Review.24:訓戒。
どうにか落ち着きを取り戻したオレは、先日知った綾瀬の家の前にいた。
自然の多い地区に建てられた、オリーブグリーン外装の静かな雰囲気のマンション。
確かそのの五階、五〇二号室だったはずだ。
自動ロックセキュリティの為、玄関のドアは開かない。
仕方なく、エントランスに据え付けられたインターホンを押して、綾瀬を呼び出す。
「は、はははハイ!」
手元のスピーカーから、息の乱れた綾瀬の声がする。
あ〜、やっぱ緊張してやがんな。
オレが落ち着いていかなければ。
「オ、オレだけど…」
うぉ――い!!
何をどもってるんだオレは!
なんかすんげぇ恥ずかしいぞちくしょうッいや断じてこれは動揺してるとかではなくて!
「い、今迎えに行くわ」
綾瀬の声が途切れ、目の前の自動ドアのロックが解除され、静かにドアが開く。
エントランスの奥は、エレベーターホールのようだ。
左右にそれぞれ二基ずつのエレベーターが設置されている。
そのうちの一つが、まだボタンも押していないというのに下降してくる。
ポーンと軽やかな到着音が鳴り、エレベーターの扉が開く。
中からは―――
「なんでいんだよッ!?」
藍造時先生が出てきた。
「なんだとはとんだご挨拶じゃないか間。俺はお前らの邪魔をしないように今から帰ってやろうってのによ不満か違うだろ嬉しいだろー違うかー?」
綾瀬が出てくると思って少し緊張してたろ、とニヤニヤしながら先生が言う。
……ウザい。
「何しに来たんすか」
ぶっきらぼうに聞く。
「部屋に、処置を施してたのさ」
処、置だと?
どんな……?
「これで〈現象〉が出なくなるってタイプじゃ無い。ただそこに出た奴を、そこから一歩も外に出さないようにする閉鎖的束縛結界を敷かせてもらった」
何だと……?
「先生、それじゃあ――」
「だからお前がいるんだろうが」
身体を射抜くような視線に、口が動かなくなる。
「綾瀬はお前がいれば、ほぼ無事だろう。しかしこのマンションの住人はどうだ? もし全員が〈名無しの怪〉に伝染したとして、お前は一人でその人たちを護りきれるのか?」
一言一言を噛み締める。
物事の一角しか見ていなかったオレとは違い、先生は事態の全容を見つめ、被害を最小限にするために行動していたのだ。
「綾瀬に感染した〈名無しの怪〉を叩くなら今夜だろうな。確実にしとめろ。一片も残すんじゃなぞ?根絶しろ、徹底的に。切り刻んでやれ。いいな」
先生は、オレの横を通り過ぎ、マンションを出て行く。
「はい……!」
オレはその背中に一礼してから、いそいそとエレベーターに乗り込んだ。
先生行動が素早いですねー(笑)
実は黙雷が部屋に来るまで居座って脅かす気だったようですが、理沙に邪魔だ用が住んだならバイバイと追い返されたようです。
先生曰く「お邪魔虫だったか。テヘ☆」だそうで。