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ロリ巨乳美少女にTSしたら、Vtuberなお姉ちゃんにVtuber界に引きずり込まれました  作者: 九十九一
2023年 11月

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229/458

バレンタイン特別IF:メイン#2 椎菜×栞の場合

 2月14日以下略。

 その日、ある合法ロリは悩んでいた。


「ふぅむ~~~……贈り物、贈り物なぁ……」


 その合法ロリとは、らいばーほーむ一期生ののじゃロリ魔王、そしてロリピュアの片割れたる魔乃闇リリスの中の人、東雲栞だった。

 そんな栞が何を悩んでいるかと言えば……


「椎菜さんに渡す贈り物、なにがええやろうか……」


 バレンタインに渡す贈り物である。

 他のメンバー、特に一期生のメンバーなどには友チョコならぬ同僚チョコを渡そうとはしているのだが、椎菜相手にはかなり頭を悩ませていた。

 というのも栞、ある時から本格的にロリピュアとしてユニット的な物を組むようになってから、椎菜と一緒にいる時間が増えたのである。

 おそらく、どこかのシスコンを除けば一緒にいる時間はトップクラスだろう。


 らいばーほーむ唯一のユニットということもあり、ロリピュアはかなりの人気になっている。

 二人を見てらいばーほーむのファンになりました! という者たちもいるのだが、その大半……というか、九割九分九厘はただただほのぼのしていて可愛らしい二人の姿を見た後に、やばい奴らを見ることになるので、可愛いと狂気の温度差にやられてしまうのだ。


 が、そう言う人たちは大抵、やばい奴らの配信を見た後に、ロリピュアで癒され、そしてまたやばい奴らを見て、再びロリピュアを見て癒される、という永遠に抜け出すことのできない状況に陥ってしまうのだが、まあそこは致し方あるまい。


 閑話休題。


 と、まあ、そんなこんなで、ロリピュアの片割れたる栞は、椎菜のことがそれはもう気になっていた。

 歳の差で言えば、五つほどはある。

 ……むしろ、五つしか差がないのに、ほぼ同じ外見年齢で、同レベルピュアっぷりは、ある意味人間の神秘とも言えるかもしれない。

 とはいえ、五つしか差がないとも言える。

 現代において、歳の差婚など割とありきたりではあるし、歳の差カップルなんてのも普通にいることだろう。


 いつぞやの時に、椎菜に配信で、


『付き合うならリリスおねぇたまがいいかなぁ』


 なんて言ったこともあり、栞的には普通にびっくりしたものの、嬉しさの方が遥かに勝っていた。

 なので、25歳くらいになっても独身だったら、告白する! みたいなことを言ったのである。

 まんざらでもないのだ。


 それが11月の話であり、今は2月。

 当然あの頃よりも距離感は近づいているし、何より二人はロリピュアとしてユニットも組んでいる状態だ。

 仲も自然と親密になると言うもの。

 二人はそれはもう仲が良くなった。


 元々相性自体も申し分なかったのだが、ロリピュアとしての経験やらなんやらで二人はさらに仲良くなった。

 二人に、らいばーほーむ内で一番仲がいいのは誰? と訊けば、真っ先にお互いの名前を言うくらいには、仲がいい。

 だからこそ、栞は悩んだ。

 バレンタイン、どうしようか、と。


「うちとしても、椎菜さんはえらいええしなぁ……恋人……恋人……うぅぅ~~~~っ、なんか、えらい気恥ずかしくなるなぁっ……!」


 ぎゅっと抱きしめた枕を持ったままゴロゴロとベッドの上を転がる栞。

 その様は、カッコいい王子様的なイケメンに一目惚れをしてしまった少女のようだ。

 まあ、相手はカッコいい王子様、ではなく、ひたすら可愛いお狐ロリ、なのだが。


「……ここはやっぱし、手作りのチョコを渡すべきでは……?」


 ゴロゴロ~、ゴロゴロ~~、と転がりながら悩んだ末、栞はそんな結論を出した。

 バレンタインなら、やはりチョコレート。

 贈り物をするのなら、チョコレートが一番だろう、と。


「……そやけど、椎菜さんは甘いものが苦手やしなぁ……」


 しかし、椎菜が甘いものがあまり得意ではない、ということを思い出して再び悩み顔に変化。

 甘いものが苦手、というのは周知された事実であり、椎菜自身も苦手とそう言うタイミングがあれば大抵言っている。


「……あ、そやけど、食べられる物もある言うとったなぁ……」


 そして、椎菜にも食べられる物があると言っていたことも思い出す。

 ならば、チョコレートでいい!

 となった栞は、早速ネットからレシピを漁る。


「ん~~~~~……むっ! これやぁ! これしによぉ!」


 そうして、栞は丁度良さそうな物を選ぶと、善は急げ! とばかりに材料を買いに家を飛び出していった。



 ところ変わり、桜木家。


「ん~~~」

「椎菜ちゃん、どしたのー?」


 そこでは、椎菜が一人リビングで娘のみまとみおを膝に寝かせて頭を撫でながら、うんうんと頭を悩ませる椎菜の姿があった。

 ちなみに、今し方椎菜に声をかけたシスコンの鼻と口から血が流れているが、いつものことだ。酷い。


「あ、うん、えっともうすぐバレンタインだよね?」

「そだねー」

「女の子になっちゃったし、いっそのことバレンタインに渡す側として参加しようかなぁって思ってて」

「ほほう! いいねいいね! ちなみに、私にチョコは?」

「もちろんお姉ちゃんにもあげるよ!」

「ヤッタァァァァ!」


 椎菜からチョコレートが貰えるとあって、シスコンは大喜びである。

 喜びすぎて、椎菜以外が見たら軽く引きそうだが、まあシスコンの狂気的行動はいつものことなので、この際放置である。


「まあ、それはそれとして。一体何に悩んでるの? 普通にチョコレートを作って渡すんだよね? 何作ろうかなー、とか?」

「あ、うん、それもあるんだけど……その、僕らいばーほーむで栞お姉ちゃんと一緒にいる機会が増えたでしょ?」

「そうだねぇ。ロリピュアがものっすごい人気になっちゃったし。それでそれで?」

「んっと、その……すっごく栞お姉ちゃんとも仲良くなったから、どうせなら、その、日ごろのお礼も兼ねてって思ってて……そ、それに、なんて言えばいいのかなぁ……最近、栞お姉ちゃんと一緒にいると、落ち着くと言うか……」

「ほほう、それはそれは………………………………ん?」


 顔少し赤くさせながら椎菜が思っていることを言って、愛菜は微笑ましそうに笑みを浮かべて頷いていたが……椎菜のセリフを理解した瞬間、思考と表情が固まった。

 今、何言った? と。


「し、椎菜ちゃん?」

「あ、うん、なぁに?」

「椎菜ちゃんって、栞ちゃんのこと、どう思ってる……?」

「ふぇ? どうって……さっき言った通り、だけど……」

「あ、えと、こう、気持ち的な、好きー、とか、嫌いー、とか、そういうのそういうの」

「それは…………好き、かなぁ」

「んぐぶっ」


 愛菜に999のダメージ!

 吐血しそうになったが、口の中に押しとどめた!


「その、すごく優しいし、お話も合うし、気を遣って色々助けてくれるし……そ、それに、一緒に活動することも増えたから……さっきも言ったけど、落ち着くなぁ、って……」

「――――」


 椎菜は少し頬を赤らめながら、どこか乙女チックに言葉を重ねた!

 愛菜に99999のダメージ! 愛菜は倒れた!


「あ、あれ? お姉ちゃん、どうしたの? お姉ちゃん!?」

「私の人生は終わった……」

「ふぇぇぇぇ!? ど、どうしたの!? なんですっごく絶望したような顔なの!? お姉ちゃん! しっかりして! お姉ちゃーーーーーん!?」


 愛菜はしばらく絶望したまま動かなかったが、双子の癒しによってなんとか蘇ることが出来たのだが……。


「えー、お姉ちゃんちょーっと用事が出来ちゃったので、部屋に行くねー」


 起きて早々、愛菜はそう言いだした。


「あの、大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫! ちょっと殺意が湧いてるだけだから!」

「それは大丈夫とは言わないと思うよぉ!?」


 愛菜は殺意の波動に目覚めてしまったようで、迸る殺意を椎菜や双子相手にはわからないように放出していた。

 そして、にっこり笑顔なのに、全く目が笑っていない。

 そんなこんなでなぜかシスコンが殺意に満ちてしまった。



「うむぅ、初めて作るが……なかなかに難しいわぁ」


 ところ変わり、栞宅。

 材料をなるべく多めに買って来た栞は、早速椎菜に送るプレゼントの試作をしていた。

 既に何度か挑戦しているのだが、これがなかなかに難しい。


 今現在栞が作っているのは、甘さ控えめのチョコケーキだ。

 料理ならともかくとして、お菓子作りについては学校の調理実習でしかしてこなかった栞。

 当然、作り方はネットのレシピを見ながらになる。

 お手本の先生となる人などはおらず、一人で様々な情報を見つつ、試行錯誤しているところである。


「……むぅ、これは甘すぎやぁ……」


 今度こそ! と思って作ったチョコケーキは甘すぎてしまったらしい。

 見た目はほぼ完璧に近づいたのだが、味に納得がいっていない栞。

 既に素人が作るのであれば十分すぎるくらい美味しいのだが、妙な所でプロ意識のようなものがある栞は、何度も試作を重ねる。


 尚、さすがに作りまくってる試作のチョコケーキは一人で食べきれないので、同じマンションに住んでいるらいばーほーむの他メンバーにおすそ分けしていたりする。

 全員喜んで食べるし、基本甘いもの好きが多いので、かなり喜ばれていた。


「うん、もう一度や!」


 今回もダメだったので、再度作り直しに入る栞。

 いざチョコケーキを! となったところで、スマホが鳴った。


「ん? 誰やぁ? ……愛菜? なんやろう? もしもし?」

『――お前を殺す』


 通話に出た瞬間、どこぞのパイロットよろしく、突然殺害予告をされた。


「突然なんやぁ!?」

『まさか、栞ちゃんがねぇ……人は見かけによらないというか、信用できないと言うことかぁ……チィッ!』

「いや、ほんまに突然どないしたん!? 怖いんやけどぉ!?」

『……一つ、私は栞ちゃんに尋ねることがあります』

「な、なんやぁ?」

『椎菜ちゃんを、幸せにできる?』

「…………はい?」


 突然わけのわからないことを言われて、栞は呆けた声を漏らした。

 というか、圧がすごかった。

 感情が籠っているのか、籠っていないのか、それすらも微妙に判断が付きにくいほどに、無機質な声だった。なんか怖い。


『椎菜ちゃんを、幸せにできる?』

「いや、あの……え? え?? え???」


 さっきと同じ声、トーン、速度、言い切るのにかかった時間、全て同じまま同じ言葉が放たれた。

 栞は困惑している!


『椎菜ちゃんを、幸せにできる?』

「…………あ、あの、愛菜?」


 再び全く同じ言葉を言って来る愛菜に、栞は背中に冷たいものが流れるのを感じた。

 なんか怖くね……? と。

 というか、全く同じ言い方で同じ言葉を繰り返すのが怖かった。


『椎菜ちゃんを、幸せにできる?』


 botと化した愛菜は、同じ言葉を続ける!

 やっぱりホラー!


「……あ、あの、えと……」

『椎菜ちゃんを、幸せにできる?』

「…………あ、ハイ」


 恐怖には勝てなかった。


『……ならばよし……椎菜ちゃんを幸せにしなかったら……コロス☆』

「なんでぇ!? うち、何かしたぁ!?」

『……自分の胸に手を当てて考えるのだ……とりあえず、邪神シスコンは常に栞ちゃんのことを見ているからね……フフフフフフフフフ』

「怖い怖い怖い!? 愛菜、ほんまにどないしたん!? うちが何したって言うねん!?」


 ブツッ――。


「えぇぇぇ……?」


 なぜか通話がぶった切られてしまった。

 なぜ、突然『椎菜ちゃんを、幸せにできる?bot』になったのかわからずじまいになってしまった栞は、恐怖の邪神シスコンのことで頭がいっぱいになってしまい、この日の試作は終了させるのだった。



 それから時間は過ぎ、バレンタイン前日。


「で、できた……!」


 栞は、自信の目の前に鎮座する完璧なチョコケーキを前にして、とてつもない達成感を得ていた。

 シスコンが謎にホラーなことをして来た日から数日、なぜかやっちまった感がありつつも、栞は椎菜へ贈るためのチョコケーキ作りに精を出していた。


 そうして、ようやく自身の納得がいく味、見た目のチョコケーキが完成し、栞はご満悦だ。

 あとは、相当頑張りもしたし、なんだったらこのチョコケーキを作る過程で、少なくない犠牲もあったので……主に、らいばーほーむのメンバーたちに。


 あれから頑張って作っていたチョコケーキたち、最初の内は全員喜んでくれたし、普通に美味しい美味しいと食べてくれたのだが……最終的に、


『『『ごめん、もう無理……』』』


 と、ものすごく申し訳なさそうに言われてしまったのだ。


 確かに食べさせ過ぎたと栞も思ったので、そう言われた時にしゅんとしたのだが……なんというか、栞のビジュアルのせいで、いたたまれない気持ちになったのと、よっぽど本気なんだな、と他のメンバーたちも思ったので、結局最後まで付き合うことにした。


 まあ、栞の方はすっごく申し訳なさそうにしたのだが……。

 そして、これは余談だが、全員増えたそうな。何がとは言わない。


「これを椎菜さんにプレゼントすれば、うちのバレンタインは成功やな!」


 完成したチョコケーキを八等分して、一つを丁寧に包んでラッピングを施し、準備は万端。いつでも渡せる準備は整った。

 あとは、どうやって渡すかのみだ。


「ん~~~……そう言うたら、椎菜さんの学園ではバレンタインパーティーがあるちゅう話やったっけ。それに、出席したらあとは自由やったなぁ……せやったら」


 栞はスマホを取り出すと、LINNで椎菜に連絡を取り始めた。


『今、時間えぇ?』

『大丈夫だよ! どうしたの? 栞お姉ちゃん』

『椎菜さん、明日時間ある?』

『明日? んっと、バレンタインパーティーに参加するつもりだったけど……何かあるの?』

『え、えっとやなぁ……明日、よかったら一緒に出掛けへん?』

『お出掛け? うん! もちろんいいよっ!』


 ドキドキしながら返信を待っていると、椎菜から帰って来たのは二つ返事でのOKのメッセージだった。

 栞は無意識にガッツポーズ。


『なら、10時頃に駅前でどうや?』

『うん! 楽しみにしてるねっ!』

『うちもや!』


 というわけで、あっさりと二人で出掛けることが決まった。

 となると、栞にはやることができる。


「どの服を着て行こか……」


 服装である。

 二人で出掛けると言うことは、つまりデートとなるのでは? と栞の頭の中でそうなる。

 まあ、椎菜の中身的にはある意味間違いではないが。


「うむむぅ、悩ましいなぁ……」


 チョコケーキはできたし、お出掛けの誘いもOKを貰えた。

 この時点で、目的はほぼ達成できるだろうと言う状況なのだが、相手は普通の友人でもただの同僚というわけでもない。

 相手は、栞自身が気になっている人物。


 まあ、ここまでガチでチョコケーキを作りに行ってる時点で、気になる、だけで済むとはとても思えないし、栞自身もこの試作の間でやっぱり恋愛的に好きなのでは? と思うようになっていた。

 とはいえ、さすがに言うことはないだろうとも思っているし、何より明日はデートと椎菜に作ったチョコケーキを渡すのが目的なのだ。


 色恋よりも、いかにして贈り物を渡せるか、が大事だ。


「……うん、この服にしよ!」


 そうして、栞は明日着ていく服を決めると、明日は何をしようかとデートプラン(?)を考え始め、それが作り終える頃には夜になっており、明日に備えてさっさと就寝となった。



 翌日。


 椎菜は学園に登校後、クラスメートたちにチョコを渡してから、そのまま下校。

 一度家に帰って着替えを始める。


「~~♪ ~~~♪」


 そんな椎菜だが、鼻歌交じりに着替えをしていた。

 栞に誘われて、椎菜もかなりうっきうきだったので。


「ぐぬぬ……やはり、椎菜ちゃんは……!」


 そんな楽しそうな椎菜を見て、愛菜はぐぬぬっていた。

 あの泥棒猫! とでも言いたげな顔だが、愛菜はなんだかんだ椎菜の幸せを何よりも優先する。

 故に、娘の結婚は許さん! とか言う頑固親父タイプではないのだ。


 ……もっとも、椎菜と付き合う=問題なく守れるまで鍛える、というのと同義なので、かなりアレなのだが……。


「これでいい、かな?」


 さてさて、そんな椎菜の本日の服装。

 Tシャツにファーコート、ロングスカートに、頭にはベレー帽を被っていた。

 小さい椎菜にはとても似合っている可愛らしい服装だ。

 ちなみに、椎菜が着ているファーコートは、白いポンポンが付いているのがポイント、とは愛菜の談である。


「可愛いっ……椎菜ちゃん可愛いッッ!」

「あ、お姉ちゃん! ねぇ、お姉ちゃん、この服装、変じゃないかな?」

「椎菜ちゃんが着ている時点で変ということはないね! 椎菜ちゃんは何でも似合うから! あと、もこもこコートが大変良き! 可愛いっ!」

「そ、そうかな? えへへ、ありがとう、お姉ちゃん」

「んぬぐぅっ!」


 椎菜の照れ笑いに、シスコンは吐血しかけたが、目の前の椎菜にそれが少しでもかかったら切腹物だとなんとか制し、押しとどめることに成功する。


「栞お姉ちゃん、可愛いって言ってくれるかな……?」

「ごはぁっ!」


 だがしかし! 椎菜の乙女な反応が追い打ちとなって、愛菜に襲い掛かった!

 しかし、そこはさすがの愛菜。

 椎菜にかからないようにするべく、速攻で常備している大きいビニール袋を取り出すと、その中に血を吐いた。


「お姉ちゃん!?」

「ごふっ……へ、へへ……い、いい、一撃だった、ぜ……ガクッ」

「お姉ちゃん!? なんで来世に期待! みたいな表情なの!? 起きて! お姉ちゃん起きてーーーー!」


 シスコンは死んだ。



 あの後、うんうん唸ったままなぜか高熱を出したシスコンが心配で、看病しようとしたものの、


『栞ちゃんとのデートは楽しむべき、だぜ……☆』


 と言われて、そのまま椎菜は出かけて行った。


 あとはまあ、


『まあこれくらい致命傷だし、すぐに生き返るからセーフ! というか、もう既に下がり始めてるからね! ほらほら、遊びに行って!』


 とか言って来たのもある。

 本当に早送りのように顔色が良くなっていく愛菜を見て、椎菜も少しは安心したのだ。


 というわけで、予定の時間よりも30分ほど早いが、駅前に到着。

 愛菜がデート、と言って来たためか、椎菜はドキドキしていた。

 言われてみればバレンタインにお出かけに誘われたのって、デートのお誘いだよね……? みたいな風に椎菜も思ったのだ。

 結果、ものっすごく緊張している。


 いつもなら、駅前のベンチに座って待っているところだが、なんだか今日は落ち着かなくて、頬を赤らめながらきょろきょろと、どこかそわそわしている。


 それから、自分の今の格好がおかしくないかどうか、入念に何度か確認したり、髪の毛をなんとなくいじったり、たまに栞のことを頭の中に思い浮かべて、ほわっとした笑みを浮かべたり、かと思えばぶんぶんっと頭を振ってどこかもじもじしたり、と見ていてとてもほっこりするような状態であった。


 ちなみに、あまりにも可愛らしい行動をとりまくっていたこと、更には椎菜が振りまく乙女的なオーラというオーラが周囲に多大な影響を与えており、気が付くと鼻血を流している者が多数。


 時たま、カップルが通りかかることがあるが、椎菜の微笑ましい姿に、お互いの初々しい頃を思い出してか、会話が弾んでいたりと、そこにいるだけでプラスな影響を及ぼしてもいる。


 そうして、椎菜がそわそわとしながら待っていると、


「あ、椎菜さーん!」


 駅の方から、待ち人がやって来た。


「あ、栞お姉ちゃんっ!」


 栞がやって来るのを見た途端、椎菜はぱぁっ! とそれはもう大輪の華の如き笑みを浮かべて、栞を出迎えた。

 とても嬉しそうだ。


「待たせたてしもうた?」

「ううんっ! 大丈夫っ! 実は、栞お姉ちゃんとのお出掛け……んっと、で、デート……が楽しみでちょっと早く着いちゃって……えへへ」

「~~っ! そ、そうかっ……う、うちも、椎菜さんとので、デートは、楽しみやったで……?」

「そ、そっか……」

「「……えへへ」」

『『『ごふっ!!!!』』』


 二人のする、やたらと甘い雰囲気やら、笑顔に周囲の人たちに大ダメージ!

 全員多量の鼻血と吐血!

 が、当人たちは気付いていない!


「え、えと、じゃあ、その、行こっか……!」

「そ、そやなぁ!」


 自分たちが周囲に甚大な被害をもたらしていることなどつゆ知らず、二人はデートを開始した。



 さて、そんなこんなで始まった合法ロリと違法ロリのデート。

 二人のやり取りというのは、なんとも微笑ましいものばかりで……例えば、昼食に訪れた店では、


「あ、これ美味しい!」

「ほんまに?」

「うんっ! 栞お姉ちゃん、食べてみる?」

「折角だし、ありがたく」

「じゃあ、はい、あーんっ」

「えっ、あっ……」

「どうしたの?」

「な、なんでもないわぁ……じゃ、じゃあ、あむっ……んっ、ほんまに美味しいわぁ……」

「でしょー!」

「そやけど、椎菜さん、ええの……?」

「ふぇ? 何が?」

「そ、その……か、間接キス……に、なっとる、けど……」

「……にゃ!?」


 という一幕があった。

 間接キス、ということでお互いに顔が真っ赤になるものの、二人とも嫌だと思うことはなかった。

 むしろ、嬉しいとさえ思っている。


 この後も普通にドキドキしつつも、何度か食べさせあいっこをして、やっぱり顔が真っ赤になり、同時に周囲も真っ赤に染まっていた。


 次に訪れたのはショッピングモール。

 二人は楽しそうに手を繋ぎながら、ショッピングモール内を歩く。

 たまにブティックに立ち寄って、お互いにこれ似合いそう~、こっちも~、みたいなそれはもうほのぼの~とした光景を繰り広げた。


「あ、栞お姉ちゃん、これはどうかな? 栞お姉ちゃんにすっごく似合うと思うの」

「椎菜さんにはこれが似合いそうやなぁ」

「じゃあ、お互いに着てみる?」

「そうやなぁ!」


 そうして、二人で別々の更衣室に入って……


「んっと、どう、かな?」

「これ、似合う?」

「わっ、すっごく似合うよっ!」

「椎菜さんもえらい可愛いなぁ」

「「えへへ……」」


 お互いに見せ合って、お互いに頬を赤らめながら照れ笑いをした。


『『『ごふっ……』』』


 店員は甘々なロリ百合テロをくらって二人が退店した後死んだ。

 その後はゲームセンターへ。

 目的は……。


「椎菜さん、プリクラ、撮らへん?」

「うんっ! もちろんっ!」


 プリクラである。

 実は椎菜、今の体になってから、プリクラがちょっと気になっていたのだ。

 クラスメートの女子がきゃっきゃと楽しそうにしているのを見て、そんなにいいのかな? と言う風に興味を持っていた。

 そして、デート中に栞から誘われたので二つ返事でOK。

 そのまま、よさげな筐体を選ぶと、二人で中に入る。


「んっと、どうやって撮ろっか?」

「そやなぁ……」


 入ったところで、どういうポーズをして撮るか、という問題が出てきた。

 まあ、問題というほど問題でもないが。

 二人はうんうん唸っていたが、ここでふと、栞が、


(……いっそ、椎菜さんに抱き着く感じで……)


 と考えた。

 折角のプリクラだし、デートだし、バレンタインだし、と色々と考えた結果の考えである。

 ちょっと舞い上がってるようだ。


「し、椎菜さん」

「なぁに?」

「そ、その、もしよかった……だ、抱き着いても、ええ……?」

「ふぇ!?」

「あっ! い、嫌なら、別にええから!?」

「ぅぇ、ぇっと……し、栞お姉ちゃんがいいなら……ぃぃょ?」

「ほんまに!?」

「う、うんっ……」


 顔を赤くさせながら、椎菜が頷くと、栞は嬉しそうな表情を浮かべて、じゃあ、と椎菜にぎゅっと抱き着いた。


「~~~~~っ」

「え、えらい、気恥ずかしいなぁ……」

「だ、だね……え、えへへ……」


 そうして、椎菜に栞が抱き着いて、二人はドキドキと顔を赤らめながら、どこかぎこちない笑みでプリクラを撮った。

 出て来たプリクラは、お互いのスマホケースに貼って、顔を合わせて小さく笑うのだった。



 それからも二人は楽しいデートの時間を過ごす。

 散歩をしたり、たまたま来ていたキッチンカー式のクレープ屋でクレープを買って、お互いにまた食べさせ合いっこをしてテロを起こしたりして、甘々なバレンタインデートは過ぎて行き……気が付くと、夜になっていた。


「楽しかったね~」

「そやなぁ~」


 ひとしきり遊んだ二人は、イルミネーションが施されている公園のベンチに座って一休みしていた。

 すっかり陽も落ちて暗くなったが、今いる場所はイルミネーションのおかげでとても明るい。

 なんだったら、カップルたちがいちゃついてもいる。


「栞お姉ちゃん、今日は誘ってくれてありがとうっ」

「ええよぉ。うちも、目的があって誘ったんやから」

「そうなの?」

「そうやぁ」

「その目的ってなぁに?」


 二人で話していると、椎菜はどういう目的で遊びに誘ってくれたんだろう? と気になって栞に目的を尋ねた。

 すると、栞はあー、と声を漏らし、もじもじ、そわそわとし始める。

 それを見た椎菜はこてんと首を傾げた。


「……今日はバレンタイン、やろ? そやさかい、これを渡したくてなぁ……」


 そう言って、今日一日大事に持っていたラッピングが施されたチョコケーキをカバンから取り出すと、それを椎菜の前に持って行った。


 ちなみに、冬場だからと言って悪くならないよう、しっかり保冷剤などで冷やして持ち歩いていたので問題はなしだ。


「これって……」

「うちが頑張って作ったチョコケーキや。その、椎菜さんには色々助けられてるやろ? せやから、そのお礼で頑張って作ったんよ。受け取ってもらえる……?」

「……うんっ! ありがとうっ、栞お姉ちゃん!」


 椎菜は栞からのバレンタインプレゼントを受けとると、それはもう思わず見惚れてしまうくらい可愛らしい笑顔を浮かべてお礼を言った。

 その後、椎菜は大事そうにチョコケーキが入った袋を仕舞うと、カバンのなかから小箱を取り出した。


「じ、実は、僕も作ってて……これ、栞お姉ちゃんに!」

「え、ええの?」

「もちろんっ! 僕もいつも助けられてるからお礼! それに……」

「それに……?」

「その……じ、実は、最近栞お姉ちゃんのことが気になってて……そ、それで、そのチョコはその特別、と言いますか……」


 ちょん、ちょん、と指先をくっ付けたり、離したり、絡めたり、握ったりしつつ、顔をを赤くしてもじもじしながらそう話す椎菜。

 それを見た栞は嬉しさで頭が真っ白になった。

 だからだろうか。


「――好きや」

「ふぇ……!?」


 するっと、告白の言葉が口から零れていた。


「あっ、やっ、そ、そのっ……」


 思わず自分が告白の言葉を呟いていたことに気が付いた栞は、わたわたし始めた。

 椎菜の特別、という言葉に思わず告白の言葉が出てしまったが、それらは今日言うつもりのなかった言葉だった。

 だから、慌ててそれを誤魔化そうとする。


「……あ、あのっ、えとっ……い、今、す、好きって……い、言った……の……?」


 しかし! こういう時に限って、椎菜は鈍感+難聴な主人公ではなかった!

 好きという言葉が聞こえた椎菜の心臓は過去最高レベルでドッキドキであり、その心の内はどこか期待してもいた。


 もしも、本当に好きと言ってくれていたのなら……と。

 そんな熱っぽく、どこか期待の籠った目を向けられた栞は、それを見てわたわたするのをやめて、椎菜を真っ直ぐ見つめる。


 が、やっぱり恥ずかしいので視線が彷徨ったり、ぷるぷるしたり、何かを喋ろうとして失敗して、でもやっぱり喋ろうとして……という行動を繰り返して、ようやく言葉が出てくる。


「……そ、そうやぁ」

「……っ!」

「そ、その……うち、な? し、椎菜さんと一緒に活動するようになって……一緒が心地えぇなぁ……そう思たり、椎菜さんにの笑顔に元気をもろうたりもしとって……それで、その……うちは、し、椎菜さんが、好きや……」

「…………」

「……し、椎菜、さん?」


 一度言葉を肯定すると、自然と栞の口は動いて、思っていることが溢れ出た。

 そうして、最後に再度好きだと伝えると、椎菜が固まった。

 それを見て、失敗したか、嫌われてしまったかもしれない、と栞は不安に駆られた。

 しかし、そんなことはなく……。


「……ぅ、嬉しい、です……」

「へ?」

「じ、実は、僕もその……し、栞お姉ちゃんのことが好きで……その……うんっと……」

「……え、ほ、ほんまに……?」

「う、うん……」

「う、うちのことが、好きなん……?」

「す、好きです……だ、大好きだよっ」

「―――」


 好きな人から、大好きと言われ、栞の頭は再び真っ白になった。

 だが、体というか本能的な部分はそんなことはなく、気が付くと栞はぎゅっと椎菜を抱きしめていた。


「ふぁ!? し、しし、栞お姉ちゃん!?」

「……うちっ、椎菜さんが好きやっ! せ、せやから……う、うちと、こ、恋人にっ、な、なってやぁっ!」


 ぎゅぅぅ~~~~っと抱きしめながら、栞は再び告白を行い、今度は恋人になってほしいと椎菜に告げた。

 それを受けた椎菜は、栞の体を抱きしめ返し……


「うんっ……!」


 と魅力的で乙女な笑顔を見せて頷いた。



 そうして恋人同士になった二人は、諸々をらいばーほーむに報告。

 結果、あれよあれよという間にロリカップル系VTuberという肩書も増え、二人は恋愛も配信も全部を楽しむ、そんな生活を送りだした。

 当然と言うべきか、報告配信では異常な伸びを見せ、ものすごく拡散されまくったものの、祝福の声が多かったのを見て、二人はそれはもう安堵したそうな。


 ……尚、恋人同士になったので、シスコンによる魔改造がこの世界でもあったことは言うまでもない。

 というか、実は二人がデートしている時、それも告白現場の近くにシスコンがいて、血流を流していたりするが……まあ、本人たちは知らないので良しとする。

 四話目ェ! そろそろこれを書いている私の頭がオーバーヒートしそう!

 というか、普通に長い! 長いよ! ちなみにこれを書き終えたのは、昨日の19時前くらいです。あと一話ァ……!

 というわけで、今日最後の投稿は20時だよ! お楽しみにィ!

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― 新着の感想 ―
あぁ〜ロリピュアコンビが最強無敵のカップルになった!!! シスコンが電話のはじめに「…お前を殺す」は笑った(笑)
宇宙はロリ百合でビッグバン(錯乱
うあああああ ロリピュアがガチのコンビになった! いやでも当人たち普通に過ごしてるだけなのに 量産してるのはやっぱり殺戮兵器なんよな ifなのが、、、くっ、、、! 作者さん無理しないで
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