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小説家になろうラジオ大賞投稿作品

滅亡時計

作者: 熱湯ピエロ
掲載日:2021/12/05

 遥か空の彼方。薄っすらと青く浮かぶ巨大な『文字盤』を見て、俺は目を細めた。

 今日は快晴。これなら今夜の計画に支障は……


「よっ!」


 元気な掛け声と共に、いきなり肩を叩かれる。

 驚いて振り向くと、よく知った顔……幼馴染で同じ高校に通う、『トウコ』の姿。

 彼女はポニーテールを揺らし、笑顔で首を傾げた。


「どうしたんだよー、空なんて見ちゃってさ」

「いやいや、言っただろ? 今日は『滅亡時計』が」

「冗談冗談。わかってるって」


 そう言ってトウコも空を見上げる。

 『滅亡時計』。それは、まるで空に掛けられた巨大なアナログ掛け時計のようだ。自分達の知る時計と違うのは指針が6本もあること。それ以外は、形状は特に違いは無いように思える。

 いつからあるか、目的は何か、誰が作ったのかは誰も知らない。石器時代の壁画に既にそれらしき物体が描かれているとか。

 わからないことだらけではあるが、まぁ、俺達にとっては身近で不変的な代物ということだ。


「何か起きると思う?」


 トウコの言葉に俺は笑う。


「今度こそ人類滅亡かもな!」


 滅亡時計は俗称だ。

 でも、一時期メディアがこぞって『あれは人類滅亡のカウントダウン!』と騒ぎ立てたせいで、それからはすっかり『滅亡時計』という名で定着してしまった。

 そして、今夜、その指針が全て『0』を指す。

 とは言っても世の中は平和そのもの。何か異変があったなんてニュースもない。

 きっと何も起きない。それが世間の大方の見解だった。

 でも、俺には重大な意味があったのだ。


「今夜、忘れんなよ」

「はいはい。ヤサカの展望台でしょ。友達との約束蹴ってんだから、ハーゲン3つ忘れないでよ」

「わ、わかってら!」


 俺は今夜、展望台でトウコと『滅亡時計の0』を見る。

 そして、その時……彼女に告白するつもりであった。



 展望台。

 滅亡時計は既に全ての指針が『0』を指しているように見えるが、政府発表では9時58分丁度がその時らしい。

 俺はスマホの時計を見ながら、空を見るトウコの横顔をチラチラと窺う。

 心臓の音がドンドンとうるさい。

 あと10秒……


「トウコ、あのさ」

「うん?」


 彼女が俺へ振り向く。

 今日『滅亡の日』は、俺達の『新しい始まり』になる。そう信じて、俺は息を大きく吸った。


「俺、トウコのこと、好



>パターン10779。全行程終了しました

>了解。世界層を凍結し標本化に移行します



 世界は滅びなかった。

 しかし、二人の『新しい始まり』は……永遠に訪れない。

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