私見と転がっていく案
いつもありがとうございます
「では気を取り直して私見も含めた情報をーー」
スケルトンのその一言から情報の整理が駆け足で展開された。
相手は冒険者で確定、装備に統一性はなく戦法や連携も格式ばっていない。だが実力は本物で力押しが目立つ印象を受けたので新進気鋭のパーティー、または最高位にまでは登れない冒険者。浄化を使った者は見た目こそ若かったが魔術的な要因もあるので確信できず、前衛は重装備だったので顔などから年齢は未確認。ただ声かけの話し方から”青い”印象は受けなかった。
そして使い潰すように配下に近接戦闘を仕掛けさせたが、
「今回は結果的に助かりましたが無謀でも力任せに押し切られていたら終わっていましたな。どう思いますか?」
「そうですね、魔術的な側面から見れば老練という印象は受けませんでしたねーー」
とスケルトンが意見を求められて魔女が私見を述べる。
結果的に初手の攻撃は見事と言いたいが、消耗や手の内を晒すことを加味すると疑問は残ると。そして実際に観察した結果、聖職者を偽った可能性は排除できたと。魔道具による得手不得手の偽装は排除、相手は聖職者で確定。楽観はしきれないが英雄クラスの存在でなければ、自然に由来する魔術は使用できて初歩から実戦でかろうじで使えるかどうかレベル。典型的な特化型、アンデッドに対する殲滅力は高い。
だが魔術の発動間隔が細かく、過剰とも取れる援護も見受けられたと。
「保有魔力に自信があるのか、魔力回復薬を十分用意しているのかはわかりませんが少し過剰気味でした。安全に戦う、ということであれば間違ってはいません。吸血姫は他になにか気づいたことはありますか、些細なことでも良いので」
「そうだなあ、若作りではなかったよ。血の匂いが新鮮で美味しそうなだったし、体臭も魔術で身綺麗にしていたけど青かったな。若くて才能のあって壁を乗り越えようとして無理している感じが可愛かったし、血が味わえれば細かくわかるんだけど実力的に長命種では若いか本当に才能あって若いかのどちらかもね。それにーー」
そして吸血姫は種族特性的なのか、よく分からない面から彼らを見ていた。それに興奮しているのか喋るのが細かく早い。
曰く、美味そうだ、味わいたい、手折りたいと。脳の処理が追いつかないことを言うもんだから重要なことを聞き逃しかけてしまう。重要な部分も当然あるのだが、印象が薄くなりかねない発言のオンパレードだ。同性もイケると口にしたかと思えば、生理中で閉経はしていないから若くて活きが良いとか。拾い上げるのも一苦労だ。
他にも前衛が妙に聖職者を守っているとか、あれは間違いなく狙っているとか、聖職者が雌の顔をしていたとか、そんな雰囲気を流せるほどには相手は余裕なのかもしれないと。方向性が違うが相手のイメージを後押しする情報が得られた。
「となると相手は新進気鋭の冒険者でまだ若いが、無謀に突撃してくるほどのではない程の実力者で、聖職者を擁するパーティーと」
僕は整理するように口にすると、相手の厄介さと弱点が見えてきたような気がしてきた。前世のサブカル関係でもそうだったが聖職者というのは回復役であり、特効を持つ特殊な立ち位置だ。ジャンルによっては重装備の者、前衛の役割をも担う合いの子みたいな職業もあった。
そして実際に対面すると得られる情報量が桁違いだと思うのと同時に、はっきりさせたいことが浮き上がってきた。
「その聖職者の装備はなんだった?」
「一般的なものでしたな。魔術主体で後方からの援護や攻撃を得意とする装備をしていました」
質問に答えたスケルトンの言葉に魔女も吸血姫も頷く。
ここで思ったが、まだ共有しきれていない事柄があるんだろうなと感じる。だがそれも仕方ないこと。いま重要なのは他にある。
「そうなるとその聖職者が肝かもしれない。回復役が機能している内は攻めきれないだろうし……」
安直な手として回復量を上回る攻撃、もしくは即死させるなどが崩す方法が有効だろう。だがそれも戦力的には厳しい具合で、平和的にことを進めていくとなれば殺害は避けていきたい。そうなると回復薬持ちか豊富な魔力量を持っている相手に、回復量を上回る断続的な攻撃を仕掛ける必要がある。
そしてこれも予想通りだが、可能か聞けば難しいと答えが返ってきた。でもーー
「ゴブリンの群れを利用すれば行けるんじゃないかーー」
「マスター、流石にそこまでゴブリンに期待は持てません」
「それに相手は全滅させずに散らす方向で戦略を固める可能性もありますな。そうなれば力を温存しつつ対処は各方面に任せることもできます」
「そこまで高位のゴブリンも居なかったし、頭だけ倒して”やりすごす”かもね。ま、時間稼ぎにはなったしゴブリン様様ではあるけど」
そうなるとダンジョンの戦力だけで相手を消耗させて撤退させるのが上策だが、戦いの勝敗を条件にしない方法もある。話し合い、仲間割れ、取引など盤面自体を変えて仕掛ける戦いだ。
だがその代案も僕の足りない経験では砂上の楼閣。結果が決まっている物語しか見てきていないので、そこまで至る過程が細かに思い起こせない。もしこの状況に当てはめるにしても、どうすれば機能するのかも掴めない。どうも薄く思い出せる方法で働きかけても生兵法が関の山。
(どれも実現性があるように思えない。空想から引っ張り出してる知識だからだろうか)
そう思いつつも、囁くような思考が侵食してくる。命のかかったこの場面、最適解を選択しなければいけない。やり直しがきけば総当たりで解決を引くまで試行できるのに、もし事前に知ることができたら場当たり的な行動などしなかったと。
僕は振り払うように頭を揺らす。どうも”たられば”と偏ってくる、仕方ない展開ではあるが諦める訳にもいかない。
「……ゴブリンをアンデッドにするのはどうだろうか。それなら相手の対処できる量を上回れないか?」
そうして浮かんだ案がこれだ。戦力を確保できなければ、相手がゴブリン相手に温存を選ぶなら、それを封じればいい。せっかく他所から引っ張ってきたイレギュラーだ。たとえ謀りごとだろうと、心象に悪かろうと取り敢えずしのぐ必要はある今。背に腹は変えられない。
毎回ここに書き込める人、単純にすごいな。
話のネタなんてそう毎回生まれないとヒシヒシと感じています。




