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第15話 初めて守られることを知る







「よし、じゃあ……ルインを使って色々始末していくぞ」




とうとう、ルイン様を使うとか言い出しましたね。

ルイン様本人はケラケラ笑って受け入れてますけど、あの威圧ヤバさを知ってるのにそんなこと言えるリオン様は凄いです。


「で、どうする気なの?」

「魔王の真実を公表する。で、オレがそれをすると皇位継承云々が面倒だから、ルインに代わりにしてもらう。それに、この国で起きてる不作の原因も、公表してくれ」

「乙女ゲームと聖女はどうする?」

「オトメゲームの方は……まぁ、聖女が恋愛するのを止める必要はないだろう。そこらへんは個人の自由だ。オレにはノエルがいるから関係ないし。取り敢えず、魔王が敵じゃなければ破滅シナリオはなくなると思う」


ツラツラとリオン様とルイン様が作戦会議をしていきます。

置き去り気味の私とシエラ様、お父さんはそんな二人を見てぼーっとしていました。


「あいつ……よくあんな危険な奴と普通に会話してるな」


お父さんはボソッと呟きます。

それを聞いてシエラ様はクスクス笑いました。


「まぁ、そうねぇ。ルインの力の片鱗を見たのにあんな普通に接せる人は滅多にいないわ」

「《穢れの王》、でしたっけ?なんなんですか、それ?」

「《穢れの王》はあらゆる負の感情を持って産み出される……世界を滅ぼす存在ね」

「「世界を滅ぼす存在……」」

「私が乙女ゲームのシナリオを回避させたから、ルインはそれにならなかったのよ。ルインと私が出会ったから……彼は迫害され続けず、暴力を振るわれず、奴隷扱いされず、龍への生贄にならなかったの」


………………うわぉ、重い。

というか……オトメゲーム、残酷過ぎじゃないですか?

シエラ様のゲームでは、お父さんラスボスの代わりがルイン様だったらしいですが……裏事情が重過ぎる。



「結局色々あって《穢れの王》も吸収してしまったらしいのだけど。まぁ、ルインはルインだから関係ないわ」



ちょっと待って下さい。

なんか今、聞いちゃアウトな言葉が出た気がするですけど?


「よし、作戦会議は終わったぞ。これから、ルインと共に竜皇を追い込むことになるだろうから、ノエル達は黙って見ててくれ」


……………はい?

いやいやいや、ちょっと待って下さい‼︎

今、竜皇を追い込むとか言いませんでしたかっ⁉︎

えっ⁉︎大丈夫なんですか⁉︎

私の心配をよそに、リオン様はシュルシュルと縮んでいきます。

………それに合わせて服のサイズも子供に……。


「ありがとう、ルイン」

「どう致しまして。というか、子供リオンは可愛らしいね(笑)」

「うれしくない」


どうやらルイン様が服のサイズを調節して下さったみたいですね。

というか、お父さんがギョッとしながら私の腕を掴みました。


「ノエル‼︎あいつ、縮んだ‼︎」

「中身は大人なのでお気になさらずに」

「いやいやいや、なんでだよ‼︎」


私はお父さんに軽く説明します。

竜人種は竜気という力で成長するが、政治的な問題と暗殺者的な問題でここ最近まであの姿だったのだと。


「………政治的な問題と暗殺者って…」

「リオン様は第二皇子ですから、子供姿で未熟でいれば皇位を継承する可能性が限りなく低いんです。暗殺者に対しては、相手に油断してもらうために子供姿だったらしいですよ?リオン様のお父様が守って下さらなかったので、そっちの方が殺し返しやすかったらしいので」

「…………………なっ⁉︎」


お父さんはそれを聞いて絶句していました。


「転移させるよ」


ルイン様の声で私はそちらに意識を向けますが、お父さんは変わらずで。

仕方なくお父さんの手を掴みました。


「じゃあ、全力で転移っと」



というか、そんな軽いノリで転移するんですね……。






転移した先は竜皇の執務室で。

竜皇と執務官達は唐突に現れた私達にギョッとしました。


「エクリュ侯爵⁉︎リオン⁉︎」


燃えるような赤毛に金色の瞳、美しい顔。



竜皇リヴィット・フォン・マグノール。



マグノール帝国の皇帝であり、リオン様のお父様……そして、賢皇でありながら番関連は愚皇な竜皇がいらっしゃいました。



「やぁ。原因が分かったから報告に来たよ」



その言葉を聞いて竜皇達の空気がピリッとしたものになります。

ルイン様はニッコリと笑いながら、質問しました。



「あぁ、そういえば。どうして魔王が目覚めたって俺達には教えてくれなかったの?」



「っっっ⁉︎」


竜皇と執務官達は息を詰めます。

うわぁ……教えてなかったんですか?


「君達が俺にこの国の不作の原因を調べて欲しいって言ったんだよね?関係ないとしても、重要なことが起きてたら教えるものじゃないかな?」

「……………それは……」

「………次に俺に対して情報を隠蔽したら、覚悟しておいてね。今回は許してやるけどさ?」


ゾワリッ……ルイン様からの威圧に、竜皇達は顔面蒼白で震え出します。

あ、今回は関係ない人には無害なように調整されてますね。


「調べてるついでに魔王のことも分かったから、ついでに教えてあげるよ」


それからルイン様は今回の報告をなされます。

不作の原因は、機械化に伴い精霊術が廃れた所為だということ。

聖女の力と周りの者達の精霊術の循環で魔王を封印していたが、廃れた所為で封印が解け……聖女の力が解放されたため、聖女覚醒が起きたこと。

魔王(魔族)は、かつて人間種達が間違っているのに、世界の敵だと公表した所為で迫害され、攻撃されたから反撃をして戦争になったこと。

魔族の中で裏切りが起こり、人間種側についた者達の所為で封印されたことをーー。


「まぁ、つまり?精霊術で人々から送られる精霊力が世界を調節するためのエネルギーになっているんだけど、精霊術が廃れた所為でエネルギー不足が起きて不作が起きてるんだね。後、この国にどんな文献が残ってるか分からないけど……魔王は被害者だから、聖女を使って討伐しようとかしないほうがいいよ」

「………………つまり……」

「全部の原因は竜皇陛下の政策ミスだね。自業自得?まぁ、唯一の救いは冤罪で封印されていた魔王を救えたことぐらいじゃない?」


竜皇はそれを聞いて愕然としていました。

まぁ、そりゃあそうでしょうね。

自分が推奨した機械化が原因でこの国で不作が起きたんですから。


「ところで、何故リオン様がご一緒かお聞きしても?というか……後ろの方は……」


愕然としている竜皇を置いて、カエサル宰相閣下が質問します。

ルイン様は「あぁ」と頷きました。


「リオンが一緒なのは、彼の侍女が魔王の御息女だからだよ。で、そこにいるのが魔王ノイズだね」

「なっ⁉︎」

「……………どうも」


お父さんはぶっきら棒に答えて、また何かを考え込むような顔になります。

私は無言でカーテシーをして、挨拶を終えました。


「一応、魔王は御息女のために復讐はしないでくれるらしいよ。良かったね?君達の……おじいちゃん世代かな?その人達が冤罪で攻撃したのに、許してくれるんだって」


竜人種やエルフの寿命は約二百歳。

魔族が百五十歳ぐらいで、人間や獣人、ドワーフは八十歳くらいが基本だと言います。

ですから、五百年前は祖父母世代になるんですね。


「……………本案件はただことではありませんな」

「そうだね。取り敢えず、友好の証としてリオンとノエル嬢を婚約させとけば?」

「「…………………は?」」


私とリオン様の声が重なります。

え?何言ってるんですか、ルイン様。


「だって、両想いだし。することしー……」

「だまれよ、ルイン。さすがのぼくもおこるぞ」

「あははっ、ごめんね?でも、婚約した方がいいんじゃない?リオンの未来のためにも」


…………というか、なんでバレてるんですか。

経験の差ですか。

恥ずかしいのですが。


「……………みらい……」


リオン様はチラリと私の方を見上げます。

あぁ、オトメゲームに関することですね?

確かに、私とリオン様が婚約していれば聖女は手出しができません。

なら……。


「リオン様がよろしければ、私のものになって下さいませ」

「……………せりふがおとこまえすぎるだろ……ふつうはぼくがいうんじゃないの……?」

「ふふんっ、私は成長したのですよ?リオン様。もう恋愛赤ちゃんとは言わせません」

「…………あぁ……うん」


リオン様は思いっきり震えながら笑いを堪えます。

こら、笑わないで下さい。


「魔王もリオン達の婚約、反対しないでしょ?」

「………ん…?あぁ……まぁ、二人は両想いみたいだし。お前、独りで頑張ってたみたいだしな」

「……………?」

リオン・・・


お父さんがリオン様の名前を呼ぶ。

リオン様はピクッと驚いたように目を見開きました。


「よく独りで頑張ってきたな」

「…………へ?」

「さっきは、問答無用で敵意を向けて、悪かった。少しだが、ノエルから話を聞いた。暗殺者を向けられていたのに親にすら守ってもらえず、自らの手を汚してきたんだってな」


それにリオン様は分かりやすく動揺します。

ですが、お父さんの声はとても優しいままでした。



「もうそんな残酷なこと、しなくていい。ノエルの夫となるなら、お前はもう僕の義息子だ。だから、守ってやる」



お父さんはそう言って、リオン様の頭を優しく撫でました。


「お前達二人は、きっと様々な苦難の道を歩いてきたんだろう。ノエルだって……リオンに負けず劣らずの暗い道を進んできたんだろう。二人とも、よく頑張った。後は大人達の仕事の時間だ。子供は、ただ幸せになることだけを考えていろ」

「そうだねぇ。二人は色々と辛い世界で生きてきたんだから、もう充分だよ。俺も手伝ってあげる」


……………今なら分かります。

私は、暗殺者という道しかなかったからその道を進んできました。

でも、それは辛い道だったんです。

血で血を洗うような日々。

いつ逆に殺されるか分からない日々。

こうして……少し平穏じゃないけど、昔と比べたら平和な。

普通の日々を知った今なら。

〝好き〟という感情を知った今なら。

あの日々が辛くて、苦しいものだったって分かるんです。

だから、もうあんな辛い道に戻らなくていいと。

守ってやると言われるのは……とても嬉しい。

それは、殺し殺され合うような日々を過ごしてきたリオン様も同じ気持ちのようで。

私達は手を握り締めあって、泣きそうになります。


「なら、私も……」

「シエラはリオン側だからダーメ。今回は俺と魔王の出番だよ」


ちょっと拗ね顔のシエラ様は「ならいいわ。ノエルちゃん達とお茶とかするもの」なんて、まさに平和だからこそ言えるようなことを言って下さって。


あぁ……もう、大丈夫なんだと安心する。



「さて……ちょっと話をしようか。お前は、自分の息子に対する償いをするべきだ」

「不作とは関係ないけど、ちょっとこれは看過できないよねぇ?」


そう言ったお父さんとルイン様は獰猛な笑みを浮かべながら、竜皇達を見つめる。





そっから、お父さん達は凄まじい話し合い(戦闘)を始めるのだったーーー。







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