#147 神社への道中、どこか疲れてる幼馴染
「じゃあ、行ってきます」
「「いってきますっ!」」
「行ってらっしゃい。人が多いと思うから気を付けてね?」
「うん」
「「はーいっ!」」
振袖に着替えた僕たちは、玄関でお母さんの見送りを受けていました。
お姉ちゃんについては、自分で買った山の中でログハウスとツリーハウスを作るから、という理由で動きやすい服装で山の方へ向かいました。
あれ、本当にやるつもりだったんだ……。
まあ、お姉ちゃんは大丈夫だよね。
「じゃあ、行こっか、二人とも」
「「うんっ」」
新年から元気なのはいいことです。
元気な二人の返事を受けつつ、早速とばかりに神社の方へ向けて出発しました。
◇
突然だけど、美月市内には神社が二ヵ所あります。
一ヵ所は僕が気に入っているあの神社。
もう一ヵ所は、天海神社という、この辺りでもそこそこ大きな神社です。
毎年お正月になるとたくさんの人が参拝に訪れる神社で、美月市、浜波市、来咲市の人たちは大体天海神社へ行くのが恒例となっています。
僕のお家でも、初詣はそこです。
まあ、僕の場合は、美月神社の方にも行くんだけどね。
やっぱり、あの神社が好きなので……。
自然豊かな神社って、すごく気持ちいいもん。
「「~~~♪ ~~♪」」
「二人とも、すごく楽しそうだね?」
右手でみまちゃんと手を繋いで、左手でみおちゃんと手を繋ぎながら歩いている中、二人は鼻歌交じりに楽しそうな表情をこれでもか、と言わんばかりに浮かべていました。
「んっ! おかーさんといっしょは、うれしーの!」
「……みおは、ちょっぴり、です」
みまちゃんは素直に答えたけど、みおちゃんのほうは頬を少しだけ赤くさせながら、そう答えました。
尻尾と耳があったら、間違いなくぶんぶんしてるんだろうなぁ。
「そっかそっか。僕も、二人と一緒で嬉しいよ~」
そんな二人が微笑ましくて、笑みを浮かべながら僕がそう言うと、二人はえへへぇ、と嬉しそうにぎゅっとさらにしがみついてきました。
うん、可愛いしあったかい。
子供って体温が高いから、こういう冬の季節に抱き着かれるとすごくぽかぽかするよね。
「そういえば、二人はお泊り楽しかった?」
ふと、二人がお友達のお家にお泊りに行っていたことを思い出して、その時についてのことを聞いてみることに。
少なくとも、ご機嫌な今の状態なら聞くまでもないとは思うけどね。
「楽しかった!」
「……いっぱい遊んだ、です」
「そっかそっか。それはよかった。どういうことをして遊んだのかな?」
「んっとね、テレビゲームとか、じんせーゲームとか、あとはこいばな?」
「恋バナ? したの?」
「……ともだちが、こいばなをしたい、って言ってきたから、した」
「そうなんだ」
今の一年生って進んでるのかなぁ。
まさか、一年生で恋バナなんて……僕の頃は……そもそも僕自身がそういうのをよくわかってなかったからなぁ……。
今でもあんまりよくわかってない節はあるけど、それでも昔ほどじゃないしね。
でも、恋バナかぁ……。
「二人は気になる男の子とかいるのかな?」
ふと、恋バナという言葉から、そんなようなことを連想した僕は、気になる男の子がいるのかどうか尋ねていました。
「んぅ? いないよ?」
「……いない、です」
まあ、いないみたいだったんだけど。
「そうなの?」
「んっ! おかーさんが一ばん!」
「……おかーさんより、すごいひとじゃないと、や」
「そ、そっか。ふふ、そう言ってくれると嬉しいな」
「「んぅ~」」
僕が一番と言ってくれて嬉しくなった僕は、にこにこと笑顔を浮かべながら二人の頭を撫でた。
頭を撫でられる二人は、気持ちよさそうに目を細める。
二人の髪の毛って、触るとすごく気持ちがいいんだよね。
「でも、二人は可愛いし、男の子からたくさん声を掛けられそうだね?」
「いっぱいはなしかけられるよ?」
「あ、やっぱりそうなんだ?」
「……いっぱいくる。でも、たいへん」
「大変?」
「んっとね、けんかになっちゃうの」
「それって、みまちゃんたちが?」
「んーん、みまたちにはなしかけてくる、おとこのこ」
「あ、そっち?」
「……あそびにさそわれる。でも、べつべつのグループにさそわれるから、けんかになる」
「あ、なるほど、そういう理由……」
そういうお話を聞くと、二人ってクラスでもかなり人気者になってるんだなって思うよ。
というより、小学校に通い始めてからそんなに経ってないのにもうそんなことになってる辺り、二人って将来はすごくモテモテになりそうだなぁ。
もし、二人が高校生くらいになって、彼氏さんを連れてきたら……僕はどう思うのかな。
祝福はすると思うけど、それと一緒に、相手の子について色々と調べちゃう……かも?
あんまり過保護なのは問題かもしれないけど、でも、それくらいはしないと心配になっちゃうので……!
「それで、その喧嘩はどうなるの?」
「みまたちがめっ! ていうと、みんなやめるの」
「……だから、かわりばんこであそぶ」
「そっかそっか。二人は喧嘩を止められるんだね。うんうん、とてもいい娘だね~」
小さいうちから、そうやって喧嘩を止められるのはすごいことだと思います。
子供って、善悪の判断がまだできてないし、理性の部分も未熟だから、感情的になりやすいからね。
売り言葉に買い言葉っていうわけじゃないけど、一度喧嘩を始めるとなかなか止まらない、なんてことはよくあることだもん。
僕が小さい頃もそういうことはあったしね。
思い出すことと言えば……おもちゃの取り合いとかかなぁ……。
僕が先、こっちが先だった! みたいな感じのよくある喧嘩で、お互いなかなか譲らないというあれです。
そういう時、先生が一番苦労するよね。
だからこそ、明確なルールを作らないといけないわけで。
まあ、ルールがあっても喧嘩が起こるのが子供なんだけど……。
そういう意味では、喧嘩を止めた二人は本当にすごいと思います。
「でも、すぐに喧嘩が止まるなんてすごいんだね?」
「みんないい子なの」
「……ごめんなさいできる。えらい」
「あはは、そうだね。すぐにごめんなさいが言えるのはえらいね」
「あと、せんせーがおこったらこわいから」
「……こわい」
「えっ、そうなの!?」
僕がお母さんたちから聞いたお話だと、すごく優し気な笑顔を浮かべてて、柔らかい雰囲気の人なんだけど……。
「んっと、おっきなこえはださないの。でも、すごくこわいの」
「……まえに、おこられてたおとこの子がないてた」
「そ、そうなんだ……」
怒鳴らずに怒ってるのに泣くレベル……本当に怖いんだろうなぁ……。
たしか、百合園翡翠先生だっけ?
その名前を聞いたとき、もしかして千鶴お姉ちゃんの親戚の人かな? なんて思ったけど、どうなんだろう。
あ、明日の配信の時に聞いてみようかな?
三期生だけで配信するし。
「でも、そっか。二人に仲のいいお友達がいっぱいできて、学校の方も楽しめてるようで安心したよ」
普段もそこそこお話は聞くけど、それ以上に、
『おかーさん好き!』
みたいな感じだから詳しいことはわからなかったんだよね。
だから、こういう形とはいえ、学校でのお話が聴けるのはすごく安心するなぁ。
「でも、あれだね。二人はもうすぐ二年生だね」
「二ねんせー?」
「うん、二年生。まだ小学校に入ったばかりかも知れないけど、来年になったら後輩さんができるからね」
「……こーはい」
「そうそう。つまり、二人がお姉さんになるのです」
「「!」」
「美月小学校では、二年生の時に一年生の子と触れ合う機会があるから、その時は二人ともちゃんとお姉さんしないとね?」
「んっ! みま、おねーさん!」
「……がんばる、です」
「ふふっ、まあ、二人なら大丈夫。だって、喧嘩を止められるし、優しいからね。きっと、いいお姉さんになれるよ」
「「うん!」」
それにしても、もう二年生になるのかぁ……。
この調子で行くと、本当にあっという間に大人になりそうだなぁ……なんて。
でもまあ、まだまだ先のことかな。少なくとも十年以上は先だもんね。
何をしてるのかはわからないけど、楽しく生きててくれればいいかな。
◇
そんな風にみまちゃんとみおちゃんの二人と一緒に神社へ向かって歩いていると、目的地が見えてきました。
「二人とも、もうすぐだよ」
「あれー?」
「うん、あの神社。柊君と麗奈ちゃんは……先に来てるのかな?」
待ち合わせ時間自体は丁度いいけど……。
「あ、椎菜ちゃーん!」
スマホで時間を確認すると、前の方から聞き馴染みのある声が聞こえて来ました。
「あ、麗奈ちゃん! それに、柊君も!」
「あけましておめでとう! 椎菜ちゃん! 今年もよろしくね!」
「あけましておめでとう、椎菜。今年もまぁ……色々とよろしく」
「あけましておめでとう! 今年もよろしくお願いします!」
「みまちゃんとみおちゃんの二人もあけましておめでとう!」
「あけましておめでとう」
「あけましておめでとーですっ!」
「……あけおめ、です」
「おー、早速短縮系を……!」
「色々と成長が早いのか?」
「なんか知ってたみたいで……」
みおちゃん、どこで知ったんだろう?
まあでも、そこまでおかしなことでもない……のかな?
「ところで、椎菜ちゃんたちも振袖着て来たんだね! うんうん、似合ってるよ!」
「えへへ、ありがとう、麗奈ちゃん。麗奈ちゃんも似合ってるよ!」
「ありがとう、椎菜ちゃん!」
僕たちだけでなく、麗奈ちゃんも振袖を着てきていました。
麗奈ちゃんは薄い桃色を基調としていてかなり可愛い感じの物に。
「柊君はいつも通りでなんだか安心したよ~」
「それは安心なのか……」
「あれ? 柊君、なんだか疲れてる?」
「……あー、まー……ちょっとな……」
そう答える柊君は、どこか遠くを見つめるような表情でした。
何かあったのは今のでわかるけど……何があったんだろう?
「よかったね、高宮君。あっちじゃなくて」
「……本当にな」
「麗奈ちゃん、あっちって?」
「今は気にしなくていいよいいよ! どうせ、その内わかるしね!」
「そうなの?」
「……決心がついたら話すよ」
「うーん、よくわからないけど……うん、わかったよ。きっと、大変なんだろうからね、柊君も」
「……悪いな」
「いいよいいよ」
でも、一体何があったんだろうなぁ……。
柊、女体化回避!!
実はこの回を書く前に、ルーレットで柊が男で出るか女で出るかを決めたんですが、こいつすごいんですよ。マジで女を引かなかったんです。
途中、女の割合6の男の割合2でルーレット回したら、普通に男出しましたからね。
運のいい奴だ……チッ。
あと、次回は諸事情で多分Q&Aになります。申し訳ねぇ。
 




