Review.15:走れあの子の元へ。
――あら捜しを始めて、およそ二時間が経過した。
目下、〈名無しの怪〉の謎を紐解く物品的証拠は何も見つかっていない。
このままでは、奴らが出る時刻となってしまう。
「何にも無いなぁ……」
煙草もどきを吹かしながら、先生は地べたに座りこんだ。
「諦めてはなりません先生。千里の道も一歩から、塵も積もれば山となる、ですよ」
部長が、目を皿のようにして周囲を見渡しながら言った。
「そうは言ったってなぁ大西。こりゃ藁山ん中から針を探すようなもんだぞ…?」
確かに。
いや、これは「藁の山の中からある特定の藁を見つける」ような難しさだ。
〈現象〉が数多幾千と存在するこの〈玖刻〉で、何も知らないところから一つの〈現象〉の気配を、動向を探ろうとは、恐ろしいほど難しい。
ここはやはり部長の言うとおり、大変だが小さなことからコツコツとするしか、道は無い。
「それは百も承知です。それでも、我々〈現象研究会〉は諦めてはいけないのです」
部長が、強い眼差しと言葉を放つ。
言う通りである。
オレたちがしなければ、誰がするってんだ。
「そういうことっすよ、先生」
観念して付き合ってください、と眼で言う。
「ふっ……言うようになったな。でも、ま、そういうの嫌いじゃないぜ」
先生は、くつくつと可笑しそうに笑いながら立ち上がり、盛大に煙草もどきの煙を吐く。
――心地良い芳香が漂う、そんな時だった。
――もう一踏ん張りするかという、そんな時だった。
「大西部長!間さん!大変です……ッ!」
白装束の裾をはためかせながら、椿さんが体育館に、壁を透過して飛び込んできた。
大分、慌てているようだ。
「一体どうした?椿君」
「が、学園付属図書館に、異様な闇が立ち籠めておりまして――」
緊張が走る。
「あ、綾瀬さんの気配が、無くなられましたの……!」
その伝えを聞き終わる前に、オレは、学園図書館に向けて、全力で駆け出していた―――――。
本編とは関係ありませんが、先日は「七夕」でしたね(^^)
皆さんは、織姫さんと彦星君の一年に一日限りのデートをこっそり眺めることは出来ましたか?
昼行灯は残念ながら出来ませんでした(T_T)
しかし、ちゃんと「お願い」はしました。
「いつでも笑顔でいられますように」って。
僕の好きな歌手もこういってます。
「楽しいから笑うんじゃなく、きっと笑うから楽しいのさ」。
いつまでも、人生が楽しいものであれば良いなと想います。