ダンジョンの中へ
それから現れた魔族の言葉に従い、僕たちは崩落させたであろうダンジョンへと戻っていく。途中出くわしたゴブリンは魔族が枝を払うように倒され、警戒する必要のないように一直線に到着。僕たちは切口から燃えて炭化したゴブリン達の匂いの中を前進する。
そして現場へとたどり着くと、魔族はおもむろに崩落して出来たであろう岩の破片に手をつけ、僕からしたら卒倒するほどの魔力を込め始めた。すると魔術によって性質を変えられたのか岩はスライムのように動き出し、分かれたはずの個々が繋がり洞窟を形成。見た目こそ魔族の趣味か感性かが入って変わり果てているが、崩落現場の見る影もない。
(凄まじいな……)
(はい。これは普通にやっても勝てそうにありませんね)
念話にさえ及んだ心からの呟きにスケルトンが答え、魔女も吸血姫も同意するように言葉を重ねる。
僕たちだって物質に干渉する術が使えないわけじゃない、だがあそこまで簡単にできるのは不可能だ。もし同じことをやるとしたら何かしらの準備やそれ相応の魔力、欲を言えば触媒なんかも欲しいところ。間違っても魔力でゴリ押しするようなものではない。そんなことをすれば魔力の底が見えるし、規模によっては足りなくなるのは目に見えている。魔術といっても万能ではない。
「聞きたいことがあります、この崩落させたダンジョンに何かを配置していましたか?」
「……はい、ゴーレムを」
「ふむ、嘘をつかないとは聞いて通り魔族らしくないーーいや上位者にただ従うという点だけ見れば魔族らしいが、人族臭いな。今の姿も相まって」
試されていたのか、と嫌な想像がかけめぐる。もし嘘をついていたとなれば、誰かが殺されたり私刑が行われていた可能性が高い。魔王軍内でもそうゆう所業をしている輩は、他者よりも優れている奴らには多かった。攻撃性、破壊衝動、加虐趣味、相手の魔力を喰らうための準備など理由は様々だったが魔族にはこの手の存在が多かった。もちろん個体差や種族差、大人しい気質の者も存在していたが僕の所属してた魔王軍には少なかったし食い物にもされていた。
元々日本人である自分は言うに及ばず、彼らの考えは理解しがたい。普段の行いの中に他者を陥れ、嬲る感覚が組み込まれている。しかも言葉を聞く限り、彼らは彼らなりの道徳観や芯を持ってそうゆう行いをしている節があった。僕が殺人など残虐的な行いを忌避するかのように善行を嫌い、正義を成すかのように気取らずただ生活している一部のように他者を傷つける。僕から見ればサイコパス、ただ理解できない論理と回路と公式で成り立っている。
「あの、元に戻った方がいいでしょうか」
「いや、そちらを戦力として当てにはしていません……」
人族臭いという理由でなにかされては堪らない、発端となる可能性を潰す目的で聞いてみたが返答は少し違う角度。一瞬こちらの戦力増強を危惧してかとも思ったが、実力差からしてそれはないだろう。雰囲気も慢心しているわけでもなく歯牙にもかけていない模様ーーと思ったのもつかの間、非常に嫌な笑みを浮かべて”何かの役にたつかも分かりませんし、そのままで”と言葉を続けた。絶対に何か思いついている、こちらにとって都合の悪いなにかを。
だがそれを追求しようにも何でヘソを曲げられるかはわからない。自分の進退を、ひいては命を握られている存在を問いただすほど狂ってはいない。ただ苦しみなく死なせてくれるならまだしも、この魔族に関してはそこまで優しくないだろう。苦しむ様を眺め、それが飽きるまで続けるに違いない。そんなことをわざわざ望むほど僕は愚かじゃないし、狂っても追い詰められきってもいない。
「さあ、先に進みますよ」
「……はい」
ここから先は閉所、いくらダンジョンとはいえ先ほどの魔術を見れば腹の中へと踏み込んでいる気持ちだった。僕とゴーレムの支配下であろう土を魔力ごり押しで操り、ゴブリンどもを炭化させた火を操る術。どちらもやろうとおもえば閉所で力を発揮する代物だ。自分は平気でこちらにだけ効果のある爆炎を発生させたらおしまいだ。操らなくとも逃げ場の少ない洞窟で、やろうと思えば操作して潰すも閉じ込めるも自由自在。
万が一でも逆らっては、食指を動かせてはいけなーー
「敵意……?」
急に聞こえた魔族の言葉に反応すると、道をふさぐように現れたゴーレムの姿。そしてーー
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