#113 障害物競走、ある意味アクシデント?
薄味だよ!
「たっだいまー!」
「戻ったぞ……」
「おかえり、二人とも……って、柊君どうしたの? すっごく疲れたような顔をしてるけど……」
借り物・借り人競争が終わって、二人が帰ってきました。
麗奈ちゃんの方は楽しそうに帰って来たけど、柊君の方はなぜかすごく苦い顔というか……何があったんだろう?
「まあ、気にするな……っと、そんなことより、だ。次は障害物競争だったか? 椎菜、出番だぞ」
「あ、そうだった! じゃあ、頑張らないとね!」
「頑張ってね、椎菜ちゃん!」
「うんっ!」
「まあ、今の椎菜相手に障害物を出しても、あまり意味がなさそうな気もするがな……というか、割と反則じゃないか?」
「そ、そうかな? いくら身体能力が高くても、出来ないこともあるような……」
「……愛菜さんにある程度護身術を教えられてる時点でなぁ……」
「ん~、たしかに、お姉ちゃんからはいろんな場面の対処法とか教わってるけど……っと、じゃあ、僕そろそろお着替えして、行って来るね!」
「あぁ、まあ、頑張ってな」
応援を貰いつつ、僕は一度チアガール衣装から普通の体操着に着替えるために、更衣室へ行きました。
◇
というわけで、体操着に着替えて集合場所へ移動してくると……。
「あ、あれ? あんな壁、あったっけ……?」
グラウンドの一部にロープが垂らされた壁……というか、急勾配な坂? のようなものがありました。
去年、無かったような気がするんだけど……!?
周囲を見回してみると、僕と同じように突然グラウンドに設置された障害物? に首を傾げたり怪訝そうな顔をする選手の人たちが。
だよね!
『えー、はい、どうやら準備が出来たようですので、これから今年の障害物競争の説明を致します! はい、まず選手の皆様がスタートラインに立っていただきますと、前方に何やら巨大な壁があるかと思いますが、あれは見ての通りです! 高さ大体8メートルほどの超急勾配な坂……というか、壁を上ってもらいます。登り方については特に問いませんが、安全確保のため、地面にはクッションが置かれておりますし、すぐに対応できるように筋肉自慢の教職員の方々が控えておりますので、そこはご安心ください。安全マージンはしっかりしております。とはいえ、ロープを使った方が安全ではあると思います。まあ、怖くて登れねえ! って人がいれば、その場で腕立て伏せ50回とスクワット50回で先へ進めますので、そこはお好きな方を!』
その説明に、ほっと安堵する人もいました。
安全は確保されてるみたいだけど、それでも怖い物は怖いよね。
僕は……あれくらいなら全然怖くなくなっちゃったと言うか……学園の屋上から落ちても普通に平気な体になっちゃったからね……。
あと、本当に危なかったら、変身することもできるから……うん、自分でも思うけど、すっごくファンタジー。
『さて、壁を越えますと、次に挑戦してもらう障害物は麻袋です。まあ、あれですね、下半身突っ込んでぴょんぴょん飛びながら先へ進むだけです。はい次。バットが置かれてますね、ぐるぐるバットです。大体10回くらい回ってくださいね~。それが終われば、網潜りをしてもらいます。壁を登り、麻袋でぴょんぴょんして、ぐるぐるバットをした後に網潜り。かなり疲労している事でしょう。そして最後。最後には謎の箱が置かれているかと思いますが……そこには、お題が入っております。一体何のお題だ! と思ったそこのあなた! お題は至ってシンプル! モノマネです! そう、モノマネ!』
途中までは普通の障害物競争の内容だったのに、最後はモノマネをさせられるとわかり、その場にいる人たちのほとんどから、えぇ~~! という声が。
正直、僕も恥ずかしいかなぁ……。
『はい、文句は言いませーん! 当日まで秘密にしていたのはこれがあるからでもあります! まあ、内容は毎年変わってるのであれですけどね。さて、肝心の内容ですが……その中には色々なお題があります。一例として、動物やキャラクターなどがあります。まあ、引いてしまったキャラクターが知らねぇ! とか、動物の鳴き声知らねぇ! という場合は、例によって筋トレで代用可能……などというわけはなく、こちらで救済用のセリフや鳴き声などがありますので、是非頑張ってください!』
あ、あー……なるほど、そういうルール、なんだね……。
モノマネ……モノマネかぁ……藍華お姉ちゃんがすっごく得意そうだよね。
藍華お姉ちゃん、いろんな声が出せるし、動物の鳴き声もできるみたいだし、本当にすごいんだけど、僕にそんな技術はないです。
『ちなみに、どんなに下手でも、ちゃんとやれば合格になりますので、恥は捨てようね! 説明は以上! さぁ、頑張ってくださいねぇ!』
「それじゃあ、今からどのレースに出るかくじ引きをするので、出場する生徒はこちらに集まるように」
色々と心配だけど……だ、大丈夫だよね?
◇
そんなこんなで、障害物競争が始まったわけだけど……。
「キッツ!? この壁キッツゥ!?」
「怖いから筋トレにしたけど、こっちもキツイんですけどぉ! ムキムキになっちゃうぅ!」
「きゃぁ!? や、やっぱり、麻袋って地味に難易度高いっ!」
「うっぷっ、ぐるぐるバットがぁぁ……目が、目が回るゥゥ……!」
「ヤンバルクイナのモノマネってなんだ!?」
「いやこっち、アニメのキャラクターのモノマネなんですけど!? しかも、可愛い系の声のキャラァ! 男がやるにはきつすぎんだろぉ!?」
「……こっち、めっちゃ渋いおっさんボイスのキャラだけど……? 女ぞ?」
「「「ご愁傷様です」」」
なんと言うか、その……色々と酷かったです。
というより、壁から網潜りまでもキツイけど、それ以上にモノマネがキツイみたいで、すっごく苦戦してる人が多かったです。
あと、なんでかはわからないけど、らいばーほーむのみなさんのモノマネというお題があったんだけど……あの、もしかして、神薙みたまのモノマネもないよね? 大丈夫だよね!? もしあって、それを引いちゃったら、モノマネじゃなくて、本人になっちゃうよ!?
……で、でも、さすがにない、よね?
うん、大丈夫……大丈夫なはず!
なんて、一人でいろんな意味で不安に駆られている内に、僕の走るレースに。
しかも、僕は最後のレース。
ともあれ、折角やるんだし、一位を目指そう!
去年までの僕は、今ほど身体能力が高くなかったからね。
そもそも、一位を取ったことがないし……。
うん、頑張ろうっ!
「位置について、よーい……」
パァンッ! と、当たりに響き渡るほどの大きな音と共に走り出しました。
本気で走ると、すごいことになっちゃうので、少し抑え気味に……。
それが功を奏した? のか、三番目くらいで壁の所に到着。
早速ロープを掴んで登るわけだけど……。
「んっしょっ、と……」
僕はロープを掴むなり、ひょいひょいと壁を登っていきました。
こういう時の効率的な登り方をお姉ちゃんに習っていたので……あと、やっぱり体が動かしやすかったので……。
『おーっと! 二年一組の桜木椎菜さん! 壁をものともしない速度で登っていくぅ! どう見ても非力にしか見えないのに、なんという身体能力でしょうか! あと、普通に8メートルの高さから躊躇なく飛び降りる辺り、肝が据わっております!』
うぅ、なんだか恥ずかしい……。
ともあれ、壁を登ったら、そのまま飛び降りて次へ。
次は麻袋。
「よいしょっと……んっしょっ、んっしょっ……!」
麻袋に両足を入れて、ぴょんぴょんと飛びながら進んでいきます。
……でも、なんだろう、飛び跳ねて進むからか、その……む、胸が、ちょっと……ううん、結構痛い……。
「あの娘、なんか色々すごくね……?」
「わかる……というか、絶対跳びにくそうだよね、あれって」
「なんというアンバランスな成長を……」
やっぱり、胸が大きいと困る事しかないよぉ……。
いい点がもしもあるとすれば、みまちゃんとみおちゃんが喜ぶくらい……?
そう言えば、あんまり激しく動き過ぎると下着が壊れちゃうかもしれないって言われてたし……本当に気を付けないと。
ともあれ、胸が痛いのを我慢しつつ、何とか麻袋区間を超えて、ぐるぐるバットの所に。
早速、バットを地面に立てて、ぐるぐる、ぐるぐる、とその場で回転すると……。
「あ、あれ? あんまり気持ち悪くならない……?」
どういうわけか、あまり目が回りませんでした。
ほんのちょっと変な感じがするなーってくらいで、全然辛くない……あれ? あれれ?
もしかして、TS病で三半規管も強くなってる、のかな……?
『おーっと! 桜木椎菜さん、麻袋エリアを大変そうにしながらも突破し、ぐるぐるバットも速攻でクリアー! というか、全然目が回ってる様子がないの、すごくない!?』
僕も自分の体がすごくなったと思います……。
でも、このまま行けば一位が取れそうなので、次の網潜りに。
それなりに長さがあるけど、これもお姉ちゃんに色々習ったから行けるはず……そう思って潜ろうとしたわけだけど……。
「あ、あれ? な、なんだか、上手く先に進めない……!」
四つん這いになって先へ進もうとしたんだけど、なんだか上手く先に進めない。
色んな所が絡まってて、思うようにいけないよぉ……。
「んっ、んん~~っ……!」
胸とかお尻とか、元の体より大きくなってるからなのか、網が引っかかってなかなか前に進めない……でも、少しずつ頑張れば進めるみたいだし……うんっ、頑張って前にっ。
「よいしょっ……! やっと抜けたぁ!」
四苦八苦しながらも、なんとか網潜りをクリア。
でも、結構体力を消耗しちゃうんだね……網潜り。
ともあれ、次が最後の障害物……!
モノマネだけど……できれば簡単で、やりやすいものがいいです!
猫さんとかなら、配信でも語尾に「にゃぁ」を付けてお話したこともあったから、多分行ける気がしますっ……!
『網潜りに苦戦しながらもなんとかクリアした桜木椎菜さん! モノマネボックスの前に到達! さぁ、一体どんなお題を引くのかー!』
「じゃあ……これっ!」
僕は箱の中から一枚、紙を掴んで引っ張り出しました。
折りたたまれた紙を開くと、そこには……
『神薙みたまのモノマネ』
………………んんんんんっっっ!
『おや? なんだか固まってしまいましたねぇ? 一体何を引いたのか!』
ほ、本当に引いちゃったよぉっ!?
神薙みたまのモノマネってなにっ!?
そもそも僕本人だよぉ! モノマネにならないよぉっ!
あと、なんでVtuberのお題が入ってるの!? 動物だけでもよかったと思うよぉ!
……で、でも、いつまでもここにいたら、他の人が来ちゃうし……うぅ、先に進もうっ!
引き直したいと言う気持ちを必死に押し込んで、僕はゴール前にいる先生の所へ。
「桜木が一番手か。それじゃあ、紙を見せてくれ」
体育科の先生がそう言って来たので、僕は紙を先生に嫌々ながらに手渡しました。
「……これまた、いろんな意味で難しいお題を持って来たなぁ。ともあれ、ルールはルール。お手本セリフの紙、いるか?」
「……必要、ないです」
「そうか。なら、早速モノマネをしてくれ」
「うぅ~~~っ……じゃ、じゃあ、やりますっ!」
本当は、いろんな意味でやりたくないけど、もう後ろから他の選手の人が来ちゃってるし、やらないとゴールできないっ……だ、だからっ、い、いつもの感じで……!
「こ、こんたまぁっ~~っ、か、神薙みたまだよっ……!」
と、いつもの挨拶を僕は口にしました。
すると、体育科の先生だけじゃなくて、すぐ近くの応援席にいる生徒の人たちやたまたま近くに来ていた保護者の人たちが、びっくりしたような顔をしていました。
「え、待って? あの娘、めっちゃ似てなかった?」
「あ、あぁ、すっごい似てた……ってか、本人か! ってくらい声が可愛いんだけどぉ!」
「ちょっと鼻血出た……」
「配信があるってわけじゃないから、ティッシュとか箱で持って来てねぇよ……!」
「顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしてるのが可愛すぎぃ……あ、吐血」
うぅぅ~~~~っ! 恥ずかしい! 恥ずかしいよぉ!
「……ハッ! よ、よし! モノマネは確認できた! クリアでいいぞ!」
「……ありがとう、ございます……」
「そんなに恥ずかしかったか……?」
「……いろんな意味で」
「そうか……まあ、ほれ、さっさとゴールした方がいいぞ」
「あ、で、ですねっ! じゃ、じゃあ……!」
先生に促されて、僕はとたたっ! と走って、ゴールテープを切りました。
『ゴーーーール! 最初にゴールしたのは、二年一組、桜木椎菜さん! 最後に、まさかの神薙みたまに本人と訊き間違えそうなくらいそっくりな声でお題を突破し、そのままゴールしました! っというか、桜木さんの後ろを走っていた方々や、観客席の方でなぜか死んでいる方々がおりますが、まあ大丈夫でしょう! あ、担架お願いしまーす! ともあれ、まだゴールできてない方は頑張ってくださいねー!』
……本人がモノマネするって、なんだろうね……。
昨日は投稿できなかった……いやなんと言うか、思った以上にバレンタインの話の疲れが半端なかったらしいです。今まであんなに書いたことはなかったんですがね。もし、来年もやるのであれば、次は2話くらいにしたいなぁ……。
あと、あのIFルートの話しですが、希望があれば、いつか続きを書くのもありかなぁって思ってます。まあ、希望があれば、ですけどね。




