第零話 遭遇-プロローグ-
初投稿です。週一程度の頻度で投稿出来たら良いなと思っています。拙い文章ではありますが、皆様の暇つぶしにでもなれば幸いです。
二〇一八年十二月二十一日、アメリカのニューヨークの上空に一機の巨大な未確認飛行物体が現れたのを大勢の人が目撃した。その機体は空中で制止したかと思うと、そこからいくつかの小さな飛行物体が飛び出し、地上にゆっくりと着地した。そして、その中から地球の常識では考えられない姿をした《何者か》が何人も降りてきた。
その《何者か》はやや不自然な英語を使いながら地球人類に対して自らを《星間文明聯合》という機関からの使者と名乗り、その来訪の目的は地球人が聯合に加盟することを提案することであった。曰く、現在の地球には既に悪意を持った宇宙からの来訪者が何人も潜伏しており、その中には複数の惑星で罪を犯し、手配されている者もいる可能性があるのだという。
しかし、聯合に未加盟の惑星では本格的な捜査活動を行うことができず、このままでは凶悪犯を野放しにしてしまうため、一刻も早く地球の協力を仰ぎたいとのことだった。
異星人たちは、そのような悪質な来訪者を取り締まるための捜査機関の設置だけでなく、聯合が所有する技術の提供などを約束し、一か月後に返事を聞くという旨を伝えて去っていった。
この一件は当然ながら瞬く間に世界中に広まり、かつてないほどの大騒動を巻き起こした。それまでは都市伝説の域を出なかった異星人が実在した、という事実は地球人類にとってあまりにも衝撃が強く、文化・宗教・経済など様々な面に渡って多大な影響を与えた。
国際連合はこの件について緊急特別総会を開き、星間文明聯合に加盟するかどうかを議論した。総会は三週間に及び、その間にも世界中での混乱は収まらなかったが、翌年の一月十一日に加盟国の過半数を超える賛成によって加盟することが決まった。
こうして地球人類は正式に聯合の一員となり、《フィオン》という名称で呼ばれることが決まった。世界各地に聯合直属の機関が設置され、提供された科学技術は本来地球人が数百年単位の時間を経なければ獲得できなかったであろう高い水準のもので、多くの研究者の頭を悩ませながらも着実に実用化へと進んでいった。
その一方で大きな問題となりつつあったのが異星人による犯罪行為である。初めは複数の企業に対して行われたクラッキングや兵器の密輸などいずれも大規模なものである反面、足が付きやすいものが多かった。しかし、それから数か月が経つ頃には、さらにその仕組みは複雑化し、現地の人間、すなわち《フィオン》を利用することで自分たちの痕跡を隠そうとする異星人が現れるようになった。
これを受けて聯合は、地球に潜む悪質な来訪者を効率よく捜索するために捜査能力に長けた人間を派遣するよう各国に要請した。その一人が警察庁に所属する百武琉信という男だった。