Review.21:誘導にまんまと。
オレの方を見やり、部長が切り出す。
「綾瀬君は〈名無しの怪〉に『感染』したのではないだろうか?」
……感染、だって?
「〈現象〉というのは、そもそも思想思念が具象化したものだ。思念の一欠片でも、綾瀬君に付着してしまえば、そして、具象条件を満たせば、その〈現象〉は体現化してしまう……」
部長の仮説に、鳥肌が立つ。
現実味がありすぎて、恐ろしいのだ。
だが、そんな事は実際に起こりうるのだろうか?
「起こらない、とも言い切れないだろう。何がおきても可笑しくは無い。まして、〈伝染する現象〉があってもなんら不思議ではないんだ」
――その通りだ。
この世のものではない〈現象〉に常識摂理が通用するわけが無い。
「〈現象〉の伝染、か。ありえなくも無い話だな」
ルナとサンに事情を説明し終えた先生が、しっかりとこっちの話を聞いていたのか、つぶやいている。
オレは一応、ルナとサンにも部長の仮説を説明しておく。
「なんて事……」
「そ、そんな事って……」
全員が、顔を見合わせる。
「綾瀬、今日のところはひとまず帰れ。言っちゃあ悪いかもしれないが、感染防止のためだ」
「…………はい」
「もちろんオレらも、なるべく人に関わらないようにしないといけない」
ここは、先生の案に従っていたほうが良さそうだ。
いや、だけど、綾瀬を一人帰らせるのも――
「先生綾瀬君を一人にさせるのは大変危険ですマジで危険ですそうは思いませんか先生ねえ先生」
「それはそうだよな全くもってその通りだ大西そうそうそうだよ大西。――なんかアイデアあるか」
「〈現象〉に対し、最も対処能力のある間君をつけることを提案します」
「…………はァ?」
「よし、仕方ねぇ。二人の早退届は俺に任せておけ。二人共気をつけて楽しんでこい」
最後の方の、楽しんでこいという意味が分からない。
「ぶ、部長ッ!私――」
「もちろん、この一件が解決するため、綾瀬君宅に『宿泊』だぞ。いいな?」
……どうしてこうもこの二人は楽しそうなんだよ。
今回、二人ともなんか変だぞちくしょう。
オレと綾瀬を無視して、話はトントン拍子に進んでいく。
「あー変な気起こすなよ……?」
「起こすか!このエロ教師!!綾瀬ッ、行くぞッ!」
「え?、あ、はい!」
――オレら二人は、皆の視線を無視して保健室を後にした。
「あいつら見てて面白いなぁ。からかいがあるぜ」
からからと豪快に笑う創流。
「全くですな」
満足げな顔で頷く義彦。
「だが大西ー、中々良いアイデアだった。これなら色々と都合が良い」
眼鏡の奥の創流の目は、真剣だ。
「二人共、わざと茶化してああさせたんですね…?」
苦笑して瑠奈が言う。
太陽もようやく理解したらしく、なんて計算高いんだ、とつぶやいている。
「あぁして流さないと、間君はしてくれないだろうからね」
義彦が言う。
「なんて計算高いんだ…」
もう一度、太陽がつぶやいた―――
「面白半分でもある」
創流の言葉。
完全に茶化してますね部長と先生(笑)
黙雷と理沙はいじりがいがあるんでしょう。
そーゆーコトにしときましょー(フェードアウト)