Review.3:不吉へ誘うティータイム。
アンティークな雰囲気が漂い、コーヒーの芳しい香りが鼻腔をくすぐる店内で、演劇部の代表は待っていた。
丸っこい眼鏡をかけ、黒髪を後ろで束ねた少女。
肩書き。演劇部七代目部長、高等部三年。
――谷本 香織。
茶髪を短く切り揃え、清潔感漂う少年
肩書き。演劇部七代目副部長、高等部二年。
――竹川 聡一。
どうやら相手は本気らしい。
本当にオレ等とあまり関わりを持ちたくないと思っているのなら、組織でトップの者たちが来るなんてことは無いはずだよな。
それぞれ一通りの自己紹介を簡潔に済ませる。
それから――
本題に入ることにする。
「さて、こうして一席設けたわけなのだが。相談事が一体何なのか我々にお聞かせ願えるかな?」
部長が、眼鏡の奥の慧眼をすぼめるのを見やる。
今回は話を黙って聞く立場でいよう。
そう決意して、ここ〈都〉の名物であるオリジナルブレンドのブラックを啜る。
専門家じゃないので詳しくは分からないが、ひきたてらしく、とても美味かった。
「はい……今回、私たちが〈現象研究会〉さんたちに調べて頂きたいのは、第二体育館で起こっている〈名無しの怪〉というものです」
谷本さんが――嫌な思い出でもあるのだろうか――苦々しい表情で答える。
「ナナシの…カイ?」
聞いたことも無い名に、オレはコーヒー啜る手を止め、首を傾げる。
ちらりと横のテーブルの綾瀬たちを見てみたが、彼女等も知らないらしく首を横に振っている。
「そうです。最近、第二を部活動で使用している生徒間で広まっている話で」
竹川君が答える。
「――それは、どういう?」
部長が、問う。
「〈現象〉の一つで、夜、第二体育館でロープが軋むような音がしていて、天井を見上げると、そこには女の首吊り死体がまるで振り子のように揺れているんです。それも沢山」
否が応でも、頭にイメージが浮かんだ。
第二の天井に、たわわに実り、ぎしぎしりと揺れ繁る数多の禁断の果実。
気持ちの良い光景じゃないな。
「……それと君たちに何の関係があると?体育館を使用する人々に頼まれてきたのかい?」
部長が手を組み、冷徹とも思える発言をする。
調べるのは前提だろう。
彼女らの意思を、依頼を受けるのに値するのかどうかを試している。
そういったところだろう。
「私たちも、見たんです…」
部長の視線を避け、俯きがちになりながら谷本さんは話し始めた――
今回は、依頼という形で話が進むようですね。
短い区切りで進めているので、話の全容は捉えづらいかと思います。
辛抱して、お付き合いください<(_ _)>