イベント1日目#ライブステージ:4 人外は多く、たつなは歓喜
たつなが殺意の波動に目覚めつつも、次の歌に移る。
一曲目はいるかの声帯模倣によるものだったが、二曲目はたつながメインで歌う曲である。
尚、曲名は『茨の道』である。
曲の中身としては、カッコいい系に分類され、たつなの声の良さも相まってたつなの持ち曲としてはかなり人気なのだが……如何せん、その歌詞が明らかに今のたつなからするとお労しい案件なので、それを聴いたファンたちは苦笑いである。
その一例として、
「何があろうと心は傷付かない」
という歌詞があるが、最近のたつな……というか、現在進行形のたつなを見ていると『ほんとぉ?』となってしまう。
他にも、
「茨の道を歩くのは当然」
みたいな歌詞もあるが、これに対してのファンたちはと言えば、
『いや、あなたの進む道、道どころか壁や天井にびっちりの茨がありません? あと、茨だけじゃなくて毒針が混じってない?』
と思われている。
まあ、らいばーほーむの常識人枠と言うのは、楽な道ではなく、常に四方八方から飛んでくるボケに対して全て対処しなければいけない、というツッコミ技術を求められる上に、そもそもがちょっとやそっとじゃ病まないレベルの精神力が必要なのだ。
一見すると、らいばーほーむに入るのなら常識人が一番簡単そう、とファン歴の浅いらいばーほーむファンや、らいばーほーむに入りたいと思う者はそう考えるのだが、そもそもの話……らいばーほーむにおいて一番入るのが難しいのが常識人なので、その考えは大変浅はかなのである。
しかも、最近はたつなが『みたまちゃんに少しでも耐性のある人を求めてます』とか言っちゃったものだから、常識人枠のハードルが爆上がりしている。
自分で自分の首を絞めてしまっている……。
まあ、四期生にはみたまへの完全耐性とかいう、バケモンが入って来るので、ある意味五期生ではツッコミさえできればいいとは思いそうだが。
ともあれ、そんなたつなの歌はかなり盛況である。
というのも……
『やっぱいくまっちのダンスのレベル高くね?』
『生で見れるとか最高過ぎ!』
『カッケェ!』
ダンス組であるいくまのダンスが、それはもうすごいことになっているからである。
刀も十分すごいのだが、それ以上にいくまがすごいことになっている。
その場で普通に片手逆立ちするし、普通にバク転するし、なんかたまにどうやってんのそれ? みたいな動きを見せることもある。
実はいくま、ダンスであれば基本的になんでも習得が出来ると言う謎すぎる特技を持っている。
尚、普通にブレイクダンスもできる。
本人曰く、
『やー、さすがに一芸特化の人たちには勝てないしー』
だそうだが、普通にどんなダンスでも高水準でこなせるので、全然謙遜になってないし、なんだったらプロの世界でも普通にやっていけるくらいには才能がすごい。
まあ、本人はそっちの道に進む気はないし、らいばーほーむでライバーしてる方が好きだそうなので、ライバー関係でしかダンスはしないそうだが。
プログラミング技術というインドアな物を持ってるのに、なぜか運動量が多いダンスが得意とか言うある種の謎存在である。
【いやぁ、いくまっちのダンスは何度見てもキレッキレだよなぁ】
【わかるわかる! マジで見てて気持ちいいよな!】
【しかも、たつな様の歌もマジでカッコいいし!】
【刀君もカッコいいわ! やっぱり、ダンスが出来るのってカッコいいわよね!】
【いるかちゃんは地味にたつな様の声でハモリやってるのが面白すぎるw】
【声の模倣が出来ると言うことは、そう言うこともできるんだもんなぁ】
【あの……すみません、それ以上にシスコンが、その……】
【目を、背けてたんだよッッ……!】
コメ欄では、各ライバーたちの感想が流れていくが、誰一人としてシスコンの存在には触れていなかった。
がしかし、何人かのユーザーがシスコンについて触れると、目を背けていたと言うコメントが数多く流れていく。
それらは会場でも同様であり、誰一人として、シスコンにツッコまないようにしていた。
と言うのも……さっきから明らかに人外な動きしかしていないからである。
具体的には高速でバク転したり、どこのバトル漫画のキャラですか? と言わんばかりの立体的な動きをしたりするからである。
しかも何が酷いと言えば、ちゃんと歌に合うような動きをしているのが本当に酷い。
と言うかお前人間? とか思われていたりする。
と、そうこうしている内に、たつな歌が終わり……
「えー、はい。聞いてくれてありがとう、と言いたいんだけど……その前にひかり? 君、自重って言葉知ってる?」
拍手が会場を包む中発したたつなの第一声はそれであった。
「私の脳内メモリに自重と言う言葉はないんだなーこれが☆」
「あ、ハイ」
「ん、実際本当にあの動きをしてるからすごい」
「ひかりだったらゲッダン☆ とかできそうじゃね?」
「いやー、さすがのひかりパイセンでもそれは」
「できるよ?」
「「「「なんで!?」」」」
『『『なんで!?』』』
【【【なんでぇ!?】】】
ひかりができる発言をしたことにより、ライバー、会場のファン、コメ欄の人たちは全く同じことを全く同じタイミングで思ったし、言葉にも出したし、コメントにも書き込んだ。
尚、楽屋でもツッコミが起こっているが、みたまだけは『?』である。
「いやぁ、隠し芸でやろうかなって☆」
「それ隠し芸のレベルじゃなくない!? え、君そんなことできるの!?」
「あれ、どう考えても人外の動きじゃなかったか?」
「ん、そもそもゲームのバグ挙動」
「さっすがひかりパイセン!」
「いやこれ褒めるようなことぉ!? というか、本当に君って人間!?」
「あっはっはー☆ そんなたつなちゃん、厨二病じゃないんだからー☆」
「違うが!?」
「でもぶっちゃけ、VTuberで設定どおりのキャラを演じるのって、厨二病と同じでは?」
「ひかりぃぃぃぃぃ!?」
シスコンのそれは言っちゃだめだろ発言に、たつなが叫ぶ。
【はい炎上】
【草】
【VTuberがそれ言うのはマジで草】
【いやまあ、陛下とかは厨二病寄りだよね】
【まあ、うん……】
【これをクソデカイベントの真っ最中に言うのは本当に頭がおかしい】
「まあでも、厨二病だからこそ楽しませることができる言う事だよね☆」
「間違ってないけど、発言は大間違いだよ!? というか、普通の配信ならともかく、イベントでそれは言っちゃだめだと思うよ!?」
「おっと、それはたしかに。まあでも、リリスちゃんとか厨二病系じゃん? なら間違いじゃないと思うんだよね!」
「くっ、否定できないっ……!」
【いや否定しようよww】
【でも実際問題、陛下は喋り方とか、ロールプレイ的にはマジでそっち寄りだし……】
【馬鹿野郎! 厨二病だからいいんじゃねぇか!?】
【やっぱたつな様もらいばーほーむなんだよなぁ……】
【こうもスレッスレな発言をしてると、いつか本当に炎上しそうだよね、らいばーほーむ】
【いや、いつか、じゃなくて、普通に炎上するレベルの発言はしてるんだよ。ただ、らいばーほーむだから、で全部終わるだけで……】
「あ、そういやさっきのましゅまろでおしゃべりコーナーであったことを教えてほしいってあったよな! たつなは聞いたが、ひかりたちは何かあったか?」
「刀!? なんでその話題を今振る!?」
「いや気になるじゃん?」
「話題が七転八倒してるんだけど!?」
「たつなパイセン、この場合は二転三転じゃないん?」
「ここまで来たら似たようなものだよっ……!」
いくまの冷静(?)なツッコミに、たつなはそう返した。
実際の意味としては、あまりの苦しみに激しく転げまわる事、になるのだが、ある意味でたつながそうなっているので間違いではない(大きな間違いです)。
「ちなみに俺は、ギャルゲー談義できたぜ! めっちゃ仲良くなった男のファンがいたわ!」
「あ、ウチもギャルゲー趣味の女性ファンに会ったんよ! ちょー嬉しかった! ってゆうーか、趣味もバチクソあってたし!」
「みたま教を布教してました☆」
「ん、私は手を顔の前でスライドさせるだけで顔が全くの別人変わる女性と出会った。すごかった」
「なんで私を除いた半数がギャルゲの話をしてるんだい!? しかも、片方女性ライバーがっ! あと、ひかりはなぜに布教を!? それと、いるか君が出会ったその女性、本当に大丈夫な人なのかい!?」
四名の元に起こったおしゃべりコーナーの内容を聞いて、たつなは順番にツッコミを入れる。
そして、いるかのところだけは本当に焦っているようである。
まあ、来たのがアレなので……。
【おしゃべりコーナーの中身がいろんな意味で気になり過ぎるww】
【これでも全然一部なんだろうなぁ……】
【シスコンは宣教師か何か?】
【教皇兼教祖ですが?】
【いや、あの、いるかちゃんのとこに来たその女性って……】
【気のせい気のせい! たしかにこの世界、TS病なんていうファンタジーがあるけど、そんな外なる者がいるわけないじゃないですかヤダー】
【仮にもしモノホンだったら、とんでもない厄ネタがいるかちゃんの所にいたのでは……?】
「平気。むしろ、私の変声術とその人の変装術ですごく盛り上がった」
「盛り上がったの!?」
「ん、盛り上がった。方法を聞いたら、企業秘密って言われた」
「……SAN値チェック、した方がいいかな?」
「たつなちゃん、さすがに私はそこまでたつなちゃんに影響は与えてないよ?」
「いや君も邪神だけども! 下手したら邪神以上のヤバい存在だけども!」
「あっはっはー☆ 照れちゃうよ☆」
「なんで!?」
【邪神の自覚がある邪神か……】
【それはただの邪神では?】
【さすが邪神だァ……】
「あぁっ……なんかもう、疲れた……歌ってストレス発散できたのに、結局ストレスが……!」
「常識人の宿命的なアレっしょ」
「それなら、君のとこの常識人(故人)にもその宿命から逃げるなって言ってくれない? ついでに、常識人に戻ってって言ってくれない?」
「デレーナっちはもう過去の人なんよ」
「勝手に死んだことにされてるデレーナも可哀そうだな!」
「あ、今『死んでないわよ!?』って楽屋で叫んでたよ」
「なんでわかるの!?」
「ふっ……この私は常にみたまちゃんの言葉を聞こうと聴覚と言う聴覚を鍛えているからね。ついでに近い位置にいるデレーナちゃんの声を聴くくらい造作もないんですよ☆」
「えぇぇ……」
本当に人間なのかどうか危うくなってきている気がする、たつなはそう思った。
「あ、たつなちゃん、どんどん歌を消化しないと、そろそろ時間が無くなっちゃうよ☆」
「誰のせいだと思ってるんだい!?」
「このやり取り、何回目だっけ?」
「ホアァァァァァ⤴⤴!」
たつな、遂に壊れる!
度重なるたつな様を困らせ隊とかいうファンたちや、ツッコミしまくりの初日ステージにより、たつなの常識人ダムが決壊!
「たつなが壊れたぞ!?」
「これやばくなーい?」
「ん、ちょうどいいましゅまろがあったからそれを読む」
『『『なんで!?』』』
会場中からツッコミが上がった。
【いるかちゃんがフリーダム過ぎるwww】
【たつな様が壊れた瞬間に、ましゅまろを読みだすのは草】
【カオスだァ……】
【これで前座ってマジ?】
【まあ、明日の方がヤバいのは目に見えてるし……】
「『四期生の常識人(予定)の者です。あー、その……自分も活動を始めたら一緒の枠で頑張るので、もう少しだけ頑張ってください。少し早められないか訊いてみようとは思いますので……』とのこと」
「「「うん!?」」」
「え……」
まさかすぎるましゅまろに、ひかり、刀、いくまは驚き、たつなは固まった。
【ちょっと待てや!?】
【おいこれ、四期生の常識人からのましゅまろじゃねーか!?】
【草ァ!】
【ナチュラルにましゅまろ入れる辺りはらいばーほーむといったところか】
【常識人枠がましゅまろ投げてて草生える】
「待って、え、ほんとに? 早められるか訊いてくれると言うのかい……!? わ、私のっ、私の地獄の終わりが近くなる、と……!?」
まさかの四期生の例の彼からのましゅまろに、たつな歓喜で打ち震える!
「ヤッタァァァァァァァァァ!!」
【たつな様がめっちゃ叫んどる!w】
【やっばい、面白いww】
【どんだけ嬉しいんだよw】
【たつな様が喜ぶレベルって考えたらそれ、みたまちゃん耐性を持ってると言うことでは?】
【君のような勘のいいガキは嫌いだよッ】
「あー、その、なんだ。よかったな、たつな!」
「じゃあ、もっと頑張れるね☆」
「やー、これで常識人が二人になるっしょー」
「ん、ガンバ」
「人の心とかないんか!?」
「「「「らいばーほーむの心はある!」」」」
「なんでそういうセリフがハモるのかなぁ!?」
再びツッコミを入れるたつなだったが、四期生の例の彼のメッセージを受けて、先ほどよりも心なしかツッコミをする気持ちが軽かったそうな。
たつなのHP(5/100)
どこかの四期生の彼のましゅまろを受けて、実は中の人がガチ泣きしかけてます。
ライブステージは次回で終わる予定! 最初の50話想定はどこへ行ったと言わんばかりの話数……現在、この話で43話目だったりします。一日目で50話弱ってやばくない……? しかもこれ、まだ書くこと多いんですが……掲示板と一日目終了後とか、間際とか、他にも書くこと多いんですが? あれ? もしかしてこれ……75話でも足りない……? 12月はいつ明けるんだろうか……。




