Review.7:彼女の想い。
理沙は昨日、〈都〉を出て、現研の皆と別れた後、一人演劇部の部室へと赴いていた。
扉を開けたのは――香織。
部室には、彼女以外、誰もいなかった。
「本音を言うとね、私にとって無事に公演できるかどうかのほうが先決問題なの」
憂える笑顔で、香織は言う。
「〈都〉で聞いていたのなら分かるかもしれないけれど、今私たちには、練習についてくれる顧問の先生がいないの」
やはり、と理沙は思った。
〈都〉での彼女の話には大人について、校内での大人、教師のことが欠落していたのだ。
元々、顧問がいない現研の皆にはあまり気付きにくいことなのかもしれない。
「どうして、顧問が……?」
いないのだろうか。
質問してみる。
「いることはいるのよ。とても熱心な先生がね。けど、数週間前から産休中で」
――なるほど。
理沙は無言で香織を見つめる。
「だから、だからね。今回はどうしても成功させたいの」
香織の独白は続く。
「先生がいなくてもやり遂げました、だから先生も頑張ってくださいって、成功して言ってあげたいの」
香織の頬を一筋の涙が伝う。
理沙には、黙って見つめることしか出来なかった。
「あんな、あんな〈現象〉に邪魔をされている暇なんか、本当は…ないのに…ッ!」
抑えていた感情のたがが、外れかかっているのを、理沙は感じた。それほどまでに、彼女は責任を感じているのだ。
「先輩……」
理沙は、自分たちが香織にとって頼みの綱であることを自覚した。
どうしても、助けてあげなくてはならない。
「ご、ごめんなさいッ、私、すっかり取り乱しちゃって……」
「先輩」
「え?あ、はい」
「劇、成功させましょうね」
「……。……もちろん!」
文化祭一日目が終了しました(疲)
あと一日。
準備とかで更新おくれてます。
申し訳ありません<(_ _)>