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第9話 不審者の正体は……






リオン様の甘やかしを、甘く見てました。



いや、ギャグじゃありません。

本気でリオン様を甘く見てました。



いや、なんですかアレ……。


朝から蕩けるような笑顔でキスされて、優しく触られて、〝可愛い〟とか〝好き〟とか沢山告げられて。

お子様スタイルだとその容姿を使って子供みたいに甘えてくる……と、見せかけて時々ドキッとするようなこと言ってきますし。

で……夜は夜で、一緒に添い寝することや……激しくされることだってあって。

好きって恐い。

こんな……心臓が破裂しそうなことを皆してるなんて……凄過ぎる。


「このままリオン様に甘やかされたら、死ぬ気がします」

「そうかんたんにしなれたらこまるよ?」


子供スタイルなリオン様は私の膝の上に頭を乗せて、ふにゃりと笑われました。

今は勉強の合間の休憩時間。

まぁ、元々リオン様は頭が大変よろしいですから……だいぶ急ピッチ(だけど、余裕)で勉強を進めておられます。

それで……こう休憩時間になるたびにこうやって触れてくる訳でして。

最初は死ぬかと思いましたが、ここ最近は多少慣れました。

まぁ、それでも?


「心臓がドキドキし過ぎて死にそうなんです」

「うふふっ……それもノエルもぼくがすきになってきたのかなぁ?」

「好きって心臓死にそうになりますか?」

「ドキドキしたり、ホッとしたり……まぁ、すきのしょうじょうはいろいろだよ?」


………なんと……。

難しいものですね。


「まぁ、ノエルはもうぼくのことがすきなきがするけど……ちゃんとすきってなっとくするまでつきあうよ?だから、おとなすがたのときでもこどもすがたのときでも……いっぱいくっつくからね」


………本気で死活問題になってきました。

あ、そーいえば。


「………最近は大人姿でいることが多くなってきましたね。慣れたんですか?」

「うん。まぁ、ひとまえではにんしきそがいしてるからこどもすがたにみえてるだろうけどねぇ」

「え?」


あぁ、そういえば。

ずっと子供姿だった、リオン様が大人姿で外を歩いてたら皆驚くはず。

なのに、いつも通り変わらなかったということは……。


「なんで認識阻害なんてしてたんですか?」

「あくまでぼくはみじゅくじせっていをつらぬくからだよ?それにあにうえへのしかえしのひとつだね」

「へ?」

「みんな、からだがちいさいからこどもみたいにあつかうんだよねぇ。つまりさ?こどもなのにあたまがいい‼︎とってもえらいですね〜……ってほめられまくるんだよ」


…………いや、中身大人じゃないですか。


「さてさて……じゅうごさいならふつうのがくりょくでも、こどもすがたにつられて、かじょうひょうかするおとなたち。そんなかれらをみたあにうえは……どうおもうだろうねぇ……?」


ニヤリ……と悪い笑みを浮かべるリオン様は、とっても楽しそうで。

あ、そういう感じでプライド傷つける系の仕返しをする気なんですね。


「でも、第一皇子もリオン様の精神年齢が子供だと思ってるんじゃないんですか?」

「そーかもしれないけど……いままでおとなたちに、ぼくはてきだとおしえこまれてきたあにうえだよ?おとなたちがてのひらかえしたようにぼくをあつかいはじめたから……ぼくにみかたをとられたとおもってるんじゃないかなぁ?」

「つまり……一言でまとめますと、精神的に追い詰めていくと?」

「うんっ♡」


うわぁ、すっごい笑顔〜……。

語尾に♡マークついてる気がしますぅ……。


「というわけでさ。らいげつからぼくもがくえんにかようことになったよ」

「うわぉ。話が繋がらない」

「がくえんでもおいこんでいくぞ〜‼︎」

「あ、そー繋がる感じですか」

「まぁ、じゅうごさいになったら……いちおうかようよていだったからね。かようもくてきに、あにうえへのしかえしがついかされただけ」


忘れていましたが今の季節は春の始まり。

つまりは来月には、王立マグノール学園の入学式があるのです。


「ノエルもいっしょにいこーね」

「え?侍女なのに?」

「にんしきそがいしたままでいくから、こどものままだとおもわれてるからね。だから、おてつだいがひつようだろってことでノエルをつれていくことにしたんだよ」


あぁ、なるほど。

そうすれば誰にも文句を言われずに私を連れて行けますもんね。


「……あははっ…ノエルもほんきであばれるといいよ。つよさがいちばんのこのくにでは、きみのつよさもまたそんけい、ねたみのたいしょうだ。あにうえはきみのつよさにしっとするはずだよ?」

「………リオン様には私の本気を見せたことがないと思いますが?」

「あいてのりきりょうをはあくできないほど、ぼくはよわくないよ?」


………本当、リオン様が味方で良かったと思いますよ。

敵だと思うと恐くて仕方ないです。



「さて……たのしもうね、ノエル」



……………何をですか、リオンさーー。





ゾワリッ。




「「っっっ⁉︎」」



ゴォッ‼︎



私とリオン様は勢いよく窓の方へ振り返ります。

凄まじい寒気と、空に向かって走る金の光柱。

なんですかっ、コレッ……‼︎


「いったい、なにがっ……」


リオン様も飛び上がり、一緒に窓辺に駆け寄ります。

私達が外に注目していると……。




『あぁ、なるほど。我らの力が減ったからこうなったのかぁ』




「「っっっ⁉︎」」


いつの間にか、私達の隣に一人の男性が立っていました。

気配なく現れた人物。

私とリオン様は一気に警戒態勢になります。

漆黒の髪に血のように赤い瞳。

身に纏う白い服がより一層人ならざる存在感を強めていて。

見たことがないほどに見目麗しい男性。

彼はこちらを見て……優しく微笑みました。


『あぁ、落ち着いてくれ。ただ君達に話しに来ただけだ。というか、普通の人ならわたしを見たら敵対しようともしないんだが……』

「「……………」」


服の袖から仕込みナイフを取り出します。

彼はそれを見てギョッとしました。


『あ、ちょっと‼︎懐からナイフとか出し始めるのは止めてくれ‼︎ちゃんと話すから、うんっ‼︎』


気配もなく現れた不審者を警戒するなと?

そんなの無理ですね。

一体、こいつは……。



『落ち着いて下さい、ノエル。コレは大丈夫です』



しかし、投擲を止める声に、私達は目を見開く。

空間を歪ませながら現れるシロエとクロエ。

二人は男性を見て、呆れたような顔をしました。


『せめて扉をノックするとか、一言声かけるとかできないんですか。阿呆』

『というかなんでお前自ら出てきてるんだ。馬鹿なのか』

『相変わらず酷い⁉︎』

「「………………」」


………えぇ。

三人の会話を聞いて……私達は真顔になりました。

……………扉をノックするとか、そーいう謎なとこ気にするんですか。

というか……。


「………その不審者と知り合いですか?」

『……まぁ、不審者と知り合いなんて思いたくないんですけど……』

『分かりやすく言えば、元職場の上司という表現が合うか?』

『だからなんで君らはそんなに毒舌なんだ……もう少し優しくしてくれてもいいだろう……?』

『『無理』』


………あぁ、なんか……一気に空気が馬鹿らしいモノになりました。

リオン様もなんかこう……スンッ。って顔してますし。


「えっと……とりあえず。その不審者は誰なんですか?」

『よくぞ聞いてくれた、魔族の少女よ‼︎』


シャラララララ〜ン☆

なんて効果音が似合いそうな感じでクルッと一回転して目元にピースサインを添える男性。



『わたしの名前はっ……』



勿体ぶるように黙りますが、シロエ達がゲシッとその男性に飛び蹴りして床に転がしました。


『ウザいですよ、精霊王・・・

『なんでお前が精霊王・・・なんだ。認めたくない』

『ネタバレされたっ⁉︎』

「「………………」」


………どうしましょう。

サラッと重大発表されたんですけど……なんか、こう……。



……………驚きを通り越すと真顔になりますね。



「………はぁ……とりあえず、おちゃにしよ、ノエル……」

「あ、はい」


リオン様は死んだ魚のような目で彼らを見つめています。





私もきっと、同じような顔をしてると思いました。








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