第0話 (元)暗殺者侍女の同僚は当て馬キャラらしい。
はい、こんにちは‼︎
いつもお世話になってます。島田莉音です。
「伯爵令嬢はヤンデレ旦那様と当て馬シナリオを回避する‼︎」の第二部です‼︎
今後も頑張りますので、よろしくどうぞ‼︎
「わたし、当て馬なのよ」
竜と人の姿を持つ竜人族……竜皇リヴィット・フォン・マグノールが治める国……マグノール帝国。
その帝都ノールの、皇城にある侍女休憩室。
その日、いきなり同僚にそう言われた私は怪訝な顔をしました。
同僚は金髪碧眼の綺麗な印象を抱かせる侍女。
相対して私は地味な亜麻色の髪に琥珀色の瞳という……至って平凡な容姿。
こういう場合、私のような地味な女が当て馬というのではないのでしょうか?
「えっと……当て馬って?」
「聞いてくれるかしら、ノエル」
名前を呼ばれながらガシッと肩を掴まれる。
あ、これ逃げられないヤツだと思っても後の祭り。
そして……私は、同僚ことパールの話を聞くハメになりました。
曰く、パールは異世界から転生した存在らしい。
で……この世界は…というか、マグノール王国はオトメゲームとか言う恋愛シミュレーションの舞台で。
そこにいる身分の高いイケメン達と聖女となったヒロインがキャッキャッウフフしながら仲を深め……魔王を討伐するらしいです。
で、パールはそのシナリオの中で行われるキャッキャッウフフのための当て馬なんだとか。
「………はぁ…?」
「このゲームってね?三角関係型シナリオなのよ。二人の攻略対象の間で揺れ動くってヤツ。わたし、この間第一皇子の専属になったじゃない?だから、その衝撃でピシャーンッと前世の記憶を思い出しっていうか」
「………そうですか……」
私は半分以上聞き流しながら、お茶を飲む。
面倒ごとの予感がしたからです。
「という訳で、気合いで寿退社を勝ち取ってきました☆」
「…………はい?」
「あ、寿退社って言葉がないか。気合いと根性で結婚相手見つけてきて、近々結婚するから……侍女辞めます☆」
「…………………」
クールな性格だったパールはどこへ行ったんですかね……?
彼女はキラッとピースサインを目元で構えて、笑っていました。
「これで当て馬シナリオ回避だぜ☆」
「……………………………」
「あ、こいつ本当にあのパールかと思ってる?仕方ないんだなぁ〜…前世の記憶に引きずられちゃってるからさ」
私は額を押さえて溜息を吐きます。
よし、嫌な予感がしますね。
逃げた方が良さそうです。
「という訳で、私がいなくなることでゲームのシナリオがどうなるか分からないんだけど……頑張ってね‼︎ノエル‼︎」
背後から彼女の声が聞こえるがスルーする。
私は、直ぐさま休憩室から逃げて……早々に持ち場に戻りました。
後日、パールの言葉の所為だと思うような事態になることを、その時の私は知りませんでした。