イベント1日目#Gー1 そりゃいるよね、みたいな二人
一日目の目玉である、おしゃべりコーナーから一度離れて、別の視点へ。
まず前提として、今回のらいばーほーむのリアルイベント『聖夜にはどんちゃん騒ぎ! 二日かけての狂人披露会! 吐血もあるよっ!』には、人間だけでなく、いろんな超常存在の者たちが参加しているイベントでもある。
神とか、天使とか。
現状、椎菜に関わりがあるのはこの二種族だが、実はそれ以外の超常存在なども来ていたりする。
まあ、そこはどうでもいいとして、大抵はらいばーほーむが大好きなので抽選に応募して、一喜一憂して、会場に来ているわけである。
なのでまあ……
「幸運……! 我が神子が参加する催しに来られること自体、圧倒的幸運……!」
「ふふふ、妾ら含め、現状この会場にいる神は……ふむ、20と言ったところじゃな。うむぅ、こうして考えると、人の子らに申し訳ないことをしたかもしれぬな」
椎菜がTS病を発症するきっかけになった神である美月と、その上司的立ち位置の神である、宇迦之御魂大神がいてもおかしくはないわけで……。
二名は普段は和装を身に纏っているが、さすがにこちらの世界に合わせるべく、洋装を身に纏っている。
割と普通の衣装だが、普通に美人なので結構人目を引いている。
「うか――ではなく、大神さん、正真正銘の運による抽選です。申し訳なく思うことはありません。何より、この会場には我々以外の人ならざる者たちがいるようですので」
「たしかに。見た所……天使、悪魔、妖魔、精霊がいるようじゃな…………人気過ぎんか?」
「超常ねっとわぁく上で、我が神子たちのことは広まっていますので。各種族で好みがわかれているようですが……」
「ふむん? どのような形なのじゃ?」
「天使は普段の状況から、我が神子と魔王を気に入っており、悪魔は我が神子の姉と幼い少女を愛するあの人の子を気に入り、精霊は常識的な人の子を、妖魔は天真爛漫な猫の人の子を気に入っていますね。とはいえ、共通していることは……結局全ての種族が我が神子を気に入っている上に、全てのらいばぁを推しているのですが」
「まあ、当然じゃな。あの神子は、あらゆる者を惹きつける何かがある故な。妾らは加護が関係しとるがな」
二人は現在開場前の行列に並んでいる。
しかし、話してる内容が内容なので、神の力を用いて、周囲にはなんてことない平凡な会話をしているように思わせている。
実際は、かなりファンタジーなアレだが。
「しかし……妖精はどうしたのじゃ? たしか、あやつらも我が神子たちを気に入っておったはずじゃが?」
「……妖精たちは、碌なことをしない上に、明らかに何かやらかしそうな雰囲気がありましたので、抽選で弾いています」
「あー……まあ、妖精、じゃからな。仕方あるまい。あやつらは、場所によってはとんでもないことをしかねん」
「あと、明らかにこう、無邪気な邪気という、矛盾した物を感じ取ったので……」
「良き判断」
弾きましたと言う美月に、宇迦之御魂大神こと大神がサムズアップをする。
「ともあれ、今日明日は全力で楽しまねば」
「そうですね。しかし、他の神々もいるはずですが……そう言えば、アメノウズメ様……あ、いえ、こちらでは三枝舞さんでしたね。舞さんはどこに?」
きょろきょろと、この会場に来ている他の神の内の一柱である、アメノウズメこと、三枝舞の場所を訊く。
「あの者は小さいからのう……まあ、問題はあるまい。あの者も見た目は幼いとはいえ、神であることに違いはない。暴漢に襲われようとも、軽々切り抜けられよう」
「それもそうですね。たしか、神子の相方との一対一で談笑が出来る物を当てていたはずでしたか?」
「そうじゃな。あの者は芸能を司る神。ある意味では、あの者との相対が当選すると言うのも、おかしな話ではないじゃろう」
「……大丈夫でしょうか」
大神の返しを聞き、美月は少し心配そうな表情を浮かべる。
それに対して、大神がどういうことかと聞き返す。
「む? 何か心配事でもあるのかの?」
「その……我が神子の相方を務めるあの少女は、ある意味では舞さんとの相性が良く……あの方、暴走しませんかね?」
「あー……それがあったか…………結局、あの阿呆な主神が全員に小さめとはいえ、加護を授けておるが……その前では、誰が誰に加護を授けるか、という話題にもなったからのう……アメノウズメの奴も、割とはしゃいでおったし……あれ? 実はかなり危ないのではなかろうか?」
「……大神さん、私たちは何も気づいていない、ことにしませんか?」
「……それもそうじゃな! どうせやらかす奴はやらかす! 妾は知らぬ! あれもこれも、阿呆な主神が地上にバカンスへ行くとか言う、阿呆なことをしでかしたのが悪い! つまり、妾らが悪いわけではない!」
「ですね! もうすぐ開場みたいですし、楽しみましょうか!」
「じゃな!」
都合の悪いことは考えない! というのは、神々にとっても割とよくある事だったようで、二人は厄介ごとについて考えるのを止めた。
そんなことよりもイベントだイベントォ! とでもいわんばかりである。
まあ、実際そうなのだが。
ともあれ、一仕事(転売ヤーやよからぬことを考える厄介ファンなどをはじく仕事)を終えた二人は、今日明日を全力で楽しむことを決めていたし、全力投球する気満々である。
二人にとっての本番は明日なのだが。
二人とも、ロリピュアのステージが当たっているので。
本音を言えば、一日目のおしゃべりコーナー(神子)を当てたかったそうだが、ステージが当たったので良しとしている。
さて、そんなこんなでイベント開始時間となり、開場となったわけで。
二人がいるのは、実はかなり前方。
なんだったら、先頭に限りなく近い位置にいる。
本当は先頭に並ぶつもりだったのだが、それよりも圧倒的に早く来ている強者がいたため、阻止された。
二人は外見上はにっこり笑顔を浮かべているのに、ものすごい圧をその先頭の強者にかけまくっていたため、先頭の強者は怖かったとか。
何はともあれ開場の時間になり、早速会場内へうっきうきで入ろうとして……
『おにぃたま、おねぇたまっ! らいばーほーむイベントに来てくれてありがとうっ! いっぱいいっぱい楽しんでもらえるように頑張りゅっ……あぅぅ~~~っ! か、噛んじゃったよぉ~~~~っ! や、やり直し……へ? こ、これでいくんですかぁっ!? ふぇぇぇ~~~~!?』
という、らいばーほーむが仕掛けた即死トラップの洗礼を受ける!
「「がはぁっ!」」
そして、二人は血を噴き出して倒れた!
そしてそれは、この二人だけでなく、その他の来場者たちにも言えたことであり、血を噴き出して倒れる者が続出。
可愛いが一点特化したTSロリの殺戮館内ボイスは強すぎるのである。
◇
それから、なんとか復帰した二人は館内を歩く。
「ま、まさか、入り口で殺されるとは……私、一瞬幽世が見えました」
「奇遇じゃな。妾も。というか、閻魔がものすごい隈を作っておったな。今にも死んでしまいそうな表情で、ひたすらに判子を押しておったが」
「……イベントが終わったら、絶対に労わった方がよろしいかと」
「向こうには、伊邪那美がいるはずじゃが……」
「おそらく、働いているかと」
「……うむ、色々と考えねば」
一瞬だけ見えたあの世の閻魔大王や、あの世で働く者たちを労わらなければと、大神は強く思った。
「ふぅむ……しかし、やはりおらん、か……」
「もしかしなくても、あの方ですか?」
「うむ。あの阿呆もらいばぁほぉむを好んでおった故、もしかするとこの場にいるのでは? と思ったのじゃが……やはり、気配を感じん」
「あの方、気配を完璧に隠蔽しますからね……神気が一片たりとも漏れださないとか、どうすればできるんですか?」
「知らぬ。妾ですらほんの僅かに漏れ出てしまうと言うのに……」
二人の頭の中に浮かぶのは、ある時から地上へバカンスしに行ってきますと言って、未だに帰ってこないどころか、どこにいるのか不明な人物である、天照大御神である。
らいばーほーむ好きなので、この場に来ているのかもと期待した二人だったが、その期待は外れたようだ。
「まあ、もとよりあれはおまけ。妾らは、楽しまねば勿体ない。でなければ、神界に残った神々共に恨まれかねん」
「そもそも恨まれてるかと」
「嫉妬と怨嗟、すごかったからのう……」
神界のことを思い出し、二人は苦笑いを零す。
当たらなかった神々の怨嗟の籠った表情はすさまじかったなぁ、と。
「お、どうやらちょっとした遊戯があるらしいな。よし、とりあえず、制覇するぞ、制覇!」
「はい」
が、すぐに目の前の方に意識が向いたので、ミニゲームを制覇するべく、館内を歩き回る。
もちろん、グッズ購入をするための整理券も忘れない。
二人は全力でイベントを楽しむ。
変態撃退ゲームをプレイして、誤って神子を撃ってしまった時に現れた邪神に悲鳴を上げたり、邪神がメインの例の激ムズ難易度のクイズをした時は、しれっと邪神をクリアして周囲を引かせたり、いるかがメインの声真似クイズを楽しんだりと、イベントをエンジョイ。
合間合間には展示物を見たり、神子関係の展示物を見ては写真を撮りまくり、それはもう楽しんでいた二人。
そんな中、ふと……
「やー、まさか全員当たりを引くとは! うちらついてるねぇ!」
「わたくしもかなり驚きましたわ。それに、みたま様の缶バッヂも手に入れることができましたし、満足ですわ! 明日も食べます!」
「うふふ、その時は私もご一緒させてくださいね?」
「うちもだぜぇ!」
「もちろんですわ! あぁ、明日もお二方と一緒に回れるなど、素晴らしい偶然があったものです。わたくし、ここまで仲良くなることができた方はおりませんでしたので、とても嬉しいですわ」
「そりゃあ、うちもってもんよ!」
「私も、対等と言う意味ではお二人が初めてかも知れません。よいものですね、対等な友人と言うのは」
そんな会話をする三人組の女性とすれ違う。
「「……うん?」」
その中で、やたらと気品があると言うか、上品と言うか、明らかに普通ではなさそうなかなりの美貌を持った美女がおり、二人はその人物を見てうぅん? と訝しんだ。
あれ、なんかどっかで見たことない? みたいな。
いやでも……うーん? みたいな。
二人が首をひねっている間に、その三人組は去って行ってしまった。
「……大神さん、先ほどの明らかに普通ではない美貌を持った方、どこかで見た気がしたのですが」
「……いや、まさかあの阿呆主神と出くわすわけ……いやしかし、あの阿呆主神は、どのような容姿にしても、毎度毎度かなりの美貌を持ってはおったが……まあ、気のせいじゃろう!」
「ちなみに、本音は?」
「楽しい祭りに、妾らを見捨てて逃亡した阿呆な主神で頭を悩ませたくない」
「同感です」
あっはっは! と二人は大笑いしながら、さきほどの女性は忘れてそのままイベントの方に意識を戻すのであった。
そりゃいるよね、みたいな二人の話しでした!
本当は、Sー2をやろうと思ったのですが、色々あってこっちになりました。
それから、昨日後半戦のルーレットを回したのですが……えー、なんというか、面白いことになった、とだけ。一部のメンツは前半とあまり大差ない順番だったりしますが、なんかね、前半とはまた違った意味で面白い順番になりました。最後の方。
さぁ、ヤバい人たちはどこで来るのかなぁ!?




