イベント1日目#おしゃべりコーナー:4 暁の場合:上
色々と終わってるおぎゃる常識人は一旦流し、続いての人物へ。
次に続いての人物は……
「やぁ、こんにちはお姉ちゃん、詩与太暁だよー」
暁であった。
らいばーほーむに三人(?)しかいない、男性ライバー枠の一人であり、中身もガワもゴリゴリの男の娘な21歳大学三年生である。
らいばーほーむの三分の一しかいない学生組の一人もである。
『あぁっ……生っ、生暁きゅんっ……もう死んでもいいっ……!』
「おっとー、初手からフルスロットルな人が来たなー」
そんな暁の最初のおしゃべりの相手は、20代半ばの女性である。
既に死んでもいいとか言っているが……まあ、暁のファンは大体こんなものである。
「まあでも、今日は来てくれてありがとねー。お姉ちゃんはどこから来たのかなー?」
『神奈川よ!』
「あ、結構会場から近いねぇ。そっかー、神奈川……ボクは地元以外じゃ、修学旅行で遠方に行ったくらいしかないからなー」
『暁きゅんは行ったことがないの?』
「んー、小学生くらいの頃に鎌倉に行ったかなー? ってくらい。でも、台風が来た後だったから、六年生以外は学校休みになっちゃったし、なんだったらボクたちの方も、予定変更を余儀なくされたけどねー」
『なんて不憫っ……でも、今の暁きゅんでも、きっと小学生に交じっても、問題ないと思うわっ!』
「あははー。それはちょっとやってみたくはあるけど、バレたら……あー、でも、案外バレないかも? っていうか、未だに小学生って間違われるんだよねー」
『今でも……!?』
「うん、今でもー。ほら、大学って小学校~高校までとは違って、決まったクラスとかないでしょー? だから、新入生とか、会ったことがない同学年の人とかに、間違われてねー」
『な、なんてことっ……!』
「んー? お姉ちゃん、どうしたのー?」
『ち、ちなみに、何かこう、変わったこととかはっ!?』
「変わったこと? ん~、そうだねぇ……あ、最初は心配そうに迷子か訊いてくるんだけど、ボクが実年齢を言うと、みんなこう、息が荒くなるんだよねぇ。あと、やたらとデートに誘って来るねぇ」
『なんっ、だとっ……!? あ、そ、それって、ついて行ったりとかは……』
「ボク個人としては面白そうだなー、って思ってて、行ってもいいかなーってなるんだけど、やー刀先輩について行くなよ! って笑いながら言われてるから、行ってないんだよね」
『ほっ……でも、暁きゅん絶対気を付けた方がいいとお姉さん思うな!』
「んー?」
『そういうのって……大抵エロ同人みたいになると思うの』
「あー、たしかに」
圧倒的ツッコミ不在ッ!
普通の男であれば、間違いなくツッコミを入れていたことだろう!
だがしかし、ここにいるのは、普通じゃない人生を歩んできた、現役大学生で男の娘な詩与太暁である。
『いや、むしろ、ぐへへな絵面が現実で実現可能と言う時点で、むしろということさえっ……!』
「まー、年上でドSなお姉さんだったら、結構ヤバいかなー。ボクの好みってそれだしねー」
『暁きゅんは、刀君とのカップリングがすでに成立しているはずでは!?』
「あ、そう言えばそうだったねー。まあでも、ボクにそっちの気はないしなー。けど、刀先輩と一緒に暮らすとかは楽しそうだよね」
『マジですか!?』
「マジだよー」
『つ、つまり、あ、あんなことや、こんなことを……!?』
「ん~、一緒にエロゲプレイして、深夜テンションでふざけるくらいはするかなぁ。あ、でも、たまにお互いの家に泊まるし、単純にそれが毎日になるだけかな?」
『毎日!? くっ、素晴らしすぎる情報が洪水の如く押し寄せてくるっ……! というか、最高過ぎる!』
「いい情報を上げられたらよしかなー」
やはり、ツッコミが不在!
というか、明らかに腐の者なのに、まったく気にした素振りがないどころか、むしろファンサのようなことをしている時点で、メンタルが鋼だろう。
通常であれば、こんなことを目の前でされようものなら、ちょっとは引いたり、嫌だなぁ、くらいは思うのだろうが、暁は今までの自分の経験からそんなこと一切思うことがない。
そもそものスタンスが、
『ボクたちで周囲に被害が出るようなことをしなければ気にしないよー』
というものなので。
つまり、どれだけやたら濃いBLの同人誌が出ようが、妄想の中であれこれされようが、ドギツイ内容のエロ同人が出ようが、まったく気にしないのである。
というかこの男、たまーにそう言うのを自分で見るタイプである。
なんだったら、過去に相方と一緒に、全年齢向けのBL同人を全力朗読した経験がある。
その配信については普通にノリノリだったし、腐の者たちからは大好評で、しかもそれの作者が推しカプたちに自分の作品をノリノリで読んでもらえたという幸福感と、本人たちに全力朗読されたという羞恥心が理由で、鼻血をまき散らしながら死んだと言う話が合ったりもした。
尚、その配信は、24時間耐久ギャルゲ全力朗読の次に見られた配信でもある。
余談ではあるが、暁のリスナーの男女比は、3:7である。
相方は、4:6。
「あ、ちょうどあっちの人だと思うし、聞きたいことがあったんだよねー」
『あ、暁きゅんが、私に……!? 何でも言って! 口座番号? あ、私の貯金額!?』
「やー、お金はいいかなー。というか、番号を知っても意味ないよー?」
『推しに貯金額を把握されてるって、こう、すごくいいなーって思って』
「レベルが高いねぇ。でもまあ、ボクも好きなエロゲ声優の人に知られてたらちょっと興奮するかも?」
『暁きゅんの興奮する発言、頂きましたッ!』
「これくらいなんでもないんだけどねぇ」
あははー、と笑う暁。
基本的に、エロ知識が普通にあることと、ドSが好きなMということを除けば、割と性格はどこかのお狐ロリに近いものがあるので、なんだかんだこいつも普通に天然である。
まあ、それが逆に腐の者たちからの人気を加速させている要因にもなっているが……。
『ところで、聞きたい事って? 何でも言って!』
「やー、実は次の配信ネタで、ボクと刀先輩のいい感じの同人誌ないかなーって思っててね。なので、全年齢対象で、何かいい作品知らないかなーって思って」
『そ、そのような重大な役目を、この私に……!?』
「そこまで重大かなー?」
『で、でも、それは配信でやるわけで……ぶ、部外者に知らせてもいいの!?』
「問題なしー。というか、やる内容を知っていたからと言って、面白くなくなるようならいばーほーむじゃないよー」
『100%信頼できる言葉……!』
らいばーほーむに関することは、らいばーほーむだから、で片付くと言うのはファンたちだけでなく、ライバー側もそう思っている辺り、確信犯が多いのだ。
「それで、あるかなー?」
『そうね……あ、我々、学会の中でもかなりの人気と信者を持つ、紫薔薇小百合という同人作家がいて、その人の純愛が最高!』
「へぇ~~、紫薔薇小百合さんね~。代表的なタイトルとかはー?」
『そうね……あ、全力☆朗読部、とかはすっごくよかったわ!』
「タイトルから察するに、ボクと刀先輩が同じ部活に所属する、みたいな話ー?」
『その通り!』
「へ~~、面白い?」
『刀×暁限定の傑作同人作品は何? と訊かれると、9割が名前だすくらいには』
「へぇ~~~! それはいいね! うん、参考にさせてもらうよー」
『ありがとうっ! きっと、作者の紫薔薇小百合も全身の穴と言う穴から体液をまき散らして悦ぶと思うわっ!』
「脱水症状には気を付けてって伝えてくれるー?」
『もちろん!』
ツッコミなどなく、普通に進んでいくことは、ある意味恐怖ではなかろうか。
尚、この場に苦労人とおぎゃリストがいた場合、普通にツッコミが入る。
「やー、お姉ちゃんのおかげで、いいネタが手に入ったよ~。ネタ探しに、掲示板を見に行った方がいいかなー」
『そ、それはダメよっ!』
「そうなのー?」
『だって、ドギツイんだものっ……! 22時~5時までは、ひたすらにぐちょぐちょのべちょべちょで、ねちょねちょだものっ……!』
「気になる擬音が出て来たなー」
『いくら寛容な二人でも、引かれるッッ……!』
「ん~、ボクたちは被害を出さなきゃ引かないけどなー」
ある意味で、最悪の擬音が出て来たのに、気になるだけで済む上に、ツッコミを一切しないのはどうかと思う。
「まあいっか。それじゃあ、別に話題に行こー」
『どこまでもっ!』
と言う感じで、最初のファンとのおしゃべりを終える。
その後も様々なファンが来るわけだが、たまに息が荒い上に女性として色々と終わってる表情を浮かべていた女性ファンもいたが、暁は天然だし、普通にそう言う顔の女性は見慣れていたので、特に気にすることなく普通に会話した。
「おー? 珍しく、お兄ちゃんな人が来たねー。どーもー、詩与太暁だよー」
『佐藤輝彦です……』
「輝彦お兄ちゃんだねー。なんだか浮かない顔をしてるけど、何かあったー?」
次に相手をしていたのは、暁にしては珍しい、男性のファン(?)であった。
まあ、誰が当たるかはランダムなので、別のライバーのファンの可能性もあるのだが。
そんな男性ファン(?)は、どこか浮かない顔をしており、それに気づいた暁が何かあったのかと話しかける。
『いやー……実は俺、彼女がいまして』
「おー、彼女さん」
まさかの彼女持ちに、暁はどこか感心した様子を見せた。
『お互いにらいばーほーむのファンで、まあ、今回のイベントも抽選に応募したんです……』
「ふむふむー?」
『そしたら、お互いにチケットは当たったんですが……彼女は二日目で、俺は一日目のおしゃべりコーナーが当たりまして……』
「なるほどなるほどー?」
『彼女、入場券だけが当たったんですが、超大喜びで……』
「ふんふん」
『で、俺が一日目のおしゃべりコーナー当てたって言ったら……殴られました』
「おっとー? 急にDVの話しかなー?」
まさかの展開に、暁がDVを疑う。
『あ、いえ、別に普段から暴力を振るわれてるわけじゃないですよ? まあ、そう言う方面ではちょっとありますが……』
「え、相手は年上?」
『へ? あ、ハイ。年上です』
「ドS?」
『あー……そういう時はかなり』
「へぇ~~~~~! いいね、いいねー! ボク、そう言う人が好みだから、お兄ちゃんが羨ましいなー!」
暁、自分の好みなタイプと付き合ってるという、男性ファン(?)の話題そっちのけで食いつく!
色々と終わってる!
『あ、あはは、いやぁ、控えめに言って……最高ですよね』
「ほほ~~う!」
『って、あ、そうじゃなくて……彼女の話です』
「おっと、その話の続きは後で聞くとしてー……それで、殴られてどうしたの?」
『俺の推しはいくまっちなんですけど、彼女の推し……暁さんなんですよ』
「おー、それは嬉しいねぇ。まあでも、らいばーほーむの女性ファンって、大体刀先輩かたつな先輩、ボク、みたまちゃんに偏ってるよねー。あ、いるかちゃんも割といるんだっけー。そう言う意味なら、女性ファンとしては割とスタンダード?」
尚そのスタンダードたち、もれなくたつな以外が癖強だ。
『そうだと思います。それで、まあ……推しではなかったけど、全然嬉しいですし、楽しんでくる! って言ったら……パイルドライバーをくらいまして』
「おおぅ、バイオレンス」
『まあ、彼女からの暴力はご褒美なので』
「うんうん、お互いがそれでいいならそれも愛だと思うよー」
パイルドライバーをかましてくる彼女に対するツッコミは無いようである。
『ありがとうございます。それでまあ……彼女、暁さんと会話できるのが羨ましいとかで……実は1秒刻みでLINNでスタンプを送られてくるんです』
「通信量、大丈夫?」
『制限なしのプランなので』
「じゃあ大丈夫だねー」
『それはそうなんですけど、バッテリーが……』
「たしかに、1秒ごとに通知はすぐになくなりそうだよねー」
『はい……まあ、物販でほしい物はあらかじめ聞いてるので何とかなるんですけど……はぁ、彼女、どうやったら機嫌を直してくれるのか……』
「そうだねー。あんまりこういうことはよくないんだけど、一つだけ、ボクが力を貸して上げよー」
『え?』
溜息を吐いて困っている彼女持ち系らいばーほーむファンの男性に、暁はよくないことだと前置きしてから、力を貸すと告げた。
すると、男性ファンはどういうことだと、どこか呆けた顔をする。
「ん~、さすがに録音はできないからねー。とりあえず、今から言う合言葉を覚えてねー」
『え、あ、はい!』
「『ドS系お姉さん最高』。これを、ボクのDMに送るように言ってくれるー? そしたら、一度だけ言って欲しいセリフを、ボクが配信で言ってあげるよ」
『それいいんですか!?』
「ん~、社長にはちゃんと報告するよー。多分あの人、普通に面白がってOKすると思うし」
などと言っているが、あの社長なら間違いなくOKする。
あの人、危険なことじゃない限りは、らいばーほーむのメンバーたちの要望は聞くつもりなので。
『さすがらいばーほーむの社長』
「普通なら、一発大炎上で死ぬほど燃えるだろうけど、まー、らいばーほーむだからねー」
『なるほど……でも、結構みなさんある程度の線引きはしてます、よね?』
「それはそうだよー。ボクたちの場合は、普通の箱だったら炎上しかねないことでも、まあ、らいばーほーむだから、で済まされるようにはなってるけど、それでも炎上の危険は孕んでるからねー。明確にこれはやっちゃだめ、って実は裏で共有してるんだよー」
『そうなんですね! あ、でも、当然と言えば当然……?』
「そうだねー。何が燃え上がるかわからないしね。その辺りに詳しい、たつな先輩とか、ひかり先輩が、色々と資料としてまとめてくれてるんだよー」
『たつな様はともかく、シスコン……?』
「あの人、なんだかんだ超ハイスペックだし、面倒見がいいからねー。あと、なーぜかその手のことに詳しかったしー」
『さすがシスコン……!』
尚、そのシスコンがその手のことに詳しいのには色々と理由があるのだが、とりあえず、職業柄と同人作家としての側面、それから過去のあの勝手に転落して行った奴らが理由とだけ。
「ということだから、彼女さんに伝えといてねー」
『ありがとうございますっ!』
「うんうん。それじゃあ、その彼女さんとのイチャイチャエピソードについて教えてほいしなー! お礼として!」
『え、でもかなり下世話な話になると思うんですが……』
「普段から配信でエロゲネタをやってるボクからすれば、今更だよー」
『たしかに……!』
「というわけだから、話せる範囲で猥談しよー」
『了解です!』
お礼と称して彼女持ちらいばーほーむファンの男性とは、そう言う話で盛り上がった。ノリが実に男子高校生であった。
紫薔薇小百合さんは、超売れっ子マンガ家だったりしますが、本人の性癖が、BLと百合。男女間の恋愛は好きじゃねぇ! 同性愛だ同性愛! 同性愛が至高! とか言うタイプ。腐女子で百合好き。癖……。
それから、こっちはまあ、おしゃべりコーナーの順番について。
もう面倒だから、と言う理由で、昨日全部ルーレットで決め終えたんですけど……すごいね、神様っているんだろうな、って思った結果になり、思わず爆笑しました。そんなことある!? って。神がかってるわー。
なので、順番を予想してみてね!




