#157 早速ツッコミに回るルーキー、無茶ぶりもされる
柊がいい! という回答が多かったので、柊になりました。
初手から幼馴染が周囲に死を振りまいた。
いつも通りと言えばある意味いつも通りではあるんだが……こういうところを実際に目の当たりにすると、核兵器だの殲滅兵器だの言われるのも理解できるな。
「お、お姉ちゃんたち起きてー!」
そんな殺戮兵器な幼馴染こと、椎菜は現在進行形でぶっ倒れている世界最凶と言われても不思議じゃないほどにぶっ飛んでいる人、愛菜さんや椎菜の同期のライバーをしている、琴石さん、あと朝霧が死んだので必死に起こそうとしていた。
手慣れたように、皐月さんが蘇生に入ったのはまあ……慣れたんだろうな、と思わされる。
俺もああなるんだろうかとか思わないでもないが、生憎と俺は男なので、蘇生はできないだろう。
……とか言うと、あっちの姿になりそうで怖いが……。
というか、本当に今日は男の方でよかったっ……!
初詣の時もそうだが、なんとか椎菜にはバレずにいるし、できることならば、このまま男のままでいてほしいところだな……。
とまあ、愛菜さんたちに関しては、皐月さんの蘇生により、なんとか蘇った。
普通に考えて、人が死ぬのはおかしいことなんだが、椎菜たちがいると、大してそう思わなくなるんだから、我が幼馴染ながら末恐ろしい。
……そもそも、吐血もおかしいんだが。
「いやぁ、椎菜ちゃんとみまちゃん、みおちゃんの最かわな姿を見たら、つい死んじまったぜ☆」
「ふ、ふへへ、さすが椎菜ちゃんだぞ……これは勝てない」
「耐性持ちのあたしですら貫通するなんて……さすがだね! 椎菜ちゃんたち!」
「どこがさすがなのかわからないです……」
まあ、椎菜はそうだろうな。
なんだかんだ今の姿になってから五カ月も経過しているというのに、椎菜はいまだに自分の認識が『ちょっとは可愛い程度』で止まってるからな……。
まあ、天然だからなぁ、椎菜は……。
「さてと、とりあえず……柊君」
「え、あ、はい。なんですか、愛菜さん」
椎菜の天然っぷりに苦笑いしていると、愛菜さんに突然話しかけられた。
一体なんだろうか……。
「君は今、私たちの中で唯一の男子なわけです」
「それは言わんでください。周囲の視線が痛いです」
愛菜さんの指摘に、俺は心の底から勘弁してほしいという気持ちを乗せてそう返す。
そう、今しがた俺が言ったように、現在進行形で俺への視線がすごいことになっているのだ。
だが、これはあるいみ当然ともいえる。
普通に考えて、男一人に対して、女性が8名(みまちゃんとみおちゃんの二人も一応含めて)なわけだ。
しかも、全員が美男美女であり、なおかつ性格もよく、スタイルもいいと来た。
となれば、必然的に男一人になっている俺への視線も痛々しくもなる。
……もしも、視線にダメージが存在していた場合、俺の体はきっとハチの巣どころではなく、原形をとどめていなかったかもしれない。
それほどまでに、俺への視線がすごいのである。
というか……。
「なんだ、あの男……!」
「あんな美人どころばっかとプールに来てお楽しみってか? ぶち殺すぞ……」
「しかも、なんだあいつ。クッソイケメンで、腹筋もバキバキじゃねぇか!」
「イケメンで細マッチョとか何天は二物も三物も与えちゃってるわけ? 死ねっ!」
「男だけで遊び来てる俺たちがみじめじゃんかよ……!」
みたいな、まあ、そんな声が聞こえてくる。
嫉妬や嫉みなどについては慣れていたんだが……さすがにこうも多くの嫉妬、嫉みの視線を受けると、胃が痛くなってくるな……。
というか、なんで今日は俊道さんと冬夜さんがいないんだろうか。
あの二人がいたら、俺、こんなことになってないよね?
まあ、実家に帰省らしいから、仕方ないんだがな……。
「そこで思うわけですよ、私は」
「何をですか……」
「こうしてさ、イケメン男子一人に対して、見目麗しいレディーが9名いるわけですよ。であればさぁ……創作の中では恒例! それぞれに水着が似合ってるかどうかを言うべきなんじゃないかな!?」
「なぜそうなるんですか!?」
「え? だって、定番じゃん?」
「それは創作の中だけであって、現実は違いますよね!? っていうか、ほとんどの人とほぼ初対面ですから俺!」
なぜ俺がそんなことをしなければならないのか。
「ほぼとか言いながら、一緒にご飯行ったじゃん? しかも、栞ちゃんに関しては修学旅行で宿泊した旅館で会ってるらしいじゃーん? なんだったら、寧々ちゃんは学園祭で会ってるよね?」
「ぐっ……それはそうですが……でも俺、ほとんど会話してませんよね!?」
俺がまともに会話したの、この中じゃ皐月さんくらいだが!?
椎菜と愛菜さんは昔からの付き合いだから別に問題はないが、それはそれとして、戸隠さんに東雲さん、琴石さんはほんとに会話していない!
四期生の同期三人ですら、たまにLINN会話するだけだというのに……。
「あぁ、なんてキレのあるツッコミ……! 私が求めていた存在は素晴らしい!」
「皐月さん、微妙にトリップしてません!?」
ものっすごい嬉しそうに、それでいてうっとりしてるんだが、先輩常識人!
「まあまあ、どうせ今後も顔を突き合わせる機会はあるんだし? 今のうちに慣れておくために、感想をハリーハリー!」
「言わなきゃダメなんですかそれ?」
「「ダメ」」
「マジですかー……って、今皐月さんも混じってませんでした!?」
「気のせいだ。それはきっと、私ではなく恋雪君の物だろう」
「ひぅぇ!?」
「流れるような責任転嫁やな……」
……あれ、実はこの人、常識人じゃないんじゃ……。
……いやそんなことはないよな?
もしこれで、皐月さんが常識人じゃなかったら、俺が地獄を見る羽目になりそうなんだが……多分大丈夫だろう。
そうだと言ってくれ!
「というわけで、はい、GO!」
「えっ、あ、あー…………じゃあ、愛菜さんからで……」
「よっしゃバッチコイ!」
「とりあえずまあ……普通に似合ってますよね、その水着。というか俺、愛菜さんの水着姿とかほぼ毎年見てたんでコメントしづらいんですが……」
「だろうね」
「柊君と僕、よくお姉ちゃんと一緒にプールとか行ってたもんね」
あはは、と苦笑い交じりのそういう椎菜。
椎菜の言う通り、俺は愛菜さんと椎菜と一緒にプールに行く機会が毎年あった。
去年はプールではなく、川だったが……まあそこはいいとして。
基本的に、愛菜さんは水着がほぼ変わらない。
決まってオフショルダービキニだしな……色は赤。
この人、普通にスタイルがいいから、こういう水着は似合う。
だが、見慣れすぎてるし、何よりこの人は邪神すぎてドキッともしなかったりする。
……目の前で椎菜への愛が暴走しまくってる人相手に、どうやってドキドキすればいいのだろうか。
もし、これでも俺ならドキッとできる! とかいう人がいたら、是非とも教えてほしいくらいだ。
「次は、栞ちゃん行こうぜ」
「うち?」
「マジでやるんですか……まあ、やらなきゃ殺されそうなんでやりますが……」
「殺しはしないよ。ちょっと修行のメニューが追加されるだけ☆」
「それは死ぬ!?」
「フハハハハハ! であれば早くやれぇぃ!」
この人、本当は人の皮をかぶった邪神なのではないだろうか。
「あー、まー……東雲さんは……なんていうか、すごく可愛いというか……どこか大人っぽい感じがあると思います。紫がよく似合ってますよ」
「そうか? ありがとなぁ」
ロリピュアの片割れたる東雲さんは、リアルでも小さかった。
そりゃらいばーほーむのロリコンのあの人が死ぬのも納得なくらいに。
イベント二日目にしっかりとした顔合わせもした際にもそう思った。
そんな東雲さんの水着は、紫を基調としたビキニで、それにはフリルがあしらわれていた。
正直、普通に可愛いとは思ったのだが、いつぞやの温泉配信の時に可愛いと言われるのが嫌だ、と言っていたのを覚えていたので、俺は可愛いとは言わず、大人っぽいと答えた。
まあ、実際のところ椎菜にはない大人っぽさがあるのは事実なので、嘘とも言い切れない。
「皐月ちゃんは最後ね」
「なぜだい!?」
「絶対面白いから」
「えぇ……」
「というわけで、恋雪ちゃんの方をね!」
「あ、あー……戸隠さんは……なんというか、すごく綺麗というか……まあ、はい。すごく男性にモテそうなくらいに美人だなと」
「ひぅぅあぁぁ!? と、とと、年下のお、男の人に、ほ、褒め、られましたぁっ……!? で、でも絶対、ほ、本心じゃないです~~~~っ!」
「本心ですが!?」
あぁだめだこの人!
配信でもコミュ障だとは思っていたが、これは筋金入りすぎる……!
確実の褒められ慣れてないと思う、これは。
今だって、絶対に嘘だ! と言わんばかりに、ただでさえ猫背なのに、さらに猫背になっているしな……。
そんな戸隠さんの水着と言えば……意外なことに、ワンピースなどではなく、クロスホルタービキニだった。
露出を嫌ってそうだし、ビキニじゃないだろうと思っていただけに、かなり意外だ。
だが、らいばーほーむ内で一番のスタイルの良さを誇るだけあって、本当に大きかった。
これなら確かに、あの三人が死ぬほど悔しがるのもうなずけるな……。
一応、女の体になった俺も大きい方ではあったが、それでもこれには敵わないだろう。
「はい次寧々ちゃん!」
「バッチコイだぞ! 少年!」
「いや少年て。一応、そんなに歳は離れてないはずですが……」
「あはは! いやー、あたし、あんまり男性の褒められる経験ってのがなかったからねぇ! こういうので! なので、忌憚なき意見を頼むぞ!」
「あー、はい。えー、そうですね……なんていうか……すごくスタイルがいいというか……っていうか、普通にフレアタイプのビキニなんですね。スポーツ好きのイメージがあったので、競泳水着かと」
「いやー、最初はそれも考えたんだけどね! でもほら、見てこれ! 鍛えた肉体! だったらビキニかなと!」
「あー、なるほど」
なるほどなぁ……。
だが、それを言うのもわかるというか……。
実際、琴石さんはスタイルがよかった。
具体的には筋肉というか……うん。
いや、本当に腹筋すごいな……バキバキっていうわけじゃないが、こう、うっすらと筋肉があるのがわかる感じというか……。
下世話な言い方かもしれないが、普通にエロいと思う。
……まあ、さすがに興奮したりなんてことは一切ないんだがな。
「ほい次椎菜ちゃん!」
「え、僕もなの!?」
「……愛菜さん。幼馴染の水着姿を褒めることほど精神に来るものはないです」
「は? じゃあ何か? 椎菜ちゃんが可愛くないと申すか? 殺すぞ小僧」
「イヤァァァ! 椎菜の水着は可愛いなァァァ!」
「柊君、脅されてない……? あと、お姉ちゃんもそういうこと言っちゃだめですっ! めっ!」
「椎菜ちゃんのめっ! いただきましたげぶふぅぅ!」
「なぜそこで吐血するんですか!?」
「愛菜の耐久値はス○ランカー以下なのかい!?」
というか、見た目だけなら水着美女と言ってもいいのに、やることが普段とかわらないせいでただの変態にしか見えない!
いや、元々変態ではあるが!
「まあ、とりあえずだ……椎菜は普通に可愛い。っていうか、普通に似合ってるのな、お前」
「そうかな? ありがとう、柊君。柊君もカッコいいよ?」
「って言われても、それ毎年言われてるしな」
「えへへ、そうだったね」
『『『チィッ……!』』』
なぜだろうか。
今しがた、周囲からものすごい量の舌打ちが聞こえて来たんだが……。
いや気のせいじゃないなこれ。
……しかし、椎菜は本当になぜこうもぴったりな物を選ぶのだろうか。
水色のビキニにパレオとはな……本人がピュアで天然だからか、清楚系がよく似合うな。
これで元男なんだか不思議だな、TS病。
いや、この場合一番不思議なのは椎菜の方か。
そう考えると、生まれて来る性別を間違えたんじゃないか、なんて思えて来るな……。
「あー、それでみまちゃんとみおちゃんも一応言えばいいのか? これ……」
「そうなんやないの?」
「だ、だと、思い、ますぅ」
「あー……まあ、あれだな。みまちゃんとみおちゃんの二人も良く似合ってて可愛いよ」
「「ありがとー!」」
「ぐふっ……」
二人が笑顔でお礼を言うと、なぜか朝霧が吐血して死にかけた。
「なぜ朝霧が死にかけるんだ」
「いやほら、二人が可愛いから……」
「そうか……。ちなみに、朝霧は感想が欲しいのか?」
「欲しい」
「食い気味だなおい……まあいいや。朝霧は……あれだな。ホットパンツなんだな?」
「そうそう。あたし、こういうのが好きなんだよね。ズボン系って良くない?」
「まあ、似合ってるからいいと思うぞ」
「ありがと!」
朝霧の方はと言えば、上は白のビキニなんだが、下はホットパンツタイプとなっていた。
それなりに活発な印象があるし、かなり似合ってると思う。
プールの授業ではスクール水着だから、こういう水着を着ているのを見るのはかなり新鮮だ。
「はいじゃあ、最後は皐月ちゃんへの感想をどうぞ☆」
「うわびっくりした!?」
「なんだい柊君。まるで化け物でも見た様な反応をして」
「実際愛菜さんって化け物ですよね」
『『『うんうん』』』
「おっと? 椎菜ちゃん一家以外全員から頷かれたぞー?」
少なくとも、人外な動きができる時点で化物だと思う。
「まいいや、はいはい、ほれ感想感想☆」
なぜこうも急かされているんだろうか。
そして皐月さんはなぜやたらと期待の籠った表情を俺に向けているのだろうか。
正直、自分の好みの女性からそう言う表情を向けられるのは慣れていないから、さすがに照れるな……。
「あー、えー……その、すごく綺麗だと思いますよ。似合ってます」
実際、皐月さんのスタイルはかなりいい。
身長なんて、170くらいあるし、なんて言うか……まあ、胸もあるからな……。
職業がモデルなだけあってかなりの美人だろう。
実際、皐月さんへの視線はかなりあるしな。
……あと、女性からの視線がすごい。
多分だが、気付かれているのではなかろうか。
そんなモデルな皐月さんの水着はと言えば、ホルターネックビキニというタイプの水着だろうか。
普通にカッコいいなこの人……。
「そうか。ふふっ、いや、褒め言葉はよくもらうが……君に言われるのはかなり嬉しいね。そう言う柊君も、カッコいいよ?」
「……あ、ありがとうございます」
やや赤い顔で褒められ、俺も思わず顔が熱くなる。
……やっぱり、好みのタイプが水着状態で顔を赤くしながら褒めてくる、という光景はまあ男としてはかなり来るものがある。
だからか、お互い赤面して照れてしまう。
『『『(にやにや)』』』
「ハッ!?」
「なぜそんなににやにやしてるんだい!?」
「いやぁ、青春ですなぁ(にやにや)」
「青春やなぁ(にやにや)」
「すごくいい、と思い、ます、よっ(にまにま)」
「うんうん、やっぱり青春が一番だぞ!(にやにや)」
「高宮君にも春が来たんだねぇ」
「柊君も男の子だもんね(にやにや)」
「何か勘違いしてませんかね!?」
「別にそう言うのじゃないからね?!」
『『『大丈夫。わかってるよ(ますよ)~』』』
「「絶対わかってないっ……!」」
なぜか初手でいじられる羽目になった。
えー、この話を書いている時の私のテンションはだだ下がっておりました。
というのも、今私って、週五で他社へ出向してて、そっちで仕事してるんですが……そこの休憩所で学マスのイヤホン忘れてきたっ……!
一応、この話を投稿される日に、向こうの方に落し物か何かで届けられていないか確認するつもりですが、まあ、高確率で残ってないだろうなぁ、というのが本音。
なかったら買い直すけど……ショックがでけぇ! なんで気付かなかった私ィ!!
とまあ、そんなことがありました!
残ってるといいなぁ……。