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ロリ巨乳美少女にTSしたら、Vtuberなお姉ちゃんにVtuber界に引きずり込まれました  作者: 九十九一
2023年 11月

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閑話#24 助けた女性のその後

 神薙みたまと天使が入り混じった謎の美幼女が飛び去った後のこと。

 病院内では、とても不思議なことが起こっていた。


「たしかに車に轢かれた、そうですね?」

「は、はい、間違いありませんわ……」

「たしかに、服もところどころ破れていましたし、何より服に染み込んだ血液に、かなりの貧血状態……それだけを見れば事故に遭われた、と判断が出来るのですが……その、怪我の方は」

「天使様がわたくしを治療してくださったのです」

「……にわかには信じがたいですが……」

「わ、わたくし自身も夢なのでは? と思っておりますが、その……たしかにわたくしはあと少しで死んでいた、そう思うほどでした」

「ふむ……」


 現在、美月病院の病室の一つにて、一人の女性――不知火双葉と医師が話をしていた。

 この女性は、椎菜が助けた轢き逃げに遭った女性であり、椎菜のファンタジー治療によって命の危機を脱した。


 看護師が大急ぎで病院内に入れると、ほどなくして双葉は目を覚まし、すぐさま診察を行ったのだが……結果として、怪我はどこにもなく、強いて言えばかなりの血液が不足しており、重度の貧血にはなっていたが、それを除けば健康体と言ってもよかった。

 念のため、レントゲンなども撮ってみたものの、やはり骨に異常はなかったが。


 それから、一体何があったのかを訊くため、双葉に話を聞くことにした医師だったが、その内容はかなりぶっ飛んでいる者であった。

 突然どこからともなくやってきた、美幼女が血まみれの双葉を押し付けたかと思うと、そのまま飛び去って行った、というどこのファンタジーだよと言わんばかりの状況にプラスして、目の前の押し付けられた女性は天使に助けられたと告げていた。


 医師としても、非科学的だ、ありえない、と言いたげでもあるのだが、明らかに服に付着していた血液はまだ新しいし、何より汚れもかなりあった。

 怪我だけが消え、それ以外はそのまま残ってしまったような、そんなちぐはぐさで。


「ともあれ、今日は念のためこちらで安静にしてください。ご家族の方は……」

「あ、父が来てくれるそうですわ」

「わかりました。お父様のお名前は……」

「不知火國重と言います」

「ありがとうございます。それでは」

「ありがとうございました」


 医師は軽く会釈をすると、部屋を出て行った。


「……天使様……たしか、さくらみたま様と名乗っていましたわ……」


 病室に一人になると、双葉はどこかぽーっとした顔でうすぼんやりとした記憶でしか残っていない、自身の命を助けてくれた者のことを思い出していた。


 最初は黒髪で幼そうな顔立ちの少女に見えたかと思えば、突然綺麗な銀髪と動物の耳が生えた巫女服らしきものを身に纏った少女に早変わり。

 かと思えば、血と一緒に流れ落ちていった命が、暖かな何かと一緒に自分の体に戻っていくのを感じ、気が付くとうすぼんやりとした物だった意識がある程度ハッキリとしていた。

 大量に血を失ったことによって、頭はぼーっとしていたが、それでも自分を助けてくれた相手がとても可愛らしく、美しいと思ってしまった。

 が、やはり怪我は癒えても失った血液の方はどうにもなっていなかったため、すぐに意識を手放す結果となったが。


 次に意識が戻ったのは、空の上。

 背中に感じる柔らかな何かと、浮遊感で目を覚ますと、さっきまで狐耳に巫女服を着ていた少女が、なぜか翼を生やして空を飛んでいた。

 しかも、髪色もなぜか変わっており、途中から金色になっていたことに驚いた。

 それからほどなくして意識を手放し、気が付いたら病院のベッドの上だった、というわけである。


「天使様……いえ、みたま様……もう一度お会いして、お礼を言いたいのですけれど……」


 意識を取り戻した後、双葉は自分を押し付けられた看護師に自分を助けてくれた人に会いたいと言うと、そのまま飛び去ってしまったと言われて、残念に思った。


「はぁ……」


 会いたい、そう思うものの、どうすれば会えるのかもわからず、小さく溜息を吐いた。

 しかし、頭の中に残る可愛らしい銀髪の少女を思い出して、もにゅもにゅと口元を緩めたり、頬を赤くしたりしていると、ガラッ! と勢いよく病室の扉が開いた。


「双葉ッ!」


 病室に入って来たのは、和服を着た黒髪に白髪が混じった、やたらと厳つい顔立ちの男性だった。

 なぜか顔に傷がある。

 男はかなり焦った様子で病室に入ってくるなり、双葉の名前を叫んでいた。


「お父様!」

「あぁっ、よかったッ……双葉、無事だったかッ……!」

「はい、運が良く」

「そうか、そうかッ……!」


 男は双葉の父である、不知火國重だ。

 轢き逃げに遭ったと電話で貰ってすっ飛んで来た國重だが、いざ病室に行ってれば、少しだけ白い顔をした最愛の娘がおり、双葉に駆け寄るなり目尻に涙を溜めながら心の底から安堵していた。


「双葉が轢き逃げに遭ったと聞いて、俺ァ気が気じゃなかったが……よく無事で……」

「はい、ご心配をおかけしましたわ」

「いや、いい。双葉が無事ならな。……しかし、本当に運が良かったんだな。怪我一つねェじゃねェか。そんなに運が良かったのか?」

「その、荒唐無稽なお話かもしれないのですけれど……」


 あまりにも怪我が無さすぎる双葉に、國重は不思議そうにしていると、双葉がそう前置きしてから事情を説明した。


「――というわけですわ」

「ふぅむ、なるほどなァ……不思議なこともあるもんだ。まァ、美月市ってなァ、昔は不思議なことがあったらしいからなァ」

「そうなのですか?」

「おう。先々代がちィっとな」

「では、お父様はわたくしの荒唐無稽なお話を信じていただけるのですか?」

「当然だろう? 娘の話を信じねェ親がどこにいるよ」

「ありがとうございます、お父様」


 ふっと笑みを浮かべながら、自分を信じると言ってくれた國重に、双葉は嬉しそうにお礼を返す。


「いいってことよ。……が、そのみたまって嬢ちゃん? には、礼をしないとなァ……俺の最愛の娘を救ってくれたんだ。命の恩人だ」

「わたくしも、お礼をしたいと思っておりますが、如何せん、飛び去ってしまったようでして……」

「そうか……ま、うちのもんに調べさせるしよう。とりあえず、今日はゆっくり休め、双葉」

「はい、お父様」

「そんじゃ、俺は色々やらなきゃならねェことがあんで、帰るとする。一人にするのは心配だが……」

「大丈夫ですわ。わたくしももう、大学生ですもの」


 残すのが心配だと言う國重に、双葉はふふっと笑ってから安心させるようにそう言った。

 それを受けて、國重は苦笑を浮かべた。


「……まァ、それもそうか。……っと、双葉を轢いた車のナンバーはわかるか? それと、車の色とかもな」

「はい、あとでメールでお送りしておきますわ……その、少々眠くなってしまいましたので……」

「わかった。すまねェな、血が足りてねェだろうによ」

「お気になさらないでください」

「んじゃ、頼んだぜ」

「はい、おやすみなさい、お父様」

「あァ、お休み、双葉」


 最後にそう言ってから、國重は病室を出て行った。

 それを見送ってから、双葉は自分を轢いた車のナンバーと色をメールに書き込んでから、すぐに眠った。



 それから数日後。

 念のためということで二日ほど入院し、今日再度検査を行い、体のどこにも異常がなかったので、そのまま無事退院となった双葉は、國重が出した迎えの車(黒塗りの高級車)に乗って帰宅。


『『『おかえりなさいませッ、お嬢!』』』


 帰宅すると、頭を下げた男たちが双葉を出迎えた。

 普通の人だったら、思わず逃げ出してしまいそうな状況だが、双葉はにこやかな笑みである。


「ただいま帰りましたわ。お父様は?」

「奥でお待ちです!」

「ありがとう」


 男の一人から國重の場所を教えられると、双葉は真っ直ぐその場所へ向かった。


「ただいま帰りましたわ」

「おう帰ったか、双葉。検査はどうだった?」

「まだ少し貧血気味ですが、問題はありませんでしたわ」

「そうか、それならいい」

「それで、お父様。さくらみたま様は見つかりましたか?」


 検査の結果を簡潔に伝えると、双葉は自分を助けた少女が見つかったかどうかを尋ねていた。

 その表情はどこか期待したようなもの……というか、実際に期待がこれでもかっ! と籠っていたのだが……。


「あー、それなんだがよォ……この辺に、さくらみたま、ってェ名前の奴がいねェみてェなんだよ」

「そ、そんなっ……」


 さくらみたま、などという人物がいないと告げられ、双葉はしゅん……と項垂れた。

 お会いしてお礼をしたい、入院中はそう思っていたのだが、それは叶わなそうだと思ってしまった。


「わりィな……」

「いえ、見つからないのであれば仕方がありませんわ……」


 目に見えてしゅんとしている娘に、國重はうっと胸を痛めた。

 最愛の娘がこうも悲しそうにしているのを見るのはきついな、と。

 なんて思っている時のことである。


『こんたまぁっ! 神薙みたまだよ~~~っ!』


 と、やたらと可愛らしい声が突然部屋の中に響いた。


「ん? おい誰だ?」

「す、すいやせんッ! 自分ですッ!」


 ギロリと音がした方を見ながら威圧するような声を出すと、部屋の入り口付近で待機していたスキンヘッドの男が名乗り出た。


「そうか……なんだ、音量調整を間違えてたのか?」

「う、うっす」

「まァ、次から気を付けろや。今はプライベートだからいいがな」

「す、すいやせんッ!」

「あ、あのっ!」


 頭を下げる男に、双葉はどこか驚いた表情を浮かべながら声をかけていた。


「な、なんでしょうか、お嬢?」

「い、今の声の方はど、どなたでしょうかっ?」

「へ? あ、あぁ、今VTuber界で一番勢いのある、神薙みたまって名前のVTuberっす」

「み、みたま……今、みたまと言いましたか!?」


 みたまという名前に双葉が大きく反応し、男に詰め寄る。


「え、あ、う、うっす!?」

「そ、その方はどのようなお姿を?」

「あ、あー、見てもらった方が早いんですが……こちらとなりやす」


 そう言って、男はスマホの画面を操作すると、一つの動画を表示させ双葉に見せた。

 そこに映っていたのは、銀色の髪に蒼い瞳、狐の耳と尻尾を生やした、巫女服姿の少女。

 そう、自身を助けてくれたあの少女と瓜二つなキャラクターがそこには映し出されていた。


「こ、ここっ、この方です!? お父様、この方が、わ、わたくしを救ってくださった方です!?」

「何ィ!? だ、だがよォ、これはたしか、実在しねェって存在じゃねェのか? おう、矢島よ」

「が、ガワはそうです。しかし、中身は普通の人でして」

「ってェことは、着ぐるみのようなもんか?」

「まあ、そうなりやすね」

「ふむ……双葉、本当にこの嬢ちゃんがそうなんだな?」

「は、はいっ! その、本当に瓜二つですわ……! 声も、間違えるはずがありませんっ! 間違いなく、みたま様ですわ!」


 双葉、思いもよらぬ形で探し人が見つかり、かなり興奮していた。

 地味にあの一瞬で声を憶えていたのがすごい。


「そうか……しかし困ったな。本当にこの嬢ちゃんがそうだったとしても、中身がわからねェんじゃ、どうしようもねェしな……それに、こう言うしのぎはバレちゃいけねェんだろう?」

「うっす。少なくとも、そういうもんっす」

「だよな……」

「それに、中身が本当に同じ容姿とも限りやせん」

「ふぅむ……」


 どうすればお礼が出来るか、國重は腕を組んで悩んだ。

 こうもキラキラとした反応を見せる愛娘のために、何かをしてやりたい、そう思っているが、解決策が見えてこない。


「……と、ところで矢島さん。この、VTuberなる物は一体どのような? わたくし、大変興味を惹かれます!」


 そんな國重をよそに、双葉は目を爛々と輝かせながら、矢島にVTuberについて尋ねていた。


「そうっすね……マンガやアニメのキャラクターのような姿になりきって配信を行うって感じっす」

「なるほどっ……! わ、わたくしも見てみたいですわ!」

「なら、らいばーほーむって事務所がいいっすね。この神薙みたまもらいばーほーむ所属のライバーっす」

「らいばーほーむ……覚えましたわっ! わたくし、早速拝見してまいります! 特に、こちらの神薙みたま様の配信を! それはもう! たくさんっ! それでは、わたくしは自室に戻ります!」


 そう言って、ばびゅんっ! とうっきうきな状態で双葉は自室へ走り去っていった。


「……おう、矢島。俺も気になるんで、ちィっと見せろや」

「うっす!」


 娘が気になったという物に、國重も矢島と呼ばれた男に命令すると、視聴を始めるのであった。



 この後、不知火親子は、神薙みたまの配信、ひいてはらいばーほーむにドハマりしたそうな。

 それから、双葉は声を聴いて間違いないと確信し、いつかお礼を言うことを夢見、さらには崇拝(?)に近い域にまでみたまにハマるようになったそうな。

 補足として、双葉の容姿をば。

 黒髪ロングで姫カットの女性です。可愛い系と綺麗系の中間の容姿で、現在は大学一年生です。

 身長としては、150センチ後半程度で、スタイルはそれなりにいいです。バランスがいいタイプ。

 とまあ、そんな感じです。

 あと、双葉を轢いた犯人は現在、それはもう酷い目に合ってます。誰も助けに来ることはなく、ひたすらひどい目に合ってますが、一応生きてます。まあ、死んだ方がマシ! って状況にはなってるけど。

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― 新着の感想 ―
娘の恩人でもあるけど、『こう言うシノギ』に理解がある為相手に迷惑かけるわけにもいかんしどうしたもんかと悩む親分さん ヤクザとは言え任侠系の筋は通す方面の人っぽいし、娘さんも恩人の迷惑にはなりたくないだ…
ああどんどん広まっていくう というか893ですかねえ なんかいろんな人に好かれるなあ(遠い目) 立った立った4期生フラグ立ったwww
初コメ失礼! 50話ぐらいの時からずっと追っかけてました! 毎日更新マジありがたい!(お昼になったら見るのが習慣にw) これからも頑張ってください!
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