#154 ギャルな先輩との初コラボ配信前
1月3日はお母さんのお話を聞きつつ、のんびりと過ごして、1月4日は僕、皐月お姉ちゃん、杏実お姉ちゃん、双葉お姉ちゃん、美鈴お姉ちゃんの五人で遊びました。
午前中は骨董品屋さんに行って、そこでなぜかお守りを貰って、その場にいた人たち以外のらいばーほーむのみなさんには後日渡す、もしくはお姉ちゃんにお願いして渡してもらうことに。
その後は軽くお茶をしたり、配信のことをお話ししたり、そんな風に一日を過ごして終わりました。
それから次の日。
「あ、杏実お姉ちゃん! こんにちは!」
「おっ、おっはよー! 椎菜っち!」
この日は杏実お姉ちゃんとのコラボ配信の日ということもあって、浜波駅前で杏実お姉ちゃんと待ち合わせをしていました。
集合時間の十分前ちょっと前くらいに到着して、駅から出て来ると、既に杏実お姉ちゃんが待っていたので、たたたっ、と駆け寄って挨拶をすると、杏実お姉ちゃんは快活な笑顔を浮かべて、挨拶を返してくれました。
「今日はよろしくお願いしますっ!」
「こちらこそ! んじゃ、早速事務所に向かってしゅっぱーつ!」
「おー!」
立話はせず、そのまま今日の配信場所である事務所に向かって移動を開始。
事務所でやる理由は至ってシンプルで、杏実お姉ちゃんも寧々お姉ちゃんと一緒で、自分のお家は家事サービスの時に見せたい! とのこと。
初見の方が面白いから、らしいです。
僕のお家でやらない理由は宝くじ配信の時と同じ理由です。
家族がいるので……。
なので、どこで配信をしようとなった時に、杏実お姉ちゃんが、
『あ、そんなら、事務所で配信すればいいっしょ!』
と言って来たので、それになりました。
「やー、ほんと、やっとあーしの出番が回って来たわー」
「なかなか時間もタイミングも合わなかったからね……なんだか申し訳ないです……」
「別に気にしなくていいし! ってゆーか、あんましあーしと椎菜っちって合わない感じがあったしねー。趣味とか」
「杏実お姉ちゃんはその、恋愛ゲームが好きなんだっけ?」
「そそ! あとは、マンガやラノベ、アニメくらい?」
「僕も見なくはないけど、あんまり見ないんだよね」
「あー、なんかわかる。椎菜っち、そっち系疎そうだし」
「実際疎いかなぁ」
一応、僕もアニメやマンガなどは見るには見る。
でも、アニメ好きな人たちよりかは見ないし、アニメをあまり見ない人よりちょっと見る、その程度。
なので、アニメの知識はすごく浅いし、幅も狭い。
どちらかというとお母さんの方が見るかな?
「んまー、椎菜っちってどっちかってゆーと、友達と遊ぶ! みたいな感じっぽいしー。あとはあれ、家事とかしてそうだし?」
「それは合ってるかなぁ。柊君とよく遊んでたし、基本的にお家で家事やってたしね」
「でも、椎菜っちってたしか、高校生になってから一人暮らししてたんしょ? なのに、家事やてったん?」
「うん。お父さんもお母さんも忙しかったから。あと、小学生の途中から家事をしてたからね。お母さん、僕のためにいっぱい働いてくれていたから、せめて家事はって思って」
小さい時は寂しいって思ったけど、いつも疲れてるはずなのに僕を優先してくれるお母さんの為に何かしたくて、当時は自分でもできそうな家事をし始めた、って言うのが理由なんだけどね。
最初はお料理は、お母さんから一人で出来る許可をもらえるまではしなかったし、してたのはお洗濯とか、お掃除くらいだけど。
「なるほどねぇ。なんてゆーか、椎菜っちのそーゆー話を聞いてると、こう、あーしの学生時代がバカみたいに思えて来たわー……」
「そうなの?」
僕のお話を聞いてか、杏実お姉ちゃんはどこか苦い顔に。
「ほら、あーしってお嬢様って奴じゃん? だからまー、家にはお手伝いさんが結構いてさー。んで、身の回りのこともやってもらってたってわけ。だからねー、そーゆー話聞くと、こう、あーしの学生時代って……とか思っちゃうわけよこれが」
「でも、そう言うのって環境次第だし、今って一人暮らしなんだよね? それでもすごいと思うけどなぁ」
「そ?」
「うん。だって、何不自由なく暮らせていたのに、一人暮らししてるんだよ? 普通は楽な環境に慣れちゃって、出来ない人だっていそうだもん」
人間って、楽な状況に慣れちゃうと、そこから抜け出せなくなっちゃうもんね。
「あー、なるほどねー。それはちょっちあるかも。あーしが通ってたガッコってお金持ち系でさー。身の回りのことを自分でやる、なーんて習慣がない人もいたし。だから、色々あった後に家族で大変なことになったー、なんて人もいたんよね」
「そうなの?」
「そそ。ま、そっちはけっこー黒~い話になるんで、その先は秘密! ってね」
ぱちり、とウインクをする杏実お姉ちゃん。
なんと言うか、杏実お姉ちゃんって綺麗でカッコいいお姉さん、みたいな感じだから、そう言うのが似合う……。
金髪で髪の毛にメッシュ入ってて、なんだかカッコいい。
所謂、ギャル、みたいな外見なのかな?
「ってか、椎菜っちって元の姿があれじゃん? やっぱ、いじめとかってなかったん?」
「僕? うぅん、その度に柊君が守ってくれてたかな? あと、気が付いたらなくなってて、そう言う人たちとお友達になってたよ?」
「なにそれスゴ! やっぱ、椎菜っちの天然ぽわぽわオーラが毒気を抜くんかな?」
「天然ぽわぽわオーラって……ふふっ」
よくわからない言葉に、僕はクスリと笑う。
杏実お姉ちゃんとこうして二人っきりでお話とかしたことなかったけど、結構お話しやすいなぁ。
「やー、間違ってなくなーい? だって、椎菜っちってこう、悪意を持って近づこうとしても、纏ってるピュアでぽわぽわ~っとしたオーラのせいで、マジで悪意とかが消えそうじゃん? こう言っちゃなんだけど、椎菜っちってマジで可愛いから、誘拐とかされそうだし」
「ゆ、誘拐って……さすがにないと思うけど……。それで言うなら、らいばーほーむの女性陣のみなさんの方がありえそうだよ?」
「いやいや、あーしはほら、こんな派手な見た目じゃん? さすがに、誘拐なんて考えないし。ってゆーか、あーしの父親がどっかで護衛とか付けてると思うしねー」
「え、護衛?」
「そ、護衛。こー見えて、あーしってなかなかのお金持ちの生まれだしねぇ。これでも、お金はある方だし? あと、髪色変えて、カラコンしてるけど、顔はまんまだからねー。なんで、あーしのことを狙う犯罪者! ってのもいるわけよこれが」
「えぇぇ!? だ、大丈夫なの!?」
「あー、そこは大丈夫。さっき言ったように、あーしの父親がその辺護ってくれてるし。あとはほら、あーしも護身術習ってるから」
「な、なるほど……」
やっぱり、お金持ちのお家に生まれると、そう言うことがあるのかなぁ。
……まあ、ある意味では今の僕もお金持ちではあるけど……。
まだ換金してるわけじゃないから、正確に言えば予定って付くと思うけどね。
「椎菜っちも護身術習ってるんっしょ? 愛菜パイセンから」
「うん。昔に護身術を教えてもらったよ。あとは、力がなかったから、武器を使っての対処法なんかも」
「へー、武器。どーゆーやつ?」
「んっと、剣道に近い物とか、杖術とかかな? あ、剣道に近いって言ったけど、実際にはその、居合とかが近いかも?」
「え、椎菜っち居合できんの?」
「ちょっとだけなら」
「マ? 愛菜パイセンも大概おかしいけど、椎菜っちもかなりの才能お化けじゃん」
「そ、そうかな?」
「や、普通は居合とかできないし。ってか、それを教えられる愛菜パイセンがやっぱ一番おかしい?」
「お姉ちゃん、いつの間にか武術を習得してたので……」
気が付いたら新しい技を知ってるし、それを教えてくれるんだもん。
「なるほどねぇ。あ、折角なら、椎菜っちができる武術的なあれこれ、この後話さない?」
「聞いてて面白いかな?」
「いや普通に面白いと思うんよ」
「そうかなぁ……でも、杏実お姉ちゃんがそう言うなら、軽い雑談くらいでお話してみようかな?」
「それがいいっしょ! 個人的に、めっちゃ面白そうだし!」
「そうだといいなぁ」
なんて、道中色々なことをお話しつつ、僕たちは事務所へ向かいました。
◇
事務所に来ると、スタッフさんたちが忙しそうにしていました。
「あ、友成さんに桜木さん! こんにちは! 配信ですね! 二階の三番へどうぞ! 機材の準備も終わってます!」
「ありがと!」
「ありがとうございます!」
「にしても、やけに忙しいけど、何かあったん?」
「いえ、明後日が四期生の初配信ですからね。その準備やら何やらでバタバタと」
忙しなく動きまわっているスタッフさんに、杏実お姉ちゃんがその理由を尋ねると、
「あー、そう言えば、明後日が四期生の配信だっけ。やー、めっちゃ楽しみだし。ね、椎菜っち」
「うん。柊君もそうだけど、他のみなさんがどんな配信をするのかすごく楽しみ!」
「うんうん! ま、柊っちは問題なさそうだけどねー。常識人枠は大抵まともだし。そんじゃ、あーしらも早いとこ配信の準備と最後の打ち合わせをしとこ!」
「うん!」
というわけで、指定された配信用のお部屋で最後の準備に。
「とりあえず、今日やることは事前にLINNで送った奴でOK?」
「うん! 初めてのことではあるけど、頑張るよ!」
「やったぜ! なんで、流れとしてはいつも通りに雑談から入って、折を見て今日の企画ってことで。あ、さすがにNG! ってなったら、全然言っていいし!」
「なるべくNGは出さないようにするけど……頑張りますっ!」
「うんうん! メッチャ頼もしいっしょ! んじゃ、早速始めよーう!」
「おー!」
そうして、僕と杏実お姉ちゃんの初コラボ配信が始まりました。
委員長スキーギャル、98話目に初登場してから、340話くらい経過してようやく椎菜とサシで会話……! マジで不遇だったっ……今後はもっと出番増やすからね……!
あと、この回を書いていて、以外にも椎菜との会話は書きやすかったという。
ある意味では動かしやすいのかもしれない。大勢になると動かしにくいけど。
あと、前回の椎菜父の名前が読めねぇ! っていう方がそこそこいたのと、もう一つおまけで少々。
椎菜父の名前は「九重静稀〈ここのえしずき〉」です。
そのため、椎菜が生まれた時の名前って、桜木椎菜、ではなく、九重椎菜なんですよ。
そのあと、椎菜父が死亡して、椎菜母の名字である姫宮になって、そこから聡一郎と結婚したので、桜木椎菜になっています。
つまり、椎菜は九重椎菜→姫宮椎菜→桜木椎菜という風に、二回名字が変わっています。なんか、姫宮の方が今の椎菜に合ってない???




