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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第11章 邪神ダグナーガ
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対策会議2

 ここは自由の御旗の会議室。既に自由の御旗の幹部数人の他、レグルス達勇者パーティに加え、人間形態をとった六精霊竜が集まっている。リーダーであるロベルトの進行で会議が始まっていく。


 最初に行われたのは現状の確認だ。邪神ダグナーガが召喚されてしまった。その為に旧イザヴェル王国領や旧アースガルド帝国の民の生命が捧げられ、不足していたエネルギーの足しにされてしまった。されにゲルザードを再封印するためのエネルギーも邪神召喚に逆利用された。現在、邪神ダグナーガと魔王ゲルザード、そして悪魔族のマルローは、この星では大陸のないはずの水半球方向に飛び立っていった。このような内容が冒頭で報告されていく。


「・・・どういうことなんだ? 陸地がない方向に行って何をしようとしているのだ?」


「まさか海底に何かあるのではないだろうな?」


「いずれにしろ、何をするかが分からなければ、対策の打ちようも無いわい。」


 今回、報告を初めて聞く面々は、見当違いなことを言ってしまっている。情報不足なのだから致し方ないのだが、ある程度は情報を持っているレグルス達からすれば、情報が出そろうまで待てない者かと思ってしまう。まあ、その情報というのがこれまでの常識を覆す内容だから、そこの思い至らないのは当然なのだが。


「皆さんご静粛に。・・・敵が向かった方向に関して補足説明があります。」


 ライズがそう言った後、その向かった方向には、実際は海ばかりではなく、これまで世界最大と思われていたユグラドル大陸よりも大きい大陸が存在していること、その中心部には神域が存在し、ダグナーガらはそこへ向かったことが補足される。


「流石に荒唐無稽で・・・嘘を言っているとは申しませんが、にわかには信じ難く・・・本当に海の向こうに超大陸があるのですか?」


「そもそも、誰が齎した情報ですかな? それは信用に足る情報なのですか? 道の大陸があることもそうですが、そこに神域があるとか言われても、そう簡単に納得などできませんぞ?」


 これまでこの世界には、ユグラドル、アースガルド、レムリア、スヴァールの4大陸と大小いくつかの島々知られておらず、それがこの星の片側に集中していたため、残りの部分は陸地がない海の部分だと信じられていたのだ、勿論、世界一周してそれを証明した者はいないため、道の大陸があると想像するものはいたが、あくまでおとぎ話と捉えられていた。したがって、現実にありますと言われても、ましてやそこは神の領域だと言われても、中々受け入れられないのも致し方ないのかもしれない。そんな状況の中、土竜が軽くキレる。


「あ?! こいつ等に初めて話したのは俺の舎弟なんだが・・・文句あるのか?!」


 正体の竜形態もゴツいが人間形態もマッチョな土竜が凄むだけで場が凍り付く。場が少し大人しくなったところで、光龍が話を始める。


「まあ、疑問を持つのも当然なのじゃが、そっこから始めてたら先に進まんのでな。儂の方で話をさせてもらおうかのう。・・・そうじゃのう・・・どこから話したものか・・・」


「ちょっといいかしら・・・そもそも未知の大陸のこともそうなんだけど、神域と言われたことの方が衝撃だと思うのよね? だから、神々の話からしないと訳が分からないんじゃないかしら・・・」


 何を話すべきか迷っている様子の光龍に水龍が助け舟を出す。光龍はそれを聞いて大きく頷くと落ち着いた調子で話始めた。話のキリがいいところで頭頂部が輝くのだが、そこは全力でスルーだ。


「まず神々の話じゃ。・・・宗教によっては一神教とか多神教とか色々あるようじゃが、現実には神は沢山居るのじゃ。そして、この世界と同様に様々な世界がそれぞれ別な次元に存在するんじゃ。・・・例えば、この世界以外じゃと、ライズやヴィトらが元居た世界や、ワシらが魔界と呼んでいた世界じゃな。・・・勿論まだまだあるぞ。魔法が全く存在しない世界もあるし、そもそも人類が全くいない世界なってところもある。」


 まだ始まって間もないというのに、ラルフは早くもうとうと来ていたが、カペラが針で尻を一刺し。途端に叫び声が上がる。いつものことなのでレグルス達は勿論スルーする。


「いいかのう? でな、基本1世界に神は一柱じゃ。中には主神のように特定の世界の管理をしない神もいるが、担当する世界を一つ持つ神が大半じゃ。・・・ここまではよいかのう?」


 うなずく一同。それを見て続きを話していく光龍。再び頭頂部が光り輝く。


「神々は永遠存在では無くてな、他の生命と同様にいつかは滅ぶ。だから世界に神は一柱とはいっても神の権限は持たないが、神と同格の存在は複数いるのじゃ。まあ、引き継がせるわけじゃ。・・・でな、代々主神はあらゆる並列世界が生命をはぐくみ続けることを美徳と考えている。神々は世界に住む生命から少しずつエネルギーを貰ってその力としているから当たり前なのじゃが・・・」


「ところが、そうは考えない神々もいるのよね。邪神ダグナーガはその一例よ。奴は己が永遠に存在できるように、少しずつではなく大量に生命エネルギーを浪費したのよ。その結果、自らが担当する世界は急速にやせ細り、そこに住む生命は次々に死に絶えていったのね。そして不足のエネルギーを補填するかの如く悪魔と契約した。悪魔に欲する魂を引き渡す代わりに、神権限とは関係なく界移動する能力や星そのものからエネルギーを吸い上げる能力を獲得したダグナーガは、その世界を強靭な体を持つ竜種や一部の魔獣だけが住む世界へと作り替えていった。そこが魔界なのよ。」


 言い淀み始めた光龍の後を引き継ぐ形で風龍が続きを説明する。ここで、ラークから質問が入る。


「では、悪魔というのは何者なのだ?」


「難しい話じゃないわよ? ダグナーガと同様に主神の考えに反して生命は奪いつくすことを当然としていたある神がいたのだけど、その眷属たちよ。ものすごい強大な邪神で、神々の長きにわたる戦いで滅ぼすことに成功はしたのだけど、その眷属たちは無数にいてね、ダグナーガのような別の邪神に取り入って活動を続けているって訳。」


 とりあえず納得した様子のラーク。風龍がそのまま続きを話す。


「当然、ダグナーガの目的は多くの世界から生命や星のエネルギーを奪いつくすこと。1つの世界を魔界に代えられたことで神々は動いたわ。私たちはその神々の眷属。ついでに言うとレグルスが使ってる今は手袋形態のベヒモスはその眷属の一人である土竜のそのまた子分ってとこね。・・・でね、私たちはある秘策を貰い、邪神ダグナーガを魔界の大地の奥深くに封印することに成功したの。・・・そう、数万年は解くことが出来ないほどのね。解けた頃にはダグナーガも存在できないほどの長い時間よ。で、私たちは魔界でその封印の監視を行っていたのよ。ところが、」


 ここで、話疲れたのか水を飲んだところで、後の話を火竜が引き継ぐ。


「ところがや、ダグナーガの眷属であるゲルザードがウルトラC的な抜け道を思いつくんや! それが異世界に渡って、そこでダグナーガを召喚してしまおうって作戦や。莫大なエネルギーは必要やが、封印をすっぽりおいて抜け出てくることが可能やったんや。で、転移先として選ばれたのがこの世界って訳や。ワイらはしばらくそのことに気が付かなかったんやが、それでも今から1000年以上前にはこっちの世界にやって来たんや。でもな、中々尻尾が掴めなかったんや。で、見つけたって思ったら、もう準備が整い始めてたのか、この世界の人類を攻撃し始めたんや。当時のイザヴェル王国は一度滅亡してしもうたんは皆しってるな? で、危機感を感じたこの世界の神セフィルが亡国の若者に自身の力を授けた。その若者こそが勇者カミュや。ワイらも協力して力を貸し与えて、少なくともダグナーガがこの世界に召喚されないようにゲルザードを封印する力を与えた。で、首尾よくゲルザードは封印できたわけやが、」


「まあ、復活してしまったってことだ。それで再封印しようと、リーフ達が頑張ったわけだが、まさか俺たちが授けた封印のためのエネルギーを逆に召喚の足しにされるとはな。だからダグナーガが復活し、最初にやることは、本格的な侵略を開始する前に邪魔なこの世界の神セフィルを殺し、権限を奪い、この世界をしゃぶりつくして、さらに次の世界に向かうつもりなのだろう。・・・だからここでダグナーガを止められなければこの世界は第2の魔界になるし、人類は滅亡だ。」


 火竜の後を話した土竜の言葉を聞き、絶望感がこの場を支配する。要は六精霊竜がようやく封じ込めた存在を復活させてしまったのだ。勇者カミュでさえゲルザードを封印するのが精いっぱいなのだ。そのゲルザードが健在な上に、それよりはるか上の存在まで出現してしまったのだ。これ以上何の対策をするのだ? という雰囲気になっている。


「・・・とりあえず、問題点を確認するわね?」


 そう言ってライズが上げた問題点は以下の通りである。


1.セファレント大陸に行くための手段(乗り物)


2.神域へ行く方法


3.邪神ダグナーガの討伐方法


 人間サイドからは特に意見が出てこない。レグルス達は単に案が出てこないだけだが、他の面々は絶望してしまっている。


「移動手段は私達がかって出るしかないでしょうね。」


 闇竜である。何せセファレント大陸はここから何千㎞も離れているのである。船でよく分かりもしないのに移動していたらその間に世界が終わってしまうだろう。だからと言うわけでもないのだろうが、乗せて行ってくれるらしい。これで移動手段は問題ない。


「だったら、神域まで運んでくれればいいんじゃないか?」


 レグルスの言い分は尤もである。ところがそれには水龍が待ったを掛ける。


「それが出来たら苦労はないのよねぇ。だって、神のいるところよ? 人か迷い込む可能性もあるから、たまたま大陸には来られても神域にはプロテクトがかかっているのよ。結界が張っていて人間やその他の生き物は入ることが出来ないわね。」


「ん? だったらダグナーガ達も神域には行けないんじゃないか?」


「それなんじゃが、異界を簡単に渡れるような存在に結界など通じはしないんじゃよ。流石に直接転移は無理じゃが、結界の手前まで行けば中に入ることは出来るじゃろうて。」


「・・・光龍? 結局、もう詰んでるってこと?」


 そう聞き返したカノーはいつもの飄々とした感じだ。暗にそんな訳ないでしょ?と言っているようだ。


「あそこにいるのは曲がりなりにも神の一柱じゃ。そう簡単にはやられはせぬよ。とはいえ時間がたっぷりあるわけでは無いから、早く止めねばならんのだが。」


「ということは入る方法があるんだな?」


「無論だとも。 レグルスよ、あの結界は神が認めたものであれば素通りすることが出来る。そのためには神が設定した試練を突破する必要があるのじゃ。」


 神を救うために、態々面倒を掛けさせられる。緊急時なのだから融通利かせろ!という思いが湧き上がってくるが、敢えて言わずにいると、


「まあ、そういう顔をするんではない。元々安易に人間には会わないための仕組みなのじゃ。人間から助けられる状況など想定外なのじゃ。今更変えられんし、帰る時間も無いしの。試練を攻略したほうが早い。」


「話は分かったが、何をすればいいんだ?」


「話は簡単じゃ。セファレント大陸の北西、北東、南にいる守護獣から認められればばよい。それぞれ武・知・心を試されると思ってよいじゃろう。・・・まあ、今のお前たちなら問題なかろう。」


「問題はどうやって邪神を止めるかだよねぇ・・・」


 アレクがボソッと最大の問題を口にする。これに対しては・・・


『カギを握っているのはレグルスやな。・・・あのダグナーガに伸されたとき、ちゃんと本気出したんかいな?』


「・・・・・」


「へ? ゲン、何言って・・・って何でレグ無言なの?」


 意外な物言いに対してすぐに反論しないレグルスに不安になるエスト。


「いや、あの状況で加減するとか無理だぞ?」


『多分やけどな、力をセーブしてるねん。』


「ああ、俺から補足するわ。別にレグルスだけの話じゃないんだが、人間てのは自分の力で自分を壊さないように力の制御がかかってるんだよ。レグルスの場合、元の力が大きすぎるから、結構下のレベルでストッパーを掛けてしまってるみたいだな。」


「・・・イマイチ言っている意味が分からないんだが・・・」


「例えて言うとな、すごい強力なばねを細い木の枝に付けたらどうなる?」


「ポッキリ折れるな。・・・ああ、そういうことか。」


「お前さんは、自分の力を無意識に恐れているんだ。全力を出したら自身の体が崩壊するってな。だから壊れない程度にしか力を出していない。」


「要するに、体壊れてもいいからもっと本気で力を出せと・・・」


「そういうことだ。・・・別に問題ないだろう? お前には類まれなる回復魔法があるんだ。壊れた傍から治していけばいい。・・・」

 

「でもそれって難しくないか? そんな無意識のところまでは自覚できないぞ。」


「・・・ふむ。道理かもな。・・・なら、いっちょ揉んでやろうか?」


「いいのか?」


「おい! どっか暴れられるところないか?」


「訓練場でよければありますけが・・・これから?」


 困惑するロベルトらを無視し訓練場へ案内される土竜とレグルス。・・・やがてここまで肉を叩く音が響いてきだす。時々、男の呻き声が混じっていたりして聞くに堪えない。ちなみに会議室から訓練場までは500mは離れていたりする。土竜とレグルスの思い付きで会議は事実上終了するのだった。最後の邪神対策はレグルスに一任することになったのは言うまでもない。





次回は8/5予定です。

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