Review.16:闇を祓う光。
「――綾瀬ッ!」
バン!と扉を乱暴に開け放ち、転がるようにして室内に入り込む。
場所は、学園図書館の禁書保管室。
時刻は、闇が万物を覆い終えた八時半。
椿さんの一報を受けてすぐのことである。
禁書保管室の空間は、「闇」が支配していた。
薄闇という可愛いものではない。
一寸先を見渡せないような、完璧な、「闇」。
当然、人の気配は感じられない。
「綾瀬君!」
部長が叫ぶ。
しかし、返事は無い。
いや、何か物音が――
――――きしぃ
『!!』
――この音は。
「何の音だ?」
体育館の一件を知らない先生だけが、プカーと煙草もどきを吹かしながら首を傾げている。
「どっちにしても、良い感じはしねぇけどな」
眼鏡の奥の眼を細めながら、先生は嗤う。
その笑顔は今まで見たことも無いようなほど冷徹で、まるで感情を押し隠すために貼り付けられたようだった。
「先生、綾瀬君は……」
部長が、半ば絶望した声で先生に問う。
「心配しなくても、大丈夫だよ」
先ほどとは違う、優しい顔。
「ほら、俺が前さ、お前らに渡した物があるだろ?」
「あの水牛の角、ですか……?」
〈大階段の野獣〉の一件で先生が、オレ、部長、綾瀬部にくれた御守りである。
オレはウォレットチェーンに、部長はキーチェーンに、綾瀬は携帯に、それぞれ付けて肌身離さず持ち歩いてるはずである。
「そう、それだ。〈野獣〉の時は、めぼしい効果が得られなかったんだが、本来あれは〈護符〉だ。角の内側には、神仏の御名が刻み込まれていて、己に害意ある〈現象〉からある程度守ってくれる。……そう、勿論こいつらからもな」
周囲の軋む闇を見やりながら、先生は言う。
「だが、そう長くは持たない。長い間同じ〈現象〉と対峙していると、効力は薄れていくからな。早いとこ捜さねぇと」
「そうですね」
「……にしても、この闇邪魔だな。――間、払えるか」
「当然」
ベルトに差した黒鞘から、碧色の柄巻きを按じ、刀身をずんばらりと引き抜く。
「間流、古典斬鬼術―――」
オレのつぶやきに呼応するようにして、沙羅樹の描き刻まれた円鍔から淡い緑光がたちのぼり、刃こぼれを起こしている刀身を、慈しむように包んでゆく。
これが、〈現象〉を祓い、昇華させることの出来る手段。
古からの〈導具〉だ。
――そこ、どいてもらうぜ。
「八雲乱れろ――叢雲断影」
横一線に、刀を薙ぐ。
刀身の軌跡を追うようにして煌く緑光が尾をひき、垂れ籠める闇を斬り裂く。
軋む闇は厚みを失くし、急激に薄れ霧散していく。
そして、オレたちの目の前に姿を現したのは―――
う〜ん、気になるところできれてますね!(笑)
次回こうご期待!
話は変わりますが、暑いですね(^_^;)
暑がりの筆者にはエアコン必至です(苦笑)