第3話 情報収集と、〝どーんっ‼︎〟
シリアス過多でごめんなさい‼︎もう5話分くらいお待ちを‼︎つまり、第7話からちゃんと恋愛要素が増えるはずっ……‼︎
あ、七つの大陸シリーズの短編も同時刻投稿しました。
よろしくお願いします‼︎
さて……集める情報を何も指示されなかったってことは……私を信用して下さってるってことですかね?
………出会って二日目なのに、信用し過ぎじゃありません?
まぁ、ご期待に添えるよう頑張らせて頂きますけど。
私は食器を調理場に返して、情報収集に出ます。
ひとまず……人間関係ですかね。
竜王、正妃、側妃……第一皇子。
他にはその周りの人物達ですかね。
………うーん……一日じゃ無理ですよ、これ。
あ……余談なのですが。
このマグノール帝国は鉱山があり、その鉱物が特産品になっています。
多種族国家ですから、そういう鉱物の加工が得意なドワーフも多いので……この皇都や皇城は、機械化が進んでいます。
まぁ、この皇都は要塞都市と呼ばれるくらいですからね。
という訳で、この皇城……かなりの隠し通路や隠し部屋、ギミックなどが施されておりまして。
今回の情報収集はそれを使うことになるでしょう。
取り敢えず、重要人物から集めますか。
*****
マグノール帝国の皇帝……竜皇リヴィット・フォン・マグノール。
竜人種の皇。
類稀なる才覚で、国を導く存在。
皇としては素晴らしい存在らしいですけど……正妃ヴィーナ様と側妃リシャラ様の問題がありますね。
竜人種の〝番を何よりも大事にする〟という性質。
それゆえに、番ではない正妃様より側妃様を大切にしている。
ですが、正妃様は同じ竜人種の奥方ーー……。
竜人種はプライド高いですし、自分よりも側妃を大切にされてたらキレますよねぇ。
まぁ、情報収集の基本は世間話です。
取り敢えず、彼女に当たってみますかね。
「急に正妃様の話が聞きたいなんて、どーしたの?」
お喋り好きな侍女オニキスは、洗濯物を洗う手を止めてキョトンとします。
私は憂い顔で応えました。
「ほら……第二皇子様は正妃様に嫌われてるじゃないですか。でも、第二皇子様は正妃様と仲良くなさりたいらしいんです。だから、私も協力できないかなぁ……と」
「あー……それは難しいと思うよ?」
「え?」
オニキスは周りを見渡して人がいないことを確認しました。
そして私の耳元で教えて下さいました。
「この国の竜人種なら誰でも知ってるんだけど……竜皇様と正妃様は政略結婚じゃない?」
「…………はい…」
「それって、この国の貴族達が皇が子を残さないのは問題だからって。皇様に相応しい身分の令嬢……つまり、正妃様を無理やり嫁がせたんだよ」
「…………えっ⁉︎」
オニキス曰く。
正妃様は当時、番を見つけておられて……その方と結婚する予定だったらしいです。
ですが、周りの貴族達に無理やり皇妃にさせられてしまった。
なのに、竜皇様は呆気なく番を側妃に迎え入れた。
自分は番と結婚できなくさせられたのに、どうして竜皇だけ……と、正妃様は竜皇様も、側妃様も、第二皇子様も恨んでいるのだとか。
「番という存在が大切で、離したくないってのは竜人種なら誰だって分かるよ。なのに、番と引き離されてまで結婚させられたのに相手は自分だけ番と結婚とか……流石に、正妃様を無理やり結婚させた貴族達も竜皇のその行いには怒ってね。皆、正妃様の味方なんだよ」
……………おぉぅ……重い……。
「離縁、とかじゃ解決しないんですか?」
「無理だね。番に他の異性の唾が付いてたら、許せる?」
「…………………………」
「竜人種の番ってのは、それだけ大切なんだよ」
リオン様……結構、簡単に情報手に入ったんですけど……。
これは竜皇様が悪いと思います、はい。
「……………分かりました……」
「まぁ、関係ないあたし達がリオン様に不遇の扱いをするのはお門違いかもしれないけどさぁ……同じ竜人種の女性としては、正妃様の味方をせずにはいられないんだよ」
………えぇ…それは味方しますよ。
「ありがとうこざいました、オニキス」
「いーえ、どう致しまして」
私は洗濯場を離れて、情報収集に戻ります。
竜人種の番。
本能に刻まれた制度。
なんて愚かしくて……。
「正妃様が可哀想ですね」
私は一人呟きました。
*****
正午頃ー。
肉や野菜のサンドウィッチを片手にリオン様の部屋に向かったところ、丁度いいタイミングでリオン様は窓からご帰還なされました。
「お帰りなさい」
「ただいま」
リオン様はふわりと笑って、ベッドに腰かけます。
そして、私の手からサンドウィッチが乗ったお盆を受け取りました。
「ノエルの分はどうした?」
「…………?」
「どうせ給仕をしてから使用人食堂とかで食べるんだろう。面倒だから、今度から自分の分の食事も持ってきていい」
「あ、分かりました」
普通は断るのかもしれませんが、主人が許可したんですからね。
下手に断る方が失礼です。
「取り敢えず、半分な」
「ありがとうございます」
私はリオン様の隣に座り、サンドウィッチを受け取ります。
そして、そのままモグモグと食べ始めました。
「ひるどのほうはひょうなりまひひゃか(ギルドの方はどうなりましたか)?」
「口の中に物を入れたまま喋るなよ……無事に取引は終わった。オレがかなりの数の暗殺者を殺してきたからな。これ以上、手駒が減らされるのは痛かったんだろう」
「………流石ですねぇ」
「そっちの首尾は?」
私は集めた情報を話します。
竜皇のこと、正妃様のこと。
そして、番という本能と側妃様。
それを聞いていたリオン様は、いつしか険しい顔になっておられました。
「…………なるほどな。オレは竜人種の血が半分だから、その番というのがそれほど重要だと思えないが……確かにそんなことをされたら八つ当たりも、恨みもするだろうな」
リオン様は食事をしながら考え込むように黙ります。
私もその隣で、無言で食べ続けていました。
「…………兄上のことは?」
「流石に一人じゃ集められる情報に限りがありますよ?」
「………………一人でやってたのか?」
「え?」
リオン様は驚いた顔で私を見ますが、いや、私の方が驚きますよ?
なんで一人でやってたことに驚かれてるですか?
「てっきり……お前に寄り添っている二匹にも手伝ってもらってたのかと」
「え゛」
『なんだ。気づいてたんですか』
『まぁ、ノエルが気づかないのは仕方ないな』
ゆらりと空間が揺れて、二匹の狼が姿を現わす。
私はシロエとクロエの姿を見てギョッとしました。
「えっ⁉︎なんでここにっ⁉︎」
「………いや、ずっとお前と一緒にいただろ。何言ってるんだ……」
「えっ⁉︎」
『無駄ですよ、リオン。ノエルは才能がないので、絶対に僕達を感知できないんです』
『そーだ。それに、我らの気配もかなり希薄になっているからな……リオンが気づいたことの方が、逆に凄いことなんだぞ?』
リオン様は「そうなのか」と納得して食事を再開されます。
いや、ちょっと待って下さい‼︎
「なんで動揺してないんですか‼︎」
「なんとなく見られてる気がしてたからな。あぁ、自己紹介が遅れた。リオン・フォン・マグノールだ。よろしく頼む」
『僕はシロエです。ノエルの保護者のようなものですよ』
『我はクロエ。貴様は中々に見所があるからな。贔屓にしてやる』
暢気に挨拶を交わす三人(?)を見て、私は頭を抱えます。
いや、受け入れるリオン様もなんですけど……なんでいつも私以外の人の前で現れなかった二人は現れてるんですか……。
「で?シロエ殿とクロエ殿はどうなさるつもりで?」
『僕達は基本、見守ることにしています。子供の成長を親が邪魔してはいけませんから』
『ただし、戦闘となれば別だ。我らは三位一体だからな』
「分かった。なるべくノエルの手を汚さないように配慮する」
『『…………………』』
リオン様の言葉に、二人は黙ります。
そして……唐突にケラケラと笑い出しました。
『聞きましたか、クロエ‼︎僕達の本音に気づきましたよ‼︎』
『あぁ、シロエ‼︎こいつはノエルを預けるに相応しいな‼︎』
……………え?
私はキョトンとしてしまいます。
すると、リオン様は説明して下さいました。
「ノエルの生きてきた人生を否定する気は無いが……親としては表舞台で生きて欲しいということだろう」
「…………え?」
…………そんなの、一言も言ってないじゃないですか。
「人生に他人が口出しするほど嫌なモノはないし、そもそもの話ノエルと二人の性質は違う。考え方も、その存在の在り方も違う。だから、二人がお前の人生に口を出すことは……お前が自分らしく生きられなくなっていたかもしれない。ゆえに、お前の人生に口を出すことができなかった。代わりに、二人はお前を親のように見守ってきたんだろう。戦闘時だけは手助けをされているみたいだが」
『あ、ちょっと待って下さい。そこまで解説しなくていいです』
『止めろ‼︎恥ずかしいだろうっ⁉︎』
……………照れたように伏せるシロエとクロエ。
いや……今の会話でそこまで分かるリオン様は、何者ですか?
…………………なんか、思わぬところで保護者代わりの温もりを感じました。
「側にいてくれる人がいることは幸せだ。良かったな、ノエル」
リオン様は少し羨ましそうに笑います。
私と、二人は互いに顔を見合わせて……彼の膝の上からお盆を退かしました。
「『『どーんっ‼︎』』」
「へっ⁉︎」
リオン様を押し倒すように、私達は彼にぶつかっていきます。
流石に三人の重さには耐え切れなかったのか、リオン様は勢いよくベッドに倒れ込む。
「なっ……何をっ……」
「私はなんとなく、です」
『ノエルが仕える主人なら、僕らの見守る対象となるのを教えてあげようかと』
『ノエルのついでにお前の側にもいてやろう‼︎』
サラッと言う私達に、リオン様は目を見開いて呆然とします。
そして……困ったように、笑いました。
「なんだ、それ」
優しく響く声は、困っているように見せかけて……嬉しそうで。
リオン様?
その笑顔は、ちょっと可愛かったですよ。