#108 味方にはバフ、敵にはデバフ
うっすくてごめんねぇ!
「というわけで、作ってきました、二人用の衣装」
「ちょっと待って? お姉ちゃん、なんで二人のチアガールの衣装があるの!?」
鼻血と血も止まって、いつものお姉ちゃんに戻ったかと思ったら、お姉ちゃんがどこからともなく二人用の衣装を取り出してきました。
おかしくない!? ついさっき来たばかりだよ!? いつ作ったの!?
「あ、これ? いやぁ、昨日二人が、『おかーさんの応援がしたい!』って言うから、お姉ちゃんがちょっと頑張っちゃった☆」
「頑張っちゃった、で出来るクオリティーじゃない気がするよ!?」
「そこはほら、お姉ちゃんなので☆」
(((すっごい納得できなさそうなのに納得できる理由だァ……)))
一日で二人分のお洋服を作っちゃった辺り、お姉ちゃんって本当に多才だと思います。
苦手なお料理だって、実は本気で頑張れば上手になりそうな気がするんだけど……。
「というわけなので……みまちゃん、みおちゃん、これ着ない?」
なんて思っている間に、お姉ちゃんはみまちゃんとみおちゃんの二人に、チアガール衣装を見せていました。
「おかーさんと、いっしょー?」
「……いっしょ……い、いいかも、です……あっ、ち、ちがうですっ……!」
「うんうん、椎菜ちゃんとお揃いだよ~」
「「きるーっ!」」
「やったぜ」
「お、お姉ちゃん……」
「というわけなので先生、更衣室借りますね!」
「はぁ……まあ、お前を止められる気がしないので、好きにしろ。とはいえ、OGだし母校だしな。いいぞ、別に」
「やったー! じゃ、二人ともお姉ちゃんとお着替えしに行こう!」
「「はーいっ」」
そんなやり取りをして、三人は更衣室へ行っちゃいました。
「……間違いなく血の海になるだろうなぁ」
「あたしも死んじゃうかなぁ……」
「お姉ちゃん……なんで先に着替えさせてから来なかったんだろう」
「そこじゃないと思うぞ、椎菜……」
「ふぇ?」
◇
それからほどなくして三人が戻って来て……
「「おかーさん、にあうー?」」
耳をぴょこぴょこ、尻尾をふりふりさせながら、チアガール衣装のみまちゃんとみおちゃんの二人は僕に上目遣いで似合うか訊いて来ました。
「うん、すっごく可愛いよ~」
「「わーいっ」」
『『『ごはぁっ……!』』』
「ぐふっ……た、高宮君、い、今の、あ、あたしには、あれを耐える、ことは、で、出来ないっ……ガクッ」
「いやそこで倒れられても困るんだが」
「うちのクラスは、いろんな意味で退屈しないな」
「あぁっ! なんて可愛い関係ッ! お姉ちゃんハッピー! ついでに、鼻血と吐血という幸福が止まらないぜ☆」
「桜木姉、そこは止まれ。というか、出血量的に死ぬだろう、それ」
「そこはほら、お姉ちゃんなので」
「なんにも解決になってないと思うのは私だけか?」
「……って! そうじゃなくて! ど、どうしてあのままで連れて来ちゃったの!?」
二人の褒めながら頭を撫でていた僕だったけど、二人がなぜか耳と尻尾を出したままで出て来ちゃったことに対して、僕はお姉ちゃんに尋ねました。
「体育祭というお祭りだし、多分誰も気にしないだろうなーって。あと、可愛いから大丈夫!」
「心配だよぉ!?」
「おかーさん、どーしたの?」
「……へ、へん、ですか?」
「あっ、ち、違うよ!? 二人ともよく似合ってるからね!」
「「えへへぇ……」」
しょんぼりしそうになった二人に、僕は慌てて似合うと言いながら二人の頭を撫でると、二人は嬉しそうに笑って、耳はぴょこぴょこ、尻尾はぶんぶんしてました。
うん、可愛いです!
まあでも、そういうコスプレです! って言えば誤魔化せる、よね!
うん、それで行こう……!
『『『がはぁっ!』』』
「もうこれ、ダメだろ。桜木姉、お前これどうす――」
「( ˘ω˘)スヤァ」
「た、たったまま死んでやがる!? おい起きろ桜木姉!? まだ死ぬのは早いぞ!?」
「あー、先生、愛菜さんが死ぬのはいつものことです」
「そりゃしってるけども! あと、お前らも血を吐いて死んでないでさっさと起きろ! 折角の体育祭が、吐血と鼻血を出しただけで終わるとか、悲しすぎるだろう!」
「そ、その、すみません……」
「いや、桜木は悪くない。いや、ある意味では悪い、のか? ……まあいい、とりあえず、ほれ、もうそろ競技が始まるんだ、お前ら応援するんだぞ!」
『『『う、うっす……』』』
◇
そんなこんなでなぜかシスコンの手によって作成されていたチアガール衣装を着た幼女神、というかロリ神様二柱と、その母親の椎菜、それから麗奈と柊がほぼメインで応援することになったわけなのだが。
「頑張ってー!」
「「がんばれーっ!」」
「安藤君行ける行ける! 頑張れー!」
「いいぞ、その調子だ!」
クッソ可愛いロリ巨乳美少女と、耳と尻尾付きチアガール衣装の銀と黒のロリ双子、美少女な同級生、普通にイケメンな同級生という布陣によって応援された側の生徒とは言えば、
「ヨッシャァァァァァァァ! 力がッ、力が溢れて来たぞォォォォ!」
「待って待って!? 知らない間に、クソ可愛いケモロリチアがいるんだけどぉ!? うおぉぉぉ! 負けてらんないわぁぁぁぁ!」
「可愛いチアガールがいるならば、負ける道理がねぇ! オラオラァ! 遅いぜェェェ!」
「キャーーーー! 高宮君が! メッチャカッコいい眼鏡男子にィィィ! これはもう、勝つしかねぇぇぇ!」
応援されたクラスメートたちはそれはもう、限界突破していた。
途中まで一位との差があったにもかかわらず、なぜか応援されただけでものすごい勢いで追い上げを見せ、そのままゴールをかっさらったり、最下位だと思ったらやっぱりありえない勢いで追い上げて一位でゴールしたり、最初からぶっちぎりで一位を取りに行ったりなどなど、かなり酷いことになっていた。
ついでに言えば、
『『『――( ˘ω˘)スヤァ』』』
男子たちへのダメージが一番でかかった。
理由としてはまぁ……。
「フレーフレー!」
椎菜がぴょんぴょんと飛び跳ねながら応援をしていたからである。
何気に用意されていたポンポンを持って応援しており、尚且つ椎菜も応援が楽しくなってきたのか、普通にぴょんぴょん飛び跳ねるようになったため……それはもう、揺れるのである。
元々全体的にちんまい椎菜だが、胸部装甲だけは、それはもう大きかった。身長に不釣り合いなほどに大きかったッッ……!
椎菜が飛び跳ねる度に、ぽよんぽよんと跳ねるのだ。
あと、くびれとか、へそなどもチラ見えするため、男子たちが死んだ。
尚、明らかにヤバそうな視線を送ってる奴が他クラスにいたのだが、沈められていた、シスコンと柊の手で。
柊は、普段は真面目で苦労人な姿を見せるが、椎菜に邪な感情を向ける男子相手には容赦をしないのである!!
俺の親友に変な目を向けるんじゃねぇ! 殺すぞ! みたいな。
その辺はシスコンに目を付けられるだけあると言うべきか。
「な、なんというか……椎菜ちゃんってほんっとこう、規格外だよね……」
「わかるー……あの身長なのに、あんなに胸が大きいとか、アンバランスすぎる……!」
「羨ましい……」
「TS病ってやっぱり胸もおっきくなるのかな?」
「でも椎菜ちゃんって、お母さんにそっくりらしいじゃん? ということは、遺伝の可能性も!」
「つまり……男の娘時から育つ可能性を内包していた……ってこと!?」
「「「それはない」」」
死んだ男子たちを適当な所(救護所)にぽいしながら、女子たちは椎菜の暴れる胸について話していた。
同じ女性から見ても、椎菜の胸はかなり魅力的に映るらしく、羨ましがる生徒も多かった。
「……あと、誰も気にしてないけど、さ」
「いや、うん、言いたいことはわかるよ? あれ、だよね」
「……あの双子ちゃんの内、片方は修学旅行の時に見たけど、黒髪の方は知らないんだけど!?」
「配信の情報をうのみにするなら、偶然らしいけど……」
「最近の椎菜ちゃんってすっごくファンタジーだし……」
「あと、あの耳と尻尾、絶対に本物だよね? ぶんぶんしてるよ? ぴょこぴょこしてるよ? 可愛すぎるよね。最高です」
「本音が漏れてるわよ。それにしても可愛すぎて死にそう」
「私なんて既にティッシュが二箱目に突入してるよー」
「は? 私は三箱目だが?」
「甘いわ! この私は既に五箱目よ!」
「「「それはもう死ぬのでは?」」」
「うん、正直今にもぶっ倒れそうなくらい貧血」
などなど、椎菜と一緒に応援している双子についても話していた。
あと、ティッシュの消費量でマウントを取るとか言う、わけわからんこともしていたが。
「頑張ってー!」
「おにーさん、がんばれーっ」
「……おねーさん、も、がんばる、ですっ」
「お兄さん頑張っちゃうぞぉぉぉぉぉ!」
「お姉さんも超頑張るゥゥゥ!」
その裏では、神薙母娘がリレー中のクラスメートを応援し、やっぱり限界突破させていたが。
あと、よく見たら鼻血出てる。
そして、被害はこれだけではなく、周りにも及んでいた。
隣のクラスに関しては最早応援などする余力もなく、血だまりに沈んでおり、地面に血文字で『犯人はロリロリ……』と書かれていたり、現在進行形で種目真っただ中の生徒に関しては、男子が椎菜と麗奈の二人を見たために、いろんな意味で走りづらくなったり、可愛いロリ×3とイケメンな柊で戦意喪失(表情は幸せそうだが)し、近くを通った保護者なども、やたら可愛い双子幼女にノックアウトされていた。
実際の所、二年一組は他のクラスに比べて、耐性がある方なのだ。
まあ、すぐに死ぬのだが。
ちなみに、他クラスの友人や、先輩後輩に会いに来た生徒なども、近くを通って軒並み死んでおり、気が付くと、死体の山が出来ていたりする。
「……体育祭って、こんなに血生臭かったか……?」
「高宮君、椎菜ちゃんがチアガールになって、みまちゃんとみおちゃんの二人も同じようにチアガール衣装をきちゃった時点で今更だと思うなー。あと私も鼻血が止まらないです」
「応援してる最中に鼻血は絵面が酷いから、どうにかしような……」
そんな様子をどこか遠い目で見ていた柊は、血生臭くなっている体育祭を見て一言零し、麗奈はそれに対して鼻血を流しながら今更だと返す。
「あ、そう言えばもうすぐスウェーデンリレーだよね? 高宮君、準備しないの?」
「ん、もうそんな時間なのか。なんかあっという間だな」
「だねー。椎菜ちゃんたちの応援でみんなぶっちぎってっちゃうし、なぜか他のクラス相手にはデバフになっちゃってるもんねー」
「普通応援がデバフになることはないんだがなぁ……」
「そこはほら、神薙母娘ということで一つ」
「味方にはバフをかけて、敵にはデバフをかけるとか……本当、なんでもありだな、椎菜」
「椎菜ちゃんだからね。……配信になったら、ものすごい数の人が死んでると思うけどね」
「それもそうか」
それで流していいのか、とツッコミが入りそうな会話ではあるものの、応援は味方の限界をぶっ壊し、敵の戦意をぶっこわし続けるのだった。
やはり、メインのキャラが種目に参加しないと薄くなる……!
とはいえ、ようやくメインキャラが出るぜ☆
まあ、柊視点の話にはなるとは思うけど……うーん、短くなりそう。というか、一瞬で終わりそうだよね。
それから、私がだらけてやらない、なんてことを起こさないために先に言っておきます。
来週のバレンタイン当日は多分、私が執筆事故を起こさなければ……5話投稿する予定です! お楽しみにィ!




