閑話#18 常識人の本気度(結局胃が痛くなる話はされる)
どうでもいいおまけあり!
春風たつなこと、城ケ崎皐月が後輩の幼馴染(健全な男子高校生)に迫ったあの後のこと。
「――というわけなんだ。どう思う? 愛菜」
『なるほどねぇ~』
皐月は家に帰宅後、熱くなっていた頭を冷やしたのだが、結局、
『やはり、あの少年は欲しいっ……!』
とか思った結果、椎菜以外に接点を持っている愛菜に電話で相談をしていた。
『まあ、私は全然ありだと思うよ? 私の目から見ても、柊君は声もいいし、イケメンだし、性格もイケメンだし、椎菜ちゃんの萌え殺し攻撃を受けても血反吐も鼻血も出さないし』
「それ、人類?」
『人類だよ? まあ、あの子はねー、ちょーっと椎菜ちゃんとの出会い方が特殊だったからねー』
「そうなのかい?」
『うん。簡単に言えば、二人の出会いは小学一年生の頃なんだけど、当時は同じクラスになりたてのクラスメートって感じだったらしいんだけどね。ある日、柊君の方から照れながら遊びの誘いをしたんだよ。で、遊んでいる最中、柊君が椎菜ちゃんに告白してねぇ』
「へぇ? 随分とませてたんだね? 彼」
『いやいや、何を言ってるんだい? 皐月ちゃん。当時の椎菜ちゃん、男の子だよ?』
「…………あ」
『忘れてた?』
「……すまない。そう言えば椎菜ちゃんは元男だったね……」
『まあわかるよ? 今の椎菜ちゃんしか見てない人って、本当に元男って言われても信じられないよねー』
「……そう、だね。あれは反則だと思う……」
愛菜の言葉に、皐月はエプロンを着けて、とても柔らかい笑顔を浮かべながら料理を作る椎菜の姿を思い浮かべ、あれで元男は何かの間違いだよね……と、そう思った。
第一、今でも元が男だと認識しているのは、柊くらいのものである。
大体は、女の子状態の椎菜に対して違和感を抱かなくなっているので。
もっとも、違和感なんて最初からなかったが。
『しっかし、皐月ちゃんも思い切ったことをするねー。さっすがらいばーほーむ!』
「……そのらいばーほーむにストマックブレイクをされないために、私は彼を勧誘しようと考えてるんだよ」
『ま、最近はデレーナちゃんがアレだからね。椎菜ちゃんの母性に脳を破壊されちゃったもんね。その点、柊君なら完璧だね。椎菜ちゃんへの完全耐性を有しているし、何より色々と適正が高い。あの子は性格もいいし、椎菜ちゃんのこともよく理解してるし、色々安心できるし』
「やはりか……しかし彼、仮に誘ったとして入ってくれると思うかい?」
『そうだねぇ……ま、可能性は0じゃないと思うよ? なんだったら、椎菜ちゃんが心配だからなぁ、っていう理由で入る可能性すらあるし』
「え、なに? 彼はそんなに過保護なのかい?」
『過保護って言うより、さりげなくサポートするタイプ? あれだよ、超気遣いが上手い性格してる』
「なるほど……やはりっ、私の理想じゃないかっ……!」
話を聞いていく内に、皐月は柊という存在が、自身の求めている常識人としての条件を高水準で満たしていることを改めて認識する。
尚、たつなが求める常識人の条件は、いつぞやの椎菜の配信のコメントで書いたように、みたまへの耐性をある程度有している事である。
他には、ツッコミ適正があるかどうかもあるが……あの感じであれば、間違いなくボケではなく、ツッコミだろうと確信。
というか、どう見ても気苦労が絶えないタイプに見えたので、なんとなくだが一目見た瞬間にシンパシーを感じていたのである。
「いやもう、本当運命だと思ったよ、私。今まで、告白されてきた言葉の中に、運命を感じたから、などと歯の浮くようなセリフを言ってきた人もいたが……バカにできないね、あれは。私も運命感じたよ」
『それ、前後の会話を聞かなかったら、単純に皐月ちゃんが柊君に惚れちゃったみたいなヤバイ絵面にならない?』
「ヤバイは酷くないかい!?」
『いやヤバくない? というか、話を聞いてて思ったけど、皐月ちゃん、柊君に会った瞬間、速攻で迫ったんでしょ?』
「誤解を招く言い方はやめてくれないかい!?」
『誤解じゃなくない? だって、会ったばかりの柊君に、『見つけたっ、私の理想っ……!』とか言っちゃってるんでしょ? どう見てもそう言う光景じゃん』
「うぐっ……」
愛菜に言われて、皐月もそこで自分の今日の行動がなかなかにアレなことにようやく気付いた。
というか、気付いたが故に思わずダメージを受けてしまう。
「25歳のいい歳した大人が、男子高校生に迫ってる図って……あれ? 本当にヤバくないかい?」
『ヤバいねー。少なくとも、皐月ちゃんのモデルとしてのファンとか、VTuberとしてのファンの人たちに見られたら、それはもう大変なことになってたくらいには?』
「んぁぁ~~~~~~っ!」
愛菜からのド正論パンチをくらって、皐月は身悶える。
あれ、通報されたら普通に捕まるんじゃないか? そう思うほどに。
『まあ、大丈夫だって。柊君は勘違いしないと思うし?』
「そ、そうかい?」
『うん。まあでも、あの子って皐月ちゃんくらい歳が離れてる人は好みっぽいしなー』
「……そう言えば、10歳くらい年上が好みだったっけ?」
『そうそう。±五歳差までが好みだってさー。よかったね? 皐月ちゃんが理想とする常識人候補で、年下のイケメンだよ?』
「別に狙ったりしないが!?」
『でも皐月ちゃん、どっちかと言えば、年下が好みじゃん』
「いやそうだが! さすがに高校生に手を出そうとは思わないが!? 第一、そうほいほいと恋愛的に好きにはならないから!」
『んー、それもそっか。まあ、皐月ちゃんの親友としては、アラサーになる前には恋人の一人は作ってほしい物だよー』
「いやそれ、愛菜にもブーメランだからね?」
『は? 私は椎菜ちゃんと結婚するつもりですが?』
「一生叶わないだろう、それ……」
と、軽口をたたき合う二人。
この二人、年は二つほど離れてはいるが、愛菜が言うように親友同士なのである。
この二名はお互いが姫月学園出身だが、出会いは別にそこじゃなかったり。
皐月が三年生の時に、一年生として入学してきたのだが、そもそも両名共に部活に所属していたわけではなかったので、接点がまるでなかった。
尚、実は二人とも恋雪とは面識があるのだが、奇跡的なまでにこっちの二人は会わなかったのである。
結果として、二人が出会ったのは実はインターネット。
愛菜はネット上でたまにイラストをアップしていたのだが、ある時本物のモデルからメッセージが飛んで来たのだ。
そのメッセージを飛ばしてきたのが皐月だ。
いつもならメッセージはスルーするタイプの愛菜だったのだが、この時はなんでモデル界の新星とも言われていたモデルが私に? とメッセージしてきたのが気になったので返信したことがきっかけで、二人は交流を持つように。
それからはネットで色々と他愛のないことを話したり、時には相談したり、などなどそうやって過ごしていると、ある時愛菜がVTuber事務所に誘われたことを告げる。
同時に、自分も誘われた、と愛菜に話すと、奇遇だねー、なんて笑いあったのだが……デビュー当日、お互いが同じ事務所にスカウトされていたことに気付いたのである。
そんなこともあって、割と付き合いの長い二人は、今ではすっかり親友同士というわけだ。
お互い、そう言う関係性の人物は色々あっていなかったために、それはもうお互い大事に思っている。
愛菜はいじめとかそう言う関係性で親友と言えるような人物などできなかったし、皐月は皐月で恋愛絡みで色々厄介ごとに巻き込まれまくっていたために、そういう存在とは無縁だった。
どちらも人間関係に難があったからこそ、意気投合したのである。
『諦めなければ、きっと叶うってッ……! だって、椎菜ちゃんが私のこと、恋愛対象として入るって言ったんだよ!? もう勝ち確じゃん!』
「それはどうかな……」
『は? 何? 皐月ちゃんも椎菜ちゃんを狙ってる感じ!?』
「いや違うが!? 言っておくが、私はノーマルだぞ? ただでさえ、学生時代にそれ絡みでいざこざがあったんだ。いくら元男とは言っても、結婚する気には……」
『でもコラボ配信の時に、プロポーズしてたよね?』
「……し、仕方ないだろう!? あそこまで癒されるとは思ってなかったんだっ……!」
実際、皐月的にもあれは想定外すぎたし、するっと口から零れていたのだ。
というか、あれは仕方なくない? と。
『まあ、椎菜ちゃんだしね。それは仕方ない。じゃあ、あれは本気じゃなかったんだね?』
「…………」
『おっとー、沈黙ですか? 皐月ちゃーん。……これは、皐月ちゃんと柊君をくっ付けた方が、恋敵は減る……?』
「なにとんでもいことを言ってるんだい!? というか、君にとっても知り合いだよね、彼!?」
『それはそうだけど。でもさー、椎菜ちゃん言ってたんだよねー』
「何を」
『柊君、幸せになってほしいなーって』
「それとこれと、なんの繋がりがあるんだい……」
『彼って、好みが年上なせいで、同級生とは絶対に恋愛しなさそうだし? だったら、らいばーほーむに引き込もうとしてる皐月ちゃんが、責任を持って、柊君を落とすべきじゃないかな? と』
「どういう理論!? というか、さすがにそれはないだろう!」
『あっはっはー! いやー、やっぱり皐月ちゃんはいじりがいがあるね!』
「くっ、さては君、私をからかうために色々言ったね……?」
『なーんのことー?』
皐月の指摘に、すっとぼけた反応を見せる愛菜だが、魂胆は丸見えである。
「まったく……」
そんな愛菜の反応に、皐月は苦笑を零す。
なんだかんだ、馬が合うのだ。
もちろん、皐月にとって嫌なことは愛菜は言わないし、皐月もそれがわかっているからこそ嫌うこともない。
お互いの嫌なラインはちゃんと把握しているからこその軽口。
『んで? 結局引き込むの? やるなら、私も協力するよ?』
「え、いいのかい?」
『うんー。だって面白そうだしー? というか、最高のネタじゃん? 新しく入って来るライバーが、椎菜ちゃんの幼馴染とか、最高じゃん?』
「それ、絶対に身バレするよね? 彼」
『そうなんだけど……実はさー、椎菜ちゃん、遂にクラスの子たちに身バレしちゃったらしいんだよねー』
「へぇ……って、え!? それ大惨事じゃないかい!? VTuberとしてかなりまずいと思うんだが!?」
突然のカミングアウトに、皐月はぎょっとしたようにそう叫ぶ。
だが、電話の向こうから聞こえて来る愛菜の声は、どこにも焦った様子はないようで。
『それがさ、椎菜ちゃんのクラスのみんなが椎菜ちゃんを守る方向で団結したんだって』
「え、そうなのかい?」
『うん。いやー、さすが椎菜ちゃんだよね! 人徳あるぅ!』
「た、たしかに、椎菜ちゃんならそれくらいしそうだが…………いや待って。たしか愛菜って、学園祭に行ったんだよね?」
『うん、行ったねー。初手椎菜ちゃんのメイド服で死んだよね』
「あ、あー……なるほどね……それはたしかに、守る方向にも行くよ……」
『どゆことー?』
「いや、気にしないでくれ」
(どう考えても、椎菜ちゃん経由で天空ひかりの正体がバレて、全員殺されたくなくてそうした、ってところかな……)
皐月、大正解である。
もっとも、それがなくとも全員守る方向には行ったのだが……それプラスでド級のシスコンの存在があれば、そりゃ必死に守ろうともする。
『あと、私の恩師もサポートしてくれるって。いやぁ、さすがだよね、田崎先生! 私が唯一頭が上がらない先生!』
「あぁ、あの先生か。私は担当してもらったことはないが、生徒間で評判は良かったと記憶してるよ」
『私は一年生の頃からずっとあの先生だったからねー。って、そんな話はよくて。で、柊君を引き込むのはいいけど、どうするの?』
「まずは、社長に相談するつもりだよ」
『初手魔王に言いに行くとか、さすがらいばーほーむ……』
「いやどう考えても、社長に言うのが一番だと思うんだが」
『ま、それはそうだね。じゃあ、私の方で説得しようか?』
「いや、これは私の命を賭けた戦いだからね。私でどうにかしたい」
『皐月ちゃん、命を賭けた戦いとか言うくらいに、追い詰められてたんだね……』
「誰のせいだと思ってるんだい?」
『椎菜ちゃんを除いた全員』
「ある意味では、椎菜ちゃんが最大の要因なんだけどね……」
『生物であれば軒並み特攻が入る。それが椎菜ちゃん』
「生物って……せめて、人類特攻で収めてほしいよ」
愛菜が口にした特攻内容に苦笑いをしながらそう返す皐月だったが、そこからさらに帰って来た愛菜の言葉に思わず噴き出すことになる。
『いや、間違ってないよ? というか椎菜ちゃん、昔から動物にも好かれやすかったしね。昔家族で旅行に行った時、熊に遭ったことがあるんだけど』
「その時点でおかしくないかい!?」
『いやー、のっしのっしと椎菜ちゃんに近づく物だから、私は速攻で熊の心臓を貫きに行こうとしてね?』
「待って? そのくだりはおかしい。普通は、やり過ごすか逃げると言う行動に出ると思うんだけど? まあ、背を見せて逃げたら悪手ではあるが……」
だとしても、心臓を貫きに行くは強すぎじゃない? と、皐月は苦い顔をしながらツッコミを入れる。
どう考えても戦闘民族にしか見えない。
『いやいや、当時の私は既に、椎菜ちゃんを守るための力を身に着けていたからね。結果として、熊なんて五発で落とせるくらいにはなってたし』
「待って? 親友が既に人間離れしていたと言う事実に、私は話についていけてないんだけど? え、なに? 君、戦闘民族か何か?」
『激しい怒りじゃなくて、激しい愛によって目覚めた、超サ○ヤ人みたいなもんじゃない?』
「それ、自分で言う?」
『気にしなーい。で、話を戻して……結果的に、私が熊の心臓を貫かなくても、その熊、椎菜ちゃんになぜかすぐ懐いちゃってねー』
「えぇぇぇ……」
『いやー、すごいよねー。椎菜ちゃん純真だから、あ、熊さんだー(にこっ)これで落ちたもん、熊』
「本当に生物特攻じゃないか……」
『あとはあれ。サファリパークとか行くと、どんな動物にも好かれてた』
「ねえ、実は椎菜ちゃんって神様が転生した姿だったりしない? それか、何かこう、生まれた瞬間からファンタジーな存在だったとか」
話を聞く限り、絶対に普通の人間じゃないでしょ、椎菜ちゃん、と皐月は本気で心の底から思った。
というか、本当に神様的なアレだったとしても驚かないとも。
『いや、そもそも変身できる時点でファンタジーだよ? あと、TSしてるし』
「そうだけども!」
『というか実際、椎菜ちゃんってマジもんの神様に好かれてる可能性あるし』
「どういうこと!?」
『んー、椎菜ちゃんが前に、変身できる組み紐を貰ったって言ったじゃん?』
「言ってたね。あの謎原理の」
『あれが入ってた手紙では、椎菜ちゃんのことを神子って書かれててねー』
「みこ、巫女……いや、神子か? 神の子で神子?」
『そうそうそれ。だから、マジもんの加護か何かついてるんじゃね? って私は思ってます』
「あ、あー……椎菜ちゃん、だもんね……正直、神様に好かれてても不思議じゃない、か……」
『あと、いずれはらいばーほーむの面々に話すつもりだったけど……先に皐月ちゃんには情報共有しとくね』
なんて、どこか真面目なのか、ふざけてるのか、なんとも言えない曖昧な口調で愛菜がそう切り出し、本日二度目のカミングアウトを放った。
「昨日椎菜ちゃんのことをおかーさんって呼んでたあの娘ね」
『あぁ、あの放送事故ね。いや、本当に驚いたよ、あれは。で、その娘がどうかしたのかい? たしか、親戚の子供という話だったが……』
『その娘、マジもんの神様だから』
「………………はい?」
マジもんの神様という発言に、皐月の思考が停止した。
それはそうだろう。
いきなり、あの娘神様なんだよ? と言われても、すぐに納得なんてできないし、なんだったら頭の病院を勧めることだろう。
『いやだからね? 神様。あの娘って、神薙みたまが神様として生まれちゃった存在らしくてねー。実は生後間もないんだよね。修学旅行先で拾って来たんだよ、椎菜ちゃん』
「……………………冗談、だよね?」
『冗談のような本当の話。第一、TS病とか、変身できるアイテムとか、変身すると魔法みたいなものも使える時点で、神様がいない証明の方が難しいでしょ』
「仰る通りで……しかし、神様か……え、じゃあ何? 君の家、相当すごいことになってない? 本物の神様が住み始めちゃったんだよね? それ、何か影響とか……」
『あー……そう言えば、家に住み始めた日曜日以降から、妙にいいことが続いてるね』
「思いっきり影響出てない!?」
『なんか、急に大口との契約が入ったり、急に以前書いた同人誌がアホみたいに売れ出したり』
「やっぱり影響出てるよね!? え、福の神か何か!?」
『どうだろうねぇ……まあ、うちはとても尊い母娘の絡みが見れて、鼻血と吐血に塗れてるけどねぇ……いやー、最高』
「最高って……いや待って。ということは、ここ最近君のコメントが急におかしくなったのって……」
『例の椎菜ちゃんの娘が原因だね。可愛すぎて』
「やっぱりかっ……!」
ここに来て、親友の奇行の原因が発覚し、皐月は頭を抱えた。
まさか、妹の娘が原因だなどと想定なんてできるはずもないが。
『あと、あの時は親戚って誤魔化してはいるけど、椎菜ちゃんとその神様って、神様曰く魂の繋がりがあるので、本当に母娘らしいよ?』
「あの、すまない、愛菜。あまりにもファンタジーすぎる情報の連続で、私の脳がパンクしそうだ……」
『おっとそれもそうだね! けどさー、これを初手でらいばーほーむ全員に言ったら間違いなくえらいことになるじゃん? だから、先に情報を知っておいて欲しかったんだよね』
「……正直、こういうことがあるから、私は安心できる常識人の後輩が欲しいんだけどね……」
『いいじゃんいいじゃん、面白話が先に聞けるんだよ? 役得ぅ!』
「私の胃は毎回痛むんだけど!?」
『あははは! と、そろそろ夜ご飯だからこれで切るね!』
「ん、あ、あぁ、わかった。とりあえず、彼との橋渡し役を頼んでもいいかい?」
『いいよー。あ、でも、断られたらごめんね?』
「それは当然の権利だよ。私としては、死んでも手放したくはないが、彼の気持ちや事情もある。無理に、とは言わないよ。いくららいばーほーむが男性ライバーが入っても叩かれにくいとはいえ、快く思わない人もいるからね」
むしろ、そう言う意味では誘うことにためらいも覚えるが、それでも自分の胃痛を少しでも軽くしたいと思っている皐月は、全力で説得しに行くつもりである。
彼女は本気なのだ。
『そうだね。私たち全員、好き勝手に配信しまくってるし、男性ライバーの二人ともかなり仲がいいけど、それを良く思わない人もいるしねー。それに、VTuber……というより、動画配信者をするということは、やっぱりそういう悪意ある人とも否が目にすることにもなるんだし』
「あぁ。特に私なんて、モデル業もしているからね。やっぱり、アンチはそれなりにいるよ」
『っていうか、それ考えたら皐月ちゃんってすごくない? 両方とも絶対にアンチが一定数出るような職業なのに、平気な顔してやってるじゃん? どう考えても、オリハルコンメンタルじゃないとやってられないよね?』
よくよく考えるとすごいよねー、と尊敬が込められた言葉でそう言われる皐月は、小さく笑みを浮かべてから口を開く。
「んー、もちろん、嫌な気持ちにはなるが……そもそも、ネットで悪口を書くことしかできない時点で、それだけの人間だと思っているんだよ、私は」
『うわー、辛辣ぅ』
「というより、そうやって悪口を書き込むのなら、最後まで責任とる覚悟が出来ているわけだろう? なら、言わせておけばいいのさ。最終的に勝つのはこっちだからね。最後は、取れるだけお金を取って、そのお金を寄付に回すから」
『ひゅー! カッコいい!』
「茶化さない。……もっとも、リアルで実行に移すような人は危険だし、やっぱりああいうのは厳しく取り締まらないといけないとは思うけどね。その線引きは難しいかもしれないが」
『だねー。まあ、椎菜ちゃんのそういう悪口を書く人たちは、みたま警察で潰して回ってるから大丈夫だけどね!』
「……そのみたま警察、最近ネズミ算式に増えてると聞いてるんだけど」
『いやー、100万人も登録者がいるわけだしねー。一部のとっても綺麗な方々には、手伝ってもらってますとも』
「……あの娘のファンの一部は、本当にとんでもないからね……」
頭が痛そうに感想を零す皐月。
実際のところ、みたま警察はかなり増えている。
最初は、わたもちおばーちゃん(19歳)と、愛菜、ふゆりの三名で行っていたのだが、デレーナが増え、そこから色々と増えまくった結果、今はとんでもないことになっている。
尚、全員ちゃんとネットリテラシーがしっかりしており、レスバをするのではなく、大量通報を行うことで対処している。
いや、全然しっかりしていないかもしれない。
あと、通報する相手は完璧黒だと判別がつく相手のみなので安心だ。
というより、これらのことをライバー側が主導しているのが一番の問題だと思われるが、気にしたら負けである。
『いやー、やはり、みたまちゃんへの愛はなんでもできちゃうね! ……っと、いい加減お腹も空いたし、これで! 柊君とのコンタクトはあんまり期待しないでね!』
「あぁ、助かるよ、愛菜」
『いえいえ! それじゃあねー!』
「あぁ、また」
と、ようやく通話が終了。
ふぅ、と息を一つ吐いてから、皐月は事務所に電話をかけ始めた。
「あ、もしもし、社長ですか? いえ、少々お話が――」
こうして、着々と柊をらいばーほーむに引きずり込むための外堀の埋め立て工事がされていくのである。
果たして柊は逃げ切れるのか……(無理だと思う)。
この回を書いて思ったんですが、これ、柊が主人公のラブコメ作品みたいになってません? たつな(皐月)がメインヒロインの。
でも実際、柊と皐月は普通に相性はいいんだよなぁ……どっちも苦労性だし、片や年上好き、片や年下好きだし。
とはいえ、こうして柊包囲網が作られていくんですねー。いやー、もうこれ、完全に入るルートになっちゃったじゃん。書くしかないのか……! 柊のVTuberバージョン!
あと、これはいただいた質問なのですが、らいばーほーむメンバーのイメージカラーはあるんですか? というものですね。
あー、と思ったので、おまけでちょっと書いておきます!
以下!
・天空ひかり→空色(というか、髪色がそれ)。
・春風たつな→黒
・魔乃闇リリス→紫
・宮剣刀→鈍色
・狼神いくま→黄色
・御月美うさぎ→灰色
・詩与太暁→緑
・デレーナ・ツァンストラ→赤
・猫夜はつき→オレンジ
・深海いるか→群青色
・雪ふゆり→(頭)ドピンク
・神薙みたま→白(純粋無垢だし)
大体こんな感じ。え、一人だけおかしい? いつもじゃん。
というか、その内らいばーほーむメンバーのガワのことも書かないとなー、とは思ってる。




