌なの?」
「普通に考えて、チーム名が俺一人が負担をしまくるような名前になってますよね!? 死ねと!?」
「まあほら、鈍感朴念仁野郎は死んでもいいって天が言ってるから……」
「どういうことですか!?」
『『『まあ、それはギルティ』』』
「俺が何をしたって言うんですか……!」
というか、俺に対する評価って鈍感朴念仁野郎で統一されてるのか!?
なんで!?
「はいじゃあ、早速試合しようぜ! まずは、我が騒音邪神スタッフと、肉壁は俺だ! の試合からね! みまちゃんとみおちゃんの二人は、私たちの試合を見て学んでね!」
「「はーい!」」
嫌な予感しかしないんですが!? 正直、今すぐに逃げ出したいんですが!?
だが、やると決まってしまった以上やらないわけにもいかないし、何よりみまちゃんとみおちゃんの二人が楽しそうな顔でじっと俺たちの方を見ているわけで……。
「あ、あの、ぜ、絶対足を引っ張る、と思います、けど、が、頑張り、ますぅ~!」
「大丈夫だよ、恋雪君。柊君が何とかしてくれるから」
「皐月さんも頑張ってくださいね???」
なぜ俺一人に頑張らせようとするのか。
さすがに俺一人で二人分の働きは無理……だと思う。
「よーし、じゃあ早速やろうか! えー、とりあえず最初のサーブはどっちがやる?」
「……ジャンケンでどうですかね?」
「いいよー。はい恋雪ちゃーん! ジャーンケーン!」
「ふひぁぁぁ!? え、ええと、あ、あのぽんっ!?」
「ぽん! はい、私の勝ち! 何で負けたか明日までに考えといてください」
「さすが愛菜、やり方が汚い」
「相変わらず酷いな……」
明らかに今のは戸隠さんが可哀そうだろう……。
というか、愛菜さんが初手サーブとか…………いや大丈夫だ。
さすがの愛菜さんもアホみたいなボールは投げないだろう。
俺は、そう高を括った。
だが、あの人が俺の予想を超えて来るどころか、あらぬ方向の行動をするのは当然というべきなのだろう。
愛菜さんはネットよりも高く跳んだ。
『『『高ァァ!?』』』
「よっしゃこれを受け止めるんだよ、柊君ッッッ!!!」
「え、ちょぉ!?」
愛菜さんはネットよりも高い位置からサーブを決めようとしていた。
明らかに高い位置……そして、今の発言から察するに、あの人はとんでもない一球を撃つに決まって――
「オラァァァ!」
ドパンッ! と、まるで銃弾が発射されたが如き音共にボールが俺目掛けて飛んで来た。
「いやそれ23歳の女性が出していい声じゃな――って、それは死にますってぇぇぇぇ!?」
超高速でこちらへ向かって来るボールが俺……ではなく、皐月さんの元へと飛んで行く!
ってぇ!?
「なんでそっちぃぃぃぃ!?」
「愛菜ァ!?」
「フハハハハハ! さぁ、彼氏よ! 我が魔球から彼女を護るのだーーーー!」
「この魔王ォォォォ!?」
俺は無我夢中で皐月さんを邪神という名のシスコン魔王から護るべく縮地での移動を行い、何とか皐月さんとボールの間に割り込むことに成功した。
だがまあ、なんというか、あの人に勝てるわけがないというか……うん。
「ぐぼぁぁぁ!?」
ズドォォォン! と、魔球が見事に俺の顔面に直撃し、俺はその場で高速回転してから、人工の砂浜に倒れ伏し、意識を手放すこととなった。
「柊くーーーーーーん!?」
その際に、俺を抱き上げ、俺の名前叫ぶ皐月さんの声が聞こえた気がしたが、俺はそれを理解する前に死んだ。
あの人、絶対にいつか殺人を犯すだろ……。
ルーレットチャンスッッ!
柊が意識を手放したので、次回はルーレットが発生します! さぁ、柊の性別はどっちになるのか!
ぶっちゃけ、女になってくれた方が楽しいです。




