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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第11章 邪神ダグナーガ
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セフィル神とダグナーガ

1734年 8/27


 この星の最大の大陸であるセファレント。南北に長いこの大陸は、高温多雨な地点もあれば、寒冷な地点もあり、それぞれの土地に適合した動植物が生活している。それは人間も例外ではなく、決して多くはないが小さな集落を形成して生活していた。ただ、国家になるには至らず、他の動物同様、自然に溶け込んで生活しているレベルであった。そのためか、他の大陸に向かおうとする者も生まれず、その存在が、この星に存在する他の国に住む人々に知られることは無かったのである。


 また、セファレント大陸は位置的に、他のどの大陸とも遠く離れていたため、発見されることも無かったばかりか、本来この大陸がある場所は海であるとさえ考えられていた位である。勿論、未知の大陸があるなどという物語も存在したが、あくまで空想上のおとぎ話であった。技術的な問題で、逆回りに世界一周をしようという冒険者も存在しなかったため、ここが他大陸の人間にとって未知であるという状態がここまで続いてしまったのであった。


 とはいえ、決して無人の大陸とは言えないセファレント大陸。その大陸の中央は赤道直下であるということもあり、熱帯雨林で占められている。ただその中心部には半径500㎞程の台地が存在しており、周囲とは標高が4000m程の差があるのであるが、周囲の森には認識阻害が掛けられているのか、人がそこへ向かうことは無く、仮に向かったとしても、立ちはだかる崖を態々登ろうとする者もいないだろう。尤も、登りきったところで、そこには結界が張られているため、台地に侵入することは出来ないのだが。


 このセファレント大陸中央に位置する台地全体がこの世界を管理する神の住む神域となっている。気候は赤道直下でありながら標高が高いこともあり一年中適温であり、食料となる作物も季節を問わず収穫できるところでもある。


 そんな場所で、自らの眷属とともに生活しつつ、この星の、この世界の管理を遥か昔から行い続けている神セフィルは、自らが管理し始めてから経験したことも無い事態に頭を抱えていた。


「まさか、ダグナーガが復活してしまうとは・・・」


 邪神ダグナーガは、今は魔界と呼ばれる世界の奥深くに封印されている存在であった。それを邪神の眷属ゲルザードがこの世界で召喚するという裏技でその封印を解こうとしている動きは、今から1000年前からだろうか? とにかくその頃から把握していた。だからこそ邪神の封印にかかわった他の神々の眷属たる精霊竜達を召喚し警戒させていたし、700年程前にゲルザードが蜂起した際には、神域を離れられない自分の代わりに行動してもらうべく、雷神たる自らの力を、勇敢な若者であるカミュに与えて邪神復活を阻止したのだ。その後カミュは勇者と呼ばれ、雷の力は勇者の象徴となったようだが。


 そろそろゲルザードの封印が解けることも把握していたし、だからこそカミュに連なる血族の一人に再び自らの力が発言するようにもしていた。が、悪いことに偶々なのかそうでないのか、別な世界からの侵略者までやってくるとは・・・その者達を上手に利用したゲルザードらは、こちらの準備が整うよりも早く邪神を召喚する準備を始めてしまった。加えて、封印魔法のエネルギーを吸収するすべを編み出していたのは計算外だった。その結果、邪神は復活し、今神域に侵入したのを確認した。間もなくここに來るであろう。私を殺せば、この世界の神の権限を奪うことが出来る。恐らくヤツが望むのは、その権限を用いて、この世界のありとあらゆるエネルギーを奪いつくして自らを永遠存在に近づけることにある。それだけは絶対に阻止しなければならない。


 セフィル神は、傍にある神槍グンニグルを手に持つと、ゆるりと立ち上がる。槍からは自らのエネルギーが雷となって漏れている。そして今までいた神殿からそのに出る。・・・外に出てより明確に感じられる負のエネルギー。奴らはもう目の前まで来ているようである。・・・その数分後、前方上空から鈍い光が走ったかと思うと、足元が激しく揺れる。・・・恐らく着地の衝撃であろう。


『息災のようだな、セフィルよ。・・・数千年振りか・・・』


「フン、9000年振りといったところだろうな。」


『・・・あれからもうそんなに時間が経つのか・・・』


「お前も任せられた世界をしっかり管理していれば、このような形で再会することも無かったはずだが・・・」


『・・・何故、主神の言いつけを守って、下等生物共のお守りをしなければならないのだ! 自らのために利用しつくして何が悪い!!』


「命は循環するのだ・・・何故自然の摂理を理解しようとしない!」


『そんなこと知ったことか! 我が存在するためにすべてを奪いつくす。 それの何が悪いというのだ! 主神の取り決めなど無効だ。・・・力を蓄え、やがては主神も殺し、俺が主神となるのだ!』


「分かってはいたが、お前には言っても分からないようだ。・・・ならば、力ずくでも止めるまで・・・」


 そう言って、神槍グンニグルを構えるセフィル。それに対して、初めから竜形態のダグナーガは余裕綽々だ。その態度にキレることも無く、飛び上がって槍を一閃。腹部に命中する。


『・・・フン、これが何だというのだ・・・』


 ここからトールの全力の雷が放たれる。一般的な生物なら瞬時に黒焦げのレベルなのだが・・・


『ガガガガガガ!!!! ・・・・確かに痺れはするが、・・・それだけだ!』


 そう言うや否や、右手で払うとあっさり外れてしまう。そして、ダグナーガのテイルアタックがセフィルを直撃する。そのまま吹っ飛ばされ、近くの岩塊に激突する。


「グアァ・・・」


 セフィルは何と立ち上がるが、既にフラフラで、グンニグルを構えるのがやっとである。


『・・・流石にこれでは死なんようだな・・・流石はこの世界の神といったところか・・・だが、一般の世界神如きが我に敵う筈がないのだ。』


 そう言って、ふらつくセフィルに近づいていくダグナーガ。この状況をセフィルの眷属たちは見守っているが、セフィルの眷属には戦闘能力はほぼ無いに等しい。実務能力を優先させているため戦えないのだ。よって助け出すこともできないのだが、何故かセフィルからわずかに笑みが零れているのを気が付いたものはいない。それに気が付かないダグナーガは徐々に近づいていって、


『グッ!・・・な・ん・だ・と?!』


 ダグナーガの足元には巨大な魔法陣がいつの間にか出現していたのである。


『貴様! 謀ったな!』


「お前にはまともにやっても敵わないからな。・・・」


 自嘲気味にそう述べるセフィル。だが、足元の魔法陣は、少なくともこれにかかった存在を足止めする効果はあるようで、ダグナーガは動きを完全に止めてしまった。だが、それを黙って見ている連れはいない。すぐさま悪魔族の男、マルローが魔法をぶち込み、魔法陣に傷をつける。さらに龍形態をとったゲルザードがブレスを一吹きして、完全に魔法陣を消し去ってしまった。


『ふむ。助けられたようだな・・・』


 ダグナーガの言葉に頷きつつ、再び後ろに下がるマルローとゲルザード。そして自由を取り戻したダグナーガは再びセフィルに近づいていく。・・・セフィルは勿論こうなるのは予想できていた。ダグナーガだけで策を弄しなければ止めることは出来ないのである。ましてやその部下達がいるとなれば、うまいこと嵌めることが出来たとしてもそれを無しにされてしまうのは明らかであったが、それでも出来る限りの抵抗はしなければならなかったのである。


『・・・覚悟は良いな?・・・』


 そう言うと、巨大で邪悪な竜は大きく咢を開き、その中で大きなエネルギーが収束しているのが分かる。その様子を目を閉じることなくセフィルは見つめる。これから起こる現実には決して目をそらさないという覚悟である。


 収束したエネルギーが竜の咢から放出される瞬間、何者かの踵落としでダグナーガの口は強制的に閉じさせられた。行き場を失ったエネルギーは竜の口内で暴発する。そのまま後ろに倒れ、あまりの痛みに転げまわるダグナーガ。この様子を見ても特に動揺はしなかったマルローはすぐさま周囲を見渡す。すると、上空にはどこからか開かれたゲートと、数人の人間に6柱の精霊竜、そして今踵落としを喰らわせたであろう張本人であるレグルスが不敵な笑みを浮かべていた。


 




色々都合がつかないため、次回はかなりお待たせしますが、8/17(土)予定です。よろしくお願いします。 

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