Review,19:TRAGIC NIGHT
「間君」
――校門にて。
それぞれの帰路につこうとした時、部長に呼びとめられた。
綾瀬はというと、ふらふらと覚束ない足取りで夜の闇の中へ消えていこうとしている。
「私は一人で寄らなければならない所がある。そこで君に頼むわけだがいや決してこうすれば楽しいからと言う訳ではないこれは部長命令だ良いかね?うむそれでは綾瀬君を無事家まで送り届けるように」
――…………。
……は、はい?
「では」
「ちょっ、部長!?」
シュタ!と手を挙げて、走り去ってゆく眼鏡野郎。
――……これは押し付けられたと解釈していいのだろうか。
「ったく、しょうがないな……」
任された以上、放っておくわけにもいかないだろう。
あんなにふらふらしていては、無事家に帰りつくかどうか心配だ。
「綾瀬」
小走りで追いつく。
「……何?」
「家まで送ってく」
「け、け、結構よっ!……ッ!」
大声を上げて、眩暈を感じたのだろう。
よろめいた綾瀬を支える。
「……馬ッ鹿。頼れよ。――仲間だろうが」
綾瀬を解放。
歩き出す。
「間君……」
ふっ、皆まで言うな。
知ってるさ。
今のオレって、最高に決まってる。
そう言いたいんだろう?
「家への道はそっちじゃないわ」
最高に格好悪ぅ……。
*
理沙は無言で自宅のドアの鍵を開け、中に入った。
理沙は玖刻市のマンションに一人住まいだ。
――これは、理沙が外県の出身だからである。
両親が友働きで経済的に余裕があるため、常平の寮ではなく静かなマンションに住むことにしたのだ。
「はぁ……」
鞄をソファーに置き、着替えを持ってゆるゆると風呂場に向かう。
衣服を全て脱ぎ捨て、風呂場に入り、蛇口を捻る。
ザ――――――――ッ、
と適温のお湯が、理沙に降り注ぐ。
「――――――――――」
口から、長い吐息がこぼれた。
シャワーは、理沙の身体にこびりついた疲れをゆっくりと洗い流していく。
それから、理沙はシャンプーとリンスで髪を洗い、ボディソープで適当に身体を洗った。
――とやかくやるのが、今日は面倒だった。
もう一度ゆっくりとシャワーを浴びてから、風呂場を出る。
洗面所で、バスタオルを使い身体を良く拭いた後、下着を着てパジャマを羽織る。
クセがつかないように、ドライヤーで丁寧かつ手際よく髪を乾かす。
すぐに寝たかった所だが、明日も学校だ。
せめて時間割でもしておこうと鞄を開けると、携帯にメールが着信していた。
なんだろうと開いてみる。
件名:[指定なし]
To:綾瀬 理沙
From:間 黙雷
本文:今日はしんどかったな、お疲れ。気をつけろよ?
簡潔なメールを見て、理沙は身体の芯が、ほんのりと温かくなったような気がした。
理沙は笑いながら、私を誰だと思っているの?と強気な返信をして携帯を閉じる。
襲われて少しは良い事もあったかな。
はにかみながら、時間割をして、理沙はベッドにもぐりこんだ―――
そう館単に、「こと」が終わる訳が無かった。
過敏になった神経のおかげで、私は目を覚ます。
何か、物音を聞いたような気がしたのだ。
不安になった私はベッドの中で、もぞもぞと身じろぎする。
出来ることならば、何も聞かなかったことにして、もう一度寝たい。
――きしぃ。
だけど、正体を知っている者が、その音が聞こえているのに、すやすやと寝れるわけ無い。
――――ぎし ぎぃ……
〈名無しの怪〉。
驚くことに、この〈現象〉は、私についてきたのだ。
――このままでは、危ない。
藍造時先生に貰った、二種類の御守りを握り締める。
寒い。
部屋の気温が、下がっているように感じる。
ここが、自分の部屋のようには思えない。
私は、
軋み啼く夜を、
独り、怯えながら過ごした―――――
どうも、昼行灯です。
先日、豪雨で学校(夏休みですが課外中)が休校になりました。
ゲリラ豪雨ですね、ホント。
皆さんも、気をつけてくださいね。