#156 プール当日、いつもと変わらぬ始まり的な
チッ……。あ、次回以降についての質問があるので回答をいただけると助かります……!
それから翌日。
「じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい。愛菜、三人をしっかり守るのよ?」
「当然! 下種どもの汚い手は指一本たりとも触らせないってもんです!」
「さすが愛菜ね。椎菜とみまちゃん、みおちゃんも気を付けて楽しんで来てね?」
「うん!」
「「はーいっ!」」
玄関先でお母さんの注意を受けてから、僕たちはプールに向けて出発。
まずは柊くんと麗奈ちゃんと合流するために、美月駅へ向かう。
「プール! プール!」
「……楽しみ、です」
その道中、二人はよっぽどプールが楽しみみたいで、すごくうきうきした様子。
繋いだ手をぶんぶんと大きく振っていてすごく微笑ましい。
「二人とも元気だねぇ。今日は比較的暖かい方とはいえ、さすが子供。風の子だね!」
「風の子っていうか、神様だけどね」
「つまり、神様だから強いという事か……!」
「それは関係ある……のかな?」
神薙みたまが神様になった姿なわけだけど……寒さに強い! って言う設定は一応ないし、強いて言えば僕本人が強いくらいかな?
そう考えたら間違いではない気がしてくるような……。
「いやぁ、にしても……今日は柊君と麗奈ちゃんもいるんだよね?」
「うん」
「柊君はともかく、遊びに行くっていう意味では、麗奈ちゃんとは初なんだよね、私」
「一度お家に来たことはあるもんね。学園祭の時に」
「そうそう。あの時は確か、ビーフシチューを食べたんだよね」
「そうだね。せっかく圧力鍋が手に入ったから」
「っていうかさ、今日の集まりのほとんどってらいばーほーむの関係者しかいないのに、その中にいる麗奈ちゃんってすごくない?」
「たしかに……」
「だって、絶対アウェー感があると思うんだよね。あ、もちろん大歓迎だし、今日来るメンバー全員歓迎してるのは間違いないけどね? でも、その中で一切関係がない中で来るのもすごいよねぇ」
「それはそうだね」
一応、ライバーをしてる僕と、明日から本格的に配信を始める柊君と仲がいいというだけで、実際に関係があるっていうわけじゃないもんね。
……そう考えたら、麗奈ちゃんが心配になってきた……大丈夫かな? 浮いちゃわないかな?
あ、そういえば皐月お姉ちゃんとは会ったことあったっけ。
「やっぱり麗奈ちゃんもらいばーほーむに入りたい! とか思ってるの?」
「ふぇ? あ、ううん? 麗奈ちゃんはスタッフになりたいって言ってたよ?」
「――ほほう? ちなみに、それはどういう形で?」
「どういうって言われてもわからないけど……その、麗奈ちゃんは耐性? があるみたいだし、何よりらいばーほーむの裏方が楽しそうだからやりたいんだって。編集の勉強もするって言ってたよ。それに、柊君から求人の紙をもらってたし」
「なるほどなるほど……そういえば、イベントの時に話題になってたっけ。……なるほど。これはもしかすると、かなりいい人材を確保できるチャンス? ……社長にそれとなく伝えとこ」
「お姉ちゃん?」
「おっと、なんでもないよー。いやぁ、にしても楽しみだねぇ、プール! 私は椎菜ちゃんの水着姿が見られるのは夏までのお預けだとばかり思っていたから、私としては超たなぼたぁ! あと、みまちゃんたちもすごく楽しみ……!」
「あはは、大袈裟だよ、お姉ちゃん」
「大袈裟じゃないのがシスコンってもんだよ、椎菜ちゃん!」
そこは胸を張って強く言うことなのかな……?
たまに、お姉ちゃんのことがよくわからなくなります。
「んで、待ち合わせ場所は駅前でいいんだよね?」
「うん。いつもの場所だね。駅前のベンチ」
駅って、待ち合わせ場所としてはすごく便利だよね。
今日みたいに、市外へ行く場合なんかは特に。
大人になったら、電車じゃなくて、車とかになりそうだけど、高校生の間は基本的に電車移動だもんね。
最初は、お姉ちゃんが運転しようか? って提案してきたんだけど、聞けばお姉ちゃん、ツリーハウスとログハウスの建設にかかりっきりだったせいで、寝てないんだとか。
さすがにそれで事故を起こしちゃったら大惨事なので、今回はさすがに電車での移動になりました。
当然と言えば当然です。
そんなこんなで、道中楽しそうに歩くみまちゃんとみおちゃんを微笑まし気に見つつ(お姉ちゃんは鼻血を流してたけど)駅へ向かって歩いるていると、ほどなくして到着。
「あ、来た来た。椎菜ちゃーん! 愛菜さーん! みまちゃん、みおちゃーん!」
「おはよう、椎菜。それと、愛菜さんにみまちゃんみおちゃんも」
「おはよう! 二人とも!」
「「おはよーございますっ!」」
「おっはよう! 二人とも元気だねぇ! それに……今日はそっちなんだね? 柊君」
「は、はははは……えぇ、まあ……」
「そっち? お姉ちゃん、そっちってどういうこと?」
「ん~? あぁ、気にしなくていいよ~。どうせ、いつかはわかることだし」
「???」
「大変だねぇ、髙宮君」
「……本当にな」
柊君、なんだか遠い目をしてるけど、どうしたんだろう?
初詣の時からこんな感じだけど……やっぱり、イベントの日から初詣の間に何かあったのかな?
でも、柊君が言う気配はないし……心配だけど、いつかは言ってくれる、よね?
「ま、雑談はほどほどにして、そろそろ行かなきゃだよ。電車的に、多分もうすぐだろうしねー」
「うん。じゃあ、行こ!」
柊君と麗奈ちゃんの二人と合流して、僕たちは駅のホームへ。
今日行くのは、陽野市にあるハルノレジャーパーク。
最近できたばかりの室内レジャープール施設らしくて、結構話題になってるとか。
オープンしたのは先月だそうです。
その招待券がなんで神社の福引にあったのかはわからないけど、でも、僕としてはみまちゃんとみおちゃんだけじゃなくて、いろんな人と一緒に遊びに行けるのですごく嬉しいです。
電車に乗って、陽野市に到着。
そのあと、目的地のハルレジャーパークへ。
恋雪お姉ちゃんたちとの待ち合わせ場所は駅じゃなくて、施設の方になってます。
その方がすぐに入れるからとのこと。
「お、おはよう、ご、ござい、ます……!」
「おっはよーう! やー、絶好のプール日和だぞ!」
「一応真冬だから、プール日和とは言わないと思うが……」
「そやなぁ」
そこにはすでに恋雪お姉ちゃんたちがいました。
どうやら、先に来ていたみたいです。
「おはよう!」
「「おはよーございますっ!」」
「おはようございます」
「おはようございます! いやぁ、なんかあたしだけ浮いてる感じがあるけど、今日はよろしくお願いします!」
「よ、よろしく、お願い、しますぅ……!」
「大晦日ぶりだぞ! 麗奈ちゃん! 今日は目いっぱい遊ぶぞ!」
「そうだね。恋雪君と栞に関しては初対面だと思うけど、よろしくね、麗奈君」
「あ、えと、栞さんとは初対面じゃないですよ!」
「ん、そうなのかい?」
「そやな。修学旅行でうちの旅館に宿泊しとったんよ」
「あ、覚えててくれたんですね!」
「そりゃ、椎菜さんの友人やからな。今日はよろしゅうなぁ」
「はい!」
らいばーほーむのみなさんがいい人だから、っていうのももちろんあるけど、それでもすぐにお話しできる麗奈ちゃんすごい……!
コミュニケーション能力高いよね、麗奈ちゃんって。
「さてさて、立ち話は時間がもったいないので、ちゃちゃっと入ろう入ろう! 私は一刻も早く椎菜ちゃんたちの水着姿をこの目に、そしてカメラに収めたいッッ……!」
「愛菜、そこはほどほどにね」
「それは無理だよ、皐月ちゃん! だって、今日撮った写真は、千鶴ちゃんに送り付ける予定だからねぇ!」
「それは新手のテロだよ!?」
「どういう意味!?」
なんで僕たちの写真を撮っただけでテロ扱いされるのかな!?
「おおぅ、その写真を送られる千鶴さんの血涙を流しながら悔しがりつつも悦んでる顔が思い浮かぶぞ……」
『『『それはまあ、うん』』』
あと、なんでみまちゃんとみおちゃん以外の人たちが納得してるんだろう……。
たしかに千鶴お姉ちゃんは小さい女の子が好きみたいだけど、それでも僕たちの写真を見ただけでそんなことにはならな…………いことはない気がしてきました。
だって、千鶴お姉ちゃん、だもんね……。
「じゃ、入ろ入ろ! あ、栞ちゃんと皐月ちゃんはチケットは?」
「全員来る前に購入済みだよ」
「問題なしや」
「さっすが! じゃ、入ろーう!」
お姉ちゃんのその言葉とともに、僕たちは施設の中へ。
柊君だけ男なので、一旦更衣室前で別れて水着にお着替え。
ただ、お姉ちゃんは、
『一応どんな水着かは知ってるけど! それでも私は新鮮な気持ちで水着姿がみたいんじゃぁぁぁぁぁ!!!』
って言って、10秒くらいで水着に着替えると、貴重品やちょっとした荷物などを持って更衣室を出ていきました。
お姉ちゃん……。
ただ、一番最後になったのは僕なんだけどね……。
だって、今までとは違って、ここは一般の人もいるので……。
もちろん、年齢層はバラバラだけど、やっぱりレジャー施設ということもあって若い人が多い。
多分だけど、学生さんが多いんじゃないかなぁ……。
だって、姫月学園の生徒さんがいるんだもん。
記憶が間違ってなければ学園祭実行委員会の人だと思うし……。
気付かれませんように……。
「おかーさん、これであってる?」
「……だいじょうぶ、です?」
「うん、大丈夫だよ。二人ともすごく似合ってるね~」
「えへぇ。おかーさんもかわいいですっ」
「……んぅ、かわいー」
「ふふっ、そっか、ありがとう、二人とも」
『『『ごぶふっ……』』』
「あれ? 今何か変な音が……」
「おかーさん、いこっ!」
「……はやく」
「あ、うん。そうだね。みんな先に行っちゃってるし、僕たちも行こっか」
水着に着替えて、変な所がないかしっかり確認して、僕たちもプールの方へ移動。
みまちゃんとみおちゃんは初めてのプールに大はしゃぎで、二人揃って僕の手を引っ張って早く早くと急かしてきます。
すごく可愛い。
「「わ~~~~っ! すごーーーい!」」
更衣室から出てプールのあるエリアへやって来ると、そこにはたくさんの種類のプールがありました。
ウォータースライダーや流れるプール、水鉄砲? 大砲? があってそこで水の撃ち合いができる場所、他にも迷路みたいな場所や、波の出るプール、子供用の浅いプールや普通の25メートルプールなんかもあって、かなり種類が豊富。
そのせいか、みまちゃんとみおちゃんはの二人はすごくきらっきらとした目で見ていて、すごく可愛い。
「おかーさん、おかーさん! ここすごいっ!」
「……はやく、あそびたい、ですっ!」
「ふふっ、そうだね。でも、先にみんなと合流しないと。ね?」
「「むむぅ……はーい」」
「うんうん、二人とも偉いね。合流してから、いっぱい遊ぼうね」
「「うんっ!」」
『『『んぐふぁぁぁあ!』』』
あれ? なんだか今、何かが倒れるような音が聞こえた様な……?
気のせいかな?
何はともあれ、先に合流だよね。
んーと、たしか休憩エリアで場所取りするって言ってたから……あ、あそこかな?
この施設には休憩エリアという場所があるみたいで、そこでレジャーシートなんかを引いたりして休憩できるとか。
一応、荷物が混ざらないように、ある程度等間隔で区分けされてるみたいなので、結構ありがたいかな。
じゃあ、僕たちもそっちへ行かないと。
「んーと、みなさんは……あ、いたいた。二人とも、行くよ~」
「「はーい」」
みなさんを見つけたので、僕は二人の手を引いてそこへ向かう。
その時、いろんな人からすごく視線が集まったけど……あれ、僕の水着って変かな……?
……うん、変な所はない、よね? 大丈夫。
ということは、みまちゃんとみおちゃんが可愛いから見てるとかかな?
うん、あり得る。
ちゃんと見ておかないとだね。
なんてことを思いながら、僕たちはみなさんがいる場所へ行って……
「お待たせしました!」
「お、来たね椎菜ちゃ…………げぶはぁぁぁぁぁっっっ!」
お姉ちゃんがすごくいい笑顔で振り向いて、僕たちを見てから数秒間笑顔で固まって……おびただしい量の血を吐いて倒れました。
「お姉ちゃーーーーん!?」
「ちょっ、愛菜が死んだ!」
「ごめん、皐月先輩……あたしも、水着姿の尊い母娘を見て鼻血と吐血がぶはぁっ!」
「なんでぇ!?」
なんでか寧々お姉ちゃんも倒れちゃったよ!?
「あー、こら酷いわぁ」
「た、大変、です、ね……」
「……前々から思っとったんやけど、恋雪さんえらい耐性を持ってるやんな?」
「……い、一応、血は吐くんです、けど、こ、コミュ障、なので……」
「ぐぶふっ……た、高宮君っ……ご、ごめん、あ、あたしも、死ぬッ……!」
「朝霧は持ってるだろう!?」
「み、水着はぁ……せ、清楚な、ぱ、パレオは、あ、あかん…………で、出来れば、パーカーを、羽織って、ほしい……ぜ……ガクッ」
寧々お姉ちゃんだけじゃなくて、麗奈ちゃんの方もなぜか血を吐いて倒れました。
本当になんで!?
「よくわからない遺言を残すなよ!?」
「あまり普段と変わらないな、これ……」
「……ですね、皐月さん」
「とりあえず、蘇生するか……」
「……はい」
なぜか蘇生から始まりました。
あの、これって配信じゃないんだよね?
なんで大勢で配信する時みたいになってるんだろう……。
なんて悪運の強い奴なんだ、柊ッ……! お前そこは女になるところやろがいッ!
あいつ、3:7のルーレットで普通に男ぶち当てたんですけど。10分の3当てるって……お前の運はどうなってんだよッ! だがしかし、奴は一度寝れば再びルーレットが発生するのでね……! なので、プール編の間に再びルーレットを回したい。これで男出したら奴はすごい。
ちなみにちょっと質問なんですが、プール編椎菜視点か柊視点、どっちがいいですかね?
今すっごい迷ってる。柊でやったら柊でやったで面白そうだし、何よりこういう場面での椎菜って、地味に動かしにくいんですよね。純粋ピュアキャラは、ツッコミをしないからね……!
っていうわけで、どっちがいいですかね?