#103 配信の後と、体育祭一週間前
「う、うぅん…………はれぇ……?」
温かい何かに包まれているような、そんな感覚で目を覚ますと……
「すぅ……すぅ……」
「……にゃ!?」
なぜか僕はリリスお姉ちゃんの姿をした栞お姉ちゃんと抱き合うようにして眠っていて、変な声が出ました。
「……あ、あれ? ここは……そもそも僕何をしてたんだっけ……?」
頭に靄がかかったように、寝ちゃう前のことが思い出せない。
それに、なんだかすごく怖い夢を見ていたような気がするんだけど……気のせい、かな? 最後にはお姉ちゃんが助けに来てくれたような気もするけど……。
って、それよりもこの状況は……。
「栞お姉ちゃん、栞お姉ちゃん」
ともあれ、まずは栞お姉ちゃんを起こさないと。
抱き合ったままなのはその……す、すごく恥ずかしいし、ドキドキするし……。
「ん、んんぅ…………なんやぁ……もう、朝なん……?」
声をかけると、くしくしと目をこすりながら目を覚ましました。
「ん、椎菜さんや……おはよぉ」
「あ、はい、おはようございます」
「……うん? うちはなんで椎菜さんと抱き合ってるん?」
「僕もわからないです……目を覚ましたらこうなってたと言うか……」
「ふむぅ? まあええかぁ。それにしたかて、なんか頭が少し痛むなぁ……なんやろう?」
「僕もほんのちょっとだけ……って、ふぇ!?」
「どないしたん……って、ひゃ!?」
辺りを見回した瞬間、僕は思わず悲鳴(?)を上げていました。
そんな僕に釣られるようにして、栞お姉ちゃんも辺りを見回すと可愛らしい悲鳴を漏らしていました。
僕たちの視界に入って来たのは、なぜか口と鼻から血を流して安らかな顔で眠るらいばーほーむのみなさんでした。
あ、ただ、恋雪お姉ちゃんだけは普通に眠ってるけど……い、一体何が!?
あと、よく見ると至る所に血液が付着してるけど……これ、本当に何があったの!?
「これは酷いなぁ……」
「というか、もう六時!? 本当に何が……」
「うむむぅ……謎やなぁ……」
「とりあえず、焼き肉パーティーをしていたことは憶えてるんだけど……途中からなぜか記憶が……って、そう言えば栞お姉ちゃん、なんでリリスお姉ちゃんの姿に?」
「そういう椎菜さんも、天使の姿になってんで?」
「あっ、ほ、本当だ!? いつの間に……」
「まあええかぁ。とりあえず、全員を起こすべきやな」
「そ、そうだね! あ、その前にお味噌汁温めておかないと。みんなお酒飲んでたし、ちょうどいいかも。シジミじゃないけど……」
「味噌汁かぁ……ようわからんけど、うちも欲しいなぁ」
「もちろん! それじゃあ、栞お姉ちゃんは起こしてもらってもいい?」
「了解やわぁ」
というわけで、僕はお味噌汁を温めて、栞お姉ちゃんはみなさんを起こす作業に回ってもらいました。
そうすると、みなさんはどこか頭を抑えながら起き上がる。
「あー……頭痛……飲みすぎたかな……?」
「俺はなんかこう、気怠い……」
「あー……喉乾いた……水が欲しいわ……」
「み、みみ、みなさん、お、起きた、んです、ねっ……!」
「んー、ボクも頭痛いなー。あと、喉乾いた」
「うぅ~、ちょっと気持ち悪いっしょ……」
「あー、頭がぐわんぐわんするぞぉ……」
「ん、怠い」
「あぁ~~~、なんだかすごくいい夢を見ていた気がするんですけどぉ~~……」
「あー、血が足りねぇです」
「ハッ! あんのクソ悪魔は!? って、あー、なんだ戻って来たのかー。じゃあいっか。あ、椎菜ちゃんに栞ちゃん! 起きたんだね! よかったよかった!」
「みなさん、おはようございます。今お味噌汁を温めてるので、飲みますか?」
『『『もらう!』』』
どうやらみなさん飲むようです。
作った甲斐があります。
「って、あれ? みなさん僕たちの姿が違うことに驚かない、んですか……?」
ふと、みなさんがいつもと変わらない接し方をしていたので、気になって思わず思っていたことが口から零れていました。
「ふっ、今の私は大量に血が抜けた後ですからねぇ~。正直、もう出る血がありませんよぉ~。これ以上は、血管に流れている血が出ちゃいますしぃ~~~」
「あの、千鶴お姉ちゃん、普通は血管以外から血は出ないよ……?」
「いや内臓もあるぜ!」
「そう言う問題じゃないが?」
「って、そう言えば配信はどうなったのよ!? あたし、途中から死んでて記憶がないんだけど!?」
「そ、そそ、それ、ならっ、わ、わたしがき、切りましたのでっ……!」
「何!? 恋雪君が!? え、というか君、生き残ったの!?」
「マジかよ! すっげえな恋雪! 俺たちですら耐えきれなかったってのによ!」
「恋雪さんって、ミレーネさんより常識人枠になりつつあるよねー」
「は!? どういう意味よ冬夜!? じょ、常識人はあたしなんだからねっ!?」
「恋雪君、今日から君が常識人にならないかい?」
「皐月さん!?」
「ひぇぇぇえ!? わ、わわわっ、わたしには、むっ、むむむ無理でしゅぅ~~~~~っ!?」
「おー、恋雪さん顔真っ赤だぞ」
「ん、ゆでだこのごとし」
「それよりも私は、天使な椎菜ちゃんとリリスさんな栞さんが気になりますねぇ~~~!」
「たしかに! うちも気になってんですよ! どゆことどゆこと!? あと、色々あって事情聴いてないけど、そっちのみたまちゃんオルタミニな幼女ちゃんは!? うちの孫なのはわかるけど!」
と、いつも通りのみなさんの会話に、なんとなく安心していると、千鶴お姉ちゃんと小夜お姉ちゃんの二人が僕と栞お姉ちゃんがいつもと違う姿であることに切り込みを入れて来て、更に小夜お姉ちゃんはみおちゃんのことを尋ねてきました。
「あ、あー、えーっと天使さんの姿なのは、その……最近天使さんを助けたことで貰ったミサンガが原因で、こっちのみおちゃんはあの配信の翌日に僕のお家の前にダンボールに入っていて……それで、色々あって一緒に暮らすことになった娘です。あ、えと、神様です」
『『『ちょっと待って!?』』』
「ふぇ? どうかしましたか?」
「いやいやいや!? どうかしましたか、じゃないわよ!? 椎菜さん!?」
「今、神様って聞こえたぞ!?」
「え、どゆことどゆこと!? あーし、マジで混乱してんよ!?」
「あ、あれ? そう言えば……あの、みまちゃんが神様ってこと、お話してました……よね?」
『『『してないよぉ!?』』』
……す、すっかり忘れてた!?
そ、そう言えばみまちゃんが神様って知ってるの、皐月お姉ちゃんと小夜お姉ちゃんの二人だけだった!
あ、あー、すっかり忘れてたなぁ……。
本当は配信前に説明しようとしてたのに、千鶴お姉ちゃんと小夜お姉ちゃんの二人のごたごたでお話してなかったんだ……。
というわけで、僕は二人ついての諸々をみなさんに説明。
『『『マジかぁ……』』』
「さすがの君たちでも、これにはかなりの情報の爆弾だったんだね」
「そりゃそうですよ!?」
「ん、想像の斜め上どこから真上を飛んで行った。椎菜、本当にすごい」
「か、かかっ、神様だなんてぇ~~~! つ、つつ、つまり、本当にみたまちゃんを崇めると言うとが可能なんですねぇ~~!? みたま教! みたま教を作れなければぁ~~~!」
「千鶴君、さすがにそれは色々ととんでもないことになる!? というか、もう既にみたまちゃんのチャンネルそのものが、一種の宗教の総本山みたいな物だから!?」
「皐月お姉ちゃん!?」
「たしかに、間違ってねぇですね……」
「小夜お姉ちゃんまで!?」
僕、宗教なんて作った記憶ないよ!?
「まあ、間違いじゃないよね、実際」
「お姉ちゃんも!?」
「いやほら、みたまちゃんへの愛で結果的にこうしてみまちゃんとみおちゃんの二人が生まれちゃったわけだし! すごいね! VTuberやってた神様が生まれるなんて、前代未聞だね!」
「いや普通はないと思うぜ! ってか、マジで椎菜ちゃんすげぇな! 神様か!」
「だねー。神様がいたことも驚きだけど、それ以上に何でもありになって来た椎菜さんもすごいよねー」
「あ、あははは……」
僕でも、随分とファンタジーになっちゃったなぁ、とは思ってるけど……。
でも、普通に信じてくれる辺り、みなさんもそういうのになれたんだなぁって思います。
「で、栞君の方は?」
「うちの方も、椎菜さんとおんなじ理由やな。多分やけど」
「ってことは、神様か……うちの事務所、こう言ってはなんだが、明らかに普通のVTuber事務所とは文字通り世界が違う物になってきてないかい? おかげで、私の負担が増えそうだよ……」
『『『ドーンマイ☆』』』
「いや君たちがその負担の理由だが!?」
みなさんの笑い交じりの言葉に、皐月お姉ちゃんは全力でツッコミを入れていました。
それからは後片付けを済ませて解散。
僕はみまちゃんとみおちゃんを起こして、二人とお姉ちゃんと一緒にお家に帰りました。
それと、杏実お姉ちゃんが持って来たお肉で作ったハンバーグも貰って帰って来て、夜ご飯はハンバーグになりました。
◇
それから二日後。
今日からみおちゃんも学校に。
普通なら、双子は同じクラスにならないんだけど、今回は色々と特例ということで、みまちゃんと同じクラスになるそうです。
ありがたいです……。
あ、みおちゃんのランドセルも日曜日の内に買ってあります。
準備も済ませて、わくわくとした様子のみおちゃんを連れて三人で学校へ。
「……みまおねーちゃん、がっこー、たのしー、ですか?」
「たのしーよっ」
「……んっ、じゃあ、きっとたのしー、ですっ……!」
「みまのおともだち、しょーかいするねっ……!」
「……たのしみ、です」
と、二人は楽しそうにお話していました。
うん、微笑ましいです……。
みまちゃん、ちゃんとクラスの子たちと馴染めてるみたいだし、きっとみおちゃんも大丈夫だよね。みまちゃんもいるし。
それに、もしも何かあったら僕にちゃんと言うようにって言ってあるしね。
そうして、三人で歩いている内に、美月小学校に到着。
「それじゃあ、みまちゃん。みおちゃんのことお願いね?」
「はーいっ」
「みおちゃんも、先生の言うことをよく聞いて楽しく過ごしてね」
「……んっ」
「じゃあ、いってらっしゃい」
「「いってきますっ」」
僕は二人を笑みを浮かべながら見送ってから学園に向かいました。
◇
「えー、というわけで今週の土曜日に体育祭がある。一週間、六時間目以降から各種目の練習に使えるんで、練習したい奴は練習するようになー」
教室に到着した後、柊君と麗奈ちゃんとお話している内に、HRに。
そこでは、今週の土曜日に行われる体育祭についてのお話がされました。
「基本的には今日の話しはそこまでだが……あー、それと桜木、ちょっと話があるから、この後ちょっと来てくれ」
「あ、はい、わかりました」
なんだろう? 何かやっちゃったっけ……?
いきなり呼び出しを受けて首をかしげていると、クラスのみんなが『あー』と何かを察したような顔をしていました。
なんだろう、みんなは心当たりがあるのかな……?
気になりつつもHRが終わったので、僕は田崎先生の所に。
すると、人気がない廊下の奥の方に連れていかれました。
「えっと、先生、お話って……?」
「あー、なんだ、事故だから仕方ないし、一応法律的に問題もないんだが……あれだ。お前、絶対に酒入りの菓子類は食べるな」
「……ふぇ?」
いきなりお酒が入ったお菓子を食べないでほしいとすごく真剣な表情で言われて、僕はこてんと首を傾げました。
全然予想してなかった内容のお話が出て来た……。
「……はぁ、その様子じゃ記憶にないのか……桜木姉のことだ。どうせ、恥ずかしがるから、なんて理由で言わなかったんだろうが……お前、相当アルコールに弱いぞ?」
「え、ど、どういうことですか?」
「そのままの意味だ。いいか? お前、土曜日に焼き肉パーティーの配信をしただろう?」
「はい、そうですけど……もしかして、先生、見てたんですか……?」
「まあ、ファンだしな。普通に好きだぞ、らいばーほーむは。あと、配信のお前に結構癒されてる」
「ふにゃ!?」
「まあ、桜木姉でプラマイゼロになるんだが……いやむしろ、マイナスか」
突然癒しと言われて、変な声が出ちゃいました……。
というか先生、前も思ったけど、VTuber見るんだ……。
「で、だ。その時、お前はどうやらウイスキーボンボンを食べたらしい」
「ウイスキーボンボン……たしか、お酒が入ったチョコレート、でしたっけ? 僕食べた記憶が…………あっ」
「思い出したか?」
「……はぃ……」
食べた記憶がないと言おうとした直後、僕は自分で作ったロシアンルーレットハンバーグで当たりを引いて、あまりの辛さにロシアンルーレットハンバーグで使ったチョコレートを食べちゃったっけ……あれ、ウイスキーボンボン、だったんだ……。
そ、そっかぁ……僕に記憶がなかったの、酔っぱらっちゃったからなんだ……。
「で、記憶はないんだろう?」
「はぃぃ……」
「あれは事故だし、さっきも言ったが一応飲酒に引っかからないが……お前は絶対に、酒入りの菓子を食べるな。死人が出る」
「はぃ……って、どういう意味ですか!?」
「そのままの意味だ。実際、昨日の配信では死人が出ていたからな」
「ふぇぇぇ!?」
ど、どういうこと!?
何があったの!? 僕がお酒に酔っちゃった間に、一体何があったの!?
き、気になるっ! すっごく気になるよぉ!?
「あぁあと」
「な、なんですかっ?」
「お前やもう一人の酔っ払いのために言うが……絶対に酔っていた間のことを知るために、配信を見返すのはやめておけ」
「ど、どうしてですか!?」
「お前、あまりにもアレな内容に、恥ずか死ぬぞ」
「すごく気になっちゃいますよぉ!?」
「まあそういうわけだ。VTuber活動については、全面的に応援するが、今後は酒入りの菓子を食べることのないようにな。さすがに、高校生で酔っ払い姿を見せるのは問題だろうしな」
「あ、は、はい……って、そうじゃなくて、本当に何があったんですかぁ!?」
「絶対に見ない方がいい、それだけだ。間違いなく、関係性にある意味罅が入りそうだしな……」
「僕、本当に何したんですかぁ……?」
一切教えてくれない先生に、僕は情けないような声でそう呟くのでした。
やっと体育祭の話しです。
進みが悪い! まあ、仕方ない! 私の書き方的な問題だし! なぜ、一日一日で話を書いているのか……コレガワカラナイ。




