Review.5:話す現象研究会。
「ふぅ」
「お疲れっす部長」
「何、たいしたことはない」
オレと部長は一息つく。
それから、横のテーブルで待機して話を聞いていた綾瀬、葛木姉弟の方を向いた。
「今回も大変なことになりそうね、間君」
オレンジペコのミルクティーを傾けながら苦笑する綾瀬に、オレはまぁどうにかなるさ、と答えた。
――それが、オレたちだろ?
「……だが、今回はあまりにも情報が少なさ過ぎる。具象化したばかりの〈現象〉を相手にするのは、いささかきついかもしれないな」
眼鏡を外し、眉間を揉みながら部長がぼやく。
……うん、まぁ、確かに。
〈名無しの怪〉の通り、名前からもさっぱり全貌を掴むことが出来ない。
何が具象原因なのかもよく分からない。
「私たち、クラスのみんなに聞いてみます」
ホットミルクを美味しそうに飲んでいたルナが声を発する。
その発言に、アールグレイをちびちびと飲んでいたサンもうんうんと頷いている。
ルナとサンは中等部上がり――オレらと違い中等部から常平の生徒だったわけだ――のため、交友関係は桁違いのはず。
頼もしい情報網である。
「うむ、頼んだよ」
さて、オレたちもそろそろ出るか、となったその時。
「君たち、常平学園の生徒さんよね?」
声がかけられた。
声のした方――カウンターの奥を振り向くと、そこにはこの店と同じく落ち着いた雰囲気を持つ妙齢の女性がいた。
オレの観察眼はあてにならないが、中々の美人だ。
「そう、ですけど」
オレは答える。
その返答に、女性はパッと表情を綻ばせ、丁度良かった!と手を合わせる。
ちょっと待っててね、と声をかけてから女性は一度奥に引っ込み、次に姿を現すと、その手には小包が握られていた。
「これを、常平学園高等部の保健室の藍造時 創流先生に渡してくれないかしら」
小包からは、ほのかに紅茶葉の匂いが漂ってきた。
あぁ、先生がいつも飲んでるやつはここのなんだな、とオレは直感した。
「それと、次ちゃんと取りに来なかったらもう用意してあげないから、と相沢さんが言っていたと言伝してちょうだい」
「……まかせといてください」
オレはつい、にやけながら返事をしてしまう。
まさか、あの先生にも女がいたとはね。
「ありがと。みんなの分は私の奢りにしておくわ。是非またいらしてね」
おぉ、得したとそれぞれが心の中で思いながらオレたちは〈都〉を後にした。
これからの数日が、
恐ろしいものになるとは、
露も知らずに―――。
うおう、まだ序章は終了していなかった(^_^;)
けれどご安心を。
お待たせしました感たっぷり(笑)
次回からは、確かに本編突入です。
こうご期待あれ!