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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第11章 邪神ダグナーガ
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力と心の試練

「さて・・・テュールよ、出てこんかい!」


 土竜が乱暴な口調で、岩が集まってできた力の祠に向かって呼び掛けている。そしてどこからともなく、声が響いてくる。


『・・・土竜か・・・フッ、貴様・・・以前と比べて随分と弱体化したのではないか? 伝わってくる覇気がまるで別人だぞ?』


「・・・ほっとけ。まだ封印から解放されて間もないのだ。・・・それよりも、神域を目指しているものを連れてきた。・・・よろしく頼む。」


『わかった。 状況は把握している。 出来ることならなら素通りさせたいのだが、これもルールでな。・・・対象は10名か。誰か一人でも乗り切ることが出来れば力の試練はクリアということでいいだろう。』


「・・・今度は何をしたらいいんだ?」


 相槌を入れたラルフに、声の主テュールが答える。


『すぐそこに林檎の樹があるだろう。その上の方に一つだけ光り輝く実が生っているのが分かるか? あれを持ってこられたらクリアということでいいぞ?』


 少し大きめの、高さ7m程の林檎の樹の頂上付近にそれは生っている。それを取ってくることは特に難しいようには見えないのだが・・・


『ただし、これからこの辺一帯は魔法が一切使えなくなるからそのつもりで。それとこの場にあるすべてのものの重さが7倍になるからな?・・・ああ、樹に関しては強度補強しているから、重さで折れたりしないから安心していいぞ。・・・ではいくぞ!』


 その言葉が紡がれた瞬間、ほとんどの者が動けなくなる。もし元の体重が50㎏なら、350㎏になるということである。魔法使い組はピクリとも動かない。が、レグルス、ラルフ、アレク、ラークの4名は何とか動けるようだ。が、樹の傍まで着いたとき、


「・・・ここを登るのか・・・スマン、無理だ。」


「僕も無理そうだ。自分の体を支えるのが精いっぱいだよ。」


 結局、ラーク、アレクもリタイアした。だが、レグルスとラルフは樹にしがみつくと、少しずつ登っていく。両腕両脚の筋肉を痙攣させながらだが。


「・・・・・」


「うごあっ! こなくそ!!」


 重量のある装備は外しているとはいえ、2人とも元の体重が70㎏以上はある。当然現在の状況では500㎏を軽く超える。合わせると1tといったところか。そのためか、強化されているはずの林檎の樹がミシミシ言っている。


 片手を伸ばして枝を掴み、自らの体を持ち上げて少しずつ上へ登っていく2人。・・・だが、樹の幹は上がるごとに細くなっていき・・・


「おいおい、これ本当に大丈夫なのかよ? いくら補強してるっていっても折れるんじゃねぇか?」


「だが、目標の実は幹から少し離れたところにあるな・・・」


 高さ的には光り輝く実のところまで登ってきた2人であったが、残念ながらここからでは手が届かない。あれを取るには、頼りない枝を伝っていかなければならない。


「ラルフ、俺が獲りに行くから、枝を支えてくれないか? まあ、別に逆でもいいが・・・」


「・・・どちらかといえば俺の方が重いからな。しゃあねぇ! 行ってこい!」


「助かる!」


 そう言うと、枝にしがみつき横に移動し始めるレグルス。枝はすぐに出も折れそうであるのだが、


「ウオリャア!! 気合いだ!」


 ラルフは両足で幹にしがみつき、空いた手で必死にレグルスがしがみついている枝を支える。・・・すると、


「よし!」


 レグルスは光る木の実を掴むことに成功。・・・がここが限界だった。ラルフの力も枝の耐久力もだ。バキッと音を立てて枝が折れ、2人ともそのまま地面に落下。・・・合計1tの物体の落下に地面が揺れる。・・・だが、木の実は手放してはいなかった。


『いいだろう。 力の試練を突破した証を与えよう。』


 そう言って、新たなカギを浮かび上がらせるテュール。


『さっさと行くがよい。 最後の試練もあるのだろう?』


「余韻に浸ってる暇はないわ。 次は心の祠よ。 ゲート!」


 すでに魔法禁止は解除されていたのか、風龍はあっさり転移魔法陣を起動させる。そして全員転移陣を潜っていくのだった。




「ここは?」


 周囲を見渡して最初に気が付いたのは大きな湖である。・・・どうやらここは湖の中に浮かぶ小島のようだ。周囲を探すが、祠のようなものは見当たらない。


「ここはねぇ、湖底に祠があるのよ。そうでしょお? フーリン。」


『あら、水龍、久しぶりね。・・・まあ、懐かしんでいる暇はないのだけれど。・・・早速やっちゃっていいんでしょ? 心の試練。これは他の試練と違って全員がクリアしなと行けないものなので注意してね。』


「そうなのか?」


『君は・・・レグルスって言うのね。・・・そうよ。残りの2つは仲間の中に力が強い者と賢い者がいればいいっていう試練で、だから誰かがクリアすればいいっていう者なの。でも心の試練は最低限の資格って言うのかな・・・これがクリアできないと神に会う資格がないっていうことのなっちゃうの。』


「具体的には何をするんだ?」


『まあ、簡単に言うと寝てもらうわね。試す内容は・・・体験すれば分かるわ。ということで、魔法のレジストはしないで頂戴ね。』


 そう言われて間もなく睡魔が襲ってくる。・・・・・これは・・・確かに起きてられないな・・・・


 レグルスはそんなことを最後に思いながら夢の世界に引っ張られていく。


「・・・ん? ここは?」


 ベットから起き上がるレグルス。何故か見慣れた光景なのだが、すぐには思い出せない。だがとても懐かしい光景な気がする。窓からの景色を見るとここは2階のようだ。ここで階段を駆け上がってくる音が聞こえる。


「レグ~、起きなさい! 今日で夏休みも終わりなのよ?」


 思い出した。ここは自宅じゃん。昨日まで散々ゆっくりしていたのを忘れていた。何でだろうな。まだ10歳にもなる前からボケてどうするんだって話だ。・・・寧ろゴロゴロしていたわけでもないし、遊び惚けていたわけでもないんだけどな。俺は相も変わらず読書三昧の日々であった。寧ろボケるようなことなどしていない。


「おはよう~、ってあれ?」


 下に降りてきてみると、父アスクと母シュリーの他、隣のエストも一緒になってパンを齧っている。


「・・・何よ、 居たらだめなの?」


「・・・何で喧嘩腰なんだよ? 別にいいよ・・・」


「こら! エストちゃんをあんまり邪険にするんじゃないの! あなたも早く食べなさい。」


 渡されたパンを早速齧り、ミルクで流し込む。


「でも、今日に限ってどうしたの?」


「今日から学校でしょ? 久しぶりに一緒に行こうって思って外で待ってたら、ご飯食べていきなって。」


「・・・ふ~ん。朝ごはん食べてなかったんだ。」


「・・・確かに食べてなかったけど・・・だからどうしたのよ?」


「いや、食べてたら2回も朝食取ることになるでしょ? 大丈夫なのかなって。」


「それって、太るって言いたいの?!」


「こらこら、レグ、どっちでもいいだろ? それに外で待ってもらうのもな・・・」


「・・・確かに。」

 ・

 ・

 ・

 食事を食べ終わって、学校に行く準備をして、家をエストとともに出るレグルス。そのまま通学路を歩いていると、不意に背中を叩かれた。


「痛っえ、・・・なんだラルフか。」


 振り返ると、ラルフの他、アレクとロイも一緒にいる。いつもの3人組だ。


「お前ら2人、相変わらず仲いいな。」


「そういうお前たちもな。」


 そう言って互いにニヤニヤする4人。エストだけは微妙に様子が違ったが、何でだ?


「休み中はどうだった?」


「俺はギブソンさんに剣の稽古をしてもらったり、簡単な依頼をさせてもらったりしてたな。」


「僕は好きな絵をずっと描いていたかな?」


「ラルフもアレクも相変わらずだね。ロイは?」


「多分君と似たような感じだと思うよ? 本読んだり、勉強したり・・・」


 横で、そんなんだからお前らはクソつまんないんだよ! とかラルフが言ってる。・・・ほっとけ。


「そういえばさぁ、今日ってすぐに終わるんだっけ?」


「多分ね。・・・宿題の提出とかしたら終わりのはずだよ。」


 ロイが本当は分かってるよという雰囲気で、今日の予定を確認して、エストが答えているが、ここでラルフが固まる。ん?


「宿題?・・・何だ? それ美味しいのか?」


 オイオイ。 何のギャグだ? まさか・・・


「・・・ラルフは休み中ずっとギルドにいたもんね。実は少しだけ心配してたんだけどね。 いつ宿題やってるんだろうって?」


「おおい! アレク、分かってたんなら言ってくれよ!! 俺1ページもやってねえよ!」


「・・・じゃあ聞くけど、言ったらやってた?」


「・・・そんな仮定の話は知らねぇよ・・・」


「まあ、素直に怒られるのね。エレン先生に。」


「うへぇ~、いやだ~!」


 この辺も休み前と変わらずいつも通りである。まあ、今回は夏休みの宿題丸ごとであるから、エレン先生の雷も極大になるに違いない。・・・そんなことを考えている間に違和感を覚える。・・・俺って昔はこんな言葉遣いだったっけ? 自分の一人称は僕とか言ってなかったっけ? ってか、昔って・・・じゃあ、今は・・・いつだ・・・俺は何をして・・・ああ、これは昔の・・・まだ辛いことを体験する前の過去をベースにした夢って訳か。ってことは、幸せだった過去を理性で振り切れるのかが試練の中身だったってことか?


『正解!!』


 そう頭に声が響くと、意識が覚醒する。起き上がってみるとそこは先ほどまでいた湖の中の小島だった。


『そんな訳で、君が試練突破の第一号だね。おめでとう。』


「・・・別にめでたくはないが・・・ありがとうよ。」


 そうこうしているうちに、他のメンバーも起きだしてくる。


「何とか夢から覚めることが出来たわね。」


「おう。つい子供のころの夢を見させられて、飲まれそうになっちまった。」


「私なんか、前世に戻ってたわね。正直居心地が良すぎたわ・・・」


 エスト、ラルフ、コーネリアが口々に言う。他の面々も似たようなものだろう。


『みんな現実と向き合えているみたいだね。良いでしょう。神域へ向かう資格を授けます。』


 そう言って出てきたのは、やはり鍵だ。今までと同様だが、今回違うのは一人一人に宝玉が渡されたことだ。


『これは心の試練を突破した証だよ。突破できなかった者だけ渡せないようになってるの。今回は全員OKみたいだけど・・・』


「・・・急ぐ旅だ・・・早速行くぞ!」


 レグルスはそう言うと、空間に、知・力・心の鍵を掲げると、そこから転移陣が浮かび上がる。


『ここを通れば、神域のどこかには着くはず。・・・改めてお願いするわ。ダグナーガを止めて!』


 レグルスは右の親指を立てると、すかさず中に入っていく。他のメンバーも後に続く。その様子をどこからか、フーリンが眺めているのである。













次回は8/9予定です。

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