イベント1日目#Sー2 平気な三人娘、不思議な縁(?)
時間は戻り。
「買えた……! ちゃんと欲しかった物が買えたっ……!」
「わたくしも無事に買えましたわ!」
「うふふ、これで安眠できそうです」
物販エリアのすぐ近くでは、らいばーほーむ例の女性三人組がとても嬉しそうに購入したばかりのグッズを抱きしめていた。
そのグッズと言えば、まあ、言わずもがなどこかのお狐ロリの膝枕クッションである。
「順番的に心配だったけど、まさかちゃんと全部残ってるなんて……これも日頃の行いがよかったからに違いねぇですね!」
「はい! これがあれば、みたま様の膝枕を体験できるのですね……!」
「配信ではとても気持ちよさそうに眠る方々がおりましたからね。私も、とても楽しみです」
「だねぇ。いつかは本人にもしてもらいてぇですよねぇ」
「「わかります(わ)」」
小夜の発言に、双葉と美鈴の両名はうんうんと頷く。
ファンたちからすると、このクッションもそうだが本物のみたまの膝枕を体験したい、と思う者が多い。
まあ、相手がVTuberである以上、らいばーほーむに入らなければ不可能だろうが……。
「それで、これからどうしましょうか?」
「う~む、おしゃべりコーナーは当たってないし、ライブステージもチケットがないしねぇ。うちとしては、お二人に任せる! って言うのがつえぇですかねぇ」
「私も同じく。ですが、みたまちゃんは出演しないとのこと」
「まあでも、何やってもおもしれぇですし、早めに行っておくのもありでは?」
「そうですわね。らいばーほーむはとても面白いですし、何より歌を生で聴くことができると言うのは、とびきりの贅沢ですわ」
「そうですね。では、私たちはライブステージの方へ赴く、ということでよろしいでしょうか?」
「「異議なし(ですわ)!」」
「では、行きましょう」
というわけで、三人は一度グッズをロッカーに預けてからイベントの方へ向かう。
「ん? あれは……みまちゃんにみおちゃん?」
ふと、視線の先に銀髪の幼女と黒髪の幼女がはしゃいでいる光景を発見。
小さいのに一部が大きい母親(?)らしき人物と、強面な男性、それからかなりのイケメンな若い青年と、モデルのように綺麗な美少女、それとカッコいい印象のある美人な女性が幼女二人以外にいた。
「どうかしたんですか?」
「あ、いえ、ちょっとうちの知り合いの女の子がいて! 気にしねぇで大丈夫ですよ!」
双葉が立ち止まった小夜に尋ねると、小夜は笑みを浮かべてそう返す。
小夜的にはこのまま会いに行ってもよかったのだが、とある事情からなるべくあの二人の母親にバレない方がいいと考え、会いに行くのを我慢した。
本音を言えばものすごく行きたいのだが。
「そうですか? ……あら? あの娘は……ふふ、なるほど。楽しそうに生活しているのですね。それに、やはりもう一人いたのですね。素晴らしいですね、本当に」
「美鈴さん?」
「あぁ、いえ、お気になさらず。さぁ、私たちも早く行かねば良い場所が確保できなくなってしまいますね」
幼女二人を見て、どこか気になる言葉を呟く美鈴だったが、誤魔化すようにいい場所を取ろうと言って来たので、二人は特に追及することをしなかった。
まあ、今日出会ったばかりだから、というのもあるが。
幸いなことに、三人は立ち見としての最前列に行くことが出来た。
みたま推しの三人ではあるが、普通にらいばーほーむが大好きなので、こういうことにもなる。
まあ、一人は推しどころか、ママなのだが。
「やぁ、どんなライブステージになるのか、楽しみでしょうがねぇですよね!」
「はい! 前座とは言いますが、らいばーほーむであれば、どのような物も本番ですからね! わたくしは、全力で楽しみますわ!」
「うふふ、そうですね。みk……ではなく、みたまちゃんがおらずとも、らいばーほーむは大変面白い場所ですから」
などなど、ライブステージを前に、三人のテンションはかなり高くなる。
と、そうこうしている内に、らいばーほーむのライブステージが開演。
初手からいるかのモノマネだけの歌が披露された後に、五名のライバーが登場。
さすがの三人も、いるかのモノマネには気付かなかったようで、かなり驚いていたのと同時に、それはもう楽しそうに笑う。
途中のボケのオンパレードと、そのボケを一人で捌きまくるたつなという、正面だけでなく、四方八方から襲い来るボールを打ち返す、さながら全方位バッティングセンターである。
不憫で理不尽な状況のはずなのに、どことなく楽しそうなたつなに、会場のファンたちも笑って楽しむ。
それ以外にも、一人一人の歌は大変良く、三人はそれはもうノリノリ。
合いの手ももちろん入れる。
特に、シスコンの持ち歌(みたまが入って来て以降にできた物)である『最愛で最強』は、それはもう盛り上がった。
みたま推しなので。
ステージライブは基本的にボケとツッコミの応酬と言う形で進行。
そして、ステージライブ終盤でそれは起こる。
いるかによるみたまの声真似が入る。
「おぉう、さすがいるかさん……! やっぱあの変声術はすげぇですよね」
「あのように声を自在に変えられるのは羨ましいですわ」
「まさかあれほどの技術をお持ちの人の子がいるとは……やはり、我々でも把握しきれないこともあるのですね」
などなど、思い思いの感想を述べていた。
美鈴は変なことを言っていたが。
「あはは、何言ってるのたつなちゃん! まあでも、そうだねぇ……まず最初に言うけど、みたまちゃんの声は常に我々の精神だけでなく肉体すらも癒します。~~(中略)~~なので、この世で最強の生物は何かと訊かれたら、真っ先にみたまちゃんという答えが出るのが人類にとっての当然だよね!」
そう、シスコンの狂気超長文である。
今回は句読点やらブレスがちゃんとあったが、それらはシスコンが無意識に『イベントだから薄目にしよう』とか思った結果である。
まあ、全然薄まってないが。
カ○ピスの原液に水を一滴入れた程度では薄まらないと言う事だ。
さすがのシスコンの狂気を生で、というのはこの会場にいる者たち全員の思考を止めるに至ったのだが……
「さすがひかりさん……!」
「やはり、あれほどの愛が求められるのですね」
「うふふ、相変わらずすごいですね」
三人はけろりとしていた。
尚、他にあれを聴いてけろりとしていたのは舞台裏のふゆりくらいである。
星歌は頭を痛め、柊に関しては遠い目になり、麗奈はフリーズした。三人の復帰は早かった模様。
特大狂気の後に無事(?)にライブステージは閉演。
会場の方も残り一時間で閉場に。
三人はそれぞれの事情で早めにホテルに戻ることにし、互いに途中まで一緒に帰ろうとしていたのだが……
「あれ? 二人とも同じ道?」
「みたいですわね」
「あらあら、不思議ですね」
いつまで経っても誰一人別れず、ずっと一緒に同じ場所へ向けて歩いていた。
そうして気が付けば三人は全く同じホテルに辿り着いていた。
「やー、まさか双葉さんたちも同じホテルだったとはねぇ」
「わたくしも驚きました。それにしても、美鈴さんも同じだったとは思いませんでしたわ」
「うふふ、そうですね。不思議な縁でもあるのでしょう」
そう話しながら、三人はたまたま来ていたエレベーターに乗り込む。
中には途中で見かけたカッコいい青年(柊)のみだったが、三人は特に気にせず会話に興じる。
「まさかここに泊まってるとはねぇ。二人ってお金持ち?」
「わたくしは……それなり、ですわ」
「私は不労所得のようなものが」
「おおぅ、すげぇですねぇ……まあ、うちも似たようなもんだけどね! 印税だけど」
「それはそれですごいですわ」
「ということは、小夜さんは何か創作を?」
「色々とね~」
などなど、お互いについて楽しそうに話す。
すぐ近くにいる柊はとても居心地が悪そうだが、三人は全く気付いていない。
「あ、ついたみたいだね」
「やはり高いですわ。ここのエレベーターは変な揺れが少ないからマシですけど、場所によっては少し酔いそうになるんですよね」
「私はあまりこのような昇降機に乗る機会が少なかったので、新鮮な気持ちです」
そうこうしている内に目的の階に到着。
三人はさすがに離れるだろうと思っていたのだが……
「あら? みなさんお隣さんでしたのね?」
普通にお隣同士であった。
中央に双葉の部屋があり、右手に小夜、左手に美鈴と言った形である。
小夜の右隣りには、どこか疲れた様子の柊がいたが。
「ほんとだ! やー、すげぇ確率ですねぇ」
「そうですね。しかし、この階層には私たちとそちらの男性の方以外はいないようですが?」
「――っ」
すごいこともあるもんだと話していたが、そこで美鈴がこのフロアにいるのが自分たちと柊しかいないことを指摘。
突然指摘された柊はびくっ、と肩を震わせた。
たしかに、と思った双葉は初対面の柊相手に全く臆さずに話しかける。
「言われてみれば。あの、あなたはわたくしたち以外の方を見かけましたか?」
「あ、あー、いえ、俺も見てはいない、ですね。たまたまいないだけじゃないんですか……?」
突然の質問に、柊は苦笑いを浮かべながらそう返答。
「ん~、でもさ~、こんな高いホテルで客室が埋まってないのは、おかしくねぇですかね?」
「そうですね~。ですが、ここから上二つの階層は貸し切りとのことですが」
「となると……こちらのフロアも貸し切り状態? しかしどうして?」
自分たち四人しかいないことがわかり、三人はどういうことだろう? と揃って首を傾げる。
上二階が貸し切りになっていて、ここも貸し切りなのは謎すぎるというのが三人の疑問である。
「あ、あー……すみませんが、俺はこれで……」
と、ここで会話に巻き込まれた柊がどこか申し訳なさそうに小夜たちに声をかける。
「あ、突然失礼致しましたわ!」
「ごめんねぇ」
「申し訳ありません。どうぞ、お戻りください」
「あ、はい、では」
突然話しかけたことをそれぞれ謝罪したところで、柊が部屋の中へ戻っていった。
「うーん、そう言えば上二つのフロアって誰が貸し切ってんですかねぇ?」
「それはわかりませんが……きっと、すごい方々が貸し切っているはずですわ」
「このような高価な場所を貸し切るほどの財力があると言うことですからね。なかなかできることではありませんし、組織での貸し切りと考えるのが妥当でしょうか?」
「だろうねぇ。……あ、そう言えば二人は自分からこのホテルを予約した感じで?」
こんな高いホテルに来たのは自分の意思かどうか気になった小夜が、二人に尋ねると……
「いえ、わたくしはここに招待されまして」
「私も同じく。小夜さんは?」
「うちも同じ! う~ん? じゃあ、三人とも招待されてここにいるってこと?」
「そうなりますわね」
「では、先ほどの男性も招待客、ということでしょうか?」
「可能性はあるねぇ。ちなみに、何に招待されたかは言えない感じだよね」
「こればかりは言えませんわ」
「私も言うことはできませんね」
「だよね! まあ、うちもだけど!」
三人ともにここに招待した存在については秘密とのこと。
「明日も一緒に回れるし! やー、楽しみだね!」
「はい! わたくし、お二方のような気の合う方に出会えて本当に嬉しいですわ!」
「なかなか会えませんからね。あ、私は途中で用事があるので離脱します」
「あれ? 美鈴さんも? うちも途中から用事があるんだよね」
「わたくしもですわ。なんだか、不思議な縁がありますわね、わたくしたち」
「だね!」
「はい」
不思議なこともあるなぁ、なんて三人は顔を見合わせて笑い、明日の待ち合わせ時間を決めてそれぞれの部屋に戻っていくのであった。
尚、三人は早速膝枕クッションを使用し……死人の如き安らかな笑みで落ちた。
三人娘の話ィ!
まあ、前回の三人娘視点みたいなもんですかね。
やー、なんでこの三人は同じホテルに泊まって、二日目に用事で抜けるんですかねー。謎ですねー。
それから、イベント編は一日目と二日目になっています。
最初は、章はまとめてでいいや、と思っていたのですが、思った以上に一日目が長すぎたので、上下で分けるつもりです。一日目が上、二日目が下、みたいな感じですかね。
あと、掲示板と、らいばーほーむ組を書いて、一日目は終わりになると思います。
いやぁ……長かった……これでようやく……暴れられるね!




