イベント1日目#おしゃべりコーナー:9 刀の場合:上
休むと言ったな、(以下略
微妙に不穏な所があるいくまから一転して。
次は……
「よぉ! 俺のおしゃべりコーナーに来てくれてありがとな! 宮剣刀だ!」
らいばーほーむ最初の男性ライバーである、宮剣刀だった。
『え、待って、無理無理無理っ、カッコ良すぎぃっ……これは、夢……?』
限界オタクと化した女性ファン。
相当な刀推しなようで、よく見ると来ているシャツに、刀のイラストがプリントされている。
あと、普通に泣いてる。
「おっと、夢じゃないぜ! これは現実だ! そんじゃ、俺としても呼び方に困るんで、名前を教えてくれ!」
『崎守亜子でしゅ……』
「んじゃ、亜子だな! 今日は楽しんでってくれよな!」
『え、推しが私の名前を呼んでくれた……?! ど、どうしよう、幸せ過ぎて死にそう……もってっ! 私の心臓……!』
「ははは! なかなか面白いな! そんなに俺に会えて嬉しいのか?」
『それはもうっ! だって、らいばーほーむの最推しだものっ! 出会いの無い退屈な日常なんてどうでもよくなるくらいの、推しっ! 推し活! それが私の生きる原動力!』
「そこまで言われると、なんだか照れるな。ともあれ、ありがとな! 亜子のようなファンがいるおかげで、俺も楽しくやれてるんだしな!」
『そんなっ、私なんて数多いる刀君推しの中の小石みたいなものですから!』
「俺にとっては、小石じゃなくて、ファンは全員宝石だと思ってるぜ」
ニッ、と笑いながら歯の浮くようなセリフを爽やかスマイルで言う刀だが、ビジュアルも声もいいので、普通に様になっている。
そんなセリフと表情を向けられた女性ファンは、
『やっばぁ~~~~っ……生刀君、カッコ良すぎぃ……あぁっ、神様感謝します……! 神社のお賽銭箱に5万円突っ込んでよかったっ……!』
とか、割ととんでもないことを言っていた。
「お参りに5万も突っ込むとかすごいな!」
『それくらい、刀君に会いたかったんですっ……!』
「そうかそうか! そこまで思われて、配信者冥利に尽きるってもんだぜ! とはいえ、さすがにお賽銭に5万はやり過ぎだと思うんで、今後はもうちょっと額を少なくしようぜ! これで亜子の生活が苦しくなったら、申し訳ないしな!」
『ナチュラルイケメン過ぎる……』
ドン引きするのではなく、心配すると言う辺りが刀らしいと言えよう。
普通にイケメンである。
「それで、亜子は普段は何をしてるんだ?」
『会社で受付嬢を』
「へぇ! なるほどな! 亜子はたしかに、綺麗な顔をしてるし、向いてるかもな!」
『へひゃ!?』
突然、綺麗な顔をしてると言われて、変な声を上げる。
「だが、受付嬢って結構大変な仕事って聞くが、そこんとこってどうなんだ?」
『あ、そ、そうですね!? その、やっぱりストレスがすごいって感じで……』
「まー、会社の顔として仕事するわけだしなー」
『は、はい。それで、たまにその、しつこく言い寄って来る人もいたりして……でも、そう言う人に限って、偉い人だったりするので、質が悪いんですよね……』
「なるほどなぁ……。物語でよく聞くが、実際のあるのか」
『まあ、今は普通にセクハラとか、パワハラで訴えられますけど、それでもその、言い出しにくくて……』
「そりゃそうだろうな。出来るとわかってはいても、実際にはできないなんて、世の中いっぱいあるしな! むしろ、辞めてないだけすげぇぜ! ってか、亜子はどれくらい受付嬢の仕事をしてるんだ?」
『かれこれ6年くらいは』
「6年か! 嫌なことも多いだろうに、すげぇな!」
『あ、あはは……でも、その、暇を持て余すこともありますけどね』
「へぇ! そうなのか! まあでも、ずっと人と関わってるわけじゃないもんな!」
『そ、そうですね。それ以外だと、やっぱり自分のことじゃないのにクレームを言われたり、常に言葉遣いに気を遣わなきゃですし、他にも常に愛想を良くしてないといけないので、疲れちゃって……』
「それはそうだろうなぁ。でも、それを6年も続けてるんだろ? 今なんて、すぐに仕事を辞める人もいる中、6年も続けてるのは素直に尊敬するぜ!」
『……や、やばいっ、推しに褒められまくるの、めっちゃ快感っ……! 色々心配になって来た……!』
初めて相対する推しに、いい笑顔とイケボで褒められまくって、女性ファンは色々と心配になった。
何が心配になったかは……女性ファンの名誉のために、色々、とだけ言っておこう。
『あ、そ、そう言えば! 刀君は、たしか、ジムのインストラクターでしたっけ?』
「おう! 元々、体育系の大学にいたからな! 運動は得意なんだぜ」
『どういう人が来るんですか?』
「どういう人か、か……そうだな。男女関係なく来るが、女性の会員が多いな! もちろん、男性の会員もいるぜ! 割合的には、4:6ってとこだが」
『男女関係なく来るんですね』
「おう! 結構楽しいんだぜ? ジムに来るのは、何も鍛えるのが目的の人ばっかじゃないからな! 健康のためだったり、ダイエットのためだったり、利用者によって変わって来る。で、そう言う人たちからは色々面白い話が聞けてな! これが楽しいんだ!」
『へぇ~! ちなみに、どういう職業の人がいるんですか?』
「ん? そうだな……やっぱ、普通の会社員が大多数だが……たまーに、アイドルだったり芸能人がお忍びで来る! なんてことがあるな!」
『すごくないですか!?』
「そうだな! けど、あくまでも鍛えに来てるんだし、俺たちがするのはお近づきになろうとすることじゃなく、相手の希望に沿ったメニューを提案することだから、特に気にしてないんだけどな! 会員は会員! ってわけだ!」
『カッコいい……』
快活に笑いながら、自分の仕事について話す刀に、女性ファンはすごい、と感嘆の声を零す。
基本的に、相手がだれであろうと公平に接するのが刀と言う男である。
職業柄、様々な人を相手にすることがある。
たまに、なかなかすごい仕事に就いてる人とも話したりするし、人によっては拒否反応を示す人もいるくらいだ。
が、そこは刀である。
そう言う人たちを色眼鏡で見たりすることはなく、普通に接するのだ。
だからだろう……こいつは普通にモテるし、厄介なファンを作ってしまうのである。
なんだったら、刀目当てで来る女性の方が多い。
というか、女性客は基本的に刀目当てである。
職業関係なく惚れさせているこいつもなかなかだが……まあ、そもそもの話、刀の好みは所謂文学系少女、みたいな大人しい女性が好みなので、肉食系女子とはある意味合わないのだが。
あと、限りなく少数ではあるものの、男の中にもそう言う意味で刀が好きな人もいる。
刀はそれを気付いたうえで、引いたり、軽蔑したりするなんてことはなく、普通に接することが出来ているので、本当に漢である。
それから、客の一人に暁がいたりする。
地味に暁も通っているのである。
そして、刀と暁の二人を見て、腐女子の皆様が妄想でぐへへしてるのは言わずもがな。
「ま、今はその仕事もしながら、VTuberもやってるからな! 毎日忙しいが、充実してるぜ」
『私も、仕事しつつの推し活で充実してます……! あとは、彼氏が出来れば最高なんですけどね!』
「そうだなぁ、やっぱ恋人がいたら、楽しそうだよな!」
『刀君には、暁きゅんという可愛い彼氏がいるじゃないですか……!』
「はっはっは! さすがに、俺も暁も、ちゃんと女性が好きだぜ? ま、男としてはびっくりするくらい馬が合うからな! 最悪彼女が出来なくても、あいつとバカやれりゃいいんだがな!」
『……こ、公式から最大のデレが……!? や、やはり、刀×暁は、リアルで……っ!』
刀の爆弾発言とも言うべき言葉に、女性ファンは、やはりっ……! とそれはもうすごい顔をした。
よく見ると、ガリガリガリ、と手帳に何かを書き込んでいるようである。
ちなみに、このおしゃべりコーナーは、スマホやカメラのような、映像や音声を録音できるものの持ち込みは禁止されているが、手帳やペンなどは別に禁止されていない。
『ありがとうございますっ! 学会に報告し、素晴らしいネタを創り出してもらいます……!』
「おう! なにがなんだかわからないが、いいのが出来るといいな!」
『はいっ!』
この女性とは、普通の会話をして終了となった。
それからも、様々なファンを相手にする。
「おっ! 次は、男性だな! というわけで、宮剣刀だ! よろしくな!」
『こちらこそ』
続いてやって来たのは、男性であった。
どこかお堅い雰囲気の眼鏡をかけた男性であり、とてもじゃないが刀のファンには見えないが……。
「よし! 名前を教えてくれるか?」
『朝野京也です』
「じゃあ、京也だな! 京也は俺のとこに来たってことは、一期生に応募したのか?」
『そうですね』
「なら、他の三人が目当てってとこか?」
『いや、自分は一期推しなので、一期生なら誰でも嬉しかった感じです』
「へぇ! それは嬉しいな! 俺も含まれてるのか!」
『そうですね。見ていて思わず笑ってしまうくらいには。あと、個人的には趣味が近いので』
「趣味?」
『はい。実は……ギャルゲーが好きなんですよ。特に、大人しい系のキャラが好きです』
「へぇ! それはいい趣味してるぜ!」
男の趣味は、見た目に反してまさかのギャルゲーであった。
どう見ても、読書とか言ってきそうな外見なのだが、人は見かけによらないということだろう。
『できる限り、無表情で、物静かな感じだと自分は嬉しいです』
「俺は、小動物っぽい感じがあるといいな!」
『たしかに。あれはあれで愛らしい。最初は警戒しているものの、接していく内に警戒心が解け、気が付くとおずおずと甘えて来る感じがいいですよね』
「わかってんな! 京也! やっぱそうだよな! こう、ちょこちょこする感じがいいよな! 付き合ったら、遠慮がちに腕を掴むのもいい!」
『わかります。小さいからこその、愛らしさは筆舌に尽くしがたいものがあります』
「そうだよな! あと、京也の言う、無表情で物静かなタイプもいいよな! 本を読むことが大好きで、それ以外は興味なかったのに、いざ主人公と交流するようになると、恋愛にも興味を出すようになるとかな!」
『それです』
「あと、そういうタイプは、やたらさりげなく甘えるのが上手い気がするぜ。自然とキスとかするよな!」
『そこがいいんですよね。無表情でありつつも、頬が赤くなっていると尚良し。そして、時折見せる微笑みがまた素晴らしい』
「わかってるじゃねぇか、京也」
『自分も、実際に喋ってみて、ここまで話が合うとは思いませんでしたよ』
そう言いながら二人は、ふっと笑みを浮かべる。
もし、生身同士で対面していた場合は、ガシィッ! と握手をしていそうである。
「あとはあれだ。主人公のために、色々とエロ知識を仕入れちゃうとことかいいよな!」
『それで、間違った知識を持って来て、それを指摘されて赤面するところもセットで』
「京也……マジでわかってるじゃねぇか!」
『どうやら、好みがほぼ同じようですね。では、おすすめのゲームを言い合うのはどうでしょうか?』
「いいなそれ! ついでに、男同士で猥談しようぜ!」
『是非に』
お互いの趣味がほぼ一致していたからか、二人はなんか仲良くなった。
この後、お互いのおすすめエロゲを言い合い、そう言う話に花を咲かせて、時間は終了となった。
はい、9人目は刀でした!
えー、はい。先に言わせてください。私は仕組んでないからね!? 本当に、あいつらが最後になっちゃったんだよっ……!
おかしくね? よりにもよって、最後に残るのが、シスコン、ロリコン、核弾頭だよ? ルーレット神空気読み過ぎだよ! 一生ついて行く!
それから、前回のいくまが闇深いというコメントをそれなりに貰いまして、一つだけ開示(?)をば。
何名かのコメントには返しましたが、あいつの実体験らしきセリフ、あれ、あいつの闇深い事情を知った後に聞くと「いやなんでそのテンションでそれ言えるの!?」ってなります。
あともう一つ情報開示。いくまの学生時代は……実は今ほど明るくなかったし、どっちかと言えば、やや内気だった。何があって、高校卒業後にギャル化して、委員長スキーになったのかは、相当重いので、まあ、どこかのQ&Aで触れます。




