Review.18:保健室にて。
「ベッドに寝かせてやってくれ」
「はい」
背中に担いでいた綾瀬を、慎重にベッドに降ろし、横にならせる。
丁寧にシーツもかけておいた。
――それからしばらく。
部長が保健室に入ってくる。
「部長、葛木姉弟は?」
「あぁ、部室にいたので、ちゃんと帰らせておいたよ」
よし、そっちは一安心だな。
「…………綾瀬君には悪い事をしてしまった」
部長が椅子に座り、うなだれて言った。
それなりに責任を感じているのだろう。
「馬ッ鹿野郎、大西。トップがへこんでどうすんだよ。……こんな大変な時期だからこそ、しっかりしていないか」
先生が、紅茶を渡しながら言う。
オレもありがたくいただくことにする。
――美味い。
強張った身体が、ゆっくりとほぐれていく。
ふぅ、と大きく溜息をつき、力を抜きながらオレは口を開く。
「そうっすよ部長。しっかりしてください。オレ――いや、皆だっては自分で自分の責任は取れます。この部活に入った時点で、とうに覚悟は出来てる」
「………そう、だな」
顔を上げる部長。
「――いや、すまない。もう大丈夫だ」
その面持ちには、いつもの威厳が蘇っていた。
そうだ。これくらいで我らが部長が挫けるはずが無い。
「――にしても、今回はまたえらい大きな奴を相手に回してるみたいだな」
煙草もどきを揉み消し、紅茶を啜る先生。
「この〈名無しの怪〉ってのが最近現れたばかりとは、とてもじゃないが考えられない」
蛍光灯の明かりを、先生の眼鏡が鈍く反射する。
「それは私も同感です」
部長が続く。
「何か裏があると、私は見ています。……まぁ、それを突き止めるのが難しいわけなのですが」
「今回はヤベェからな。俺も少し手を回しておこう」
それは助かります、と部長が言おうとしたその時。
「――う、ん……」
綾瀬が、小さい声で呻き、身じろぎした。
「綾瀬……ッ!」
オレたちは、急いでベッドに駆け寄る。
綾瀬は眼を開き、オレらを確認すると、安心したように表情を綻ばせ、ゆっくりとだが上半身を起こした。
「――大丈夫か?」
「身体が少しだるいけれど……うん、大丈夫」
「ふぅ。ともかく、無事で良かったな」
先生が笑いながら、綾瀬にも温かい紅茶を差し出す。
「ありがとうございます」
穏やかな芳香がたつ紅茶を、綾瀬は幸せそうに飲み始める。
蒼白だった顔にも、色味が戻ってきたみたいだ。
綾瀬が落ち着くのを待ってから、オレたちは何があったのかを尋ねた。
「靄がかかったように、あまりはっきりしないのだけれど……」
おずおずとだが、綾瀬はティーカップを、両手で握りしめて話し始めた―――。
〈七不思議〉に関連があるのではないかということ。
突然、部屋の闇が濃くなり始めたということ。
何かが軋むような音がして、それからはまったく記憶していないということ。
「そうか……災難だったな」
冷めた紅茶を口に運びながら、先生が言う。
「――もう今日は帰った方がいいだろう」
先生が硬い声で続ける。
「綾瀬には、これを渡しておく」
先生が、ベッドから出ようとしていた綾瀬に小さな巾着のような物を渡す。
「これは……?」
「御守りみたいなもんだ。水牛の角と合わせて持ってな」
「あ、はい」
先生なりの心配なようだ。
しばらくして、オレたちは三人は、保健室を後にした。
どうも、綾瀬が無事で何よりですね、昼行灯です<(_ _)>
皆さんは、日食見れましたか?
昼行灯めは、幸福にも見ることが出来ました。
90%くらいは隠れてましたね。
あとは…26年後ですか。
良いものを見せてもらいました(笑)