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第18話 笑顔の結婚式、笑顔の別れ


シリアス注意‼︎

よろしくどうぞ‼︎







虹色の光沢を持つ美しいウェディングドレス。


それを身に纏ったのが私という残念な状況ですが……本日は私とリオン様の結婚式です。





今回、招待状を使って招待しているのはお父さんとルイン様、シエラ様ぐらいで。

後は領主館のある街の住人達がお祝いしてくれてる感じですね。

そこそこ大きな街なので、教会があり……そこで結婚式を挙げてから、領民巻き込んでのパーティーを行うらしいです。

普通なら関係者だけの晩餐会らしいんですけど、皆へ料理を振舞って一緒にお祝いする方が華やかになるから……ということで。

領主の結婚式は自由参加となっているからなのか、リオン様の政策のおかげなのか……沢山の方が結婚式のお手伝いをして下さりました。





そして、今ーー。

私はリオン様と参列者が待つ聖堂の扉の前で、お父さんと向かい合っていました。


「………綺麗だぞ、ノエル」

「ありがとうございます、お父さん」

「エルリカにも見せてやりたいくらいだ」


お父さんはそう言って私の頭を崩れない程度に撫でてくれます。

そうですね……昔の私なら、きっとどうでもいいと言っていたでしょうけど、今の私なら違います。


「私もお母さんに見てもらいたかったです」

「…………ノエル……」

「お父さん。私は、はっきり言ってお父さんやらお母さんやら……どうでもよかったです。だって、物心ついた頃からいない存在だったから。親しさなんて湧かなかったし、たとえ聖女に討伐されようが関係ないと思ってました」

「………それは、そうだな」


お父さんは悲しそうな顔で笑います。

残酷なことを言っていると分かっていますが……伝えたいんです。


「でも、リオン様に好きという感情を教わって。お父さんとこうして触れ合うようになって……誰かに愛されている自分という存在を大切に思えるようになった今だから。誰かを愛することを知った今だから、分かります」

「…………ノエル……」

「私はお母さんによって生かされました。それはきっと、お母さんが私のことを好きでいてくれたからですよね。だから、お母さんの想いを無駄にしないためにも、幸せになります。だから、お父さんはお母さんの分も見守っていて下さい」

「っっっ‼︎」


お父さんは言葉を詰まらせて、大きく目を見開きます。

私は……両親・・に向かって、満面の笑みを見せる。



「お父さん、お母さん。産んで下さってありがとうございます。大好き・・・です」



お母さんにも届きましたかね?

お父さんは私の言葉を聞いて……ボロボロと涙を零しました。


「ノ…ノエルがっ……結婚式が始まる前から泣かしてくるぅぅぅうっっ……」

「あぁ、もう‼︎泣かないで下さいよ、お父さん‼︎」

「無理ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ‼︎」


タイミング悪く、聖堂の扉が開き始めます。

中にいた参列者の皆さんは既に号泣するお父さんにギョッとしますが……結局、優しい顔で微笑んで下さいました。


「ほら、ノイズさん‼︎ノエルちゃんのためにもシャンとしな‼︎」

「娘の結婚が悲しいのは分かるけど、頑張れよ‼︎」


領民の皆さんの応援があって、お父さんはズビッと鼻をすすり私に腕を差し出しました。

………お父さんも、ちゃんと皆さんと仲良く暮らしているんですね。

復讐なんて、選ばないでくれて……良かった。

私はお父さんの腕を取り、中央へ進みます。

その先にいるのは純白のタキシードを着たリオン様。

リオン様はとても優しい笑顔で、微笑まれておりました。


「ノエル」

「リオン様」


お父さんから離れ、リオン様の手を取ります。

お父さんは、それを見て難しい顔でビシッと指さしました。


「幸せにしないと怒るからなっっ‼︎」

「勿論だ」

「幸せになれよ、リオン‼︎ノエル‼︎」

「「はいっ‼︎」」


リオン様にエスコートされて、神父様の前に向かいます。

隣をちらりと見れば、優しい笑顔を浮かべるルイン様とシエラ様。

お二人は「おめでとう」と祝福の声をかけてくれました。

初老の神父様は、優しそうな笑顔で私とリオン様を見ます。



そして、儀式が始まりました。



リオン様が婚姻届にサインをしてから、私もサインする。

それを神父様が確認してから、リオン様の方へ視線を向けました。


「では、リオン・レティアント様から誓いの言葉を」

「わたし、リオン・レティアントはノエル・ノワを妻とします。いついかなる時も、共に寄り添い、愛し合い、幸せな家庭を築き……もう悲しい想いをさせないように、ノエルを守り抜きます」

「次にノエル・ノワ様」

「私、ノエル・ノワはリオン・レティアント様を夫と致します。私に好きという気持ちを教えてくれたリオン様と共に、笑顔が溢れる家庭を築いて、どんな時もずっと一緒にいれるように愛します・・・・


リオン様は驚いたように私を見ます。

まぁ……愛なんて言葉、初めて言いましたので。


「神の御名の下、婚姻届とこの誓いをもってお二人を夫婦と認めます。神の祝福があらんことを……おめでとうございます」


その瞬間……聖堂に響くのは割れんばかりの歓声に、祝福の言葉。

暗闇の世界で生きてきた私には考えられないほど、幸せな光景。

私は未だに驚いたままのリオン様に寄り添いました。


「………ノエル…さっきの言葉……」

「嘘じゃないですよ。好きよりももっと熱くて、大切で、深いんです。これが〝愛してる・・・・〟ってことでしょう?」

「…………あぁ……オレも愛してるよ」


リオン様は蕩けそうな笑顔を浮かべながら、私の唇にキスをする。

それで更に湧く参列者の皆さん。

こんな沢山の人の前でキスするなんて思わなかったから、私は顔が熱くなってしまいました。


「幸せだ、ノエル」

「私もです」





だから……大丈夫・・・ですよ、リオン様。





*****





リオン様のエスコートで控え室に戻った私は、何もない空間に向かって……声をかけました。



「シロエ、クロエ」



「っっっ‼︎」


リオン様が息を飲まれます。

……………きっと、私が二人に声をかけるなんて思わなかったんでしょうね。



ゆらりと揺らぐ空間ーー。

そこに現れたのはいつもの白狼と黒狼ではなく……白髪の法衣のような服を纏った青年と、黒髪の黒いドレスを着た女性。

私は、二人に微笑みました。



「お別れ、ですか?」



私の言葉に青年と女性……シロエとクロエは悲しそうな顔をする。

そした、ゆっくりと頷きました。


『…………分かっていましたか』

「えぇ。何年共にいたと思ってるんですか。なんとなく、察しますよ」

『………すまんな、リオン。黙ってていてくれと言ったのに』

「…………いや……」


…………やっぱり、二人が言ったんですね。

シロエとクロエはずっと私を見守ってくれていて。

私が幸せになるのを見たいと言っていました。

だから、先に知らせて……私の幸せが陰るのが嫌だったんでしょう。

翳りなく笑う私が見たかったんでしょう。

でも、私はなんとなく気づいてしまいました。

言葉の端々で感じていた嫌な予感。

それは、かつて……消えていった同僚(暗殺者)達と同じ雰囲気だったんです。


「馬鹿ですね。二人が消えるくらいで、私の笑顔が消える訳ないでしょう」

『『………………』』


二人は驚いたように目を見開きます。

私は胸を張って答えました。



「二人が消えたって思い出が残ってます。二人が私を大切にしてくれていたっていう、記憶が残ります。だから、悲しくなんてありません。私が悲しんだら……二人は心配してしまうでしょう?」



私はリオン様から離れて、シロエとクロエの前に立ちます。

初めて見る精霊としての姿。

最初で最後の、姿。

そして……最後のお別れ。



「大丈夫です。私にはリオン様がいます。お父さんがいます。ルイン様とシエラ様だって……領民の皆さんとだって親しくなりました。昔の私に比べたら信じられないでしょう?」



少しおどけるように言えば、シロエとクロエも納得したような……困ったような苦笑を浮かべてくれて。

ゆっくりと、頷きました。


『えぇ……そうですね』

『信じられない、な』

「だから、大丈夫です。私はちゃんと生きていけますから、安心して下さい。シロエ、クロエ」


満面の笑顔で、二人に抱きつく。

少しだけ身体が震える。

今頃になって、二人の大切さがよく分かるようになるなんて……。

もっと一緒にいたかった。

ずっと一緒にいたかった。

でも、それは叶わないから。

だから、せめて……笑顔で。



大好き・・・です。シロエ、クロエ。私と一緒にいてくれて、ありがとう」



私の頬を伝う熱いモノ。

でも、それに気付かないフリをして笑う。

二人も……同じように涙を零しながら、笑ってくれて。

その笑顔が、私がちゃんと……二人の未練にならずに済んだことを教えてくれました。



『わたし達も大好きです、ノエル。わたし達に人を愛しむ気持ちを教えてくれて、ありがとう』

『大好きだぞ、ノエル。お前と共に過ごした時間はかけがえのない宝物だ。ありがとう、幸せだった』



二人の姿がゆっくりと消えていく。

でも、私はそれを笑顔で見送って。

完全に消え去った後……私は、その場に崩れそうになりましたが、ぎゅうっと後ろから抱き締められて支えられました。


「頑張ったな、ノエル」

「う……ぁ……」

「もう、泣いていい」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあんっっ‼︎」


慟哭に近い泣き声を、ただリオン様だけが聞いてーー。







その日ーー。



私は大切な家族を、見送りましたーー。







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