#100 事情説明、からの即死するシスコン
「んっ、ふぁ~~~……んんぅ、よく寝た……って、お父さん、お母さん!?」
目が覚めると、リビングの入り口で、お父さんとお母さんの二人が安らかな笑みで血だまりに倒れ伏していました。
どういう状況!?
「ふ、二人とも、起きて起きてっ! どうしたの!? 何があったの!?」
まだ気持ちよさそうに眠ってるみまちゃんとみおちゃんの二人をそっと降ろして、慌てて二人の所へ駆け寄って声をかける。
「ハッ! ここは私!? どこはだれ!?」
「ハッ! 夢か……いやー、変な夢を見たよ……椎菜とみまちゃんと見知らぬとても愛らしい女の子が一緒になって昼寝をしているという……」
お母さんはよくわからないこと、お父さんはどこか残念そうな表情で夢の内容を口にしていました。
いやあの……。
「二人とも、その、怒らないでほしいんだけど……」
「私が椎菜のことで怒るなんてないわよ?」
「あぁ、俺もだな。椎菜のことなら、なんだって受け入れるぞ」
「ありがとう。えっと、その、ね? ……新しく娘が出来ました……」
爆弾とも言える情報を、僕は少しだけ言い淀んでから二人に告げました。
「「………………………………ファッ!?」」
たっぷりの間を空けた後、驚かれました。
だ、だよね……。
「あそこで眠ってる黒髪の女の子がそうです……」
「ゆ、夢じゃなかったッ……だとッ……!?」
「か、可愛い! 両方とも可愛い!? すっごく可愛い孫が二人目!?」
「しかも、娘!? ということは……あの娘も神様、なのかい?」
「は、はい……その、えと、二人が見てるかはわからないけど……神薙みたまオルタってわかる……?」
「もちろん。新しい立ち絵よね? それがどうかした…………そういえばあの娘、似てる……」
「実は、神薙みたまオルタが神様になった存在みたいで……その、なので、みまちゃんの妹になります……あと、僕の娘で……」
「「なるほど……」」
「なので、その、みまちゃんが来たばかりだけど、あの娘、みおちゃんも一緒にこのお家で暮らさせてほしくて……だめ、かな?」
納得してもらったところで、二人に一緒に暮らしていいかどうかを尋ねると……
「「可愛いし孫だから大歓迎!」」
二人はすごくいい笑顔でビシッ! とサムズアップと共に快諾してくれました。
「ありがとうっ、お父さん、お母さん!」
「いいのいいの、椎菜の娘なら、私たちにとっては孫だもの。というか……ケモロリな孫とか最高だし……」
「わかるぞ、母さん……俺は母さんと結婚して、椎菜という可愛い子供が出来て、尚且つあんなにも可愛らしい孫が出来て幸せ過ぎる……これ以上に幸せがあるだろうかいやない!」
「そうね~。それで、あの娘はみおちゃんだっけ?」
「うん。みおちゃんです」
「ふむふむ……となると、椎菜のベッド、ちょっと手狭になりそうね~」
少しだけ考え込む素振りを見せた後、お母さんが僕のベッドについて言って来ました。
言われてみれば……。
もともと、僕の使ってるベッドは一般的なサイズ。
元の体ではちょっと大きいくらいで、この体になってからは更に大きく感じていた。
一応、みまちゃんと小夜お姉ちゃんと三人で寝たこともあるけど、実はちょっとだけ手狭だったんだよね……。
けど、一日だけだったし、みまちゃんも嬉しそうだったからいいかなぁってことで流してはいたわけだけど……今後はみおちゃんも一緒に寝ることになるわけで。
そうなると今使ってるベッドの大きさ的にちょっと微妙かも……。
「じゃあ、新しいベッド買おうかなぁ。ちょっと大きいの」
「それがいいと思うわ。椎菜の部屋はそれなりの広さだしね。それに、あの二人が成長するかどうかもあるし……そう言えば成長するの? あの二人って」
「言われてみれば……」
「神様だからなぁ。果たして成長するのかどうか……」
「たしか、病気にはなるってお話だったよね? それなら、成長してもおかしくはないんじゃないかなぁ」
まあ、できれば成長してくれた方が、色々と困らなさそうだけど。
成長しなかったら同年代の子供にいじめられちゃうかもしれないし……その時は文字通り飛んで行くつもりだけど……。
「まあ、そこはおいおいわかるだろう。それよりも……愛菜は大丈夫だろうか」
「「あー……」」
お父さんの発言に、僕とお母さんは何とも言えない気持ちになりました。
みまちゃんを見た時もその、すごいことになってたのに、新しくみおちゃんがいるわけだから……なんだろう、すごいことになる気が……。
「その時はその時ね。愛菜ならすぐに生き返るから大丈夫」
「お母さん、生き返る、っていう言葉が出て来る時点でおかしいと思うの」
「愛菜だもの」
説得力があるなぁ……。
お姉ちゃんすごいよね……。
「ん、んんぅ~……おかーさん……」
「……おかーさん、どこ、ですか……?」
三人で話していると、後ろから二人の声が聞こえてきました。
どうやら起きたみたい。
僕は一度二人のすぐ傍へ移動。
「おはよう、二人とも。よく眠れた?」
「んぅ、ぐっすり」
「……ねむれた、です」
「そっか。よかったね。あ、みおちゃん、先に僕のお父さんとお母さんに挨拶しちゃおっか」
「…………おかーさんの、おかーさんと、おとーさん……?」
「うん。みおちゃんからすると、お爺ちゃんとお婆ちゃんになるのかな?」
「……あいさつ、しますっ……!」
こくりと頷くと、みおちゃんはどこか気合を入れて、ぴょんっ、とソファーから降りると、とてとてと二人の所へ歩み寄って……。
「……神薙みお、です。よ、よろしく、おねがいします、おじーちゃん、おばーちゃん」
みおちゃんはちょっとだけ恥ずかしそうにしながらも、ちょっとだけ笑みを浮かべて二人に挨拶をしました。
「「ぐはぁっ!」」
「二人とも!?」
挨拶をしただけなのに、二人はなぜか胸を抑えて倒れました。
「つ、強いっ……さ、さすがみまちゃんと同じ神様っ……!」
「あぁっ……もう何もかもが可愛いっ……みまちゃんと同じレベルッ! これが、ロリ神様ッ……!」
「……おかーさん、おじーちゃんとおばーちゃん、へんです……」
「「ごふっ……」」
「あ、あはは、えと、平常運転だから……」
「「ぐはぁっ……!」」
「と、とどめ刺されたわ……」
「……娘から、そう思われていた、とは……ごふっ」
……うん、いつも通り(遠い目)。
◇
みおちゃんは問題なく二人と打ち解けることに成功。
戸籍についても、みおちゃんが持っていた神様たちからのお手紙の中に、みまちゃんの時と同じように神様の力で戸籍が存在してるとか。
桜木家の養子になってるみたいだけど。
扱いとしては、みまちゃんと双子の姉妹、ということに。
そんな二人はと言えば……。
「「えへぇ~~」」
今は僕にくっついて嬉しそうにしてます。
元々みまちゃんは僕にくっつくことが好きだったけど、どうやらみおちゃんもそうみたいで、みまちゃんと一緒になって僕にくっついてます。
ただ、みまちゃんと違う点は、みおちゃんは自分から言うというより、ちらちら僕を見て、何かを期待するような素振りを見せること。
みまちゃんがそれに気づいて、一緒に甘えよう、みたいなことを言ってこうなったけど。
うん、とりあえずは仲が良さそうで何よりです。
……喧嘩になったらちょっと困っちゃったからね……。
「あ、そうだ。みおちゃん、お家の中では耳と尻尾は出してもいいけど、お外では隠すようにね?」
「……どーして、ですか?」
僕は耳と尻尾のことを思い出して、外では出さないようにと言うと、みおちゃんはこてんと首をかしげて不思議そうにしました。
「普通の人は耳と尻尾がないからね」
「……わかりました」
「うんうん、偉いね~」
「……ん~」
物わかりがいいようで、すぐに理解してくれたみおちゃんの頭を撫でると、みおちゃんはくすぐったそうに目を細めました。
「おかーさん、みまも~」
「うんうん、みまちゃんも偉いね~」
「えへぇ」
反対側にいたみまちゃんが、自分も自分もと可愛らしくなでなでをせがんできたので、僕は小さく笑みを浮かべながら、みまちゃんの頭も撫でると、嬉しそうな表情に。
あぁ、癒されます……。
なんだろう、この気持ち……。
「……娘と孫の尊さがとどまるところを知らない……」
「最高過ぎるッ……あぁっ、生きててよかったっ……日本に帰ってきてよかったッッ……!」
「わかる……」
……そう言えば、このお家って今神様が二人もいるけど、色々と大丈夫なのかな?
普通、神様って神社とか、そう言うところにいそうなのに。
まあでも、神様からのお手紙には特に書かれてなかったし、大丈夫だよね。
「あぁそうだ、椎菜」
「どうしたの? お父さん」
「みおちゃんも小学校に通わせる、ってことでいいんだよな?」
「うん。双子っていうことになってるからね」
「それなら、明日早速戸籍やら何やらを取って、そのまま小学校へ行ってこよう。あとで、連絡するからな」
「うん、ありがとう、お父さん」
「あとは洋服よね。そう言えばみまちゃんとほぼ体が同じね……たしか、それなりにみまちゃんの洋服を買ってたわよね? 椎菜」
「うん。いっぱい買ったよ」
上下共に10着ずつ買ってます。
もうちょっとあった方がよかったかもしれないけど。
「それなら、ちょっとの間はそれで過ごしてもらった方がいいわ。ほら、また買いに行くのも大変だし、それにもうすぐ体育祭でしょ? 椎菜もやることが多いし」
「うーん、本当はみおちゃん用にも買ってあげたいけど……ねぇ、みおちゃん」
「……(こてん)」
「みおちゃんの普段着るお洋服だけど、しばらくはみまちゃんのでもいいかな?」
「……だいじょーぶ、です」
「ありがとう。みまちゃんもいい?」
「だいじょーぶ」
「じゃあ、そうします」
「わかったわ。まあ、サイズがわかってるなら、ネット通販で買うのもありだしね。あぁ、そうだ。体育祭は見に行くからね」
「恥ずかしいけど……うん、ありがとう、お母さん」
「お父さんも行くからな! あとは、愛菜も行くし、みまちゃんとみおちゃんの二人も行くだろうからね」
「うん」
二人が応援してくれたらすっごく頑張れそう。
……まあでも、僕が本気で競技に参加しちゃうと、すごいことになっちゃうけどね……。
でも、応援されたらついうっかりで本気出ちゃいそうだし、気を付けないと。
なんて、そう考えてつつ、なんてことない家族の時間を過ごしていると……
「たっだいまー!」
お姉ちゃんが帰ってきました。
ちなみに、みまちゃんとみおちゃんの二人はまた眠くなっちゃったみたいで、僕に寄りかかるようにして寝ちゃってます。
寝顔が可愛いです。
「いやぁ、今日はなかなかの難敵だっ…………た?」
疲れた様な、だけどどこか楽しそうな様子のお姉ちゃんがリビングに入ってくると、いつもの笑顔のままある一点を見て固まりました。
「あ、おかえり、お姉ちゃん。えっと、この娘はみおちゃんって言って……その、僕の娘です」
「…………」
「あ、今日から一緒に暮らすので、仲良くして……って、お姉ちゃん? どうしたの?」
「………………」
まるで彫像のように微動だにしなくなったお姉ちゃん。
表情は笑顔のままで、僕と僕と一緒にいるみまちゃんとみおちゃんの二人を見つめて……次の瞬間。
「ロリ神様がご降臨なさったぁぁぁぁぁ!? ヤッタァァァァァァ!? ヒャッハーーーーーーー! あんばぶぐぁぁっ!」
突然叫び出したかと思えば、その場で空中で高速回転すると、バターーーーーンッッッ! と床に倒れて動かなくなりました。
……って!
「お、お姉ちゃん!? どうしたの!?」
「俺の娘、エキセントリックすぎない?」
「あなたの血筋よ?」
「いや俺でも、あそこまでの動きは見せないぞ……?」
「それなら、愛菜は突然変異ということで」
「それはそれでなんか嫌だな……」
「お、お姉ちゃん! 起きて! お姉ちゃーーーーーーーん!?」
このあと、お姉ちゃんは一時間は目を覚ましませんでした。
シスコンが死んだ!
尚、今回はマジでヤバかったです。具体的には、三途の川の三分の二を進んじゃってたくらいには。
まあ、戻って来たのでヨシ!




