#151 新年の配信前、ちょっとテンションが高いロリコン
色々と驚きの出来事ばかりだった一月一日の元日の翌日。
今日は三期生のみんなで宝くじ配信をすることになっている日。
事前に宝くじは買ってあって、それを忘れないように持っていくのが一番重要となっています。
「じゃあ、行ってきます!」
「気を付けてね。二人のことは私たちに任せて」
「うん。二人とも、いい娘で待ってるんだよ?」
「「はーい……」」
今日の配信では、二人は連れて行かないことになっています。
理由は色々あるんだけど……そもそも二人って、ライバーじゃないからね……。
それに、小学一年生の子供(実際には0歳なんだけど……)だから、あんまり何度も出ていると身バレの心配もある。
そういう意味で、よほどの内容じゃない限りは極力お留守番、ということに。
ちなみに、よほどの内容は焼き肉パーティーなどのような、みんなで集まってご飯を食べるような企画の時です。
ああいう時はいいというか、むしろ呼んで! とか言われてるので……。
僕は最後に二人の頭を撫でてからお家を出ました。
今日の目的地……というか、配信をする場所は事前に決めていて、千鶴お姉ちゃんのお家ということになっています。
理由はそこそこあるけど、大きな理由で言えば、藍華お姉ちゃんのお家はその汚いかもしれないらしいから、というもの。
寧々お姉ちゃんのお家でもいいのでは? となったんだけどど、それについては、寧々お姉ちゃんが、
『あたしのお家公開は出張みたま家事サービスと決まっているんだぞ!』
とのこと。
どうやら、僕が家事サービスで行くときに見せたいとかなんとか……。
そういう理由で寧々お姉ちゃんも不可能。
じゃあ、僕のお家は? となったけど、さすがに実家暮らしだし、何よりお母さんたちもいるので、迷惑がかかるかも、という判断でやっぱり不可能。
そうなってくると、消去法で千鶴お姉ちゃんのお家になったんだけど……それとは別にもう一つ理由があって、
『お金持ちの人の家なら当たるのでは?』
というもの。
それはそれでどうなんだろう、と思わないでもないんだけど……それで当たるとは思わないけどなぁ……。
「あ、いたいた、寧々お姉ちゃーん! 藍華お姉ちゃーん!」
待ち合わせ場所である、美月駅前にやって来ると、先に来ていた寧々お姉ちゃんと藍華お姉ちゃんの二人の名前を呼びながら手を振る。
「おっ! あけおめだぞ! 椎菜ちゃん!」
「あけおめ、椎菜」
「あけましておめでとう!」
「じゃ、早速行こう! 千鶴さんの家!」
「ん、たしか来咲市」
「千鶴お姉ちゃんのお家、すごく高いお家だったよ……」
「おおぅ、やっぱり金持ちか……!」
「あの仕事をしてればそうなる」
「ふぇ? あのお仕事?」
「おっと、藍華、そこは言っちゃだめだぞ!」
「ん、失言だった。気にしなくてOK。私が愛菜さんに殺される」
お姉ちゃんに殺されるって何……?
そんなにおかしなお仕事してる、のかな? 千鶴お姉ちゃん。
「ところで、愛菜さんはどうしてるの? 昨日のLINNのグループで発言してなかったけど」
「あ、えっと、ツリーハウスとログハウスを作るために山籠もり中で……」
「本気だった」
「さ、さすが愛菜さんだぞ……!」
「普通はそこまでしないと思う。というより、一人では作らないと思う」
「あ、あははは……そこは本当にそう思います……」
なんで一人で作ろうと思ったのかは、僕もわからないよ……。
長年一緒にいるけど、未だに理解できないこともあるからね、お姉ちゃんのことは。
「まあ、何はともあれ! 早速行こう!」
「ん、出発」
お話もほどほどにして、僕たちは電車に乗って来咲市へ。
VTuberになってからというもの、美月市の外に出ることが増えた気がします。
前もそこそこ出てはいたけど、やっぱりVTuberになってからの方が増えたかなぁ。
「それで、千鶴さんはマンションだっけ?」
「うん」
「高いマンションと聞いてるから、少し楽しみであり、怖くもある」
「あー、わかるぞ。事務所の金持ちトリオだもんね」
「三人ともすごいもんね……」
「ん、あれは無理だと思う。でも、製作中のゲーム次第ではゲーム会社設立もありって話になってる」
「そうなの!?」
「あ、それあたしも知ってるぞ。もしも上手く行ったら会社設立して、事務所の系列にしよう! っていうあれだよね?」
「そ、そんなことになってたの……?」
売るのはわかりきっていたことだし、知っていたけど、いつの間にか会社設立まで視野に入ってるのは知らなかったんだけど……。
そもそも、そこまで売れるのかなぁ。
「らしいぞ。とは言っても、本当にそこまで行くかはわからないけど」
「ん、でも間違いなく売れる。最低でも、100万本は行けるはず」
「それは無理じゃないかなぁ!?」
「いやいや、何を言ってるの、椎菜ちゃん。愛菜さんが布教するから行けるよ!」
「さすがに………………やる気がするなぁ……!」
お姉ちゃん、僕の知らないところで色々やってるみたいだし……。
しかも、なぜか僕のことを布教してるんだもん。
「確実にやる」
「間違いないぞ」
「そもそも、愛菜さんはド直球にダイマすると思う」
「あー、しそうだぞ。こう、自分の枠時間目一杯使って」
「そうなったら止めます……」
さすがに恥ずかしすぎるし、そもそも自分の配信なのに、僕のことばかりお話しするのはそれはそれでおかしいと思うので……最近はもう見慣れて来ちゃったけど……。
「やー、にしてももう新年かぁ。あっという間だったねぇ」
「ん、それはそう」
「あと八ヶ月くらいしたら一周年……一周年かぁ。絶対あっという間なんだろうけど、すっごい濃密になる気がするけどね!」
「たしかに。きっと、椎菜がやらかす」
「僕なの!?」
「うちで大きなことを起こす時は、決まって椎菜ちゃんだし」
「ん、事実。ちなみに、もうやらかしてると睨んでる、椎菜は」
「さ、さすがにそれは………………………うん、ない、よ?」
((絶対ある奴……))
昨日、なぜか神様に出会ったけど……それ以外は特には…………ない、よね?
福引で当てたあの御神刀も、一度鞘から抜いてみたら、明らかに刃があったような気がするし、淡く光ってたけど……それ以外はないので……。
……一日で色々あったなぁっ……!
「椎菜ちゃん、すごい顔してるぞ」
「やっぱり何かった」
「……配信のネタにします」
「「さすが」」
ああいう話題は、配信でした方がいいよね……信じてもらえるかはわからないけど。
大分、配信者の頭になって来たなぁ、僕……。
◇
それから色々とお話をしながら歩いていると、目的地である千鶴お姉ちゃんが住むマンションに到着。
「「……いや普通にタワマン……」」
「あ、あははは、やっぱりそうなるよね……」
千鶴お姉ちゃんが住んでいるマンションを見るなり、二人は唖然としていました。
うん、すごく気持ちがわかるよ……僕もそうだったから。
「と、とりあえず入ろう入ろう。えーっと、たしか千鶴さんの部屋番号で呼び出せばいいんだよね?」
「うん」
「じゃあ……」
中に入るために、千鶴お姉ちゃんの番号を呼び出すと、すぐに千鶴お姉ちゃんが出ました。
『どうぞ入ってくださいねぇ~』
千鶴お姉ちゃんの声が聞こえると同時に扉が開いたので、僕たちは早速千鶴お姉ちゃんがいるお部屋へ。
「……なんか、お金持ちが住んでる場所って感じがして、すごくこう、肩身が狭い」
「……ん、それな」
「藍華が口調を崩すレベルかぁ……でも、ザ・マダム、みたいな感じの人が談笑してたよね……あと、椎菜ちゃんはナチュラルにお菓子貰ってたけど」
「前に来た時もお菓子を貰ったよ……」
なぜかここに来ると、すれ違う人からお菓子を貰います。
やっぱり、ちっちゃいからかなぁ。
「あと、しれっと最上階なのが怖い」
「さすが金持ち」
「千鶴お姉ちゃん、本当にすごいよね……」
普段はそんな素振りあんまり見せないけど、こういうところでお金持ちなんだなぁって思わされるよね。
「お、ここだね。というわけで、インターホン!」
どこか高いテンションと一緒に寧々お姉ちゃんがインターホンを鳴らすと、中から足音が聞こえてきて、ガチャリとドアが開いて千鶴お姉ちゃんが出てきました。
「いらっしゃ~い~。中に入ってくださいねぇ~」
「「「お邪魔します」」」
千鶴お姉ちゃんに招かれて、僕たちはお家の中へ。
「お、お~、なんだかお洒落な家って感じだぞ……!」
「ん、たしかに。無駄に女子力高い。ロリコンなのに。ロリコンなのに」
「あの、ロリコン二回言ってるよ?」
「うふふぅ~。ロリコンたるもの、いつでも招き入れても恥ずかしくないような部屋作りをするものですよぉ~。ロリコンですからねぇ~」
「「これは強い」」
本当に好きなんだなぁ、なんて思うよね。
でも、それはそれとして、本当に千鶴お姉ちゃんのお家ってすごくお洒落。
こう、大人のお姉さんのお部屋って感じがします。
「それで、もう配信を始める感じで?」
「準備は?」
「できてますよぉ~。我が家を提供するんですから、こちらで済ませてありますからぁ~。というか、お二人はともかくとして、椎菜ちゃんのお手を煩わせるわけにはいきませんからねぇ~~~~!」
「そ、それは申し訳ないので、普通に手伝うからね……?」
「なんと言う、綺麗な心でしょうかぁ~! ここまで綺麗な方がいたでしょうかぁ~? いやいませんよねぇ~!」
「なんか、今日の千鶴さんのテンション高くない?」
「たしかに。酒飲んだ?」
「いえ、至高のロリである椎菜ちゃんとお会いするのに、お酒を飲むのはロリコンとして三流もいいところですからねぇ~」
「一流のロリコンとは」
「ん、謎」
「一流は常にロリ第一で動く人のことですよぉ~。つまり、いつロリの方と会ってもいいような服装をし、髪型もメイクもキメて、尚且つ家も綺麗にする……それが一流のロリコンですからぁ~」
「「なるほど……」」
「何を言ってるのかわからないよ……」
そもそも、一流のロリコンってなんなんだろうね……。
あと、誇らしそうに語るのもすごいと思います、千鶴お姉ちゃん。
「ともあれ、早速配信を始めましょうかぁ~。あ、ちゃんと宝くじは持って来てますかぁ~?」
「問題なしだぞ!」
「ん、抜かりない」
「持って来てるよ!」
「じゃあ、大丈夫ですねぇ~。では、早速始めましょうかぁ~!」
「「「おー!」」」」
今年最初の配信、頑張らないとね!
次回から配信回だぁ!
というわけで、次回から宝くじ配信とかいう、なんだそれ状態の配信回に入ります。
とは言っても、多分3話以内で終わる……はず。多分ね。きっとね!
 




