滅亡時計
遥か空の彼方。薄っすらと青く浮かぶ巨大な『文字盤』を見て、俺は目を細めた。
今日は快晴。これなら今夜の計画に支障は……
「よっ!」
元気な掛け声と共に、いきなり肩を叩かれる。
驚いて振り向くと、よく知った顔……幼馴染で同じ高校に通う、『トウコ』の姿。
彼女はポニーテールを揺らし、笑顔で首を傾げた。
「どうしたんだよー、空なんて見ちゃってさ」
「いやいや、言っただろ? 今日は『滅亡時計』が」
「冗談冗談。わかってるって」
そう言ってトウコも空を見上げる。
『滅亡時計』。それは、まるで空に掛けられた巨大なアナログ掛け時計のようだ。自分達の知る時計と違うのは指針が6本もあること。それ以外は、形状は特に違いは無いように思える。
いつからあるか、目的は何か、誰が作ったのかは誰も知らない。石器時代の壁画に既にそれらしき物体が描かれているとか。
わからないことだらけではあるが、まぁ、俺達にとっては身近で不変的な代物ということだ。
「何か起きると思う?」
トウコの言葉に俺は笑う。
「今度こそ人類滅亡かもな!」
滅亡時計は俗称だ。
でも、一時期メディアがこぞって『あれは人類滅亡のカウントダウン!』と騒ぎ立てたせいで、それからはすっかり『滅亡時計』という名で定着してしまった。
そして、今夜、その指針が全て『0』を指す。
とは言っても世の中は平和そのもの。何か異変があったなんてニュースもない。
きっと何も起きない。それが世間の大方の見解だった。
でも、俺には重大な意味があったのだ。
「今夜、忘れんなよ」
「はいはい。ヤサカの展望台でしょ。友達との約束蹴ってんだから、ハーゲン3つ忘れないでよ」
「わ、わかってら!」
俺は今夜、展望台でトウコと『滅亡時計の0』を見る。
そして、その時……彼女に告白するつもりであった。
*
展望台。
滅亡時計は既に全ての指針が『0』を指しているように見えるが、政府発表では9時58分丁度がその時らしい。
俺はスマホの時計を見ながら、空を見るトウコの横顔をチラチラと窺う。
心臓の音がドンドンとうるさい。
あと10秒……
「トウコ、あのさ」
「うん?」
彼女が俺へ振り向く。
今日『滅亡の日』は、俺達の『新しい始まり』になる。そう信じて、俺は息を大きく吸った。
「俺、トウコのこと、好
*
>パターン10779。全行程終了しました
>了解。世界層を凍結し標本化に移行します
*
世界は滅びなかった。
しかし、二人の『新しい始まり』は……永遠に訪れない。




