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冒険者の憶測

「ーー今後の方針はこうなる。まあ、大幅な変更はないということだ」


 ボスがそう締めくくると状況と変わらぬ目的に頭が回った。横から考えるように短く唸るシスター様も同様のようだ。

 目的は偵察で、援軍である彼らに手柄を渡す。イレギュラーの可能性があるゴブリンの集団は数と指揮官がいること、自分たちだけでは全てを殲滅しきれないことから逃がさないように立ち回ること。ボス曰く、ダンジョンという戦略上の脅威よりは市民受けする手柄なので、一緒に引き渡せば先方は満足するし近衛にとっては準備運動にもならないと。まったく騎士のなかでも選ばれた存在なだけはある。各国があれらに準じる存在を最前線へと送られれば聞こえてくる戦況もマシに、操作したような連戦戦勝の報が届くこともなくなるだろうに。


「いやいや、戦わないというのは助かりますね。ゴブリンが相手とはいえあの数、一つの油断が命取りになる」

「こちらも苗床にされるのは御免ですね」


 いや苗床て、とシスターの言葉に苦笑いが出てしまう。過去に存在した有名すぎる魔物研究家のレポート、それを元にした物語からゴブリンという存在のイメージは誰もがそう思っている。まあ、実際を目にしても似たようなことをされているのだが少し違う。ギルドでの資料知識だがゴブリンにもオスメスは存在しているし、人族を襲う危険をわざわざ冒す必要もないと指摘されている。あれは本能的な何かだろう。

 まあ、それと繁殖力を理由として被害件数はゴブリンが圧倒的だ。見つけ次第の駆除が推奨されている。こっちとしても嫌な思い出のある存在だ、逃がしてやる訳にはいかない。


「そこまで体を張れとは言わん。狩るにしても”はぐれ”をできる範囲、ここに釘付けにするため何回か攻撃を仕掛ける程度だ」

「それならまあ、ゴブリン相手なら上手くいきそうですね」

「さっきも薬品で結構かき乱しましたし、ゴブリンが体制を立て直すまでまだ時間はあります。状態異常に襲撃の混乱、こっちの情報はほとんどなく、戦闘状態でもなくなった。奴らはこの森で生き残るためにまとまることを優先するはずです」

「同意見だ。睡眠とまではいかないが、相手が慌てている内にこちらは休息を優先する」

「休息て、作戦会議や報告しつつ……ですか?」

「もちろんだ」


 ボスのその言葉に苦味のある声が出てしまう。


「こっちは報告書もまとめなければいけないのだ……書式も整ったものをな。短すぎても失礼にあたる、少しは協力してもらうぞ」

「それは……お疲れ様です」

「ーーあ、お代わりいただけますか?」

「……なんでもいい、気づいたことや些細な違和感などはないか。特にダンジョンのものが欲しい、ゴブリンは相手の構成と規模だけでも十分だろう」


 それから思い思いの表情を浮き上がらせつつ、報告会という体裁の休息は続いていく。

 このような時に他人の考え、視点、立場など、自分にはないというものに多く触れるので個人的には楽しいーーが、それは平時に限る。不意打ちや周囲の警戒にも気を回しつつ、体を休めつつ頭を回し言葉をひねり出す。難題なのがこの環境で体力的にも精神的にも回復をさせなければいけないということだ。


「スケルトンは戦士型のように感じましたが、動きや位置取りからして何かありそうでしたーー」

「肉体を持っているのが女性型だけだったのには理由はあるんですかねーー」

「これだから男ってやつは……褐色の方はおそらくアンデットよ。特有の気配があったしーー」

「ふむ、ではもう片方の少女のような体格の存在は……姿からして魔女、は安直すぎるだろうか。あそこまで明らかだと偽装の可能性が出てくるなーー」

「そういえばあのゴーレム。ストーンだったけど魔術の効き悪かったし単純に硬くもなかったか? 混ぜもんっつー可能性もーー」

「それと情報だけでしか知らないが、子爵の軍が極めて隠密性の高い攻撃をくらったと聞く。なにかを見たり、違和感を感じたりはなかったか?ーー」


 次第に輪郭がはっきりしてくる相手の詳細。これが現段階で、と付かなければダンジョンの攻略は簡単なのだがと理性が囁く。これはきっと二人もそうだろう。それほどに発生直後のダンジョンは不確定要素が多すぎる。強力な魔族がマスターをしている時もあれば、囮としての役割を期待されたような小物もある。変化し続け、対策に対策されることもままあり、時間的余裕は相手に利するだけ。

 だから子爵軍は異常な速さで行動していたし、他国とも協力して事に当たっていた。そしてそんなダンジョン相手ゆえか、子爵軍も他国も撤退までの判断も早かった。今回の王族が出張ってきたのも何かあるのだろう。継承争い、それに連なる者たちの政争、戦略的にも戦術的にも無視できない場所などなど、想像もつかない要素もある気がしてならない。

 まあそんな混沌の結果も、日常にありふれているから非才の自分が考えを巡らせたところで特定はできないだろう。せいぜい出来て直近か、こじつけか、そんなところ。たからという訳じゃないが、目の前のことに集中するしかやることはなくなっていく。今日を生き、明日に繋ぎ、そしていつか死ぬ。

 過去に比べれば冒険者稼業は格も上がった分、その分実入りもいい。まあ死ぬのはいつでもできるし降りかかることもあるだろう、せいぜい楽しめるまでは生きてやるさ。

いつもありがとうございます。

現段階では次からダンジョンマスターに視点が戻ります。

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