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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第10章 封印された土竜
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ゲルザードの目的

「・・・!・・・ム!・・・一体全体どうなっているのだ?」


 復活したてで、まだ状況がつかめていない様子の土竜。つい先ほどまで封印されていたのだ。無理もない。今まで封じられていたことを説明していくうちに、当時の状況も思い出してきたようだ。


「我はゲルザードの手下どもにいいように嵌められたのだったな・・・我ながら情けない・・・」


「何故あなたが封印されてしまったのか、説明は可能か?」


 多少へこみ気味な土竜に対し、こうなった経緯を聞くレグルスである。それに対して、レグルス達を一目見て、ここに来た目的等を理解したらしい。


「ふむ。尤もな疑問であるな。・・・お前たちにはどうやら助けられたようだし、聞く権利はあるだろう。」


 その後、土竜は封印された当時の状況を語り始める。その内容は以下の通りであった。




 この世界の暦で言うところの1514年から、レムリア大陸の東部を大干ばつが襲う。それが数年続いたのだったが、その原因は何者かが大地が持つ魔素を根こそぎ奪ったことによるものだった。その結果、土地の気象にも影響を与え、雨も降りにくくなった。 そしてここの当時の支配国であったレムリア王国はその原因が土竜にあるとして討伐にやってきた。


 当然ながら土竜は無実であるので、討伐しようとやってきた軍隊を撃退しようとしたのだが、戦闘中に徐々に魔術を掛けられていることに気が付かなかった土竜は4人の強大な魔術師によって封印されてしまった。その時の魔術師は実は人間ではなく、悪魔族であったことは当時の戦闘中から把握はしていた。が、その時は脅威に感じなかったためそのまま策にはまってしまったとのことだ。


 そのことから考えるに、そもそも砂漠化を進行させたのはゲルザードの配下たちの仕業であり、奪った魔素は何かに利用されたのであろう。そしてその砂漠化の原因を土竜に押し付けて、人間の国家を利用して土竜を封印するように仕向けた。土竜の封印は部下の悪魔族が人間の振りをして直接かかわった為、人間の魔術師が封印したように伝わっているとのことだった。




「で、土竜に責任を擦り付けたのは分かったが、そもそも奪った魔素の使い道に見当はつかないのか?」


「・・・お前はレグルスといったか・・・確実ではないが見当はついている。恐らくはダグナーガを召喚するためのエネルギーの足しにするためだろう。我はそう思う。」


「ダグナーガ?」


 ラークも初めて聞く名に思わず聞き返す。


「そうか・・・そこから説明しなければならないのか。面倒であるが致し方あるまい。少し長くなるが構わないか?」


 ここで嫌というのはラルフくらいである。そのラルフはコソっとここから離れようとしていたため、エストに拳骨を張られていたが。


「まずは神々のことと並列世界のことを話さなければなるまい。・・・この世には神と呼ぶべき存在が居り、いくつも存在する並列世界を管理している。」


「神? 並列世界?」

 

 今声を上げたのはカペラであるが、そこから分からないのは皆同じだろう。


「ふむ。最初に言っておくが、神々は複数いるぞ。そしてこの世界のような世界がいくつもあるのだ。」


 まだ質問したい者もいるだろうが、先に進まないのでこれ以上は黙ってもらう。


「ちなみに並列世界の中には、今いる世界もそうだし、我々がこの世界に来る前にいた魔界という世界もそうだ。中には人間などの知的生命体がいない世界もあれば、ここより遥かに文明が発達した世界もある。」


「私が前にいたヴァルハラもそうなの?」


「・・・聞いたことがあるな。危険なほど科学技術が栄えているにもかかわらず、魔術も共存しているところだったと記憶している。」


 コーネリアが思わず質問してしまったが、ここから話が脱線しそうだったので話を元に戻してもらう。


「うむ。 そして神々は宗教上の存在のように永遠存在というわけでは無く、いつかは滅ぶ存在である。・・・人間よりは遥かに長く、1万年近く存在するのだが、各並列世界に存在する魔素を少しずつもらいながらその存在を維持しているのだ。その代わり各並列世界の生命が維持できるよう適切な管理を行っておる。ある程度はその世界のものに任せるが、環境を大きく壊しそうな人類に対してはそれとなく警告したりしてな。少しだけ自然災害を起こして、それで悟ってもらうのだ。それでも駄目ならもう見捨てるしかないのだが、それでもできるだけそうならないように仕向けるわけだ。人々の幸せのためにな。それがまわりまわって自分達にも跳ね返ってくるのでな。」


 こんな話を聞くのは、恐らく人類初だろう。少なくともこの世界の人類としては。土竜の話はまだ続く。


「ただ、神々の中には、その辺が分かっていない者もいる。その一柱がダグナーガなのだ。奴はある世界で略奪の限りを尽くし魔素の元にもなる生命力を吸いつくそうとした。」


「何でそんなことをしたんだ?」


 レグルスの問いに対して土竜は答える。


「魔素を少しずつ貰って、神々は1万年を生きるのだ。それを大幅に奪えばそれこそ永遠の命に近づくこともできよう。それをしたら並列世界はすぐに滅んでしまうがな。確かに並列世界はどんどん生まれ、そして滅んでいくのだが、神々がそれを行えば多くの並列世界は消失してしまうだろう。」


「・・・・・・」


「当然、神々もそれは望まない。何故ならば巡り巡って自分も滅ぼすことになるからな。だが、ダグナーガはそれを分かっていながら、自らの行いを止めなかったのだ。」


「・・・それは何故だ?」


 核心の話をしているからか、ラークも切り込んでくる。


「恐らくは、多くの神々を退け、自分にとって都合のいい世界を作ろうとしているのであろう。・・・そう、いくらでも生命力を搾取し、自らは永遠の命を享受する。生命の住む世界からすればそれは地獄であろう。・・・だから、神々はダグナーガを封じるためその世界、魔界に我々精霊竜を派遣した。」


「この世界ではなく、魔界にか?」


 再びレグルスの問いだ。勿論ここで嘘を言うわけがない。


「そう、我も含めた精霊竜はそれぞれ神々の眷属である。その我らが神々から借り受けた力によって、ダグナーガを魔界の奥深くに封印することに成功したのだ。が、話はこれでは終わらない。ダグナーガは残された力でヤツの眷属であるゲルザードをこの世界に派遣し、少しずつこの世界の生命力を奪い始めた。そのことに後で気が付いた我々は追ってこの世界までやってきたのだ。が、中々ヤツの痕跡を探すことは出来ずに時間だけが経ってしまい、この世界の人類に攻撃をし始めるころには奴は十分に準備をしてしまっていたのだ。」


「いったい何の準備だ?」


「ダグナーガの召喚だ。封印が解けないのならば、直接、界を移動させれば自動的に封印は解けるという作戦だったのだろう。そのためには膨大なエネルギーが必要だ。だから人類と戦争をすることで不足な生命力を補おうとした。幸い人類は戦おうとする者がいて・・・勇者カミュのことだな。ヤツにゲルザードを封印する力を授けたのだ。・・・ゲルザード自身を完全封印することは叶わなかったが、奴の力を封印することは十分できたようだ。その結果ヤツの行動は大きく制限できたわけだが、状況から察するにヤツの封印が解けたか、それに近い状況にあるようだな?」


『そういうことなんや。つうことで、土の儀式を勇者リーフにしてやってや。』


「?! お前、ベヒモスではないのか? ・・・ というか、まだその姿でいるのか。 少し驚いたぞ。」


『せや。 というか、主様がいつまでも名前つけへんから、レグにゲンと名前つてもろうたわ。』


「話は分かった。お前のことは以後ゲンと呼ぼう。 それはそれとして、儀式に必要なものは・・・どうやらそろっているようだな。」


 土竜はそう言うと、リーフとコーネリアに前に出てきてもらい、精霊竜の儀式を開始する。・・・その後儀式は問題なく終了し、すべての儀式を終えたリーフの体が一瞬だけ激しく輝いた。


「我のが最後だったようだな。今の輝きはゲルザードの力を封印する力が備わった印だ。・・・あとはゲルザードが弱った後、その魔力を念じながらぶつければよい。それでヤツの力は封印できるはずだが、・・・少し急いだほうが良いだろうな。」


「どういうことですか?」


「ダグナーガを召喚する際、少しでもエネルギーの消費を抑えようとすれば、星の磁場を利用するのが賢い。そしてヤツの気はここより遥か南方に感じる。・・・もうとっくに嘗ての封印は解け、邪神ダグナーガを召喚しようと南極で準備しているのだろう。」


 思っていた以上に危機的な状況であったため、驚きをもって皆聞いている。そんな中ラークが聞く。


「南極の一体どのへんか分かるか?」


「南極点であろう。状況は厳しいが急いだほうがいいだろう。」


 それを聞いて直ちに移動しようとしたレグルス達であったが、


「少しだけ待て。・・・レグルスよ。ゲンを一回外せ。」


「・・・構わないが、何故だ?」


 言われるがままにゲンを外したレグルス。すると土竜から魔力が注がれると、ゲンが恐らくは本来の姿であろうベヒモスへと姿を変えたのである。


「お? 随分久しぶりやな、この体は。」


 うれしいのか、どしどし跳ね回っているゲン。正直振動が凄いのでやめてほしいのだが・・・


「まだ協力するつもりなのだろう? ではもう一度グローブになってもらうぞ?」


「ええで!」


 ゲンの返事を聞いて再び魔力を注ぐ土竜。すると元の手袋に戻ったのだが、革の感じとかが通夜が出たというか光り輝いている。


「魔力を補給したからな。・・・少しは使い勝手が良くなったはずだぞ?」


 言われるがままに嵌めてみると、自分の体が軽く感じる。どうやらパワーアップしたようだ。ステータスを確認したら、力、器用さ、素早さがそれぞれ+1500程増えていた。どうりで体が軽くなっているはずである。


「まあ、精々ワイを有効活用してくれや?」


「分かってるわ! では皆、急ぐぞ!」


 そういってすぐに転移陣を起動したレグルス。向かう先はスヴァール山脈である。そこからでも南極までは結構かかるのだが、最も近いのがここなので仕方がないのである。転移陣が起動後、次々に移動していく一行。この先どうなるのか分からずともまずは突き進むのみである。








次回は7/20です。予定通り行けそうです。

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