第7.5話 保護者代わりの独白
わたしとクロエは、ノエルの保護者代わりです。
ノエルの母親から彼女を託されて十五年ー。
やっと、ノエルを託せる青年に出会えました。
『おーおー……なんか凄いなぁ……』
リオンの部屋の前に座ったわたし達は、彼の部屋に防音の精霊術をかけて護衛官に認識障害の精霊術を発動していました。
ですが、クロエは不躾にも中の音に聞き耳を立てているようですね。
『クロエ』
『分かっている』
クスクスと笑ったクロエはわたしの隣に座ります。
そして、スリッと額を寄せてきました。
『だが、お前が先に肉体関係を許すとは思わなかったな』
『……まぁ……本当は友人、恋人……と過程を経て欲しかったですけどね』
『……許したのは、精霊王から教えてもらった情報が原因か?』
『えぇ』
ノエルには言っていませんが、あの同僚の娘が言っていたオトメゲームなるもの。
隣の大陸でも、同じようにオトメゲーム関連の事件があったようでして。
向こうでは当て馬になるはずだった少女が自由に動き、ゲームとは違う状況へと変えていったようです。
つまり、行動次第でゲームとは異なる展開になるということ。
それを考慮すると……当て馬になるはずだった同僚が早々にいなくなったため、ノエルが代わりに当て馬になっている可能性がとても高いのです。
ノエルは好きという感情が分からないようですが……わたしからすれば、リオンは中々の優良物件。
わたし達がノエルを託しても良いと認めた存在。
わたしはリオンが大人姿になったら本格的な発情期になることもなんとなく推測できていました。
満月に合わせて、リオンが我慢できなくなるだろうことも分かっていました。
だけど、黙っていた。
ノエルとリオンが離れる前に……離れられなくなる理由を作ってしまえば良いのでは?と思ったからです。
『リオンはノエルを良い匂いと言いました。つまりはリオンにとってノエルは相性が良い。たとえ、順番が違ってもリオンはノエルを大切にしてくれるでしょう』
『そうだな。まぁ、我々に常識は当て嵌まらぬしな。ノエルが幸せになり、家族を成せれば……なんでも良い』
『……………そう、ですね』
『それまで、我らの身体が持つと良いな』
クロエの言葉にわたしも頷きます。
まだ、大丈夫ですが……もう残りの時間が少ないのは確かです。
自分達で決めたこととはいえ……ノエルが幸せになるのを見届けなければ、死ぬに死に切れませんからね。
『クロエ。最後の時まで、よろしくお願いしますね』
『当たり前だろう、シロエ。我とお前は対なのだから』
わたしとクロエは互いに顔を寄せ合い……夜が明けるのを待ちました。




